BABEL LABEL「2045」秋葉恋監督が『東京逃避行』で刻む時代性

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コンテンツスタジオ「BABEL LABEL」が立ち上げた、次世代クリエイターを発掘・育成するための新レーベル「2045」。その第一弾作品として、24歳の新鋭 秋葉恋監督による映画『東京逃避行』が3月20日に公開されます。

本作の舞台は、青少年健全育成条例に基づき2023年12月に封鎖された、新宿・歌舞伎町の通称“トー横”のその後 。家庭や学校に居場所を失った少女たちが、それでも前に進もうとする姿を、監督自身の歌舞伎町での実体験をもとに描きます 。師であるBABEL LABEL藤井道人氏をエグゼクティブプロデューサーに迎え、徹底した現場主義で作り上げた本作の裏側と、次世代のクリエイターとしての想いを聞きました 。

消えた“トー横”を映画に残す。俳優の呼吸までもが物語になるアプローチ

―『東京逃避行』は、実際のトー横封鎖という社会的な変化を物語の起点にしています。変遷した後の街を舞台にした意図を教えてください。

ベースには19歳の時に撮った短編版がありましたが、長編化にあたってプロデューサーと「今の時代性を何で表現するか」を改めて議論しました 。1番の変化は、物理的な対策や条例によって、かつて若者たちが集まっていた場所が事実上、封鎖されてしまったことです 。ただ、場所がなくなったからといって、そこにいた少女たちの抱える問題が解決したわけではありません 。居場所を奪われた彼女たちは、今どこへ消えてしまったのか。その変遷を記録することが、今この街を撮る意味だと思ったんです 。変わりゆく街の姿を記録し、今この瞬間の空気を映画に刻むことは、映像制作者としての使命だと感じました 。

―ご自身も歌舞伎町での生活や当事者への取材を重ねたそうですね 。その実体験を映画へ昇華するために、現場ではどのような手法をとったのでしょうか。

映画的なドラマを成立させつつ、空気感はドキュメンタリーそのものにするという、繊細なバランスにこだわりました 。カメラマンにはドキュメンタリーのようなスタイルで常に被写体を追ってもらい、街のノイズや、通行人が予期せず画面を横切るような動きも、あえて排除せずそのまま取り入れています 。

俳優部に対しても「かっこよくいきましょう」といった演出指示は一切しませんでした 。台本通りに演じるのではなく、俳優がこの世界のどこかにいる誰かとして、その人生を丸ごと背負う 。そこに存在する一人ひとりの「声」に真摯に向き合うことで、ドキュメンタリーのような温度感を持つ作品を目指していました。

―主演の寺本莉緒さん、池田朱那さんをはじめ、次世代を担う俳優陣が揃いました 。現場で大切にしていたことは何でしょうか。

技術的に上手な役者がきれいに演じることよりも、その人でなければならない理由を作品の中に作りたいんです 。ですから、初めて俳優部とお会いする時に必ず「僕が書いた台本は50%だと思ってほしい。残りの50%は一緒に考えて作っていこう」と伝えています 。

現場で生まれたアドリブ、本人の喋り方の癖、その瞬間の呼吸の乱れまで、すべてをカメラに収めたい。今回、俳優部とスタッフが、お互いに信頼を積み重ねながら一つの人物像を作り上げていくプロセスを何より大切にしました 。そうして俳優部がキャラクターの人生を自分のものとして背負ってくれたからこそ、血の通ったリアリティが生まれたのだと確信しています 。  

写真左から、高橋侃(メリオ役)、池田朱那(日和役)、寺本莉緒(飛鳥役)、綱啓永(エド役)
写真左から、高橋侃(メリオ役)、池田朱那(日和役)、寺本莉緒(飛鳥役)、綱啓永(エド役)

―監督は「この映画を観た後、自分の子どもに電話をしてあげてほしい」と語っています。この言葉に込めた想いを聞かせてください。

短編を撮った19歳の頃は大人への怒りが主な原動力でしたが、長編を撮った24歳になった自分は、大人になりたくない自分と、社会の一部になりつつある自分、あるいは、いつか誰かを守る側になるかもしれない自分、その狭間で生きるようになっています。

私自身、身近な人間関係において、すぐ隣にいても自分から歩み寄って理解しようと努めない限り、その人の本当の孤独には気づけないという実感を抱いてきました。だからこそ、この映画を観て「感動した」で終わらせたくないんです。

映画館を出た後の現実世界で、自分の子どもや家族と向き合う。たった一本の電話をかける。そんな風に、観た人のその後の人生が少しだけ変わるような体験を提供したい。それが、私が映画を撮る理由そのものだと思っています。  

「2045」という場所。藤井道人氏から受け継いだ“プロの責任”

―本作のエグゼクティブプロデューサーであり、師と仰ぐ藤井道人監督からは、どのような影響を受けましたか?

藤井さんは私が10代の頃から知ってくださっていますが、今回は私の長編デビューという挑戦を面白がって、そして、見守ってくれる安心感がありました 。脚本の打ち合わせでも、藤井さんが一番楽しそうにアイデアを出してくださって。

「インディーズなら誰か一人の心に深く刺さればそれでいいかもしれない。けれど、商業映画はより多くの観客を導くためのガイドラインを丁寧に作らなければならない」 。藤井監督から教わったのは、単に技術的なことではなく、プロとしての責任感です。「自分自身の言葉でちゃんと伝えなきゃだめだ」と、私自身の作家性を守りつつも、それをプロのクオリティに昇華させるための道筋を示してくれました 。  

    監督・脚本 秋葉恋   2001年生まれ 東京都出身。7歳より映画製作を始め、「残されたもの、残せるもの、」では高校生映画甲子園にて最優秀監督賞を受賞。監督・主演を務めた「RINGO-林檎-」では横濱インデペンデントフィルムフェスティバルにてU22部門最優秀賞受賞。2024年「東京逃避行」で東京インディペンデント映画祭グランプリを受賞し、BABEL LABELの新レーベル2045に所属。
監督・脚本 秋葉恋
2001年生まれ 東京都出身。7歳より映画製作を始め、「残されたもの、残せるもの、」では高校生映画甲子園にて最優秀監督賞を受賞。監督・主演を務めた「RINGO-林檎-」では横濱インデペンデントフィルムフェスティバルにてU22部門最優秀賞受賞。2024年「東京逃避行」で東京インディペンデント映画祭グランプリを受賞し、BABEL LABELの新レーベル2045に所属。

―BABEL LABELの新レーベル「2045」に所属することへの想いを聞かせてください 。

この恵まれた制作環境にいられることは、クリエイターとして本当にありがたいことです 。ただ、それは同時に、プロとしての責任を背負うことでもあります。

BABEL LABELの先輩たちが世界を舞台に素晴らしい作品を作っている中で、私たち次世代がただ同じことをしていても意味がありません。「2045」だからこそできる、自分たちにしか撮れない表現を見つけなければならないと思っています 。

私たちが目指すのは、誰にも伝わらないと思われていた極めて個人的な物語が、結果的に多くの人の心を震わせるような作品作りです 。既存の枠組みに捉われないエネルギーを、組織の力を使ってしっかりと届けていく。そのチャンスをもらっていると強く感じています 。

―最後に、秋葉監督が映画を通じて届けていきたいことを教えてください。

私はもともと、スクリーンの中に入りたくて映画を始めた人間です。6歳の頃、映画館の椅子に座って圧倒された、あの頃の自分のような子どもたちの世代に、新しい体験を届けてあげたい。今はスマートフォンで手軽に映像を消費できる時代ですが、あえて映画館という場所で、日常生活が書き換えられてしまうような「没入体験」をこれからも作っていきたいんです。

かつて、2000年代初期の日本映画には世界を驚かせるような自由なエネルギーが満ちていました。今は、海外で評価される作品の傾向を、観客の方が予測できてしまうような一種の閉塞感がある。それが一人の映画人として堪らなく悔しいんです。 だからこそ「2045」の秋葉恋として、先輩たちが「チャレンジしろ」と背中を押してくれている今、誰も見たことがない新しい景色を自分たちの手で切り拓いていきたいですね。
 

■お知らせ 
コミカライズ『東京逃避行』の連載がスタート

映画の公開に合わせ、秋田書店「チャンピオンBUZZ」にてコミカライズ『東京逃避行』の連載が開始いたしました。
媒体: 秋田書店「チャンピオンBUZZ」
スケジュール: 3月5日(木)より連載開始(毎月第1木曜日、電子のみ掲載、全6話)
その他WEB配信: 秋田書店の総合電子コミックサイト 「チャンピオンクロス」(無料)においても3月13日(金)より1話が配信開始しています。
 

■作品情報
監督・脚本:秋葉恋
出演:寺本莉緒、池田朱那、綱啓永、高橋侃
エグゼクティブプロデューサー:藤井道人
製作:映画「東京逃避行」製作委員会(サイバーエージェント、ABEMA、ライツキューブ)
製作幹事:株式会社サイバーエージェント
配給:ライツキューブ
制作プロダクション:BABEL LABEL
©2025 映画「東京逃避行」製作委員会
公開:3月20日(金)全国公開
オフィシャル X
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