プレスリリース
AI Lab、ロボットが人の行動を促すインタラクションモデルの研究強化へ 「ドラえもんを本気でつくる」著者の大澤正彦氏と産学連携を開始 ーHAIにおける認知的不協和の解消を用いたユーザーの行動変容に関する研究ー
株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:藤田晋、東証一部上場:証券コード 4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」において、日本大学文理学部情報科学科助教の大澤正彦氏と「 HAI※1における認知的不協和の解消を用いたユーザーの行動変容」に関する共同研究を開始いたしました。
※1…HAI (Human-Agent Interaction)とは「人間」とロボット等「エージェント」のインタラクション(相互作用)を対象とした研究開発領域
■研究の背景
近年、計算能力の向上や深層学習技術の発展を背景に、コミュニケーションロボットやバーチャルエージェントなどの「対話エージェント」における対話能力は年々高まり、商業施設や宿泊施設、飲食店での接客業務において、人の代替となる労働力として対話エージェントを活用する事例が増加しています。
その中でも、対話エージェントがユーザーに何らかの行動を促す業務(通行誘導、商品販売、情報推薦など)において、ユーザーに行動を変えてもらうための説得能力が求められますが、対話エージェントがユーザーの意図を全て理解し説得を行なうことは、まだ困難です。
一方、ユーザーの行動を変化させる理論として、行動心理学や社会心理学では「認知的不協和の解消」が重要とされ、マーケティングの分野でも研究活用がされてきました。「認知的不協和の解消」とは、人は意思決定をした後に行動を起こすのではなく、自己の中に矛盾した認知・不協和が生まれた時、その辻褄を合わせようと行動や態度を決めたり変化する側面があることをいいます。
■研究詳細
このような背景のもと、AI Labではこれまでも人間の行動を促す対話エージェントの実現を目指し研究をしてまいりましたが、大澤氏とともに新たに共同研究を開始することで、「認知的不協和を解消しようとする人の特性」と、「人に対話エージェントの意図や欲求を認知させる技術」を組み合わせた、人の行動を促すインタラクションの実現に取組んでまいります。
この共同研究では、当社がこれまで実施してきた実フィールドでの実証実験結果を活かし、「人間と信頼関係を築き、人の行動を変えられるインタラクションモデル」を、幅広い産業に適用可能な汎用的技術として作り上げることを目指します。そして、HAIという研究領域の発展は、産業への大きな貢献や影響だけでなく、人々の生活を豊かにし人間の幸福度を高めることにもつながると考えております。
共同研究者となる大澤氏は、幼少期から「ドラえもんをつくる」という夢の実現を目指し、認知科学、HAI、汎用人工知能の研究に従事しています。著書に 「ドラえもんを本気でつくる(PHP新書)」があり、特に「ミニドラのようなロボットをつくるプロジェクト」では、人間にエージェントの「意図」を認知させるインタラクション設計の研究において高い評価を得ており、HAI領域の研究を今後牽引すると期待される若手研究者です。
■今後について
本共同研究は、人との信頼関係の上に成り立つ対話エージェントの情報推薦が「ローカルな特性を持つ広告媒体の実現」にも貢献すると考えております。信頼関係が成立することで、対話エージェントからの推薦がこれまでの販促活動にはなかった価値を商品に付与し、顧客体験をより向上させることが期待されています。
「AI Lab」は今後も、様々なAI分野で大学・機関と産学連携し研究を進め、より品質の高い広告技術の実現を目指し、研究・開発に努めてまいります。
▼共同研究者 プロフィール
大澤 正彦
博士(工学)。2017年日本学術振興会特別研究員(DC1)。2020年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同年より日本大学文理学部情報科学科助教。神経科学や認知科学との対応を重視した汎用人工知能に関する研究に従事。2014年IEEE Japan Chapter Young Researcher Award。2015年慶應義塾大学平成26年度表彰学生。同年ISIS Best Presentation Award。2016年人工知能学会30周年記念奨励賞。2017年神経回路学会全国大会奨励賞各受賞。人工知能学会、認知科学会、神経回路学会各会員。著書に 「ドラえもんを本気でつくる(PHP新書)」。夢はドラえもんをつくること。
日本大学文理学部情報科学科 大澤研究室 https://osawa-lab.com/
※1 HAI…Human-Agent Interaction とは「人間」と「エージェント」との「インタラクション」を対象とした研究領域。ロボットやコンピュータに限らず、人間が知能を持った主体であると認知したものを「エージェント」と定義し、その主体と人間との相互作用を取り扱う研究を中心に、幅広い関心と課題を総合的に包含している。サービスやプロダクトにおけるユーザーとの「体験設計」に欠かせない重要な知見が発見されており、近年注目を集めている。