技術
AI Lab、HCI分野のトップカンファレンス「CHI 2026」の Posters Trackにて3本の論文採択
―デザインの探索システムやデータ可視化等、最新の成果をポスター発表―
「CHI」は、情報科学、デザイン学、心理学など多岐にわたる分野の研究者が一堂に集う、HCI分野において最も権威あるトップカンファレンスです。
採択された論文は、2026年4月にスペイン・バルセロナにて開催される「CHI 2026」にて発表予定です。
近年、機械学習の急速な発展に伴い、AIを活用した高度な意思決定支援や、人間とAIの円滑な共同作業を可能にするインタラクション技術の重要性が増しています。
「AI Lab」では、HCIの研究者やクリエイティブ領域の研究者など、多様な専門性を持つメンバーが連携し、学際的なアプローチで研究開発を推進しています。本会議では、広告運用の効率化やデザイナーの創造性支援、AIの信頼性向上といった課題に対し、最新のアプローチで取り組んだ3つの成果を報告いたします。
論文概要
「DiverXplorer: Stock Image Exploration via Diversity Adjustment for Graphic Design」
著者:Tejero Antonio、宋 思超、大坂 直人、大谷 まゆ、佐藤 真一(サイバーエージェント AI Lab)
| デザイナーが画像素材を探索する際、従来の検索手法では類似した画像に結果が偏りやすく、アイデアの幅を広げる「デザイン空間の俯瞰」が困難でした。本研究では、数学的手法(行列式点過程:DPP※2)を用いることで、検索結果の「多様性」をユーザーの操作に合わせて段階的に調整できる探索システムを開発しました。プロのデザイナーによる検証の結果、関連性を維持したまま多様なバリエーションを提示する動的な制御が、新たな視覚的パターンの発見を促し、手戻りの削減に寄与することを明らかにしました。 |
本成果の根幹となる画像選択技術「画像選択装置、画像選択方法及びコンピュータープログラム」については特許を取得しております。(特許第7781337号)
※2 行列式点過程(DPP):データの集合から、内容の重複を避けつつ、多様性と品質を両立させて要素を選択するための数学的枠組み
「 Automating Chart Annotations for Data Storytelling: Does It Enhance the Efficiency and Effectiveness of Chart Interpretation 」
著者:原口 大地、菊池 康太郎、鈴木 智之、小川 奈美(サイバーエージェント AI Lab)
| データ、図表、物語を融合させて情報を伝える「データストーリーテリング」は、複雑なデータを直感的に理解させる手法として注目されています。図表内に直接、簡潔な説明注釈を配置する手法は、情報の読み取りや洞察の獲得に有効であることが先行研究で示されていますが、その制作には多大な手作業を要することが課題でした。本研究では、説明テキストからチャートに適した注釈を自動抽出し、デザインのガイドラインに沿って図表内へ最適に配置するシステムを開発しました。ユーザー調査の結果、提案手法による可視化は情報の正確な理解に寄与することが確認されました。 |
本論文の技術は特許出願中です。(2026年3月現在)
「Shape vs. Context: Examining Human--AI Gaps in Ambiguous Japanese Character Recognition」
著者:原口 大地(サイバーエージェント AI Lab)
| AIの画像認識性能が向上する一方で、曖昧な視覚情報に対するAIの判断基準と人間の直感との乖離は十分に解明されていません。本研究では、機械学習を用いて生成した中間的な文字形状を用い、人間とVLM※3の認識の境界線を直接比較しました。調査の結果、文脈が判断に与える影響を明らかにし、AIがより人間らしい直感を理解するための「アライメント」技術における基礎的な知見を提供します。 なお本研究は、技術者のスキルアップを目的に自律的な研究を支援する「CAゼミ制度」を活用し、独自の着眼点から発展させたものです。 本論文の着想の源泉となった検証記事:「ン」と「ソ」の認識境界ってどこ? |
※3 VLM(Vision-Language Model):画像とテキストの双方を同時に処理し、高度な理解を可能にする大規模なAIモデル
今後の展望
今回の研究成果は、当社が提供する広告クリエイティブ制作支援ツールや、信頼性の高い対話型AIサービスの開発、およびデザイナーの制作プロセスを高度化する基盤技術として活用される予定です。
AI Labは今後も、専門領域を越えたチーム体制による研究開発を行い、最先端のAI技術を実社会に役立てるためのプロダクト開発と、学術的な発展に努めてまいります。
※1 CHI 2026(The 2026 ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems)