株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証一部上場:証券コード4751)は、立命館大学の岡藤勇希助教および、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の馬場惇らによる共著論文が、ロボティクス分野の国際会議「IROS 2021」(IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems)※1 に採択されたことをお知らせいたします。
「IROS」は世界中の様々な研究者が一堂に集い毎年開催される国際会議で、「ICRA」「RSS」「HRI」※2などと並び、ロボティクス分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。このたび「AI Lab」から採択された論文は、2021年9月にオンラインで開催される「IROS 2021」で発表を行います。
■研究背景
「AI Lab」では、2019年から立命館大学・大阪大学とともに、ロボットなどの対話エージェントによる接客・広告技術の確立や科学的知見の獲得を目的とした共同研究に取り組んでいます。
近年、対話ロボットよる推薦技術は、利用者の行動変容を促す手段として注目されており、店舗や施設、自宅など多くの場所で日常的な利用が進むとともに、高い効果があることが報告されています。
しかし、短期的な効果は得られる一方、長期的には「飽きること」(新奇性効果を失うこと)が課題としてあげられています。このことから、これまで対話ロボットに関する研究として一般的に行われていた、「1回の推薦・説得行動に着目した調査」に加え、「長期的に持続性のある推薦・説得行動の調査」の重要性が高まっています。
■論文の概要
このような背景のもと、今回採択された共著論文「Persuasion Strategies for Social Robot to Keep Humans Accepting Daily Different Recommendations ※3」では、対話ロボットによる説得効果を維持するための「説得戦略」を提案し、利用者が日常的に消費行動をとる状況で、長期にわたりアイテムを勧めるという実験を実施いたしました。
その結果、ロボットによる推薦の説得力を長期的に持続性させるには、「人々の意見集約」および「推薦内容に対する自信度を表現する」説得戦略が、有意な影響を与えていることが示唆さました。
●説得戦略について
長期的にロボットの説得効果を維持するためには、人の感情において「ロボットに対する受容性」を向上させることが重要です。これまでのいくつかの研究では、「ロボットが話す内容が毎日変わると、ロボットに対する受容性が高まること」※4 が報告されています。
このような傾向に着目し、今回の実験ではロボットによる推薦内容を「通常の推薦(Expert Behavior)」・「人々の意見を集約し、反映させた推薦(Local Behavior)」・「Local Behaviorに加え、推薦に対する自信の度合いを反映させた推薦(Growth Behavior)」のバリエーションを作り長期的に推薦を行うことで、ロボットに対しての受容性が向上するか、またどのような効果が出るかを調査しました。
▼実施した3つの説得戦略
ここで重要なのは、Expert Behavior と Local Behavior は行為主体性のない推薦システムにも適用できる一方、Growth Behavior は自分の内部状態(自信)を変動させそれを相手に伝えるため、行為主体性を持つ存在(対話エージェント)ならではの推薦行動になっているという点です。
■実証実験詳細
検証にあたり、2020年11月に当社オフィスのフロアが異なる3カ所に、ロボットと5種類の栄養補助スナックを2週間設置し、設置箇所ごとに異なる推薦戦略を用いて、社員に対するスナックの推薦を行いました。
また、実験直前の1週間にはスナックのみ(ロボットなし)を設置し提供することで、日常的な消費行動の再現を試みています。
主な実験結果として、下記の差異が確認できました。
▼ロボットの推薦を聞いた割合(左)/推薦されたスナックを選ぶ割合(右)の時系列グラフ
「IROS」は世界中の様々な研究者が一堂に集い毎年開催される国際会議で、「ICRA」「RSS」「HRI」※2などと並び、ロボティクス分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。このたび「AI Lab」から採択された論文は、2021年9月にオンラインで開催される「IROS 2021」で発表を行います。
■研究背景
「AI Lab」では、2019年から立命館大学・大阪大学とともに、ロボットなどの対話エージェントによる接客・広告技術の確立や科学的知見の獲得を目的とした共同研究に取り組んでいます。
近年、対話ロボットよる推薦技術は、利用者の行動変容を促す手段として注目されており、店舗や施設、自宅など多くの場所で日常的な利用が進むとともに、高い効果があることが報告されています。
しかし、短期的な効果は得られる一方、長期的には「飽きること」(新奇性効果を失うこと)が課題としてあげられています。このことから、これまで対話ロボットに関する研究として一般的に行われていた、「1回の推薦・説得行動に着目した調査」に加え、「長期的に持続性のある推薦・説得行動の調査」の重要性が高まっています。
■論文の概要
このような背景のもと、今回採択された共著論文「Persuasion Strategies for Social Robot to Keep Humans Accepting Daily Different Recommendations ※3」では、対話ロボットによる説得効果を維持するための「説得戦略」を提案し、利用者が日常的に消費行動をとる状況で、長期にわたりアイテムを勧めるという実験を実施いたしました。
その結果、ロボットによる推薦の説得力を長期的に持続性させるには、「人々の意見集約」および「推薦内容に対する自信度を表現する」説得戦略が、有意な影響を与えていることが示唆さました。
●説得戦略について
長期的にロボットの説得効果を維持するためには、人の感情において「ロボットに対する受容性」を向上させることが重要です。これまでのいくつかの研究では、「ロボットが話す内容が毎日変わると、ロボットに対する受容性が高まること」※4 が報告されています。
このような傾向に着目し、今回の実験ではロボットによる推薦内容を「通常の推薦(Expert Behavior)」・「人々の意見を集約し、反映させた推薦(Local Behavior)」・「Local Behaviorに加え、推薦に対する自信の度合いを反映させた推薦(Growth Behavior)」のバリエーションを作り長期的に推薦を行うことで、ロボットに対しての受容性が向上するか、またどのような効果が出るかを調査しました。
▼実施した3つの説得戦略
説得戦略 | 詳細 |
Expert Behavior | 商品に対する多くの知識を持った専門家として推薦を行う。ロボット推薦でよく用いられる戦略で、ベースラインとして比較する。 例:「日本では一番これが選ばれています。」 |
Local Behavior | ローカルな地域(本実験では設置されたフロア)の人々の意見を収集し、その情報に基づいて推薦を行う。 例:「このフロアの40%の人がこれを選んでいます。あなたの意見を教えて。」 |
Growth Behavior | Local Behavior に加えて、時間の経過とともに推薦に対する自信を高めていき、推薦時にその自信を表現する。推薦に対する自信度を「メタ信頼表現」と呼び、意見の集約と連動しており、より多くの意見を集約できている商品に対しては強い自信を表現する。 例:「このフロアの40%の人がこれを選んでいます。でもまだよくわからないから、あなたの意見を教えて。」 例:「このフロアの40%の人がこれを選んでいます。絶対これにすべきです。あなたの意見を教えて。」 |
ここで重要なのは、Expert Behavior と Local Behavior は行為主体性のない推薦システムにも適用できる一方、Growth Behavior は自分の内部状態(自信)を変動させそれを相手に伝えるため、行為主体性を持つ存在(対話エージェント)ならではの推薦行動になっているという点です。
■実証実験詳細
検証にあたり、2020年11月に当社オフィスのフロアが異なる3カ所に、ロボットと5種類の栄養補助スナックを2週間設置し、設置箇所ごとに異なる推薦戦略を用いて、社員に対するスナックの推薦を行いました。
また、実験直前の1週間にはスナックのみ(ロボットなし)を設置し提供することで、日常的な消費行動の再現を試みています。
主な実験結果として、下記の差異が確認できました。
■実験期間全体の傾向 <ロボットの推薦を聞いた割合> 商品選択前にロボットの推薦を聞いた割合に差があり、 Growth Behavior が最も高く、Expert Behaivor が最も低い <推薦されたスナックを選ぶ割合> ロボットに推薦されたスナックを選ぶ割合に差があり、 Growth Behaviorが最も高い ■実験期間における時系列変化 <ロボットの推薦を聞いた割合> 商品選択前にロボットの推薦を聞き続ける割合は、 全ての条件で2週間に渡って減少傾向があり、Growth Behavior が大きく減少 <推薦されたスナックを選ぶ割合> ロボットに推薦されたスナックを選び続ける割合は、 Expert BehaviorとLocal Behaviorは減少、Growth Behaviorは増加 |
▼ロボットの推薦を聞いた割合(左)/推薦されたスナックを選ぶ割合(右)の時系列グラフ
これらの実験結果から、推薦技術において「人々の意見を集約」し、さらに「推薦内容に対する自信度を表現する」組み合わせの説得戦略が、ロボットの長期的な説得力の持続性に有意な影響を与えていることを示唆しています。
■今後
本研究では、ロボットが日常的な関わりを持ち長期的に情報推薦を行っていくための重要な知見を発見できたと考えています。今回発見した知見をもとに、さらなる実験を行い、推薦効果の長期的な持続を可能にする技術を探索してまいります。「AI Lab」は今後も、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取組むとともに、「人とロボットが共生できる世界」を目指し、より一層ロボットを含めた対話エージェントによる接客対話技術の研究開発に努めてまいります。
※1「IROS」IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems
※2「ICRA」 IEEE International Conference on Robotics and Automation
「RSS」Robotics: Science and Systems
「HRI」ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction
※3 Y. Okafuji, J. Baba, J. Nakanishi, J. Amada, Y. Yoshikawa, H. Ishiguro, Persuasion strategies for social robot to keep humans accepting daily different recommendations, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, September 2021
※4 R. Gockley, A. Bruce, J. Forlizzi, Designing robots for longterm social interaction, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp. 2199-2204, 2021
■今後
本研究では、ロボットが日常的な関わりを持ち長期的に情報推薦を行っていくための重要な知見を発見できたと考えています。今回発見した知見をもとに、さらなる実験を行い、推薦効果の長期的な持続を可能にする技術を探索してまいります。「AI Lab」は今後も、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取組むとともに、「人とロボットが共生できる世界」を目指し、より一層ロボットを含めた対話エージェントによる接客対話技術の研究開発に努めてまいります。
※1「IROS」IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems
※2「ICRA」 IEEE International Conference on Robotics and Automation
「RSS」Robotics: Science and Systems
「HRI」ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction
※3 Y. Okafuji, J. Baba, J. Nakanishi, J. Amada, Y. Yoshikawa, H. Ishiguro, Persuasion strategies for social robot to keep humans accepting daily different recommendations, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, September 2021
※4 R. Gockley, A. Bruce, J. Forlizzi, Designing robots for longterm social interaction, IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp. 2199-2204, 2021