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プレスリリース

AI Lab、人工知能分野のトップカンファレンス「AAAI 2024」にて2本の共著論文採択

―ゼロ和ゲームの学習における記憶の非対称性がもたらす影響を解析/保育所入所選考におけるアルゴリズムを提案―

AI

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の藤本悠雅※1、蟻生開人、阿部拳之および孫兆鴻※2、山田直行、竹浪良寛、森脇大輔、九州大学の横尾真教授らによる2本の共著論文が、人工知能分野の国際会議「AAAI 2024」※3に採択されたことをお知らせいたします。

「AAAI」は、世界中の様々な人工知能分野の研究者が一堂に集い毎年開催される国際会議で、「NeurIPS」「ICML」「KDD」※4などと並んで、人工知能分野で権威ある国際会議の1つです。「AAAI」には過去5年、「AI Lab」の研究員による論文が本会議およびワークショップにて採択されており、今回で6年連続※5 の採択となります。このたび採択された論文は、2024年2月にカナダ・バンクーバーで開催される「AAAI 2024」にて発表されます。

なお、本研究は「AI Lab」が独自のプロジェクトを持つ若手研究者と共に目的を設定し、共同で研究を行う、「協働研究員制度」による成果になります。

※1  総合研究大学院大学所属、協働研究員として「AI Lab」にて就業中
※2  九州大学所属、クロスアポイントメント制度により「AI Lab」研究員を兼務

■採択された2本の主著論文について

「AI Lab」ではマーケティング全般に関わる幅広いAI技術を研究・開発しており、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取り組んでいます。
なかでも、経済学領域における研究チームでは、因果推論、メカニズムデザイン、ゲーム理論、行動経済学といった経済学の各分野において、高度な理論研究や社内外のデータを用いた応用研究を行うとともに、アカデミアおよび行政との連携による社会実装や学術貢献にも注力をしています。
 
Memory Asymmetry Creates Heteroclinic Orbits to Nash Equilibrium in Learning in Zero-Sum Games

著者:藤本悠雅(総合研究大学院大学)、蟻生開人(サイバーエージェント AI Lab)・阿部拳之(サイバーエージェント AI Lab)
■研究背景
近年インターネット広告配信をはじめとした様々なウェブサービスにおいて、機械学習を用いた意思決定の自動化が重要な役割を果たしております。

例えばインターネット広告のオークションにおいては、自社のモデルだけでなく他社のモデルも独立に入札額を決定するという、意思決定モデルが複数存在する状況が発生します。こうした複数のモデルを学習させる問題は「マルチエージェント環境における学習」と呼ばれます。全てのモデルが最適な意思決定を行う状態を導くのがマルチエージェント環境における学習の目的の一つになりますが、この目的の状態を学習するのは一般に困難であることが知られています。

当社では、この問題に対して「AAMAS 2021」・「UAI 2022」・「AISTATS 2023」・「IJCAI 2023」といった権威ある国際会議にて発表を行うなど、積極的な学術貢献を行ってまいりました。

■論文の概要
本論文では、意思決定主体が次の行動を決定する際に過去の行動を記憶する「メモリ」を導入し、メモリの長さが非対称な意思決定主体間での学習を取り扱いました[図]。メモリは主体がより複雑かつ柔軟な意思決定を行うことを可能にします。本研究では、メモリの非対称性による主体間の意思決定能力の違いが、どのように二者間の学習に影響を与えるのかについて分析を行いました。



結果として、メモリの長い意思決定主体が相手を搾取しようとし、メモリの短い意思決定主体がその搾取から逃れようと学習することによって両者がそれ以上利得を改善できない目的の状態、すなわちナッシュ均衡に到達する現象を観測しました。また、両者の利益が相反するゼロ和ゲームにおいて、この現象が特に広く発生することを理論と実験の両面から明らかにしました。

本研究は、マルチエージェント環境下においてナッシュ均衡を効率よく導くメカニズムとして応用されることが期待されます。また、意思決定主体間の能力差を利用することでナッシュ均衡への収束を達成するという新たな視点を提供しています。

Stable Matchings in Practice: A Constraint Programming Approach[解説ブログリンク]

著者:孫兆鴻(九州大学・サイバーエージェント AI Lab)、山田直行(サイバーエージェント AI Lab)、竹浪良寛(サイバーエージェント AI Lab)、森脇大輔(サイバーエージェント AI Lab)、横尾真(九州大学)
■研究背景
保育所の入所選考は、0歳~5歳までの多数の児童とそれを受け入れる多数の保育所との二部マッチング問題ととらえることができます。しかし、同時に申し込む兄弟姉妹の希望を踏まえた割り当てや転園希望者の存在、さらには異年齢間での定員の共有など複雑な仕組みがあり、一般的なマッチング理論のアルゴリズムをそのまま実務に適用できませんでした。

AI Labではこれまでも相互推薦システムや保育所の利用調整アルゴリズムの開発など様々なマッチング問題に取り組んでまいりました。昨年のAAAI2023で発表した論文では、転園や兄弟姉妹の任意の保育所の組み合わせについて整数計画法を用いることを提案しましたが、同時に申し込む兄弟姉妹の数3名までに限られることや異年齢間の定員共有に対応していないなど、課題も残っていました。

■論文の概要
そこで、本論文では昨年の論文を一般的に拡張し、保育所入所選考の実務で必要とされる以下の性質を満たすアルゴリズムを制約プログラミング(Constraint Programming:CP)を用いて提案しました。

・同時に申し込む兄弟姉妹の数に制限がなく、任意の組み合わせで割り当てられる
・異年齢間で定員を共有する保育所にも対応
・転園希望者を転園元の保育園またはそれ以上の希望する保育園に割り当てる(個人合理性)
・指数や優先順位が高い人を優先し、希望者がいるにもかかわらず募集枠に空きがある状態を作らない(安定性)


CPを用いた理由は、児童と保育所の二部マッチング問題のような計算量の多い複雑な問題に対して高速に対処するためです。

本論文で提案したアルゴリズムを自治体の実際の割り当てと比較した結果、提案したアルゴリズムはマッチ数が実際の割り当てと同数以上かつ個人合理性と安定性を満たしていることが明らかになりました。

さらに、一部の制約を緩和することで保育所へのマッチ数をさらに増やすことが可能であり、これが実装されれば待機児童問題の解決への寄与が期待できます。

■今後

今回2本の論文で提案した手法は、広告クリエイティブ素材の自動生成や推薦システムおよび行政のDX推進における基礎技術として活用していきます。
また、”Stable Matchings in Practice: A Constraint Programming Approach”内で提案している手法は既に自治体等への提供が可能なシステムを実装しており、保育所・学童・学校選択制などさまざまなマッチング問題に活用いただけます。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。


※3 「AAAI」Association for the Advancement of Artificial Intelligence
※4 「NeurIPS」 Neural Information Processing Systems ,「ICML」International Conference on Machine Learning ,「KDD」International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining
※5 Narita et al. “Efficient Counterfactual Learning from Bandit Feedback” (AAAI 2019) , Garcia et al. “KnowIT VQA: Answering knowledge-based questions about videos” (AAAI 2020) , Nomura et al. “Warm Starting CMA-ES for Hyperparameter Optimization” (AAAI 2021) , Shimano et al. “Computing Strategies of American Football via Counterfactual Regret Minimization” (AAAI 2022 Workshop on Reinforcement Learning in Games),Sun et al.”Daycare Matching in Japan: Transfers and Siblings”(AAAI 2023), Aziz et al.”Fairness Concepts for Indivisible Items with Externalities” (AAAI 2023)[リリース]