AI Labの最先端技術を応用、「お客様のフローにAIを合わせる」オーダーメイド型の変革。「AIクリエイティブBPO」の真価
「ロゴの位置を3mmずらして」「キャンペーンの価格だけ全店舗分差し替えて」——。
生成AIによるクリエイティブ制作の自動化が進む中、企業の制作現場でいまだにAI導入のボトルネックとなっているのが「紙のDM」や「チラシ」といったオフライン領域です。
画像生成AIだけでは解決できない、DTP(※)特有の複雑な制約や厳密なブランドルール。この「アナログな修正地獄」と「属人化」によるコスト増大・納期遅延という巨大な壁を打破するため、サイバーエージェントの「AIクリエイティブBPO事業部」と最先端の研究組織「AI Lab」がタッグを組みました。
「既存の技術で解決できないなら、自社で作ればいい」
現場のリアルな課題からわずか2ヶ月で誕生した自社開発AI『Illustrator Agent』は、職人による微細な調整とAIの圧倒的なスピードを融合させ、紙媒体の制作フローを根本から変革します。本記事では、開発キーマンへのインタビューを通じ、この技術が企業にもたらす「コスト削減・リードタイム短縮」の真価と、AIを活用した新しいAIクリエイティブBPOの形に迫ります。
(※)DTP(Desktop Publishing): パソコン上で印刷物のレイアウト設計を行い、原稿作成から編集、デザインまでを完結させること。ミリ単位の配置指定や印刷用の特殊なデータ構造など、独自の専門技能が求められる。
目次
取り残された「紙」の領域。画像生成AIだけでは超えられない壁
Adobe Illustratorの中に「AI」が住む。常識破りのエージェント機能
取り残された「紙」の領域。画像生成AIだけでは超えられない壁
―昨今、生成AIによるクリエイティブ革命が叫ばれていますが、今回あえて「紙DM」や「チラシ」といったオフライン領域に着目した背景から教えてください。
簑田 咲(以下、簑田):
AIと人の協働により、企業のクリエイティブ制作体制を改革するAIクリエイティブBPO事業は、抜本的な効率化と変革に挑んできました。
AIクリエイティブBPO事業で制作現場に入り込むほど、Web広告のバナー制作においては、今の生成AIを使えばかなりのレベルまで自動化・AI制作が可能なことが分かった一方で、「紙」の領域だけがAI導入からぽっかりと取り残されている現実に直面しました。
特に歴史の長い大手企業様などにとって、紙のDMやチラシは今なお強力な販促チャネルです。しかし、その制作工程は驚くほどアナログ。デザイナーがAdobe Illustratorを開き、手作業でレイアウトを組み、一文字ずつ修正を行う。この工数が、コストとスピードを圧迫しているのです。
― なぜ、nanobananaのような画像生成AIでは代替できないのでしょうか?
簑田:
最大の理由は「修正の可逆性」と「ルールの厳格さ」です。
画像生成AIが出力するのは、あくまで「一枚の絵(ピクセルデータ)」です。しかし、企業のDTP制作物は「ロゴは右上で3mm空ける」「注釈はこのフォントで」「色は指定のCMYK値で」といった、極めて厳密なレギュレーションの集合体です。
生成された画像に対して部分的な修正を加えることは可能ですが、レギュレーションに準拠した正確な編集作業には対応できません。これでは実務には使えません。
(写真左)2013年サイバーエージェント入社。広告事業部門にてSEMの営業・運用コンサルを行う部署を局長・副統括として牽引。2025年より「AIクリエイティブBPO事業部」の事業部長に就任し、AIを活用した新しい制作体制の立ち上げを主導する。
(写真右)BPO事業におけるクリエイティブ領域を担当。顧客課題に対し、AI技術と人的リソースを最適に組み合わせた制作フローの構築・提案を行う。現場視点でのAI実装推進役。
箸尾 拓哉(以下、箸尾):
現場の視点で補足すると、DTP特有の「ベクターデータ」の壁ですね。印刷物は拡大縮小しても劣化しない数式データで作る必要がありますが、一般的な生成AIはこれに対応していません。「既存のAIツールを入れるだけでは無理だ」という結論に至るまで、そう時間はかかりませんでした。
― そこで、社内の研究組織である「AI Lab」と連携することになったのですね。
山口 光太(以下、山口):
はい。実は私たちAI Labとしても、画像生成の「次」を模索していたタイミングでした。ピクセルではなく、編集可能なベクターベースでデザインを操作する技術はずっと研究していましたが、昨年秋頃からコーディングAIが飛躍的に進化したのです。
これを使えば、人の操作をAIが代行する仕組みが作れるのではないか。AIクリエイティブBPO事業部が抱える「紙の課題」と、我々AI Labの「技術の種」が、パズルのピースのように合致した瞬間でした。
Adobe Illustratorの中に「AI」が住む。常識破りのエージェント機能
― そうして開発されたのが『Illustrator Agent』ですね。具体的にどのようなツールなのでしょうか。
鈴木 智之(以下、鈴木):
一言で表現するなら、「Adobe Illustratorの中に、AIのアシスタントが常駐している」状態です。
従来、デザイナーはマウスとキーボードを使い、ショートカットキーを駆使して作業を行っていました。しかし、このエージェントを使えば、チャット欄にテキストで指示を出すだけで作業が完結します。「このテキストを変更して」「レイアウトを右に寄せて」「背景色をキャンペーンカラーの赤に変えて」――そう入力すれば、AIがIllustratorの内部機能を自動で操作し、瞬時に実行してくれます。
(写真左)東北大学助教などを経て2017年入社、2022年より主席研究員。クリエイティブ制作のためのAI研究に取り組みつつ、研究組織AI Labの黎明期から全体の研究開発活動をリード。
(写真右)2020年中途入社。入社以来、クリエイティブ制作のための動画・画像の解析の研究・応用に従事。本プロジェクトの主担当を務める。
― まるで熟練のオペレーターに横から指示を出しているような感覚ですね。
鈴木:
その通りです。技術的なポイントは、Adobeのツール内で「編集操作そのもの」を自動で行う点にあります。GoogleスライドなどでAIが補助する機能はありますが、プロ仕様のIllustratorの中で、しかも複雑なレイヤー構造やベクターデータを維持したまま対話形式で修正できるツールは、世界的にも稀有な存在です。
箸尾:
このツールの真価は、単に操作が楽になること以上に、「スキルセットの解放」にあります。Illustratorは多機能ゆえに習得が難しく、これまでは専門のデザイナーしか触れませんでした。しかしエージェントがいれば、デザイン知識のないビジネス職や、経験の浅いオペレーターでも、チャット指示だけで修正作業が可能になります。
簑田:
実際に私も触ってみましたが、Illustrator素人の私でもDMの修正作業を完遂できたときは感動しましたね(笑)
これにより、当社グループ会社のインターネット広告の専門運用会社であるCA アドバンス ベトナム拠点のメンバーなども、言語の壁やツールの習熟度を超えてデザイン制作ができるようになり、高品質なオペレーション体制が組めると確信しました。
すでに導入をしていますが、デザイナーの手を止めることなく、Illustrator Agentがその場で修正を完遂できる体制が整いつつあり、制作フロー全体のコスト削減・作業時間の短縮が進んでいます。
既存ツールの限界を「自社開発」で超える。開発期間2ヶ月を実現した両チームの共鳴
― 驚くべきは、このツールをわずか2ヶ月でプロトタイプまで完成させたというスピード感です。なぜこれほど短期間で実現できたのでしょうか。
簑田:
最大の要因は、事業部とAI Labが一体化して動けている点です。制作の現場で出た課題をその場ですぐ研究者に相談できる。「顧客の課題に触れた瞬間に、開発がスタートする」物理的かつ心理的距離の近い環境がベースにあります。
鈴木:
そのため技術側も、「現場の課題解決」に一点集中できました。
研究者は技術的な新しさを追いがちですが、今回は事業部から「ここは使いにくい」「もっとこういう機能が欲しい」というリアルな要求を聞くことができ、それを即座に実装する超実践的なアジャイル開発が、他社には真似できないスピードと「実務で本当に使えるAI」を生み出したと考えています。
山口:
加えて、AIクリエイティブBPO事業部側の「ツールの完成度よりもスピードを重視する姿勢」も功を奏しました。「最初から100%の完成品を求めるのではなく、まずは動くもので検証し、走りながら直していく」というスタンスがあったからこそ、技術的な挑戦もしやすかった。
AIクリエイティブBPO事業が選ばれる理由。AIを「個社別にカスタマイズ」する新形態
― 今後、この『Illustrator Agent』を含めたAIクリエイティブBPO事業をどのようにお客様へ提供していくのでしょうか。
簑田:
ここで強調したいのは、「ツールを入れて終わりではない」ということです。世の中にあるAIツールの多くは、ユーザーがツールの仕様に合わせて業務を変える「ツール主導」の形をとります。しかし、私たちが提供するのはその真逆、「お客様のフローにAIを合わせる」オーダーメイド型の変革です。
そのために、私たちはツール単体ではなく企業の制作体制そのものを改革するところから並走します。「①企業ごとに専任のPM(プロジェクトマネージャー)によるサポート」「②個社別にカスタマイズ可能なAI技術力」「③盤石な制作体制」の3つをセットで提供しています。
― なぜ、そこまで「個社別」にこだわるのでしょうか。
簑田:
歴史ある企業様ほど、独自の承認フローや長年培われた制作ルール、独自のデータ管理方法が存在し、それが効率化のボトルネックになっています。そこに汎用的なツールを置いても現場は混乱するだけ。だからこそ、PMが事業の深部に入り込み、業務フローそのものを再構築(リデザイン)することから始めるのです。
鈴木:
技術面でも、自社開発の強みをフル活用します。たとえば「特定の商品コードを入力すると、自動で社内DBから最新の画像を引っ張ってくる機能が欲しい」といった要望があれば、その企業専用の機能としてエージェントに追加実装できます。
箸尾:
これはパッケージ化された市販のSaaSツールでは不可能な対応です。「自社専用の最強ツール」を、AI Labと共にその場で作っていける。世の中にないなら、自分たちで作ればいい。このスピード感と柔軟性こそが、当社のAIクリエイティブBPOの本質です。
上流工程からAIが伴走する。サイバーエージェントが描くAIドリブンな制作の景色
― 今回の取り組みは、まさに「紙×AI」の革命の始まりだと感じます。最後に、今後の展望をお聞かせください。
鈴木:
技術的には、Illustratorだけでなく、動画や3D制作の領域にも応用可能です。ショート動画の自動生成や、ゲーム制作におけるUnityの操作自動化など、人が介入する編集作業のすべてにチャンスがあります。「人間がクリエイティブな意思決定を行い、AIが手を動かす」という未来を、もっと広い領域で実現したいですね。
山口:
視点をさらに広げると、これまでは「制作の一作業」をAI化してきましたが、今後は「ワークフロー全体」をAIが支援する世界を描いています。キャンペーンの企画段階からデザイン、入稿に至るまで、上流工程からAIが入り込む余地はまだまだあります。
箸尾:
現場としても、AIに任せられる作業は徹底的に任せて、クリエイターは「人にしかできない価値作り」に集中すべきです。それが結果として、お客様のアウトプットの質を高めることに繋がります。
簑田:
AI化が進んでいないオフライン領域だからこそ、私たちが提供できるインパクトは絶大です。
クリエイティブを作るスピードとコストを劇的に改善し、浮いたリソースで本来やるべきマーケティング活動や戦略立案に注力していただく。AI Labの技術力とBPOの現場力を掛け合わせ、お客様のビジネスを加速させるエンジンになりたいと考えています。
世の中にあるツールを使うのではなく、なければ研究開発して生み出す。この「技術力×実装力」のサイクルこそが、サイバーエージェントのAIクリエイティブBPO事業が選ばれる理由です。
【こんな課題はありませんか?】
□ 紙のDMやチラシの制作・修正に毎月膨大な時間とコストがかかっている
□ 特定のデザイナーや担当者に業務が属人化しており、退職リスクが怖い
□ 大量の店舗別出し分けや、細かなレギュレーション確認で現場が疲弊している
□ 既存のAIツールを試したが、実務レベルでは使えなかった
一つでも当てはまる企業様は、ぜひ一度サイバーエージェントにご相談ください。AI Labの最先端技術とAIクリエイティブBPOの現場力を掛け合わせ、貴社のビジネスを加速させる真のパートナーとして伴走いたします。
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本記事では、「ABEMA」のこれまでの歩みと展望のほか、2026年3月にdentsu Japan社員の方向けに開催された「Dentsu ABEMA DAY」より、dentsu Japan CEO 兼 (株)電通 代表取締役社長の佐野氏、(株)AbemaTV代表の藤田による対談内容の一部をお伝えします。
本記事に記載の役職・肩書は、2026年3月のイベント開催当時のものです。
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