サイバーエージェントと東京大学マーケットデザインセンター、郡山市との「保育利用調整」に関する実証実験のもと、利用調整基準を変更

株式会社サイバーエージェント（本社：東京都渋谷区、代表取締役：藤田晋、東証プライム市場：証券コード4751）のAI技術の研究開発組織「AI Lab」、官公庁・自治体のDX推進支援を行う専門開発組織「GovTech開発センター」および東京大学マーケットデザインセンター（The University of Tokyo Market Design Center 以下、UTMD）は、2024年4月一斉入所より適用される福島県郡山市の保育所の利用調整基準変更について、AI Lab研究員とUTMDの研究結果にもとづく提案が採用されたことをお知らせいたします。これは、2022年9月より取り組む「保育所の利用調整基準の改善」に関する実証実験の成果の1つになります。
今回の利用調整基準の変更により、これまでよりも兄弟姉妹が同じ保育所に入所しやすくなることが見込まれ、子供が複数いる世帯の育児負担が軽減されることが期待できます。


◾️背景課題
複数の児童を保育所に預ける多子世帯にとって、複数の保育所への送迎、各園の異なる準備要件、就労時間の制約、重複する学校行事などの負担を考慮すると（※1）、兄弟姉妹を同じ保育所へ入所させることが就労との両立などの観点で課題となっています。

保育所の利用調整では、申込数に対して枠が足りない場合、「利用調整基準」に基づいて優先順位を決定し、優先順位と利用者の希望を考慮して入所保育所を決定しています。こうした中、兄弟姉妹を同じ保育所に入所させたい場合には、同一保育所に兄弟姉妹全員分の空き枠を確保する必要があることや、既に上の子が在籍している保育所を下の子も希望する場合に選択肢が制限されるため、入所が難しくなっています。このような問題を解決するためには、兄弟姉妹の入所申し込みに関する利用調整基準の見直しが有効と考えられており、神奈川県横浜市（※2）や川崎市（※3）では、既に見直しが行われています。

このたび実証を行った郡山市の利用調整基準は、これまで兄弟姉妹が同時に保育所に申し込む際の加点がなかったため、単独で申し込む場合と比べて、兄弟姉妹が同時に申し込む場合の入所率が低い状況でした。

変更される利用調整基準について

このような背景のもと、郡山市は兄弟姉妹の同時申込に対する加点等を含めた利用調整基準の変更を検討しました。
兄弟姉妹への加点を導入しながら公平な入所を実現するためには、適切な基準が必要ですが、その設定方法は必ずしも明らかではありませんでした。そのため、当社とUTMDでは望ましい基準を探るためにシミュレーションを行い、兄弟姉妹がいない場合と兄弟姉妹が同時に申し込む場合とで入所率に差があることから、どちらの申込でも入所率が均等になるような加点を検討しました。

本研究のシミュレーション詳細についてはこちらをご覧ください。

シミュレーションの結果、兄弟姉妹の入所率と単独で申し込む場合の入所率がほぼ等しくなりました。この新しい利用調整基準は、2023年11月1日から始まる2024年4月一斉入所の申込から適用されます。新しい基準により、兄弟姉妹がより入所しやすくなり、同じ保育所に通う兄弟姉妹の割合が増えることが期待できます。



◾️今後
当社とUTMDは今後も、郡山市をはじめとする自治体と共に「保育所の利用調整基準」や「利用調整アルゴリズム」に関する実証実験を継続し、住民にとってよりわかりやすい保育所利用選考に向けた改善の提案を行ってまいります。今後も各自治体固有の保育課題に対して解決を模索する実証実験を行うことで、マーケットデザインの学術的な貢献および多様な自治体の行政効率や住民の満足度向上に寄与してまいります。

本件に関する郡山市のプレスリリースはこちら
https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/69235.pdf


※1 川崎市　「保育所等の利用における多子世帯支援の拡充に向けた取組について（案）」 
 https://www.city.kawasaki.jp/templates/press/cmsfiles/contents/0000151/151828/houdou.pdf
※2 横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shisetsu/hoikuriyou/r06kijunkaisei.html
※3川崎市
https://www.city.kawasaki.jp/templates/press/450/0000154041.html