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プレスリリース

AI Lab、ロボティクス分野の国際論文誌「IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)」にて2本の論文採択

ー複数のロボットの連携による販売促進効果を調査ー

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株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の宋思超・馬場惇・岡藤勇希および大阪大学大学院基礎工学研究科の波多野遥太氏・中西惇也特任助教(常勤)(採択当時)・吉川雄一郎准教授・石黒浩教授らによる論文2本がロボティクス分野の国際論文誌「IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)」※1に採択されたことをお知らせいたします。

「IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)」は2015年に新設された査読有りレター論文誌で、ロボティクスに関する革新的な研究結果や応用結果が出版されています。
なお、本研究はムーンショット型研究開発事業の研究プロジェクトの一環として、大阪大学大学院基礎工学研究科の先端知能システム(サイバーエージェント)共同研究講座※2と関西エアポート神戸株式会社の共同研究において実施されたものです。
 

■採択された2本の論文について

「AI Lab」では、2017年から大阪大学大学院基礎工学研究科と共に、ロボットなどの対話エージェントによる接客・広告技術の確立や科学的知見の獲得を目的とした共同研究に取り組んでいます。※3
特に、店舗にて商品やサービスの販売促進・利用促進を行う対話エージェントのインタラクション技術は、小売における業務効率化や生産性向上に貢献することが期待されています。
今回採択された2本の論文は、対話エージェントであるロボットを単体ではなく複数体での連携インタラクションを提案し、実証実験にてその効果を確認しました。


Wingman-Leader Recommendation: An Empirical Study on Product Recommendation Strategy Using Two Robots
著者:宋思超(サイバーエージェント AI Lab)・馬場惇(サイバーエージェント AI Lab)・岡藤勇希 (サイバーエージェント AI Lab)・中西惇也(大阪大学)吉川雄一郎(大阪大学)石黒浩(大阪大学)
本論文は、2体のロボットを店頭と店内にそれぞれ少し離して設置した上で、2体の連携の効果を調査しました。既存研究においても、推薦効果を高めるため複数体のロボットを用いることの有効性は報告されており、特に実店舗での商品推薦においては、店頭と店内にそれぞれロボットを設置することが度々行われています。こうした複数体のロボットの連携効果を理解することは、接客の現場におけるロボットの効果的な活用方法を知る意味で非常に重要です。

本論文では、店頭のロボットが店内のロボットを紹介する連携方法を提案するとともに、以下の比較条件下における推薦効果の差を実証実験によって明らかにしました。


●調査内容
下記3つの比較条件における商品推薦効果の有効性を神戸空港内の土産物店にて調査しました。
関西旅日記

<比較条件>
条件1:店内ロボットのみ(1体の店内ロボットが商品を推薦)
条件2:店頭ロボットと店内ロボット(2体のロボットが独立してそれぞれ商品を推薦)
条件3:店頭ロボットと店内ロボット(店頭ロボットが店内ロボットを紹介&店内ロボットがメインで商品を推薦)

●調査結果
調査の結果、「店頭ロボットが店内ロボットを紹介し、店内ロボットが商品を推薦する」複数ロボットの連携方法が、実店舗における推薦効果に最も寄与することを明らかにしました。
顧客からロボットに話しかける行動は信念と行動の一貫性を保つ心理から、推薦を受け入れる行動(つまり購買活動)を促進し、その結果として推薦商品、ひいては店舗全体の売上向上を実現できる可能性を示しています。


<売上への効果>
条件1では、推薦対象の商品、対象以外の商品、店舗全体の売上、全てにおいて販売促進効果は確認できなかった。
条件2では、推薦対象の商品の売上が期待値の126%に増加したが、対象以外の商品の売上が期待値の90%に低下した。その結果、店舗全体の売上に変化は確認できなかった。
条件3では、推薦対象の商品の売上が期待値の132%に増加し、対象以外の商品の売上に変化は確認できなかった。その結果、店舗全体の売上は期待値の111%に向上した。



<ロボットが顧客の行動に与えた影響>
条件3は条件2に比べて、店頭ロボットと商品について話す回数、店頭ロボットとの会話で商品に興味を示す回数が有意に低いが、店内に入店する回数が有意に高い。
条件3は条件2に比べて、店内ロボットに顧客から話しかける回数が有意に高い。

 
Field Experiments on the Effects of Multiple-Robot Expressions for Robot Influence in Recommendation Situations
著者:波多野遥太(大阪大学)・馬場惇(サイバーエージェント AI Lab)・中西惇也(大阪大学)吉川雄一郎(大阪大学)石黒浩(大阪大学)
先行研究※4においては、ロボットの影響力向上に寄与する表現を明らかにするため、
3体のロボットが対話や掛け合いを行うインタラクションを「演出」とし、下図のような様々な演出を列挙し調査しました。しかしながら、オンライン上での調査であったため実際のフィールドにおいてロボットの演出を行った際にも同じ結果が得られるかは未知でした。

そこで本論文では、1箇所に設置した3体のロボットが連携して1組の顧客に対話をすることでロボットの影響力を高めることができるかを調査しました。


具体的には先行研究の複数体ロボットの演出のうち、ロボットの影響力を高めるまたは弱める演出と、影響力に寄与しない演出の代表例をいくつか取り出し、神戸空港内の土産物店にて販売促進を行うフィールド実験を行いました。
関西旅日記


●調査結果
調査の結果、先行研究で影響力を高める演出とされた「3体全員で一つの役割を同調して演じる」演出は、実際の販売促進においても1体のロボットに比べて有意に高い購入率を出すことがわかり、先行研究の結果を支持する結果となりました。
一方で、先行研究で影響力を少し高めるとされた演出ではベースラインとの有意な差が確認されず、また、影響力を下げるとされた演出はベースラインとの有意な差が確認されませんでした。本結果は、先行研究の一部の結果がフィールド実験においても支持されることを示し、実際のフィールドでは顧客が演出に会話で関与できる状態であることが、オンラインでの調査とフィールド実験の結果の違いに現れている可能性を示しています。
 

■今後

本研究では、ロボットが店舗業務の一部を担うために、ロボットの商品推薦の効果を高める上で重要な知見を発見できたと考えています。今回発見した知見をもとに、さらなる実験を行い、店舗で接客に従事するロボットの可能性を探索してまいります。「AI Lab」は今後も、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取り組むとともに、「人とロボットが共生できる世界」を目指し、より一層ロボットを含めた対話エージェントによる接客対話技術の研究開発に努めてまいります。




※1  IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)

※2 先端知能システム(サイバーエージェント)共同研究講座                                         
2017年4月1日より発足した、サイバーエージェントAI Labと大阪大学大学院基礎工学研究科石黒浩教授との共同研究講座。人と社会において調和的に関わることができる、ロボットを含めた対話エージェントの実現に向けた基礎技術の確立及び、人の持つ対話能力に関する科学的な知見の獲得を目指しています。

※3「ムーンショット型研究開発制度

※4 Yota Hatano, Jun Baba, Junya Nakanishi, Yuichiro Yoshikawa, and Hiroshi Ishiguro. 2023. Exploring the Recommendation Expressions of Multiple Robots Towards Single-Operator-Multiple-Robots Teleoperation. In Human-Computer Interaction: Thematic Area, HCI 2023, Held as Part of the 25th HCI International Conference, HCII 2023, Copenhagen, Denmark, July 23–28, 2023, Proceedings, Part III. Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, 46–60. https://doi.org/10.1007/978-3-031-35602-5_4





【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社サイバーエージェント AI事業本部 広報
E-mail:cyberagent.ai_pub@cyberagent.co.jp