AI時代に「自ら考え、価値を生み出す」エンジニアを育てる
26新卒エンジニア研修の全容と次世代への期待
サイバーエージェントでは、新卒エンジニアの早期活躍を後押しするため、時代に合わせ実践的な技術研修をアップデートしています。生成AIの活用が当たり前になりつつある今、エンジニアに求められる力はどのように変化しているのでしょうか。
本記事では、26新卒エンジニア67名が参加した約1ヶ月の「エンジニア研修」に密着。全体責任者を務めた上野貴史に研修テーマの背景、現場社員による講義、CHOによるワークショップの意図、実践的なチーム開発の裏側、そして次世代を担う新卒エンジニアたちへの期待について話を聞きました。
Profile
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上野貴史
2015年10月に中途入社。AI事業本部(旧アドテクスタジオ)を経て、2022年2月に技術人事室へ異動。ML/DS(機械学習・データサイエンス)領域の新卒採用や、社内キャリアエージェント業務に従事。現在は若手エンジニア育成を主軸とし、新卒エンジニア研修の全体責任者を務めるほか、次世代を担うエンジニアのキャリア形成や組織の成長支援まで幅広く取り組んでいる。
AI時代だからこそ問われる「人間ならでは」の力と、新たな研修テーマ
── 2026年度の新卒エンジニア研修において、全体としてどのようなテーマを掲げられたのでしょうか。
AIがこれだけ普及した今、エンジニアにとってAIを使いこなすことはもはや「前提」であり、それ自体で差別化することは難しくなっています。その上で、サイバーエージェントのエンジニアとしてさらに独自の深み、つまり「味付け」を加えてほしいという願いを込めました。今回の研修では、AI時代に求められるエンジニア像を明確にするため、「味付け(あ・じ・つ・け)」という覚えやすいキーワードで4つのテーマを掲げました。
- 「あ」 AI活用は当たり前に:AIによって実装時間を短縮し、より高度な領域へ注力する。
- 「じ」 自分視点から全社視点へ:個人の成長を事業や組織への貢献と重ね合わせる意識への転換。
- 「つ」 常に求められるソフトスキルの向上:技術力に加え、信頼関係を築く力や判断力の強化。
- 「け」 決定判断したものには責任を持つ:目的を言語化・整理し、それに基づいて自らの意思で決断する責任感。
これらをテーマとして設定した背景には、昨今のAI技術の台頭があります。26新卒は「AIネイティブ世代」とも言える層であり、入社前からAIを高いレベルで使いこなしているメンバーも少なくありません。一方で、AIに頼りすぎてしまうことによる「思考の停止」や、自分の意思が伴わないままAIの出力を鵜呑みにしてしまうリスクも懸念していました。
AIを活用することで実装や作業時間は大幅に短縮できますが、だからこそ「何を作るべきか」という上流工程での「企画力」や「プロダクトの品質を担保する判断力」がより強く求められるようになります。AIを使いこなしつつも、自身の思考に基づいたプロダクト視点を養ってほしいという意図をこのテーマに込めています。
技術だけではない。組織理解や全社視点を育む取り組み
── テーマの浸透に向けて、今回の研修はどのような構成だったのでしょうか。
データベースやセキュリティ、AWS、そしてAI活用といった、エンジニアとして基礎知識を身につけるインプット形式の研修に加え、テーマの中の「全社視点」を促すため、これまでにはなかったコンテンツを複数導入しました。
中でも大きな反響を呼んだのは、当社社員による講義です。各事業領域を牽引するCTOや現場の技術責任者陣の5名が、リレー形式で行った講義では「エンジニアとしてのマインドセット」や「求めるエンジニア像」を直接語ってもらいました。また、先輩社員2名からは、実体験を通して当社のカルチャーである「挑戦と応援」や「会社を楽しもう」という姿勢を伝えてもらいました。
これらの講義は、新卒メンバーの心に深く響き、研修後のアンケートでも非常に高い評価を得ています。配属される部署だけでなく、サイバーエージェントという会社全体への理解を深め、自分が組織にどのように貢献していけるのかを考える貴重な機会になったと感じています。
また、常務執行役員 CHO 曽山による、目標設計の「P&Pワークショップ」も新卒研修では初めて実施しました。1つ目のPは「個人のP:Passion(パッション)」です。情熱や楽しさなど、個人の感情がプラスになる自分軸の要素。そして2つ目のPは「組織のP:Purpose(パーパス)」です。業績や貢献など、チームへの貢献につながる組織軸の要素を指します。それらを重ね合わせる重要性について学んでもらいました。個人の自己成長にとどまる「自分視点」から、組織や事業の成長に貢献する「全社視点」へ視座を高めるための重要なステップになったと考えています。
チーム開発研修を通じた「判断への責任」と「信頼し合えるチーム」の構築
── チーム開発研修では、全体を通してどのような点に重点を置かれたのでしょうか。
大きく分けて、「事業やプロダクトに対する判断の責任」と、「ソフトスキルの向上」の2軸に重点を置きました。単に開発するだけでなく、ビジネス視点で「なぜ作るのか」を問うハードな面と、互いをリスペクトし合える強いチームを作るソフトな面、その両方を体得してもらう設計にしています。
具体的な「決定・判断への責任」の取り組みとしては、実装に入る前の企画・設計段階で、現場のエンジニア責任者や役員から直接フィードバックをもらう機会を設けました。「なぜこのチームで作るのか」「誰のどんな課題を解決し、どのような価値を提供するのか」を言語化し、フォーマットに落とし込んでプレゼンテーションしてもらいました。時に厳しい指摘を受けることもありましたが、ビジネス視点やプロダクト視点を養う上では欠かせないプロセスです。
各チームには先輩社員2名が「チームメンター」として伴走し、開発の進め方の相談に乗ったり、技術的なサポートやコンディションの把握を行ったりと、新卒メンバーが安心して挑戦できるフォロー体制もしっかりと整えました。
また、AIを積極的に活用したことで、例年に比べて実装時間を短縮でき、その分を企画の解像度を上げる作業やプレゼンテーション資料の作成、発表の工夫、さらにはコンセプトムービーの制作などに充てることができたチームもありました。アウトプットのクオリティが全体的に大きく底上げされたのは、まさにAIを単なる「実装を代替する道具」ではなく「より高みを目指すための武器」として使うことが出来た成果だと言えます。
「ソフトスキルの向上」については、「他者との関わり方」や「コミュニケーションにおける振る舞いの質」に重きを置き、複数人で物事を進める上で重要である「信頼し合えるチームの構築」についてしっかりと向き合いました。
お互いに遠慮して本質的な課題に踏み込めないチームでもなく、正論だけをぶつけあい関係性が損なわれるチームでもない。お互いの人格を尊重しながら耳の痛い指摘もフラットに行い、全力でフォローし合えるのが理想のチームです。この理想状態を実現するため、運営側からは「日報の活用」「称賛の場を設ける」「指摘の際の工夫を取り入れる」というポイントを提示し、具体的なやり方は各チームに設計・運用してもらいました。
さらに、予測困難な開発課題に対応するためのロードマップ設計の手法も導入しました。タスクを「既知:すでにわかっているもの」「既知の未知:調べないと分からないもの」「未知の未知:何を調べたらいいかも分からないもの」に分類・整理することで、計画的かつ着実にプロジェクトを進めるスキルを身につけてもらいました。
次世代を担う26新卒エンジニアへのメッセージ
── 配属先で新たなスタートを切る26新卒エンジニアに向けてメッセージをお願いします。
皆、技術的にも非常に優秀ですし、AIという強力な武器を自然に活用できる可能性を持った素晴らしい世代です。配属後も、自分の成長を、サイバーエージェントという組織の成長や、プロダクト・サービスを通じてユーザーに届ける価値へと重ね合わせ、大きな挑戦を楽しんでほしいと願っています。
これから現場で様々な壁にぶつかることもあるかと思いますが、研修で学んだソフトスキルや開発設計の考え方など「社会人としての土台」、「自ら考え、判断し、責任を持つ姿勢」、自身の成長を組織への貢献に繋げる「全社視点」を忘れないでください。そして、困難に直面し困ったときには、私を含め、研修に関わった社員やメンター、人事の存在を思い出して頼ってほしいと思います。いつでも皆さんの力になれる存在でありたいと思っていますし、今後のさらなる飛躍を心から楽しみにしています。
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ABEMAには今年、44名の新入社員が配属されました。社会人1年目からAIツールを業務に活用することが前提となる、いわば「AIネイティブ」ともいえる世代を迎えるにあたり、メディア事業の現場に特化したスキルアップ研修「ABEMAでAIと働く」を開催しました。
ABEMAが今年の新卒に届けたのは「ツールの使い方」ではなく、「ABEMAの一員として、どうAIと向き合うか」という問いでした。AIが業務の前提となっている組織だからこそ、全員のリテラシーが揃っていることが事業の信頼と競争力に直結します。本記事では、その背景にあるAIリテラシーやセキュリティの考え方をお伝えします。