プレスリリース
AI Lab、人工知能分野のトップカンファレンス「AAAI 2023」にて2本の共著論文採択 ―保育所マッチングの実践的アルゴリズムデザイン/公平な資源配分に関する新定義を提案―
株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の孫 兆鴻、森脇 大輔、竹浪 良寛、冨田 燿志らによる2本の共著論文が、人工知能分野の国際会議「AAAI 2023」※1に採択されたことをお知らせいたします。
「AAAI」は、世界中の様々な人工知能分野の研究者が一堂に集い毎年開催される国際会議で、「NeurIPS」「ICML」「KDD」※2などと並んで、人工知能分野で権威ある国際会議の1つです。「AAAI」には過去4年、「AI Lab」の研究員による論文が本会議およびワークショップにて採択されており、今回で5年連続※3 の採択となります。これらの論文は、2023年2月に開催される「AAAI 2023」で発表いたします。
「AAAI」は、世界中の様々な人工知能分野の研究者が一堂に集い毎年開催される国際会議で、「NeurIPS」「ICML」「KDD」※2などと並んで、人工知能分野で権威ある国際会議の1つです。「AAAI」には過去4年、「AI Lab」の研究員による論文が本会議およびワークショップにて採択されており、今回で5年連続※3 の採択となります。これらの論文は、2023年2月に開催される「AAAI 2023」で発表いたします。
■採択された2本の主著論文について
「AI Lab」ではマーケティング全般に関わる幅広いAI技術を研究・開発しており、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取り組んでいます。
なかでも、経済学領域における研究チームでは、因果推論、メカニズムデザイン、ゲーム理論、行動経済学といった経済学の各分野において、高度な理論研究や社内外のデータを用いた応用研究を行うとともに、アカデミアおよび行政との連携による社会実装や学術貢献にも注力をしています。
Daycare Matching in Japan: Transfers and Siblings[解説ブログ]
著者: 孫 兆鴻(サイバーエージェント AI Lab)、森脇 大輔(サイバーエージェント AI Lab)、竹浪 良寛(サイバーエージェント AI Lab)、冨田 燿志(サイバーエージェント AI Lab)、横尾 真(九州大学)
Fairness Concepts for Indivisible Items with Externalities[解説ブログ]
著者: Haris Aziz(ニューサウスウェールズ大学), Warut Suksompong (シンガポール国立大学), 孫 兆鴻(サイバーエージェント AI Lab), Toby Walsh(ニューサウスウェールズ大学)
■今後
今回2本の論文で提案した手法は、マッチング理論を活用した保育所入所選考システムや、小売における最適な商品の広告推薦などDX事業における基礎技術として活用していきます。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。
※1 「AAAI」Association for the Advancement of Artificial Intelligence
※2 「NeurIPS」 Neural Information Processing Systems ,「ICML」International Conference on Machine Learning ,「KDD」International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining
※3 Narita et al. “Efficient Counterfactual Learning from Bandit Feedback” (AAAI 2019) [リリース], Garcia et al. “KnowIT VQA: Answering knowledge-based questions about videos” (AAAI 2020)[リリース], Nomura et al. “Warm Starting CMA-ES for Hyperparameter Optimization” (AAAI 2021) [リリース], Shimano et al. “Computing Strategies of American Football via Counterfactual Regret Minimization” (AAAI 2022 Workshop on Reinforcement Learning in Games)
なかでも、経済学領域における研究チームでは、因果推論、メカニズムデザイン、ゲーム理論、行動経済学といった経済学の各分野において、高度な理論研究や社内外のデータを用いた応用研究を行うとともに、アカデミアおよび行政との連携による社会実装や学術貢献にも注力をしています。
Daycare Matching in Japan: Transfers and Siblings[解説ブログ]
著者: 孫 兆鴻(サイバーエージェント AI Lab)、森脇 大輔(サイバーエージェント AI Lab)、竹浪 良寛(サイバーエージェント AI Lab)、冨田 燿志(サイバーエージェント AI Lab)、横尾 真(九州大学)
■研究背景 保育所入所選考においては、保護者の送り迎えの負担を考慮し同時に申し込んだ兄弟姉妹を同じ保育所に割り当てる必要があるほか、転園希望者が存在するなど、標準的なマッチング理論のアルゴリズムをそのまま応用することはできません。 こうした課題を克服するために、これまで学校選択制や研修医マッチングといった分野の先行研究においては、保育所入所選考と同様に、単独の割り当てではなく、希望の組み合わせを踏まえた割り当てが必要な兄弟姉妹や研修医のカップルを含むマッチングについて検討が行われてきました。 しかし、先行研究においては転園を考慮しておらず、兄弟姉妹数や希望する保育所の組み合わせに制限があるため、保育所入所選考の実務にそのまま用いることができませんでした。 ■論文研究の概要 このような背景のもと、本論文では、保育所入所選考の実務で求められる以下の性質すべてを満たすアルゴリズムを整数計画法を用いて提案しました。 ・同時に申し込んだ2人以上の兄弟姉妹が希望する組み合わせに基づいて割り当てられる ・転園希望者を転園元の保育園もしくは転園元以上に希望する保育園に割り当てる(家族合理性) ・指数や優先順位が高い人を優先して割り当てる(公平性) ・希望している人がいるにも関わらず募集枠に空きがある状態をつくらない(家族非浪費性) また実際に、実証実験を実施している自治体から提供された匿名データを用いて、自治体による実際の割り当てと本論文で提案したアルゴリズムを表の通り比較したところ、いずれの自治体においても本論文で提案したアルゴリズムは、 ・マッチ数が実際の割り当てと同数以上である ・公平性、家族非浪費性、家族合理性といった性質を満たしている ことがわかりました。 本論文で提案したアルゴリズムを搭載した入所選考システムを自治体に提供することで、自治体職員による入所選考作業の大幅な効率化だけではなく、待機児童の減少や質の高い入所選考に貢献できることが見込まれます。 |
Fairness Concepts for Indivisible Items with Externalities[解説ブログ]
著者: Haris Aziz(ニューサウスウェールズ大学), Warut Suksompong (シンガポール国立大学), 孫 兆鴻(サイバーエージェント AI Lab), Toby Walsh(ニューサウスウェールズ大学)
本論文では、財の配分に関して、外部性を考慮した公平性の定義を提案するとともに、その性質と関係性について分析しています。 ■研究背景 財(もの)は、分割可能財(お金など)と非分割財(家事など)の2種類に分類でき、こうした財を公平に配分することを検討する「公平分割問題」という問題があります。 公平分割問題とは、「参加者全員が各自の基準で公平と感じる方法で、有限な資源を配分できるか」という問題です。この問題は、領土や石油などの貴重な資源の配分に限らず、家賃や家事の分担・遺産の相続・離婚する際の財産分与などの日常生活への応用も多く行われています。 公平分割問題においては、各参加者が他人の財の割り当てを羨むことがない状態である「無羨望性 (envy-free)」と、参加者が全ての財の1/n(n : 参加者の数)以上をもらう状態である「比例性 (proportionality)」という概念が広く使われています。 また、実際の公平分割問題を考える際には、自身にとって公平かどうかだけでなく、財を得ることで周囲に有利・不利といった影響を及ぼす「外部性」を考慮する必要があります。(競争相手のチームが強い選手を獲得すると、自分のチームに不利になる、等) 一方、これまで、非分割財(家事など)の公平分割問題に関する研究の多くは、外部性の考慮がされていませんでした。 ■論文研究の概要 このような背景のもと、今回採択された論文は、非分割財の公平分割問題において外部性を導入し、無羨望性と比例分割性を満たす公平性の定義を提案し、検討しました。 具体的には、無羨望性と比例分割性に基づいて新たに一般化された公平性の定義を提案し、それらの関係性を図で解明するとともに、定義ごとに「公平な結果がいつも存在するか」・「どうやって計算するか」という2つの問題について検討を加えました。 本論文は将来、小売の商品展開とテレビ番組の配置などで、公平に資源を配分することに貢献できることが見込まれます。 |
■今後
今回2本の論文で提案した手法は、マッチング理論を活用した保育所入所選考システムや、小売における最適な商品の広告推薦などDX事業における基礎技術として活用していきます。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。
※1 「AAAI」Association for the Advancement of Artificial Intelligence
※2 「NeurIPS」 Neural Information Processing Systems ,「ICML」International Conference on Machine Learning ,「KDD」International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining
※3 Narita et al. “Efficient Counterfactual Learning from Bandit Feedback” (AAAI 2019) [リリース], Garcia et al. “KnowIT VQA: Answering knowledge-based questions about videos” (AAAI 2020)[リリース], Nomura et al. “Warm Starting CMA-ES for Hyperparameter Optimization” (AAAI 2021) [リリース], Shimano et al. “Computing Strategies of American Football via Counterfactual Regret Minimization” (AAAI 2022 Workshop on Reinforcement Learning in Games)