Cypicとサイバーエージェントが描くアニメづくりの展望―両社リーダーが語る、新体制での挑戦
2016年の設立以来、高品質なアニメーション制作を強みに、数多くのヒット作品を手掛けてきたアニメーションスタジオ・Cypic。創業10周年を機に社名を刷新し、当社の連結子会社としてメディア&IP事業へ加わりました。
2027年4月に放送開始を控えるTVアニメ『カグラバチ』をはじめ、同社の持つ表現力に、グループの事業基盤を掛け合わせることで、国内のみならずグローバル市場を見据えた作品づくりに注力しています。
制作現場が追求するクオリティと、それを支える事業側の役割。両社のリーダーが、世界へ届けるための挑戦について語り合いました。
新しい挑戦を共に面白がれるパートナー
―Cypicが新体制となりましたが、山内さんはどのような可能性を感じていますか?
山内:Cypicは、素晴らしいクリエイティブ力と急成長を遂げる機動力を兼ね備えた、業界でも独自の価値を持つ組織だと思っています。
今回の新体制は、Cygames渡邊社長との長年にわたる信頼関係と、グループ内での密な連携があって実現したものです。こうして改めて歩みを共にできることを、非常に心強く感じています。
10周年記念ムービーからも感じることですが、彼らの作品には作り手の魂が宿っていて、観る者をハッとさせる気骨があります。こうした制作への真摯な姿勢がグループ全体に伝播することで、より良質な作品を世に送り出せるようになると確信しています。
―続いて竹中さん、10周年という節目での社名変更とロゴ刷新にはどのような想いがあったのでしょうか。
竹中:世界的に認知されるアニメーションスタジオを目指し、Cypicへと社名を刷新しました。ロゴに採用したニュートラルグレーは、白と黒のみで構成される、特定の色を持たないグレーです。「何色にも染まらない核を持ち、あらゆる色を表現する会社でありたい」という想いを込めています。特定のジャンルにとらわれない制作姿勢を貫くことで、「次は一体何を仕掛けてくるのか」と、常に期待を抱かせる存在でありたいです。そうした姿勢が、様々なクリエイターを惹きつけ、常に新しい表現に挑戦し続けられる環境になると考えています。
また、無機質になりすぎないよう、ロゴデザインに「細胞分裂」のような有機的な要素も加えました。個々の成長とともに、会社も進化し続ける。会社の進化と共に、常に新しい作品を世に生み出していきたいと考えております。
山内:細胞分裂というのは、まさにCypicを象徴する言葉ですね。竹中さんはクリエイター一人ひとりの気持ちに深く寄り添いながらも、しっかりと統率もしながら経営されていますし、変化のスピードが凄まじく早い。その熱量に対して、サイバーエージェントの事業側も本気で応えていきたいと思っています。お互いの強みを生かし合うことで、作品の価値を何倍にもブーストできるはずです。
― 『アポカリプスホテル』をはじめ『光が死んだ夏』『ワールド イズ ダンシング』など、多くの共作が続いています。竹中さんから見て、サイバーエージェントの印象はいかがですか。
竹中:常に「挑戦」をさせてくれる環境ですね。今挙げたタイトルもCypicにとって新しい試みでしたが、それを一緒に面白がり、伴走していただいている。正解のない今の時代に、世界に届ける作品を同じ目線で追求できる、心強いパートナーです。
山内:変化の激しい今の環境では、新しいことへのチャレンジがどうしても必要になります。当社が何より大切にしているのは、クリエイターが最高の力を発揮できる環境を整える「クリエイティブファースト」の姿勢です。現場の挑戦を事業側がしっかり後押しし、側面から支援を尽くす。この連携によって、さらに大きな波を作っていきたいと考えています。
原作へのリスペクトを核に TVアニメ『カグラバチ』へ懸ける想い
― TVアニメ『カグラバチ』についてお聞きします。2027年4月の放送開始に向け、現在はどのような想いで作品に向き合っていますか。
山内:松竹株式会社との共同製作幹事作品として、集英社が発刊する「週刊少年ジャンプ」にて連載中の作品に携わらせていただくことになり、人気作を預かる重みを強く感じています。とにかく謙虚に、誠実に作品の魅力を追求することに尽力したい。この大きな挑戦に対し、将来的には作品の世界観を大切に守りながら、グループシナジーを生かした多角的なアプローチも模索していきます。
竹中:制作として、まず何よりも大事にしているのは原作へのリスペクトです。六平千鉱が歩む物語、そしてあの独特な世界観。映像化を待望している原作ファンは、自分たちが感じている以上に世界中に存在しています。その方々の期待を裏切らず、「最高の映像化だ」と言っていただけるアニメーションを届けることが私たちの使命です。
その上で、ファンの予想を良い意味で裏切れるとよいですね。竹内哲也監督やキャラクターデザインの佐々木啓悟(Cypic)といった信頼できる布陣とともに、一歩ずつ自分たちを信じて積み上げているところです。
山内: 竹中さんの話にあった通り、特に『カグラバチ』は連載開始時から海外の熱量が凄まじい作品ですから、その期待に謙虚に、誠実に応えたい。サイバーエージェントとしてグループのシナジーを生かしながら、クリエイティブの魅力を最も純粋な形で世界中へ広げるための「道筋」を形にしていくこと。それが、ファンと作品を結ぶ私たちの役割だと思っています。
― 2026年夏より、第1話の冒頭20分を上映するワールドツアーの開催も発表されました。海外戦略について、それぞれの視点を聞かせてください。
竹中:あえて海外市場を意識しないようにしています。市場に合わせようとするよりも、自分たちが「最高に格好いい、面白い」と信じられる映像を実直に作ること。その純粋なものづくりこそが、結果として世界の人々の心に届く一番の近道になると信じているからです。
山内:竹中さんたちがクリエイティブの純度を守り抜いてくれるからこそ、事業側は、その価値を「正しい形」で繋ぐ責任があります。ワールドツアーを皮切りに、現地の熱量をダイレクトに掴み、各国のプラットフォームとも深く連携していきたい。
この体制だからこそできる様々なサポートを通じて、世界中に驚きと感動を届けていきたいと思っています。
最高のアニメを届けるために 個々の熱量を最大化させる組織のあり方
― 続いて、組織作りについて伺います。竹中さんが設立以来大切にされてきた「ブレない軸」は何でしょうか。
竹中:スケジュールや予算などの制約の中で、最後の最後まで諦めずに「より良いもの」を作る為に考え続けることです。全力で向き合わなければ課題も明るみに出てこない。その試行錯誤の繰り返しが、結果としてより良い作品を生み出せる組織を形作っていくと思っています。
竹中:また、私は新卒スタッフに「まずは組織の中の歯車になれ」と伝えています。これは決して個性を否定する意味ではなく、プロとして、組織の中でアニメを作る責任を自覚してほしいからです。アニメーション制作は、多くのチームが連携して初めて成立する仕事です。まずはその一翼を担い、社会人としての土台を築くことが、将来的に生涯アニメで食べていくための力を身に着けることに繋がると考えています。
その自覚があった上で、個々のやりたいことを叶えられる組織にしたい。だから入社したスタッフには併せて「やりたいことをちゃんと言って」とも伝えているんです。意思表示をしておいてもらえれば、チャンスが巡ってきた時にその子の希望に沿った配慮ができるからです。主体的に作品制作に取り組めることが、プロとして仕事を続ける最大の原動力になりますから。
― 主体性を重んじる竹中さんの思想、山内さんは組織を率いる立場としてどう感じますか。
山内:自ら手を挙げる人を応援する当社のカルチャーとも共通していますね。自分がやりたいと言うからこそ、本気の熱量が宿る。
アニメ事業においては、制作物が素晴らしいことは大前提として、それに対して「熱を込めてやりきれる組織」かどうかが重要です。そういう人を集めることも、熱量を持った人たちが報われるカルチャーを作ることも大切にしたい。
当社のアニメ事業部は制作自体のみを担うわけではありません。プロデュースやプロモーションといった機能も含めて、作品作りの中心へ泥臭く入っていけるような集団にしていきたい。竹中さんが仰ったような個々の熱量が、ビジネス側の機能と制作現場で密接に噛み合うことで、初めて作品が最大化されると考えています。
― 最後に、今後の展望を教えてください。
竹中:まず一番感謝しているのは、Cypicが作るアニメーションにサイバーエージェントの皆さんが強い興味を持ってくださっていることです。「同じものを好きである」「価値観を共有し合える」というのは、ものづくりにおいて何より重要です。その信頼が『アポカリプスホテル』『ワールド イズ ダンシング』『カグラバチ』などの制作を任せていただけることにも結びついていると思っています。
今後も、お互いが面白いと思うものを一緒に形にし、世界に送り出していける関係であり続けたいです。
山内: 改めて、Cypicは気骨のあるプロフェッショナルが集まった組織だと感じています。そこで生み出されたクリエイティブを研ぎ澄ませ、最大化させ、ビジネスというアプローチで多くの方に届けたい。
同じ価値観を持つ者同士が互いの強みを生かし、挑戦を積み重ねることで、ユーザーの皆さんにこれまで以上の驚きを届けていけると確信しています。世界を揺さぶるような作品作りを、このチームでやり遂げたい。そう思っています。
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