サイバーエージェントのAI技術が集結する祭典「AI Fes.2026」開催レポート
サイバーエージェントでは、メディア&IP、広告、ゲームなど多岐にわたる事業分野で、AIを活用したプロダクト開発や生産性向上のためのツール開発が加速しています。
2026年2月、これらの取り組みを一堂に集めた社内イベント「AI Fes.」を開催しました。各部署から65のポスターと26のブースが出展され、最新の研究成果や実践的な活用事例が発表されました。
当日はエンジニア、リサーチャー、デザイナー、ビジネス職など、職種を問わず1,400名以上が参加。グループ全体のネットワーク強化とシナジー創出に向けた活発な交流が行われました。
本記事では、イベント責任者である伊藤のコメントを交え、AI開発の最前線をレポートします。

AIに携わる全ての社員を繋げるための「AI Fes.」
── 「AI Fes. 2026」は、会場の熱気も規模も昨年からさらに跳ね上がりましたね!今年の開催に込めた思いやコンセプトを教えてください。
伊藤: 今年のコンセプトは、"Beyond Tools. Into Culture. Unleash Creativity."(ツールを超えろ。カルチャーを創れ。創造性を解き放て。) です。昨年の来場者1,000人も活況でしたが、今年はそれを大きく上回る出展と来場者となり、社内の「AI Fes.」に対する期待値が大きく跳ね上がっているのを肌で感じています 。AIを単なる便利なツールとして使うフェーズはもう終わり。これからは私たちのカルチャーとして根付かせ、全社員の創造性を爆発させよう、という強いメッセージを込めています。
── わずか1年ですが、サイバーエージェントにおけるAI活用のステージが確実にワンランク上がっているのを感じます。
伊藤: まさにその通りで、この1年で社内は劇的に変わりました 。昨年は「AIでPoCを作ってみた」というような事例発表が比較的多かったのですが、今年は「ビジネスにどう組み込み、どう成果を出すか」という実用ベースの発表がメインになっています 。AIに大きく投資するという会社の方針が現場に深く浸透している証拠ですね。もう一つの大きな変化は、今年は事業を生み出すビジネス職の出展や参加が急増したことです。実際、1,400名以上の参加者のうち約4割がビジネス層でした。AIの活用が技術領域にとどまらず、ビジネスを牽引する全社的な武器となったことで、「AIFes.」もサイバーエージェント全社を挙げてAIの実装を加速させる祭典へと進化しました。
── 出展者と参加者が熱心に話し込んでいる様子があちこちで見られました。単なる発表の場にとどまらない、新しい化学反応が起きていますね。
伊藤: 今年の「AI Fes」はまさに社内コラボレーションの促進に焦点を絞り、ここを新たなアイデアやコラボレーションの出発点にしたいと考えました。情報をただ聞くのではなく、「これ、うちの部署の課題解決にも使えないか?」といった具体的な相談が多くのブースで交わされていました。その対話の中から、ビジネス的な連携や新たな活用アイデアなど、具体的なプロジェクトの芽が生まれつつあります。役員陣も巻き込んで、普段は接点のない他部署のメンバー同士が直接意見を交わす。そして、知見を持ったメンバーと繋がることで新たなシナジーを生み出していく。この距離感の近さこそがサイバーエージェントの強みであり、まさに思い描いていた熱狂の場にできたと手応えを感じています。
出展ブース/ポスター紹介
ここで、今回発表したポスターやブースの一部を、発表者の声とともに紹介したいと思います。
■ Escort AI Dataset: 顧客をエスコートする接客対話AIのデータ基盤
AI事業本部 AI Lab Agent Research:私たちのチームでは、実空間の接客業務を対象として、顧客の状況を察してエスコートをする対話型AIロボットの開発と、それらを支えるインタラクションデータの収集を進めています。今回のAI Fesでは、対話ロボットのデモと、データ基盤について展示いたしました。2年連続、大音量スピーカーの真横でのデモになりましたが、大音量ノイズの中でも対話可能なロボットの展示に皆様に驚いていただけたのは良かったです。対話ロボットや実空間データセットの展望について多くのご意見をいただき、より一層、実社会への対話ロボット・AIの導入を加速させなければと実感いたしました。
■ Escort AI: あらゆるデバイスを"接客員"にするAI接客OS
AI事業本部 AI Lab Agent Development:長年の音声対話技術の研究開発を活かし、企業のフロントエンド(一次受付)を自律的に担う「AI対話システム」の開発に取り組んでいます。深刻な人手不足とAI技術の急速な発展が交差する今、現場で真に価値を発揮するAIエージェントサービスこそが求められていると確信しています。
今年のAI Fesも大盛況で、サイバーエージェントという組織、そしてメンバー一人ひとりの未来に対する投資の熱量を肌で感じることができました。他チームの素晴らしい技術に触れ、新たな連携の可能性も見えてきました。社長をはじめ、社内の多くの方々に本サービスを知っていただく非常に貴重な機会となりました!
■ AI Lab 対話システムチーム研究紹介
AI事業本部 AI Lab Dialogue System:私たち対話システムチームは、さまざまな事業部やプロダクトと連携しながら、オンライン接客や広告領域を中心に対話システムに関する技術の研究開発を進めています。
今回のAI Fesでは、これまでの取り組みと現在注力している3つのプロジェクトを紹介するポスターに加え、Webページ上で稼働する接客対話システムのデモ動画を展示しました。
当日は、広告事業を統括する岡本副社長と研究の実用化について直接お話しする機会があったほか、他のビジネス層のかたからも研究中のテーマに対して「実際に使ってみたい」「実用化の見通しはいつ頃か」といった熱量の高い質問が寄せられました。中には「プロダクトが抱える課題を対話システムで解決できないか」といった具体的な相談もあり、多くの方々から高い関心を持っていただきました。
■ 公共空間における移動ロボットの研究開発(フロアマップを用いた自己位置推定、販促ロボット)
AI事業本部 AI Lab Activity Understanding:私たちのチームは、移動ロボットを使って実世界を計測・理解し、販促や接客などを通じて購買体験向上につなげる以下の研究についてデモ展示しました。
当日は「メンテナンスが簡単な地図表現の提案および自己位置推定のデモ」「周囲の人に対して能動的にインタラクションする販促移動ロボットデモ」を展示しました。
当日はビジネス職の方も含め、多くの来場者に関心をもって頂き、事業におけるロボット活用についてアイデア、コメントをもらうことができました。
■ 目標話者のリアルタイム音声認識
AI事業本部 AI Lab Audio:私たちのチームからは目的話者の音声認識のデモ展示をしました。AI Fesは大盛況で多くの人が往来する騒がしい環境ではありましたが、音声強調技術や目的話者の音声抽出技術を活用し、リアルタイムで自分の声だけが認識される様子を体験していただきました。
固有名詞を正しく認識されるモデルや話者別に認識結果が表示される様子もご覧いただき、自分の関わっているプロダクトにも応用できそうなど事業部を超えたつながりが生まれるきっかけにもなりました。
■ ABEMAにおける生成AIを搭載したプロダクトと、番組制作における事例紹介
ABEMA AI Centerでは、クラウド映像編集システム「VMC」およびニュース速報映像制作システム「速報ワンタッチくん」を展示しました。あわせて、3D Gaussian Splattingを活用したバーチャルロケハンのプロトタイプも展示しました。
当日は2026年新卒の2名が中心になって、展示に向けた機能開発やPoC開発を進めてくれました。若手2名にとっても、多くの来場者と対話する機会に恵まれ、特に社内の映像編集やCM制作に携わるメンバーから高い評価を得ることができ、自信につながったようです。
また、本展示をきっかけにビジネス面での広がりも生まれ、AI Labとの共同研究案件にもつながるなど、今後の展開に向けた重要な一歩となりました。
■ CA Search機能:あなたのAI活用偏差値
グループIT推進本部におけるAIやMCP推進をアピールする場として、社内情報検索プラグイン「CA Search」のブースとポスターを出展しました。
全社データ技術局ではAIの利用状況を集約し、利用率ランキングなどを提供していることから、社員証等でリーダーにタッチすると自分のAIランキングを画像生成とあわせて確認できる仕組みを展示しました。
また、CA SearchやSlackDBを従業員の皆さんに知ってもらうことを目的に、QRコード付きのポケットティッシュを配布しました。多くのアクセスをいただき、CA Searchの改善提案については40件ほどのご意見・アイデアが集まり、プロダクトのアップデートにもつながったと感じています。
さらに、CA SearchのMAUは3,000人を超えました。これもAI Fesでの反響によるところが大きかったと考えています。
■ 室内単一画像から実現するオブジェクトの自動配置と3Dモデル生成
私たちのチームは、極AIお台場スタジオにおいて、超効率的に大量の広告制作を行う撮影体制の実現に向け、バーチャルプロダクションの活用を進めています。その運用においては、案件ごとに求められる多種多様な3DCG背景を、短時間でスピーディーに制作できることが重要です。
そこで、室内の単一画像から3Dオブジェクトの自動配置および生成を行い、効率的に3DCG背景を構築できるツールを開発しました。
本ツールはバーチャルプロダクションでの活用を前提に開発を進めてきましたが、3DCG領域以外の方々との対話を通じて、他領域への展開可能性や実際に使用してみたいという多くのフィードバックをいただきました。
これらを踏まえ、今後は案件での実運用を目指し、さらに価値の高いツールへと改善していきたいと考えています。
■ CX+でのAIエージェント開発事例
今回の展示では、CX+(メールをチャネルとした問い合わせ対応ツール)において、カスタマーサポート業務を支援するAIエージェントの開発構想について展示をしました。
サービス拡大に伴う問い合わせ増加や対応リソースの課題に対し、AIによる自動応答を活用した業務効率化とサービス品質向上の可能性を検証することを目的としています。
当日はカスタマーサポート担当者やエンジニアを中心に関心を集め、有益なフィードバックを得るとともに、今後の開発に向けた連携や検証協力にもつながる機会となりました。
■ 「マサAI」 ~新R25のコンテンツづくりのノウハウを誰でも活用可能に~
新R25では、「マサAI」というツールを開発しました。これは我々が8年間積み上げてきたコンテンツづくりのノウハウをチームメンバーで活用可能にしたものです。
具体的な取り組みとしては、業務ごとに最適化した約10個のツール(アプリ)を「GPTs」や「Gem」(ChatGPTやGeminiを目的別にカスタマイズしたもの)で開発し、中でも特に
・タイトル・サムネイルのクオリティをフィードバックしてくれるアプリ
・商品の情報からプロモーション企画を考えてくれるアプリ
・書き起こしから新R25の会話調の記事を作成してくれるアプリ
などが日常的にチーム内で活用されています。
AIに心理的な抵抗がある人も一定数いると思いますが、「GPTs」や「Gem」は入力インターフェイスがシンプルなので利用ハードルが低いこと、実践で活用できるレベルにまでプロンプトを徹底的に磨き込んだことが「マサAI」がチームに浸透したポイントです。
当日はたくさんの人がポスターの前で足を止めて興味を持ってくれて、サイバーエージェントの“AI熱”を感じました。今後もコンテンツ作成領域のAI活用にどんどんトライしていき、そのノウハウを全社に還元していきたいと思います。
「ツールを超えろ。カルチャーを創れ。創造性を解き放て。」というコンセプトの通り、今年の「AI Fes. 2026」はあらゆる部署のメンバーが交わり、新しいビジネスの種が生まれる熱狂の場となりました。AIを技術の一部にとどめず、ビジネスを前進させる力として全社で活用を広げるサイバーエージェントのこれからの新たなシナジーにぜひご期待ください。
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当社では様々なAI開発支援ツールを導入し、開発生産性のさらなる向上に努めています。また、2025年6月からは、個人のAIスキルをより向上させることを目的に、エンジニア1人あたり月額200米ドルの開発AI Agent導入費用サポートを開始し、同年8月には「AIドリブン推進室」を新設するなど、様々な取り組みを通して2028年に開発プロセスを完全に自動化することを目指しています(参照:「2028年までに全社の開発プロセスを自動化する。サイバーエージェントAI活用のこれまでとこれから」)。
AIを活用し、継続的にイノベーションを生み出せる開発組織へ進化するための取り組みの一環として、当社では先日、社内イベント「AI開発リアルタイムアタック」を開催しました。本記事では、エンジニアがAI開発のさらなる可能性を楽しく体験することを目的とした同イベントの発起人であり、運営責任者を務める丸山のインタビューをお届けします。