“遊び心” で、AI時代における開発の限界に挑む。「AI開発リアルタイムアタック」運営の裏側

技術・クリエイティブ

当社では様々なAI開発支援ツールを導入し、開発生産性のさらなる向上に努めています。また、2025年6月からは、個人のAIスキルをより向上させることを目的に、エンジニア1人あたり月額200米ドルの開発AI Agent導入費用サポートを開始し、同年8月には「AIドリブン推進室」を新設するなど、様々な取り組みを通して2028年に開発プロセスを完全に自動化することを目指しています(参照:「2028年までに全社の開発プロセスを自動化する。サイバーエージェントAI活用のこれまでとこれから」)。

AIを活用し、継続的にイノベーションを生み出せる開発組織へ進化するための取り組みの一環として、当社では先日、社内イベント「AI開発リアルタイムアタック」を開催しました。本記事では、エンジニアがAI開発のさらなる可能性を楽しく体験することを目的とした同イベントの発起人であり、運営責任者を務める丸山のインタビューをお届けします。

Profile

  • 丸山 司
    2023年当社新卒入社。入社後は、バックエンドエンジニアとして公営競技のインターネット投票サービス「WINTICKET」チームに所属。2025年3月より新規事業の開発に携わる。

「遊び心」を全社へ。AI開発リアルタイムアタックに込めた想い

── まずは、先日開催された「AI開発リアルタイムアタック」の概要について教えてください。

「AI開発リアルタイムアタック」は、AIを活用して与えられたお題のシステムをゼロイチで開発し、そのスピードと正確性を競うイベントです。

本番の1週間前に2日間の予選を行ったところ、目標を大幅に超える社員が参加してくれました。お題のシステムを作り、私たち運営チームが独自開発した採点基盤によって自動で採点されます。その結果、全問正解したタイムの上位30名が決勝に進出しました。

決勝戦では、予選で書いたサーバー側のコードを拡張し、ソフトウェア開発プラットフォームにおけるシステムのWeb部分を作り変えるという高難易度なお題に挑んでもらいました。予選はオンラインでしたが、決勝はリアルタイムで観戦できる形式にしたところ、会場は皆真剣で非常に静かな、ヒリヒリとした緊張感が漂っていたのが印象的でした。

決勝戦の様子は社内でライブ配信
決勝戦の様子は社内でライブ配信
実況担当や解説者も社員が担当
実況担当や解説者も社員が担当

また、参加者以外の盛り上がりも作れるよう、優勝者を予想する投票サイトも独自開発した他、決勝戦の様子は社内でライブ配信するなど、随所に “エンタメイベント” としての工夫も凝らしました。

── どのような背景で、この企画を提案したのでしょうか?

現在、私はとある新規事業の開発を担っており、もちろんAIを積極的に活用しているものの、大規模な事業でコードを書く際にはどうしても制約が伴います。一方で、AIはゼロイチのサービス開発に非常にマッチしている特性があると考えています。そこで、AI開発の可能性を広げられるような企画を、技術者版あした会議「CA BASE SUMMIT」にて先輩と提案し、そのまま責任者を務めることになりました(参照:「過去最高の“大豊作”。代表 藤田が評した、技術者版あした会議「CA BASE SUMMIT 」)。

社内ではすでに、実践に近い形で開発を競い合って学びを得るための別の取り組みが検討されていたので、「AI開発リアルタイムアタック」はそれとは一線を画し、遊びのような感覚で、イベントを楽しんでもらうことを一番の目的としました。普段は新しいAIツールを利用していない人や、マネジメントメインでコードを書く機会が減っている人にも触れてほしいという思いがあったからです。最初は各チームが懇親の場で楽しんでくれれば、と思っていたアイデアが、結果的に全社を巻き込むイベントに成長しました。

── リアルタイムアタックとして、スピードと自動採点にこだわるユニークな形式にした理由は何ですか?

個人的に、機械によって明確に採点されるコンテスト形式のイベントが好きだというのが大きな理由です。時間内にどうやって高速化するか、どうハックするかという部分に面白さを感じていたので、今回も自動採点基盤を開発してタイムアタック形式にしました。ちなみに、この採点基盤は横展開が可能な設計にしているため、今後の別イベントでも活用できます。

「イベントとして面白くない」事前の失敗を糧に、同期一丸となって乗り越えた壁

「AI開発リアルタイムアタック」運営に携わった丸山ほか、2023年新卒入社の同期メンバー
「AI開発リアルタイムアタック」運営に携わった丸山ほか、2023年新卒入社の同期メンバー

── 今回、丸山さんだけでなく他の運営メンバーも2023年新卒入社の同期が主体となったそうですね。

「CA BASE SUMMIT」での提案後、気心知れた違う部署の同期を中心に声をかけていきました。顔見知りの関係値だからこそ、うまく巻き込んで進められた部分もあると思います。先輩方のサポートで問題作成の手助けもいただきながら、同期で社内の大きなイベントを作り上げるという貴重な実績ができました。

ただ、私たちはこれまで全社イベントを開催した経験値が全くなく、初めてのことばかりで正直苦労しました。けれども、運営メンバー全員が第一線で開発をしており、システム開発やAIを使う感覚が鋭かったのは大きな強みだったと感じています。採点基盤を作成する際もAI Agentを活用して高速に開発した他、GreptileによるAIレビューなども駆使しました。また、開発以外の領域については「AIドリブン推進室」と二人三脚で試行錯誤しながら推進できました。

── 企画段階で不安だったことはありましたか?

AI開発リアルタイムアタックにおいては、AI任せでいかにハックするかが重要なポイントなので、自分の手でコードを書き、自分で考えることが好きなエンジニアにそのスタイルを受け入れて、楽しんでもらえるかは最後まで不安でした。

実は、本番開催前に社内のとあるチームに協力してもらい、30名ほどで検証版を実施したところ、本質を突いた様々な意見をもらったんです。Webサイトを作るというお題だったのですが、見た目を細かく綺麗に合わせる作業が「ただの職人技になっていて面白くない」と指摘されました。現状のAI開発支援ツールは細かい見た目の調整が苦手な場合もあり、それらを人間が手作業で直すのはAI開発リアルタイムアタックの趣旨とズレていたんですね。

そこで、検証版での意見を参考に、本番では、見た目は問わないので骨組みとなる機能開発を実装することに重きを置きました。具体的には、細かい見た目をチェックするRegresionテストのような採点方式ではなく、Playwrightを使用して実際のユーザーの動作やシステムの挙動を検証するE2E形式にしました。

また、制限時間を短縮することで、業務で忙しくても短時間で気軽に参加できる形にしました。この事前の失敗と軌道修正があったからこそ、本番の成功があったと思います。参加者からは大変好評で、当初の目標は無事達成できたと感じています。

専門性だけでなく、関連知識を豊富に持つ先輩エンジニアのように

── 今回のイベント運営を通して、自身のキャリア観に変化はありましたか?

本業とは異なる全社イベントを運営する経験ができたことで、視野が広がったと感じています。今後仕事をしていく上で、社外の人に会社を知ってもらうための技術イベントや勉強会、学生や新卒向けに部署を紹介する場など、自ら発信し、場を作るスキルを自分のプラスアルファの武器として持っておくべきだと強く感じました。

── サイバーエージェントでは2028年に開発プロセスを完全に自動化することを目指していますが、その目標に向けてどう考えていますか?また、どのような役割を担っていきたいですか?

今後はさらなるAIの進化によって、エンジニア一人ひとりが広範囲で高い技術力が求められると考えています。これまでは、シニアエンジニアがシステム全体のアーキテクチャを設計し、セキュリティに目を配り、インフラエンジニアが基盤を支える、といったように、専門性の高いエンジニアが技術的に難易度の高い領域を分担する形が一般的でした。そして、その土台や設計方針に沿って、ジュニアエンジニアがサービス開発の実装を担う、という進め方もよく見られました。

今後は、AIによって定型的な実装業務のハードルが下がる分、シニアレベルの視座を持って、広範囲をカバーできる高い技術力を持ったエンジニアが、少人数で開発を進める形のほうが、より効率的になっていくのではないかと感じています。

現在所属するチームには、技術的な専門性と長期的な事業目線を併せ持つ、経験豊富なエンジニアがたくさんいます。私も技術的な専門性の裾野を伸ばし、システム全体、開発組織全体を任せられるようなエンジニアを目指していきたいと考えています。



サイバーエージェントは、AI時代においてもリーディングカンパニーであり続けるため、継続的なイノベーション創出に向けた多角的な取り組みを展開しています。今回ご紹介した「AI開発リアルタイムアタック」のように、若手社員が自ら企画・運営を担い、全社一丸となって新たな領域に熱量高く取り組むカルチャーは、当社の大きな強みです。

2028年までに、全社の開発プロセスを完全に自動化するという目標に向け、当社は今後もさらなる企業文化の醸成に注力します。

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