10年後を見据えた、
サイバーエージェントの広告事業戦略
先日、サイバーエージェントのエンジニア・クリエイターがお届けする技術カンファレンス「CyberAgent Developer Conference 2022」を開催しました。本カンファレンスでは「Build Up Always」をテーマに、AI・インフラ・バックエンド・ネイティブ・フロント・セキュリティ・クリエイティブ・3DCGなど様々な領域において、これまで積み重ねてきた挑戦の中で得た知見や、最新の取り組み状況などについて、厳選した26のセッションをお届けしました。この記事では、基調講演の中から常務執行役員・内藤貴仁の発表の様子をお届けします。
サイバーエージェント広告事業の変遷
サイバーエージェントは、1998年の創業以来インターネット広告事業を展開しており、国内トップシェアを誇ります。 広告効果を最大化する運用力およびクリエイティブ力に加え、近年はAIを活用した広告プロダクトの開発、ロボットによる次世代のマーケティング手段の創出など、テクノロジーとデータを駆使しながら、広告ビジネスを切り拓いてきました。まずは、サイバーエージェントの広告部門が提供するサービスの変遷を振り返りながら、今後の展望についてご紹介します。
広告事業の変遷としては、大きく3つのフェーズに分けられます。第一世代では、マーケティング戦略と従来型のクリエティブをベースに広告会社として価値を提供してきました。この時期に、国内トップシェアを誇るインターネット広告事業へと成長したことで、大規模なデータが蓄積される状態を創り出すことに成功しました。
第二世代では、蓄積されたデータを活用すべく、エンジニアリングとデータサイエンスの活用が入ってきました。優秀な技術者の皆さんがたくさんジョインしてくれたことで、自社で多数の広告プロダクトを開発できただけでなく、培った技術力を他の産業へ展開できるフェーズまで来ました。そこで数年前からは、小売・医療・行政をはじめとする多種多様な領域のDX事業を行っています。小売業界のDXは海外でも先進事例が多く見られる注目すべき分野ですが、実際にサイバーエージェントでも小売事業者が広告事業を創出するためのサービスを提供したり、小売業界のDX推進にむけて、他社との業務提携を進めるなど、力を入れています。恐らく、この先5年が競争の最盛期になるでしょう。
サッポロドラッグストアーおよびAWLと共同で、OMOプラットフォーム「リテールコネクト」を開発し、小売事業者への展開に向けた支援を開始
サイバーエージェントとNTT Com、小売流通企業のDX推進に向けた業務提携を締結
そして今後注力していくのが第三世代で、バーチャルやメタバース、コンテンツとファイナンスの領域です。サイバーエージェントでは現在、子会社や研究所を立ち上げこの分野に人を投資するなど、急速に力を入れています。世界的にも注目が集まる市場ですが、我々もこの先5年~10年をかけて大きく成果を出していける計画を立てています。
ここからは、サイバーエージェントが現在注力している「バーチャルクリエイティブ」「デジタルヒューマン」「メタバース」「コンテンツクリエイティブ」について、それぞれの取り組みを簡単にご紹介していきます。
バーチャルクリエイティブ
この数年、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、これまでリアルで開催されていた様々なイベントのオンライン配信が急速に進みました。またオンラインライブが加速する中で「バーチャルクリエイティブ」を取り込んでいく事例も多くありました。
しかし、この「バーチャルクリエイティブ」そもそものきっかけは、リッチなコンテンツを大量に作ることができる運用というチャレンジのために始めた試みでもあります。
こちらは、2019年にオープンしたカムロ坂スタジオでの撮影風景です。このスタジオでは、リアルタイム合成システムをいち早く導入したほか、高精細なCG背景空間で撮影が可能な「LED STUDIO」を導入するなど、常に最先端技術を取り入れています。
他にも、スキャニング、3D モデリング・モデルデータの最適化、モーションキャプチャー、アニメーション、レンダリング、実写とのコンポジットなどに一貫して対応することができるなど、日本でも数少ないバーチャル映像制作・配信施設です。
このスタジオ自体は、更に大きなものにしていく構想を抱えており、設備やインフラに大きく投資していきたいと考えています。
デジタルヒューマン
昨今、人間と同じ姿で人の動きを再現するCGアバターであるデジタルヒューマンは世界中で活用されており、人間本来の活動に加え、新たな表現を可能にする手段として注目されています。
サイバーエージェントも、AI Labでデジタルヒューマン研究専門組織を新設したり、著名人の公式3DCGモデルを制作・デジタル空間上での芸能人の活動をサポートするサービス「デジタルツインレーベル」を提供するなど、CG技術を活用したサービスの提供に積極的に取り組んでいます。
現在はタレントの方を起用し、デジタル空間上に本人そっくりな分身であるデジタルツインを作り、メタバース空間などでも仕事が出来るようになることを想定していますが、将来的には一般人のデジタルヒューマンを作り、広告の世界で活用する可能性もあるかもしれないと考えています。
AI Lab、「デジタルヒューマン研究センター」を新設 CG研究を強化し、 深層学習に基づいた写実的な人体表現の実現へ
メタバース
また、今年の2月には、メタバース空間における企業の販促活動を支援するバーチャル店舗開発に特化した事業会社として、株式会社CyberMetaverse Productionsを設立しました。
リアル店舗やECとは異なる、新たな販売チャネルとしてメタバース空間におけるバーチャル店舗のあり方を確立し、NFTを活用したデジタルコンテンツ制作や独自の暗号資産(仮想通貨)の発行支援まで一貫して対応できる体制を構築することで、「未来の店舗」「新しいショッピング体験」のスタンダードをつくりたいと思っています。
バーチャル店舗開発に特化した、株式会社CyberMetaverse Productionsを設? NFTと独?の暗号資産活?を?援し、メタバース空間に「未来のショッピング体験」構築へ
コンテンツクリエイティブ
他には、タレント・著名人のYouTubeのチャンネル制作や、Instagramの運営などにも力を入れており、現在150~160チャンネルほどの制作に携わっています。
YouTubeチャンネル開設、企画運用・制作・広告販売のサポートをはじめ、D2C事業としてオリジナルブランドを立ち上げて商品の企画開発、制作販売まで支援するなどのショッピング事業にも注力しています。ショッピング事業については1回の放送で数千万の売り上げがあがる事例も数多くあるので、またまだポテンシャルを感じているところです。
また、今後はNFT等もプラットフォームで簡単に購入できるようになる可能性が高いので、広告、オリジナルブランドによるショッピングに加え、NFT活用にも積極的に取り組んでタレントや著名人にとって新たな収益や価値が創造されるような事業を展開していきたいと思います。
おもしろ企画センター、タレントのNFT活用をサポートする専門組織「芸能人とNFT相談センター」を設立、サポートを開始
広告業界は常に変化し続け、昨今は特にその変化スピードが加速しています。サイバーエージェントでは、高い技術力とクリエイティブを武器に、市場を牽引する存在であれるよう邁進していきます。
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サイバーエージェントでは、運営するメディアサービスにおいて、青少年の保護及びすべての方に安心、安全にご利用いただける環境を目指し、健全な運営のための取り組みを実施しています。悪質な目的でサービスを利用するユーザーを検知し、排除するため、24時間365日体制で厳重なサービス監視を行う上で重要な役割を果たすのが、監視基盤システム「Orion」です。「Orion」は2013年4月のリリースから現在に至るまで、サイバーエージェントの数々のメディアやサービスの健全化を支えてきました。プロジェクト発足当初から開発に携わってきた藤坂に、テクノロジーで社会課題に向き合う姿勢や、変容する社会に対して「Orion」がどうあるべきかをインタビューしました。