「使われないDX」に終止符を。患者が迷わない『空気を読む』AI接客OS「Escort AI」の真価

サービス

―AI Lab×MG-DXが挑む、10年の研究知見を社会実装した薬局オペレーションの最適解―

「セルフ受付機を導入したのに、結局スタッフが呼ばれて調剤の手が止まってしまう」――。
多くの薬局が直面するこの「DXの形骸化」という課題に、エンジニアと研究者が無人受付完了率95%という現場での圧倒的な「結果」で答えを出しました。

株式会社MG-DXが展開する薬局特化型プロダクト「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」。その接客を司る“頭脳”として搭載されたのが、AI Labと共同開発した「Escort AI」です。

大阪大学・石黒研究室との10年に及ぶ共同研究で培った「人の内的状態を捉える」高度な知見を、一分一秒を争う現場のオペレーションへと徹底的に最適化。その結果、既存のAIでは到達し得なかった高水準な成果によって、スムーズな店舗運営を実現しています。

世界最高峰の知見を、いかにして「現場で本当に使い物になる技術」へと昇華させたのか。事業・研究・実装をリードする3名のキーマンが、CAだからこそ成し遂げられた現場の変革と、テクノロジーが拓く未来について語ります。

Profile

  • 西 康太郎(にし こうたろう)
    株式会社サイバーエージェント/株式会社MG-DX 「遠隔接客AIアシスタント」開発責任者
    薬局向けDX/AXプロダクトの開発責任者として、実装内容や仕様の最終品質を担保する。薬局現場のオペレーションや事業課題を深く理解し、エンジニア視点でAI Labの技術をプロダクトへ統合する指揮を執る。

  • 馬場 惇(ばば じゅん)
    株式会社サイバーエージェント/AI Lab Interactive Agent Agent Development
    2017年から現在まで、AI Lab Interactive Agentグループの主任研究員として、大阪大学大学院基礎工学研究科との先端知能システム共同研究講座の運営責任者を務める。対話システムの社会実装を目指し、人とエージェントのインタラクションの研究に従事。本プロジェクトでは機能提案や実証実験の設計を担当。

  • 兵頭 亮哉(ひょうどう かつや)
    株式会社サイバーエージェント/AI Lab Interactive Agent Agent Development
    AI Labにて、リサーチエンジニアとして対話エージェントの実装や新機能開発を担当し、研究開発の成果を実際のプロダクトへの落とし込みを担う。2023年にMLモデルチューニング・エッジAI分野のDeveloper Experts選出。本プロジェクトでは、現場でのフィードバックを即座に機能へ反映させる役割を果たす。

「期待した効果」と「現場の実感」のギャップ。薬局の受付に潜む特有の複雑さ

― セルフ受付機を導入しても、期待したほどの効果が得られないという声を耳にします。やはり、薬局ならではの難しさがあるのでしょうか?

西: 薬局の受付は、飲食店などのセルフオーダーと比較しても工程が非常に複雑です。マイナ保険証、処方せん、お薬手帳の確認……。これらを「あちらの機械で」「こちらのタブレットで」と案内するだけで、患者さんは混乱してしまいます。

何より、来局される方は体調が優れず、思考すること自体が負担な状態です。単にセルフ受付機を置くだけでは、操作に迷った瞬間にスタッフを呼んでしまい、結局現場の工数は減りません。 
この「案内の隙間」をAIが先回りして埋めることで、薬剤師は調剤や服薬指導といった本来の専門業務に、薬局スタッフは調剤サポートなどに集中できる環境を作れるのではないか、と考えました。
 

単なる省人化ではない。現場に求められるのは「止まらないインフラ」としての品質

西:AI受付の機能において、現場の方々がわずかでも「こうなったらいいのに」と感じるポイントがあれば、その都度お二人に現場のリアルなフィードバックを伝え続けました。特に、受付に気づけない方や、受付の途中で離れてしまう方をゼロに近づける。こうした現場の「取りこぼし」をなくすことが、インフラとしての信頼、ひいては高い無人受付完了率に繋がると確信していたからです。

馬場: これまで研究で実施していた実証実験は「道案内」のような付加価値サービスが中心でしたが、薬局の受付は、システムが止まれば患者さんが困り、店舗の売上にも直結する「失敗できない業務」です。そのため、最低限タッチパネルで全て完結できる堅牢性を確保した上で、付加価値としての接客を入れていく必要があり、単なる「便利な機械」ではなく、「止まることが許されないインフラ」としての品質を求められました。

兵頭:リサーチエンジニアとして、研究上の理想的な環境と、ノイズや予期せぬ動きが溢れる実際の現場をどう両立させるかには、大きな挑戦がありました。
どんな環境でもAIが「今、誰をサポートすべきか」を一瞬で見極める。その精度を極限まで磨き上げました。現場での反応のわずかなズレを一つひとつ丁寧に拾い上げ、原因を突き止めては、現場の感覚に合うまで地道に調整を繰り返す。この些細な違和感をも逃さない執念こそが、私たちの強みだと思っています。
 

「迷い」を捉えて受付完了率95%へ。Escort AIが現場で示す“判断の精度”

 ― サービス提供当初は70~80%だった無人受付完了率が、現在は95%という非常に高い水準まで伸長しています。この飛躍を可能にした要因は何だったのでしょうか。その鍵を握る「Escort AI」の中身について詳しく聞かせてください。

馬場: 一般的な受付機が「動いたものに一律で声をかける」のに対し、Escort AIは患者さんの視線や動きから「今、サポートが必要だ」というタイミングを判断します。この「空気を読むような「接客の知能」こそが、Escort AIの正体です。

この精度を支えているのは、私たちが約10年の研究活動を通じて発見してきた「ユーザーの目的が最も切実な瞬間に関与することが重要」という知見です。
初めてAI受付を利用する方は、多くの理解すべきことを抱えています。だからこそ「入店して受付を探すまさにその瞬間」や、「操作の途中なのに終わったと思って離れようとするその瞬間」を逃さずサポートすることが非常に重要なんです。適切なタイミングでAIが寄り添うことで、相手が機械であっても人は信頼を預けてくれるようになります。

 

 西: その「接客の知能」を実際の機能に落とし込み、受付完了率を大きく引き上げた理由のひとつが、私が開発責任者として最もこだわった「離脱防止機能」です。操作の途中で受付機から離れそうになった人に対し、AIが「受付手続きが途中ですよ」と瞬時に判断してリマインドを行います。
カメラ映像から得られる人物の位置関係や向きなどの情報を組み合わせ、「操作者が誰か」を特定し、離れそうになった「その瞬間」を逃さず声をかける。カメラ等のセンサー活用は、あくまでこの「操作中のつまづきを減らす目的」に限定し、プライバシーにも配慮した設計を行いました。その結果、無人受付完了率は95%※2へと向上しました。

※2 調査期間:Escort AI搭載前の2026/01/09-2026/02/08(17日間)と搭載後2026/02/11-2026/03/05(17日間)の比較 MG-DX調べ

例えば月に3,000枚の処方箋を受け付けるような店舗では、完了率が80%から95%に向上することで、月間で450回以上発生していたスタッフの呼び出しを未然に防げる可能性が生まれます。
もちろん、私たちはこの95%という数字に満足しているわけではありません。現場のリアルな反応を定量・定性の両面で計測し、即座に開発の意思決定に繋げる。ここの5%という隙間を埋めるための飽くなき追求こそが、Escort AIの精度を支えるコアとなっています。

兵頭: 実はこの知能を現場で動かすのは、技術的に非常に難易度が高いんです。私たちは「エッジAI」という技術を駆使し、現場の端末内で判断を完結させました。これにより、通信の待ち時間がない「サクサクとした反応」を実現しています。人が寄り添うような自然な接客には、コンマ数秒の遅れすら許されないからです。

西: さらに、薬剤師さんと患者さんがすでにお話しされている時は、AIがあえて「黙る」制御も取り入れています。「迷っているまさにその瞬間」を逃さずサポートする一方で、不要な場面ではそっと見守る。この空気を読むような的確なアプローチが「ちゃんと分かってくれている」という信頼感につながり、高い受付完了率に表れたのだと思います。
 

薬剤師がその専門性を最大限に発揮できる「スマート薬局」へ。人が人らしくあるための技術

― 今後、Escort AIによって薬局の業務はどう変化していくのでしょうか?

西: すでに、受付から服薬指導までをAIと遠隔で完結させるフローは提供していますが、例えば薬の調剤状況・薬剤師の服薬指導準備状況などを踏まえて「服薬指導を行いますので〇〇ブースへお越しください」といった状況に応じた細やかな案内までをシームレスに連結させていく計画です。患者さんへの案内をAIが徹底的に支えることで、薬局で働く方々がその専門性を最大限に発揮できる「スマート薬局」の実現が、私たちの掲げる大きな目標です。

馬場: 目指しているのは、薬剤師が一次対応に追われることなく、患者さん一人ひとりの健康や体験と向き合う本質的な業務に100%集中できる環境の実現です。
それに向けて無人受付から薬の受け渡し、会計までを一元管理し、人的リソースを最小限の事務負担で最適化する店舗運営ソリューションの展開も視野に入れ、関連技術を特許出願中です。
薬剤師の専門的判断や対人対応が必要な場面においては、人の関与を前提とした設計になっています。


― 最後に、AIが普及することで、人間にしかできない「おもてなし」はどう変わっていくと思いますか?

西: AIのアシストによって、人が本来やるべき対人・対物業務に注力できるようになれば、人間同士の接客がより尊く、ありがたいものになっていくと思います。

兵頭:その場に来た方々が「スタッフに何をしてもらえると嬉しいか」を先回りして思いやれる、「共感性」の部分こそが人間特有の「おもてなし」になると思います。
AIがターゲット制御などの技術によって現場の「空気」を整え、定型的な案内を引き受ける。そうして生まれた心の余裕が、人間ならではの深い共感や思いやりへと還元されていく。そんな、技術が人の優しさを引き出すような未来をデザインしていきたいですね。

馬場: 定型業務が自動化される一方で、人間の気持ちを理解して薬局体験のクオリティを上げたり、調剤の意思決定に対する責任を取る仕事は人間にしかできません。「体験クオリティマネージャー」や「店舗責任者」のような立ち位置へと、人間の役割はより高度な方向へシフトしていくでしょう。

馬場: さらにその先にある「おもてなし」の形として、現在、顔認証技術を活用した接客のアップデートも進めています。これまでの『空気を読む』サポートに加えて、顔認証によって人に合わせて受付の工程自体をさらにショートカットする世界を目指しています。

西: 具体的には、事前に薬急便アプリで顔登録を済ませておけば、端末の前に立って「はじめる」ボタンを押すだけで受付が完了する仕組みです。現状のタッチパネル操作でも95%の方がスムーズに完結できていますが、その工程を「ボタン一つ」にまで極限まで削ぎ落とす。ただそこに立つだけで、いつもの薬局が自分を迎え入れてくれるという体験は、究極のストレスフリーをもたらします。もちろん、万が一の検知ミスに備えたリスク対策など、安全性の担保とセットで実装を進めることが大前提です。

兵頭:患者さんの「早く受付を終わらせたい」という感情に寄り添い、高度なテクノロジーで実現する。これこそが私たちの考える、次世代のおもてなしの姿のひとつです。

西: 私たちはこれからも、最先端の研究を「現場で実益を生み出す本物の技術」に変え続けます。
忙しい薬局関係者の個々人が、長く健やかに活躍し続けられるように技術の側面からも支えていきたい。このEscort AIの機能によって、全国の薬局が抱える人手不足という難題を、共に解決していければ嬉しいです。
 

薬局関係者の皆様へ

本記事でご紹介した「薬急便 遠隔接客AIアシスタント(薬局受付AIエージェント)」のより詳しい機能や、デモ実演のご要望はこちらからお問い合わせください。

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