全社のAI活用レベルを可視化して底上げする、サイバーエージェント流「AI番付」とは

技術・クリエイティブ

サイバーエージェントでは「AIの活用を競争優位性に」と掲げ、AIの活用を全社で推進すべく、様々な取り組みを通して文化醸成に注力しています。
全社一丸となって新たな領域に熱量高く取り組むカルチャーは、AI時代においても当社の大きな強みですが、本記事ではその象徴的な取り組みの一つである「AI番付」について詳しくご紹介します。

時代の変化を他人事とせず、挑戦のサイクルをより一層加速させるために

当社では、2023年10月に専門組織「AIオペレーション室」を立ち上げ、「生成AI徹底活用コンテスト」や、全社員に提供され執行役員を含む約6,200名が受講した「生成AI徹底理解リスキリング」を実施するなど、組織全体のAIリテラシーの底上げを図ってきました。
さらに2025年3月には、当社のAI技術を一挙に集結させた社内イベント「AI Fes.」を開催し、同年8月には「AIドリブン推進室」を発足するなど、サイバーエージェントの強みである変化対応力や実行力を武器に、AI活用をさらに加速させ、会社の競争力を強化しています。

このような背景のもと、技術者版あした会議「CA BASE SUMMIT 2025」にて、各部署のAI活用レベルを相撲の番付のように、格付けして可視化する「AI番付」が提案・決議されました(過去最高の“大豊作”。代表 藤田が評した、技術者版あした会議『CA BASE SUMMIT 』)。

「AI番付」実施の目的は大きく2点あります。1つ目は、各部署のAI活用状況を可視化し、当事者意識をさらに高めることです。 これまでも各部署が個別にAI活用を推進してきましたが、番付形式で客観的に可視化されることで、組織としての現在地が浮き彫りになります。活用が途上にある部署に対しても、「時代の変化を他人事とせず、挑戦のサイクルをより一層加速させなければいけない」というポジティブな意識づけを行える仕組みです。

2つ目は、全社でより一層AI活用レベルを底上げすることです。特に活用が進んでいる部署やプロダクトの成功事例をグループ全体に横展開することで、AI時代においてもリーディングカンパニーであり続けるべく、企業の競争力を高めることができます。

厳正な審議を支える、数十項目に及ぶ詳細な評価指標

「全社版」と「エンジニア版」の2軸で展開

「AI番付」は全社版とエンジニア版の2軸で同時展開しました。経営インパクトや事業価値創造といったビジネス領域での活用を主軸とした全社版だけでは、開発領域における技術的な深化や自動化の精度といった本質的な観点を十分に評価できないと考えたためです。

エンジニア版では、エンジニアリング品質や技術的成熟度を評価指標の柱としています。これにより、専門外からはブラックボックス化しやすいAI活用による技術的貢献を、公平かつ透明性高く評価できる仕組みを構築しました。

 

  全社版「AI番付」 エンジニア版「AI番付」
評価軸 サービス品質向上
経営インパクト
事業価値創造
エンジニアリング品質
技術成熟度
推進体制・技術文化
評価項目
(当記事掲載用に編集し、一部のみ記載)
全9項目
・サービス品質が向上するなど、AI活用が事業競争力に繋がっているか
・売上やコスト削減率といったPLへの直接的な影響があるか
・データが蓄積できているか
・ナレッジの資産化による属人化の排除が行えているか
全14項目
・開発、業務プロセス全体をどこまでAIで自動化しているか
・ツール導入状況とガイドラインの整備度
・AI活用の効果測定と改善の仕組み
・AI活用の目標、戦略が経営層との間でどの程度合意形成されているか
対象組織 76の組織 44の開発組織
KPI
(一部のみ記載)
品質向上のための改善案提案数や改善速度、コスト削減率など リードタイムやコード品質など
全社版「AI番付」
評価軸

サービス品質向上
経営インパクト
事業価値創造

評価項目(当記事掲載用に編集し、一部のみ記載)

全9項目
・サービス品質が向上するなど、AI活用が事業競争力に繋がっているか
・売上やコスト削減率といったPLへの直接的な影響があるか
・データが蓄積できているか
・ナレッジの資産化による属人化の排除が行えているか

対象組織

76の組織

KPI(一部のみ記載)

品質向上のための改善案提案数や改善速度、コスト削減率など

エンジニア版「AI番付」
評価軸

エンジニアリング品質
技術成熟度
推進体制・技術文化

評価項目(当記事掲載用に編集し、一部のみ記載)

全14項目
・開発、業務プロセス全体をどこまでAIで自動化しているか
・ツール導入状況とガイドラインの整備度
・AI活用の効果測定と改善の仕組み
・AI活用の目標、戦略が経営層との間でどの程度合意形成されているか

対象組織

44の開発組織

KPI(一部のみ記載)

リードタイムやコード品質など

番付による格付けと評価の仕組み

「AI番付」では、各部署における半期ごとの成果や取り組みを、相撲の番付(横綱、大関、関脇、小結、前頭、十両、幕下)になぞらえて格付けします。

 

  全社版「AI番付」 エンジニア版「AI番付」
横綱 AIが組織運営の基盤として不可分となり、AI活用を前提とした事業成果を実現している 開発プロセスがほぼ完全に自動化され、複数のAIエージェントが協調。人間はビジネス判断と戦略レベルの意思決定に専念している
大関 AI利用が浸透し、主要プロセスにAIが組み込まれていることで、包括的な成果を創出している 開発プロセス全体をAIが自動実行。人間は最初の要求定義と監督・軌道修正を担う
関脇 複数チームでAI利用が常態化し、局所的な成果も現れ始めている 開発プロセスの半分以上をAIが自律実行。人間は要所の確認・軌道修正を担う
小結 組織としてAI活用が共通言語化され、利用の導線・支援が整い、業務に組み込み始めている 開発プロセスの複数ステップをAIが連携実行。人間が各ステップで関与・判断しながら開発を進める
前頭 一部のチームでAIを試行・導入し、適切な活用方法が具体化しつつある 特定のタスク ( 機能実装、テスト作成等 ) を AI で自動化。散発的・部分的に活用している
十両 一部のメンバーで社内外の事例を参考にしながら試験的に利用している チーム全体でコード補完や AI エージェントの利用が日常化している
幕下 個人としての利用にとどまり、組織としては日常業務に取り入れられていない AI によるコード補完や AI エージェントを個人レベルで利用しているが、組織として支援・投資できていない

各基準は、当記事掲載のために編集し、一部のみ記載

全社版「AI番付」
横綱

AIが組織運営の基盤として不可分となり、AI活用を前提とした事業成果を実現している

大関

AI利用が浸透し、主要プロセスにAIが組み込まれていることで、包括的な成果を創出している

関脇

複数チームでAI利用が常態化し、局所的な成果も現れ始めている

小結

組織としてAI活用が共通言語化され、利用の導線・支援が整い、業務に組み込み始めている

前頭

一部のチームでAIを試行・導入し、適切な活用方法が具体化しつつある

十両

一部のメンバーで社内外の事例を参考にしながら試験的に利用している

幕下

個人としての利用にとどまり、組織としては日常業務に取り入れられていない

エンジニア版「AI番付」
横綱

開発プロセスがほぼ完全に自動化され、複数のAIエージェントが協調。人間はビジネス判断と戦略レベルの意思決定に専念している

大関

開発プロセス全体をAIが自動実行。人間は最初の要求定義と監督・軌道修正を担う

関脇

開発プロセスの半分以上をAIが自律実行。人間は要所の確認・軌道修正を担う

小結

開発プロセスの複数ステップをAIが連携実行。人間が各ステップで関与・判断しながら開発を進める

前頭

特定のタスク ( 機能実装、テスト作成等 ) を AI で自動化。散発的・部分的に活用している

十両

チーム全体でコード補完や AI エージェントの利用が日常化している

幕下

AI によるコード補完や AI エージェントを個人レベルで利用しているが、組織として支援・投資できていない

各基準は、当記事掲載のために編集し、一部のみ記載

エンジニア版「AI番付」における基準を例に挙げると、最高位である横綱は、開発プロセスがほぼ完全に自動化され、複数のAIエージェントが自律的に協調し、人間はビジネス判断や戦略レベルの決定に専念できている状態を指します。一方、最も低い幕下は、AI活用が個人レベルに留まり、組織としての支援・投資が不十分な状態と定義します。ただ、今回の審議において該当する組織はなく、すでに全社的に高い水準でAI活用が進んでいることが明らかとなりました。

また、事業部単位の格付けだけでなく、個別の施策に光を当てる三賞も設けました。経営インパクトに寄与した施策には殊勲賞、文化醸成に貢献した施策には敢闘賞、そしてプロンプトやエージェント設計において独創的な発明を見せた施策には技能賞をそれぞれ授与し、多角的に成果を称える仕組みを整えています。

厳正な審議を支える評価指標

審議の公平性を担保するため、各番付の運営チームによって詳細な評価指標を策定しました。

全社版「AI番付」では経営インパクトと活用推進・文化作りの2つを評価軸とし、全9項目で審議を行いました。具体的には、売上やコスト削減率といったPLへの直接的な影響から、事業のサービス価値向上につながるKPIの強化、データ蓄積・改善のサイクルであるAI活用ループを構築できているか、ナレッジの資産化による属人化の排除が行えているか、といった項目が含まれます。

一方、エンジニア版「AI番付」ではエンジニアリング品質・技術成熟度および推進体制・技術文化を軸とした全14項目で審議を実施。開発プロセスにおける人間とAIの役割分担や、経営層との戦略的な合意形成、ガイドラインの整備状況など、技術と組織文化の両面から習熟度を評価しました。

第1回「AI番付」発表に至るまで

「CA BASE SUMMIT」での決議から2ヶ月後の2025年10月、第1回「AI番付」の実施を全社員へ周知。会長 藤田は「AIを活用している会社とそうでない会社では、今後ますます差が開いていく。AI番付により、ぜひ各部署での活用レベルを底上げしてほしい」と力強く話しました。

その後、半年間の活動実績をもとに、各組織の責任者がエビデンス資料を添えて自組織のランクを自己申告しました。自己申告という形式を採用した理由は、各組織が自分たちで目指す基準を持ち、自ら宣言することで、より高い解像度で「AI番付」に向き合うことを促すためです。また、実際の評価との間にギャップがあった場合でも、その差を埋めようとする主体的な動きが期待できるという狙いもありました。
提出された申告内容は各審議委員によって厳正に審議し、2026年4月の全社総会にて最終的な番付を発表しました。

「AI番付」運営陣に聞く、全社を巻き込む熱量と今後の展望

初回にも関わらず、発表に至るまで全社で大きな盛り上がりを見せた「AI番付」。その背景には、運営側の様々な工夫と、それに応える各現場の圧倒的な熱量がありました。全社版「AI番付」運営の上野、エンジニア版「AI番付」運営の神谷に話を聞きました。

  • 上野千紘
    (株)サイバーエージェント 執行役員
    AIオペレーション室 室長

  • 神谷 優
    AIドリブン推進室 マネージャー

経営と現場を繋ぐ「納得感」のある設計

「AI番付」の真の狙いについて、上野は次のように振り返りました。「単なる格付け制度ではなく、事業責任者が組織のAI活用に責任を持ち、戦略を深く練り上げる契機にしてほしいと考えていました。番付の指標を追求すれば、必然的に組織のAI活用戦略を意識せざるを得ない設計にしています。サイバーエージェントのAI活用は、単なる工数削減で終わるものではありません。AIをいかに事業価値の向上に直結させるか。各事業責任者がその本質を考え抜くための仕掛けを、構築できたと考えています」

また、神谷は今回の取り組みにおいて「協力体制と納得感、そして信頼度」が非常に重要だったと振り返ります。
「サイバーエージェントでは、2028年までの開発プロセス完全自動化を掲げ、多角的なアプローチを通じて、AI活用を推進する企業文化の醸成に注力しています(参照:「2028年までに全社の開発プロセスを自動化する。サイバーエージェントAI活用のこれまでとこれから」)。
そこで、『AI番付』という建て付けを皮切りに、それぞれ進んでいるAI協働開発に関する取り組み全体を絡め、組織全体のエンジニアリング品質・技術成熟度を底上げしていければと考えました。どこから取り組めば良いかわからない組織に対しては、AIドリブン推進室としてサポート体制を構築。ボトムアップに開発現場の意見を拾い上げて評価軸に反映できるよう、対象となる全組織の開発責任者にも直接話を聞くようにしました」

自発的に広がった「AI番付」の盛り上がり

さらに、運営側の予想を上回るスピードで、社内では自発的な取り組みが次々と生まれたと言います。
「一部の子会社、部署では全社発表前に独自で部署内における『AI番付』を実施し、早い段階から関脇や大関を目指す動きが活発化しました。また、自発的に部署内でAI活用事例の共有会を開催するなど、文化としての浸透が急速に進んだと感じています」(神谷)

「『組織内でどれだけAIを浸透させられているか」といった評価項目を含めていたこともあってか、一部部署では自主的に『AIあした会議』を開催して新たな活用方法を検討していたほか、『AI共通テスト』と称した取り組みを実施するなど、組織を挙げた盛り上げ施策が続々と誕生していました。
また、これまではAI推進担当が孤軍奮闘していた組織でも、『AI番付』によって組織的なコミットメントが不可欠になったため、事業責任者とより一層ポジティブに対話できるようになった、という声も聞けて嬉しかったですね」(上野)

次回「AI番付」に向けて

第2回「AI番付」は、2026年10月に発表予定です。最後に、上野と神谷に今後「AI番付」が目指す先を聞きました。

「今後は事業や職種の枠を超えて、優れた活用事例を全社に共有していきます。さらに、担当事業部ごとの勉強会も並行して実施する予定です。番付の開催を重ねるごとに、社内に蓄積されたベストプラクティスをスピーディーに横展開し、組織全体のレベルを底上げしたいと考えています」(上野)

「将来的には開発プロセスそのものをAI前提に進化させていくことで、人間がより本質的な価値創造に向き合える状態をつくり、国内外にインパクトのあるプロダクトや成果を生み出し続ける開発組織を目指しています。
次の半期では、先進的な取り組みのナレッジ共有や各組織への伴走支援をさらに加速し、すべての開発組織が一段上のAI活用フェーズへ進めるよう取り組んでいきます。」(神谷)

AI時代においてもリーディングカンパニーであり続けるため、当社は今後も継続的なイノベーション創出に向けた取り組みを力強く推進します。
 

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