人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の小川奈美・岡藤勇希・馬場惇らによる論文がヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)分野の国際会議「CSCW 2025(ACM SIGCHI Conference on Computer-Supported Cooperative Work & Social Computing、以下CSCW※1)」にて採択されたことをお知らせいたします。本論文は11月20日から22日にかけて開催された「CSCW 2025」にて発表が行われました。
なお、本論文はAI Lab技術アドバイザリーである東京大学 大学院情報学環・学際情報学府 畑田裕二助教との共著論文となります。畑田助教は、Virtual Reality (VR)やHCIの分野における質的研究を専門とされており、本研究が質的なアプローチに基づいて人間とAIの協働のあり方を深く解明する上で、専門的な指導と貢献をいただきました。
なお、本論文はAI Lab技術アドバイザリーである東京大学 大学院情報学環・学際情報学府 畑田裕二助教との共著論文となります。畑田助教は、Virtual Reality (VR)やHCIの分野における質的研究を専門とされており、本研究が質的なアプローチに基づいて人間とAIの協働のあり方を深く解明する上で、専門的な指導と貢献をいただきました。
■CSCWについて
「CSCW」はACM (Association for Computing Machinery)が主催する国際会議です。「複数の人々の協調・社会的な側面」に特化し、コンピュータ支援協調作業とソーシャル・コンピューティングに関する研究を中心に扱っています。コンピュータをはじめとする情報システムと人との関わりについて、情報科学・認知科学・心理学・デザイン学など、多岐に渡る分野の研究者が集い、最新研究成果の発表と議論を行う権威あるカンファレンスです。
■研究背景と論文概要
AI LabのInteractive Agentチームでは、主要な研究テーマのひとつとして人間とAIのインタラクションの理解、設計、および評価の研究を行っています。具体的には、AIが実社会において持続的に・人間中心的に活用されることに焦点を置き、そのために人間とAIのインタラクションを深く理解し、理解に基づいてアプリケーションを設計・提案する研究に取り組んでいます。中でも、本研究は人間とAIによる創造活動の協働 (Human–AI Co-creation) に焦点を当てており、共創を支えるインタラクションの理解・設計・評価をHCI分野のアプローチによって行う一連の研究に位置付けられます。
近年、AI技術の急速な発展は、デザイン業界をはじめとするクリエイティブな業務フローを変えつつあります。なかでも生成AI(Generative AI)の登場は大きな注目を集め、テキストの入力から多数のデザイン候補をAIが生成するなど、多様なアイデアの創出(発散過程)をサポートしています。
一方で、クリエイティブな業務フローにおいては、複数のアイデアから最適なものを選び出す「意思決定(収束過程)」のプロセスも極めて重要です。しかしながら、人間がデザイン候補を創出し、AIがデザイン上の意思決定を担うなどのような、「デザインプロセスにおける人間と意思決定AIの協働のあり方」については、まだ十分に解明されていませんでした。
そこで本研究では、AIがグラフィックデザインの広告効果を予測し、デザイナーの意思決定を代替するというワークフローを実践しているオンライン広告デザイン会社に焦点を当て、「デザイナーとAIによる新しい協働のあり方を質的に明らかにすること」を目的としました。
近年、AI技術の急速な発展は、デザイン業界をはじめとするクリエイティブな業務フローを変えつつあります。なかでも生成AI(Generative AI)の登場は大きな注目を集め、テキストの入力から多数のデザイン候補をAIが生成するなど、多様なアイデアの創出(発散過程)をサポートしています。
一方で、クリエイティブな業務フローにおいては、複数のアイデアから最適なものを選び出す「意思決定(収束過程)」のプロセスも極めて重要です。しかしながら、人間がデザイン候補を創出し、AIがデザイン上の意思決定を担うなどのような、「デザインプロセスにおける人間と意思決定AIの協働のあり方」については、まだ十分に解明されていませんでした。
そこで本研究では、AIがグラフィックデザインの広告効果を予測し、デザイナーの意思決定を代替するというワークフローを実践しているオンライン広告デザイン会社に焦点を当て、「デザイナーとAIによる新しい協働のあり方を質的に明らかにすること」を目的としました。
「Understanding Collaboration between Professional Designers and Decision-making AI: A Case Study in the Workplace」
著者:小川奈美 (サイバーエージェント AI Lab)・岡藤勇希 (サイバーエージェント AI Lab)・畑田裕二(東京大学)・馬場惇 (サイバーエージェント AI Lab)
著者:小川奈美 (サイバーエージェント AI Lab)・岡藤勇希 (サイバーエージェント AI Lab)・畑田裕二(東京大学)・馬場惇 (サイバーエージェント AI Lab)
| 本研究では、インターネット広告を中心に制作を行う当社の関連会社における事例に着目しました。具体的には、広告デザインの効果を予測するAIをデザイン制作のワークフローに取り入れることで、AIをデザイン上の「意思決定ツール」として日々の業務に利用している同社のグラフィックデザイナー12名に対し、詳細なインタビューを実施しました。 この調査により、デザイナーが意思決定AIとの協働することの影響について、以下の観点からの知見を得ました。 1. AIへの信頼と信用: AIの能力に対する認識・認知のあり方(信頼に関連)・AIの判断をどのように受け入れているか(信用に関連) 2.利点と課題: 業務効率やデザイン効果の定量化という観点から、AIの導入がデザイナーにどのような利点と課題をもたらすか 3.課題の克服: AI導入に伴う課題を乗り越えるためのデザイナーらのワークフローやデザインプロセスの変化 これらの発見に基づき、本論文ではクリエイティブなワークフローに意思決定支援AIを導入・設計するための具体的な提言を行っています。 この成果は、クリエイティブ業務におけるAI活用を「生成」から「判断」の領域まで拡大し、人間とAIが最も効果的に協働できる未来のワークフロー構築に貢献するものです。 |
■今後
本研究では、クリエイティブな現場における意思決定支援AIとデザイナーの新しい協働のあり方、およびその有効的な導入に関する重要な知見を発見できたと考えております。
本知見は、インターネット広告デザインに留まらず、多様なクリエイティブ領域や産業におけるAI活用に応用することが可能と考えています。今後は、人間とAIとのより複雑で非線形なインタラクションのあり方を理解し、クリエイティブな現場におけるAIとクリエイターの新しい協働の可能性を探求してまいります。
※1 The ACM Conference on Computer Supported Cooperative Work & Social Computing (CSCW)
本知見は、インターネット広告デザインに留まらず、多様なクリエイティブ領域や産業におけるAI活用に応用することが可能と考えています。今後は、人間とAIとのより複雑で非線形なインタラクションのあり方を理解し、クリエイティブな現場におけるAIとクリエイターの新しい協働の可能性を探求してまいります。
※1 The ACM Conference on Computer Supported Cooperative Work & Social Computing (CSCW)