
※1 クロスアポイントメント制度とは研究者などが、大学や公的研究機関、企業といった複数の組織に同時に所属し、それぞれの強みを活かしながら研究や開発を行う制度です。組織間の合意のもと、働く時間や役割を調整することで、人材が組織の壁を越えて活躍し、技術の橋渡しを強化することを目指します。
JSTが実施する、クロスアポイントメント制度の活用を前提とする研究制度です。AI研究及びAI分野における、産学官を超えた複数の組織への所属を推奨することで、国家戦略分野に従事する人材の流動化を促進します。クロスアポイントメント先機関は、入社前の年収額を越えるように給与設定を行うことで、若手研究者にとってのステップアップできる環境の構築及び処遇改善を目指します。
※BOOST(若手研究者支援)プログラムの詳細はこちら
■AI Lab(体制整備済み機関)の受入審査について
AI Labはこれまで、研究者としてのキャリアの可能性を広げられるよう卓越した人材が複数の組織において活躍できるよう環境整備を行ってきました。2025年6月現在においては、AI Labは民間企業で唯一「クロスアポイントメント体制整備済み機関一覧」に掲載されており、BOOSTプログラム(若手研究者支援)を活用したクロスアポイントメントの受入が可能です。受入審査として、書類審査・協議のなかで配属されるチームや事業の方向性と大きな乖離がないかを確認のうえ受入可否を決定いたします。詳細は下記からご確認ください。
AI Labでは今後も卓越した人材が大学や公的研究機関、企業等の壁を越えて、複数の組織において活躍できるような環境整備に努めてまいります。
今回採択された研究課題の詳細については下記の通りです。
研究者名 | ![]() 松原 崇(北海道大学 教授/サイバーエージェント) |
職名 | リサーチサイエンティスト(AI Lab Graphicsチーム) |
事業名 | BOOST 次世代AI人材育成プログラム (若手研究者支援) |
研究課題名 | コンテンツ生成幾何学の創出 |
研究課題概要 | 人工知能技術を用いたコンテンツ生成において、ある物体の同一性や内容の一貫性を保持したり、ユーザーの意図通りに生成内容を制御したりすることは容易ではありません。例えば、ある人物が歩いている動画を生成しようとしたとき、一枚一枚の画像は高品質であっても、それぞれ顔つきや服装が変わってしまうことがあります。データの集合が多様体の構造を持つと考える多様体仮説に基づけば、同一人物のデータの集合はその部分多様体をなし、その人物の動画はその部分多様体上の曲線で表現できることが期待されます。 本研究課題は、多様体仮説を拡張することで、データが持つ性質や構造の理解に微分幾何学の技術を導入する枠組みを提案します。そして、最先端の生成AIと組み合わせることで諸問題の解決を試みるとともに「意味の理解」への新しいアプローチを切り拓くことを目指します。 |
研究者名 | ![]() 園田 翔(理化学研究所 上級研究員/サイバーエージェント) |
職名 | リサーチサイエンティスト(AI Lab Algorithmsチーム) |
事業名 | BOOST 次世代AI人材育成プログラム (若手研究者支援) |
研究課題名 | 大規模言語モデルによる定理証明 AI の学習理論 |
研究課題概要 | 本研究課題では、大規模言語モデル(LLM)による数学定理の自動証明(定理証明AI)とその周辺タスクを念頭に置いて、AI技術を支える新しい機械学習理論の創出を目指します。定理証明AIは機械学習と計算機科学の境界領域に現れた新しい研究分野です。数学者の直観を模倣させることで、LLMの数学的・論理的推論能力を強化する方法を研究開発します。定理証明AIに計算や推論のギャップを埋めてもらうことで、より効率的かつ創造的に数学が運用できるような未来を目指します。 現行の統計的学習理論では、計算や論理的推論、言語データの生成規則を反映する仕組みがないためLLMの推論能力をうまく説明することができません。定理証明AIの汎化誤差解析や、AIによって証明可能な定理の特徴付けを通じて、AIの設計理論や新しい情報科学・数学の創出を目指します。 |
研究者名 | ![]() 坂上 晋作(サイバーエージェント) |
職名 | リサーチサイエンティスト(AI Lab Algorithmsチーム) |
事業名 | BOOST 次世代AI人材育成プログラム (若手研究者支援) |
研究課題名 | 離散最適化と機械学習の融合の深化 |
研究課題概要 | 離散最適化は意思決定における代表的な数理モデルとして広く研究されてきました。一方で、昨今の機械学習やAIの技術の飛躍的な進歩により、現実世界の複雑なデータや予測情報を柔軟に活用することが可能になっています。こうした離散最適化の数理モデルとしての強みと、機械学習やAIによる柔軟なデータ活用の強みを掛け合わせる「離散最適化と機械学習の融合」は、両分野にまたがる重要な研究トピックとなっています。 本構想では、この融合がもたらす恩恵やそこから開かれる新たな可能性について理論的観点から探究し、その過程での知見に基づいて、今後のAI技術の適切な利活用を支えるための理論基盤の構築を目指します。 |
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