多様性を受容する開発組織には、社会を変える力がある。
「Tech DE&I プロジェクト」始動。

技術・デザイン

当社は、2021年に発足したエンジニア・クリエイター発ダイバーシティ推進プロジェクト「CAlorful」を中心に、社内のD&Iカルチャーの醸成を目的とした様々な取り組みを一歩一歩進めてきました。これらの取り組みをグループ全体でさらに加速させるため、2023年1月に技術担当役員直下で「Tech DE&I プロジェクト」が始動。「CAlorful」のメンバーでもあり、かねてより社外で女子学生へのIT技術・キャリア支援のプロボノに取り組んできた神谷がTech DE&I Leadに就任しました。まずはIT業界のジェンダーギャップ解消を主軸に、当社開発組織におけるDE&Iを積極的に推進します。共に働く仲間を理解し合い、多様性を受容する環境を醸成することが、当社のビジョン「21世紀を代表する会社を創る」ためには必要不可欠だと考えているからです。
Tech DE&I Lead 神谷と、同プロジェクト立ち上げに参加し、グループ全体の技術戦略策定を行う横軸組織「CTO統括室」室長である山田が、発足の経緯や今後の目指すべき姿について語りました。

Profile

  • 神谷優
    2008年新卒入社。Tech DE&I Lead及び子ども向けプログラミング教室を展開する子会社キュレオ ソフトウェアエンジニア兼プロジェクトマネージャー。
    複数のAmeba関連サービス開発を経て、様々な新規事業の立ち上げに参画。新卒エンジニア育成やエンジニアマネジメントにも携わった。2015年以降は3度の育休を挟みつつ、定額音楽配信サービス「AWA」や子ども向けプログラミング事業「QUREO」の開発やプロジェクトマネジメントを担当。2020年より女子学生へのIT技術・キャリア支援を行う特定非営利活動法人「Waffle」にてプロボノに取り組む。2022年、Google Women Techmakers Ambassadorに選出。

  • 山田元基
    2008年新卒入社。ゲーム事業を展開する子会社QualiArtsの技術担当役員、及びCTO統括室室長。
    Amebaブログ」の開発に携わった後、エンジニアリーダーとして様々なソーシャルゲーム開発の立ち上げに参画。その後、技術基盤組織の発足や技術戦略策定など組織マネジメントを担う。プライベートでは二児の父。

育休復帰後に衝撃を受けた、IT業界のジェンダーギャップ

── 社内の取り組みに先立って、2020年から女子学生へのIT技術・キャリア支援を行う特定非営利活動法人「Waffle」にてプロボノに取り組んでいると聞きました。活動に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?

神谷:新卒エンジニア第1期として入社し、IT業界はジェンダーに関係のない実力主義で良かったと当時は思っていました。男性の多い環境でも技術力を身につければ関係ないと感じていましたし、女性のほとんどいない勉強会やイベントにも特に違和感を感じることなく参加していたのです。
ところが第1子出産後、エンジニアにとって必要不可欠な集中できる時間が限られてしまい、これは大変かもと思う瞬間が次第に増えてきました。そんな中で、テクノロジー分野のジェンダーギャップを解決する、特定非営利活動法人「Waffle」CEO 田中沙弥果さんの講演を視聴したところ、驚きました。日本社会には理系や技術職に対するジェンダーバイアスがあり、ICT関連の職業に興味のある15歳女子の割合は、OECD加盟国の中で最下位だという現実は、これまでジェンダーについて特に意識していなかった自分にとって強い衝撃だったのです。日本に女性エンジニアが少ないことが、次世代にも大きな影響を及ぼすことに気づきました。そして、自分の経験やアイデンティティをもってこの状況を変えたいと感じ、2020年8月から「Waffle」の活動に参加しました。

── その後、「Tech DE&I プロジェクト」を発足することになったきっかけを教えてください。

神谷:ライフワークとして「Waffle」の活動をはじめ、主にIT業界のジェンダーギャップ解消活動に取り組んでいることを、専務執行役員 技術担当の長瀬に話したことがきっかけです。
その際長瀬から、「サイバーエージェントのさらなる成長を後押しするための開発組織構築には多様性が欠かせないので、会社としてDE&Iについてより本格的に取り組もう」と声をかけてもらい、プロジェクトとして発足しました。

── 「Tech DE&I プロジェクト」では、最優先課題としてIT業界、サイバーエージェントの開発組織におけるジェンダーギャップ解消を挙げています。その理由を教えて下さい。

神谷:IT業界において、女性は”最も数の多いマイノリティ”だと言われています。また、組織が多様性推進に取り組む上で、そのファーストステップとしてジェンダー平等から始める事例は非常に多いと思います。アントニオ・グテーレス国連事務総長も、「多様性の中でも、特にジェンダーダイバーシティが、他の問題を解決するための礎」という趣旨の発言をしています。

ただ、IT業界におけるマイノリティとしては、性的マイノリティや外国籍、障害や疾病を持った方など、ジェンダー以外の切り口ももちろんたくさんあります。そのため “ジェンダーギャップ解消プロジェクト”ではなく「Tech DE&Iプロジェクト」として発足しました。
ジェンダーバランスが整った暁には、今よりも多様性のある状態が実現できており、他のマイノリティ属性を持ったメンバーを受容できる下地が整っているはずだと信じています。

全エンジニアを対象にIT業界ジェンダーギャップ勉強会を実施

── 社内の開発組織におけるジェンダーギャップについて、実際どのような課題を感じていますか?

山田:当社の女性エンジニアの比率がまだまだ低く、それゆえにロールモデルが不足している点です。若手女性エンジニアがキャリアで悩んだ時など、身近に相談できる環境をさらに生み出す必要があると考えています。また、事業を展開する上で、開発者の視点に偏りが生まれることは無意識にユーザーのアクセスを狭めている可能性があります。とりわけ課題に感じていた、ジェンダーギャップ解消に向けた基礎知識や認知不足については、2023年2月から3月にかけて、1000名以上に及ぶグループ全体の全エンジニアに向けたIT業界ジェンダーギャップ勉強会を開催しました。

神谷:この勉強会では、エンジニアの男女比に偏りがある理由やその背景、世界と比較した日本のジェンダーギャップランク、また昨今各大学やIT企業がジェンダーギャップ解消に向けてどのような取り組みを行っているのか、お話させてもらいました。参加者に回答してもらったアンケートでは「これまでなんとなく目にしていたDE&Iに関するニュースが、勉強会をきっかけに、点と点が線で繋がった感覚があった」「世界的に見た日本という観点でグラフや数値・事例を元に話していたので、イメージが湧きやすく、深く理解できた」「これまで “女性エンジニア” という枠組みに抵抗があったものの、単に嫌がるだけではなく、より良い未来のために自分に何ができるか考えていく必要性を痛感した」など、運営として嬉しいコメントを多数いただきました。

また、今年から新卒研修の中でDE&I研修も行うことが決まっていたり、今後はマネージャー職と希望者に向けて、多様性推進アクションのファーストステップとして知られる「無意識バイアスワークショップ」も開催します。とはいっても、ワークショップを通して、社内のコミュニケーションに対して新たなルールを設けるといった堅苦しいものではありません。無意識バイアスという存在をまずは意識することをゴールとし、一人一人がそれらの知識を得ることで、自分とは異なる属性を持ったメンバーを受容する風土が醸成されることを目指しています。

社会をより良くするプロダクトは、多様性のある組織から生まれる

── プロジェクト発足にあたって、神谷さんはTech DE&I Leadに任命されています。今後どのような役割を担うのでしょうか?

神谷:大きな目的は、将来当社の開発組織が多様な属性を持つメンバーで構成された時に、それらを受容できる環境を構築することです。最近では、世界的な大手テック企業だけでなく、国内でも多くの企業やスタートアップにDE&I Councilなどの専門部署が発足しています。これはSDGsのアジェンダにDE&Iに関連したものが多くあるという 社会的意義だけでなく、多様性のある組織やそれに伴うプロダクト開発が企業競争力として必然であるという世の中の流れがあるからだと思います。当社でも、他社のDE&I Leadと連携を取りつつ、私自身が社外の取り組みで得たグローバルスタンダードなDE&Iやジェンダーギャップ解消へのアプローチを、社内に積極的に導入することを目指しています。

── 最後に「Tech DE&I プロジェクト」が目指す未来について、聞かせてください。

山田:現在IT業界ではマジョリティである男性が、開発における意思決定の中心にいることは否めません。我々が意図していなくても、それがエンジニアを目指すマイノリティ属性への心理的な障壁にならないよう、まずは意識することが重要だと考えています。当社の社会的責任を果たす意味でも、IT業界のジェンダーギャップ解消に積極的に手を打つことで、理系を目指す女子学生やエンジニアを目指す女性が増えることを期待しています。

また、多様性のある組織は、偏りのある組織に比べイノベーションが起きやすく、社会をより良くするためのプロダクトが生まれやすい環境だと思います。開発組織をさらにイノベーティブにするという意味でも、DE&Iの取り組みに注力していきたいです。

神谷:「女性はエンジニアに向いていない」という日本社会全体の無意識バイアスを覆すためのポジティブアクションを多数仕掛けることで、エンジニア不足とジェンダーギャップの解消という2大社会問題に正面から取り組んでいきたいです。そしてこれらを解決することで、国内大手IT企業として、OECD最下位レベルである日本のジェンダーギャップランクの押し上げに少しでも貢献していきたいと考えています。当社のDNAでもある柔軟性や実行力が土台にあれば、ジェンダー平等に対する意識についても大きく前進させられると信じています。

また、ジェンダーの多様性を皮切りに、”Under-Represented” いわゆる「見過ごされた人々」と言われる層を包括的に受容する組織を目指していきたいです。そして、多様性のある環境だからこそ次々とイノベーションが生み出せる組織を実現できれば、当プロジェクトのゴールと言えるのではないでしょうか。

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