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技術

査読付き英文ジャーナル「Applied Mathematics and Computation」に論文が採択

「学際的情報科学センター」で学際的な研究開発に従事する高野雅典と、東洋大学 高史明准教授、Bosch Center for AI(当時)中里研一氏との共著論文「Dynamics of discrimination and prejudice via two types of social contagion」が応用数学の査読付き英文ジャーナル「Applied Mathematics and Computation」に採択されました。学際的情報科学センターでは、社外の研究機関と協働しながら、情報科学とその隣接領域の学術的な知見に基づき、主に当社のメディア事業における研究開発に取り組んでいます。

 

「Applied Mathematics and Computation」は、数理科学による自然・社会科学研究をテーマにした、査読付き英文ジャーナルです。この度採択された論文「Dynamics of discrimination and prejudice via two types of social contagion」では、他人の差別行動を見て「つられて差別する」「偏見を学習する(偏見を学習した結果、差別的に振る舞う)」の2つの社会的感染を仮定し、差別が急激に増える・減る現象を説明する数理モデルを構築の上、解析しました。

 

■論文の概要

背景と目的: ヘイトスピーチ・ヘイトクライムのような差別的振る舞いは、あることをきっかけとして急激に増える・減ることがあり、その状態が継続したり、すぐに元に戻ったりすることがあります。このような現象がいかなるメカニズムによって発生するのかを知ることは、差別的振る舞いを減少させる方策を考えるために重要です。 本研究では、他人の差別行動を見て「つられて差別する」と「偏見を学習する(偏見を学習した結果、差別的に振る舞う)」の差別の2種類の社会的感染に着目して、前述の現象を説明する数理モデルを構築・解析することで、現象を理解し差別を減らすためにはどのように対処すべきか考察しました。


結果: 本研究で提案した数理モデルを数理・数値解析した結果、「社会システムに双安定性があるときに、外的ショックによって平衡点間を行き来する」ことで、社会における差別頻度の急変動が説明可能であることが示されました。特に「つられて差別する」傾向が強いと、このような急変動が発生しやすくなることが分かりました。

他人の差別的振る舞いを見たときに、ついつられて差別的に振る舞いやすいような環境下では差別は急速に広がり、差別が蔓延した状態で安定していまいます。そのような環境でもそもそも差別的振る舞いが少なければ、差別は少ない状態で社会は安定するはずです。しかしそのような差別が少ない状態でも、なんらかの外部からの刺激によって一定以上の差別的振る舞いが一時的に見られることがあります(例えば差別的な態度を隠さない政治家の台頭などによって、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムが増加したことが指摘されています)。このとき、つられて差別をしやすいような環境の場合、相互に差別的行動を刺激しあって一時的な増加がそのまま社会に定着・長続きしてしまいます。このような差別的行動の拡散・抑制やその際の各個人の内的な態度(偏見)の変化、偏見を弱くする教育の影響を数理モデル化し、詳細な分析を行いました。

ここで得られた知見は社会における差別的行動や偏見の蔓延を説明し、いつ・どのように差別的行動の抑制や偏見を弱める教育をするべきかについて知見を提供します。例えば、つられて差別しづらい仕組み(SNSでヘイトスピーチを拡散しようとすると、再考を促すメッセージが表示されるなど)を作ることで、外部刺激による差別の増加を防ぐことができる可能性があります。また、差別が蔓延していない状況であっても偏見を弱くする教育を施し続けることで、外部刺激からの耐性が強い社会を維持できる可能性があることなどが示唆されました。

 


■論文

Masanori Takano, Kenichi Nakazato, Fumiaki Taka, "Dynamics of discrimination and prejudice via two types of social contagion", Applied Mathematics and Computation, Vol. 448, p.127916, 2023.

URL : https://doi.org/10.1016/j.amc.2023.127916

プレプリント:https://www.researchgate.net/publication/369182673_Dynamics_of_discrimination_and_prejudice_via_two_types_of_social_contagion

 


「学際的情報科学センター」は今後も、より安心して利用いただけるサービス運営に繋がるよう、外部の研究機関と協働し、情報科学とその隣接領域における学術的な知見に基づいた研究開発に努めてまいります。



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