これからの広告効果は“多様性”がカギ
AI時代に求められる新しいクリエイティブ戦略

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― Metaとサイバーエージェントが語る成果最大化の方程式 ―

AI時代、広告効果を左右するのは“どれだけ幅広いクリエイティブを用意できるか”です。
ユーザーの興味関心は分散し、ライフスタイルも十人十色。接触する広告フォーマットも静止画・動画・縦型ショート動画などへ広がっています。

さらにユーザーがコンテンツを消費する環境は、移動中あるいは自宅といった場所や、音声の有無といった視聴スタイルによっても変化しています。 こうした状況では、数パターンの広告クリエイティブだけでは、もはやユーザー行動の幅に対応しきれません。

そこでMetaとサイバーエージェントが導き出した答えが、「クリエイティブの多様性」。
 “大量のバリエーションを前提にしたクリエイティブ設計”は広告効果改善にどのように貢献するのかーー。Meta社の髙橋直也氏と当社で「極多様性プロット」の開発をリードするプロダクトマネージャーの亀山千尋が、データと実例をもとに“これからの広告戦略の本質”を語りました。

動画シフトとAI活用。変わりゆく広告環境で何が起きているのか

―まずは、近年のインターネット広告を取り巻く環境について、大きな変化点は何でしょうか。

髙橋氏「動画へのシフト」と「広告配信システムにおける『AI』の導入・自動化」の2つが大きな変化点です。
2024年度の弊社の決算発表によると、Instagramの滞在時間の50%がリール、つまり縦型ショート動画に費やされています。Instagramは静止画中心のプラットフォームから、今では縦型ショート動画が主役の場へと進化しており、広告フォーマットでも動画の伸びが顕著です。
また、ターゲティングや配置、クリエイティブの最適化にはAIが全面的に活用されるようになりました。以前はマーケターが「30代男性にはこのバナーを」と細かく手動で設定していましたが、今ではクリエイティブ素材さえあれば、AIが「誰に何を出すべきか」を自動で判断し、ブロード配信でも最適なユーザーを見つけ出してくれます。

   髙橋 直也氏     Facebook Japan合同会社 / エージェンシーパートナー   2021年6月の入社以来、代理店営業として一貫してサイバーエージェントグループ(サイバーエージェント・CyberZ・CyberACE)を担当。Metaの最新ソリューションと代理店の強みを掛け合わせ、広告主のビジネス成長を支援している。
髙橋 直也氏  Facebook Japan合同会社 / エージェンシーパートナー
2021年6月の入社以来、代理店営業として一貫してサイバーエージェントグループ(サイバーエージェント・CyberZ・CyberACE)を担当。Metaの最新ソリューションと代理店の強みを掛け合わせ、広告主のビジネス成長を支援している。

なぜ今「クリエイティブの多様性」なのか? AI時代の新たな勝ち筋

―そもそもMetaさんでは、「クリエイティブの多様性」をどう定義されているのでしょうか?

髙橋氏:「これが多様性だ」という厳密な定義があるわけではありませんが、我々が重要だと考えている観点は大きく2つあります。

1つ目は「フォーマット」の多様化。
動画なのか静止画なのか。サイズはスクエア(1:1)なのか、リールのような全画面(9:16)なのか。こうしたサイズも含めたフォーマットのバリエーションです。

2つ目は「メッセージ」の多様化。
同じ商品でも、機能性を訴求するのか、価格のお得さを推すのか、あるいは情緒的なブランドストーリーを語るのか。

この「フォーマット」と「メッセージ」の両軸でバリエーションを持たせることが、AI時代の広告運用において極めて重要になっています。
 


多様性のあるクリエイティブ例(Meta社提供)

― なぜ、そこまで“多様性”が重要なのでしょうか?

髙橋氏:理由はシンプルで、「AIのポテンシャルを最大限に引き出すため」です。
先ほどお話しした通り、今はAIが「誰にどの広告を出すか」を自動でマッチングしてくれる時代です。しかし、AIといえども手持ちのクリエイティブが少なければ、最適なマッチングはできません。
もし、広告主が「静止画の、機能訴求のバナー」1種類しか入稿していなかったらどうなるでしょうか? 動画が好きなユーザーや、価格訴求に響くユーザーには、その広告は届きにくくなります。

逆に、フォーマットやメッセージの切り口を無限に用意できれば、AIは「このユーザーには動画を見せよう」「あのユーザーには価格訴求をぶつけよう」と、それぞれのユーザーに最適なクリエイティブを出し分けることができます。
つまり、「クリエイティブの多様性」を担保することは、AIの機械学習における「選択肢」を増やし、広告主のパフォーマンスを最大化するために不可欠です。

― なるほど。一方で、それだけの多様性を持ったクリエイティブを作り続けるのは、制作サイドとしては大変な挑戦だと思います。クリエイティブ制作の開発現場ではどのような挑戦がありましたか?

亀山:Metaさんが掲げる「クリエイティブの多様性」は、広告効果を最大化するうえで非常に重要な概念です。ただ実際には、広告主が“どの程度の幅を持たせるべきか”を判断するのは難しく、制作現場でも明確な基準がありませんでした。当社ではこれまでも「極予測AI(キワミヨソクエーアイ)」などで広告効果の事前予測に取り組んできましたが、これからは 「どんな切り口をどの程度そろえるべきか」という“多様性の設計”そのものが、成果に直結するテーマ になってきています。

そこでまず着手したのが、「効果が出る“多様性”とは何か」を定義することです。
社内の機械学習エンジニアとともに、配信設定、クリエイティブの特徴、過去の膨大な配信実績を分析し、Metaさんの思想を踏まえたうえで「成果につながる多様性のパターン」を抽出しました。
そのうえで、Metaのアルゴリズムがより学習しやすい形で多様性を設計できるよう、AIプロダクト「極多様性プロット」を開発しました。

静止画や動画に含まれる様々な要素を解析し、「このクリエイティブはどの層に向けた、どんな特徴のものか」を予測スコア × マッピングの2軸で可視化できるようにしました。

これにより、クリエイターは「この領域の訴求が足りていないから、次はここを埋める動画を作ろう」といった戦略的な制作が可能になりました。髙橋さんにもアドバイスをいただきながら、見た目だけでなく「視聴体験としての”多様性”」まで踏み込めたのが大きな進歩だと思っています。

CPA32%改善やCV数180%増の事例も。データが示す「バリエーション戦略」の威力

― 「クリエイティブの多様性」が実際の広告効果にどう結びつくのか、データがあれば教えてください。

髙橋氏:2021年のMeta社における検証データになりますが、非常にわかりやすい結果が出ています。
クリエイティブを多様化させたアドセット(広告セット)と、そうでないものを比較した際、多様化させた方はCPA(獲得単価)が約32%改善しました。さらに、リーチ率(到達率)も9%伸長しています。

また、「静止画しかないアドセットに、動画を追加する」というアクションだけで、CPAが平均17%改善するというデータもあります。AIの進化、動画プラットフォームへの移行の流れを踏まえると、今時点のクリエイティブの多様性の影響はこの数字以上に大きいものになっていると思っています。

― 多様性の有無によって、なぜこれほど差がつくのでしょうか?

髙橋氏:裏側のロジックをお話しすると、MetaのAIは配信前にクリエイティブの中身を解析しています。「どんな人物が映っているか」「どんなメッセージか」などを読み取り、似たようなクリエイティブは「同じもの」として扱います。
 そのため、同じようなバナーばかりを入稿すると、AIは限られたユーザー群にばかり配信を続けてしまい、リーチも獲得効率も頭打ちになります。

一方で、静止画と動画、機能訴求と情緒訴求といった明確に異なるバリエーションを入稿すれば、AIは「別のアプローチ」と認識し、これまで届かなかったユーザー層まで探しにいきます。
ユーザーの好みや行動に合わせて最適なフォーマットを出し分けられるため、結果としてCPAが下がり、獲得数が増える。これが多様性が効果につながるメカニズムです。
 

― クリエイティブのバリエーションを持つことが、AIによる配信を最適化するカギとなるのですね。

髙橋氏:全体的な潮流として動画へのシフトが進んでいるのは事実ですが、一方で静止画の方が好きというユーザーも存在します。また、電車での移動中や自宅にいるときなど、置かれている状況によっても変化します。
それぞれの好みやシチュエーションに合わせて、最適なフォーマットを配信できる。これがバリエーションを用意する最大の価値です。

― 「極多様性プロット」での実績はいかがでしょうか?

亀山:TBCグループ株式会社様の事例など、多くの好事例が出てきています。
「極多様性プロット」を導入し、意図的に表現の幅を広げた配信を行ったところ、従来の運用では獲得できていなかった層からのCV(コンバージョン)が増加しました。
先行テストでは、CV数が180%に伸び、CPAも半分ほどに改善した事例も出ています。また2025年12月時点の当社の調査結果では、「極多様性プロット」の活用により、当たり率※1が約1.3倍に相当する改善傾向が確認されました。

これは、これまで「勝ちパターン」だと思っていたクリエイティブだけでは拾いきれていなかったユーザーに対して、多様な表現によってアプローチできた結果だと考えています。

※1 配信中のクリエイティブの効果予測値を上回る新規クリエイティブが出る確率

   亀山 千尋     株式会社サイバーエージェント / 「極多様性プロット」 プロダクトマネージャー   2017年中途入社。インターネット広告事業本部にて代理店営業、ダイレクト領域のクリエイティブプランナーチームマネージャーを経て、2020年に「極予測AI」の立ち上げに従事。2023年より現職として「極多様性プロット」の開発・推進をリードする。
亀山 千尋  株式会社サイバーエージェント / 「極多様性プロット」 プロダクトマネージャー
2017年中途入社。インターネット広告事業本部にて代理店営業、ダイレクト領域のクリエイティブプランナーチームマネージャーを経て、2020年に「極予測AI」の立ち上げに従事。2023年より現職として「極多様性プロット」の開発・推進をリードする。

「思想」と「技術」の融合。Meta×サイバーエージェントのパートナーシップ

― 両社の連携について伺います。Metaさんから見て、サイバーエージェントとの取り組みにはどのような価値を感じていますか?

髙橋氏:サイバーエージェントさんの凄さは、Metaの広告思想を深く理解したうえで、自社の技術力と掛け合わせて独自の価値に昇華してくれる点にあります。
私たちが「これからは“多様性”がカギになる」と発信しても、それを現場レベルで実践可能なソリューションに落とし込むのは簡単ではありません。

Meta自身もAIカンパニーとして多方面でAIを活用していますが、サイバーさんはその思想を汲み取り、自社のAI技術で「極多様性プロット」のようなプロダクトとして具体化してくれている。
これは他の代理店さんと比べても際立っている部分であり、互いの強みを補完し合える理想的な関係だと感じています。

亀山:ありがとうございます。髙橋さんのお話にもありましたが、Metaさんのアルゴリズムが進化していく今、AIなどを活用したアルゴリズムを理解し、どれだけ効果が良いとされるクリエイティブを用意できるかが、私たち広告代理店に求められている役割だと感じています。 こうした考え方をMetaさんと日々すり合わせながら進められていることが、広告主にとって新しい価値を生み出す源泉になっていると感じています。

クリエイティブは“一球入魂”から“総力戦”へ。多様性がつくるAI時代の広告の未来

― 今後、「クリエイティブの多様性」はどのように進化していくと考えていますか?

髙橋氏:個人的な意見ですが、今後求められるクリエイティブの“量”と“バリエーション”は、これまでとは比べものにならないほど増えていくと考えています。
AIの進化によって、「このユーザーにはこのクリエイティブ」という1 to 1の世界がさらに実現されていきます。従来のように、ある特定のクリエイティブに配信が偏ってしまうという課題も、AIの進化によって近い将来解消されていくでしょう。
そうなれば、本当に一人ひとりに最適化されたクリエイティブが求められる時代になります。大変なチャレンジではありますが、広告主にとっては大きな機会でもあると捉えています。

― ブランド広告領域への応用についてはどうみていますか?

髙橋氏:ブランド広告には、これまで「一球入魂のクリエイティブで世の中を動かす」という考え方が根強くあります。テレビCMの発想がその典型ですね。 ただ我々のデータを見ると、複数の切り口を持たせたクリエイティブのほうがリーチが広がり、CPAも改善する傾向があります。

こうした結果を見ると、ブランド広告においても“多様性を持たせたアプローチ”が有効に働く場面が増えてきていると感じています。 Metaとしてもブランド広告領域は伸びていますし、「極多様性プロット」がブランド領域にも“多様性”という新しい視点をもたらすきっかけになるのではないかと期待しています。

亀山:Metaの配信設定のキャンペーン目的に応じて「極多様性プロット」を活用することが可能です。ダイレクト(獲得)目的はもちろん、認知やブランドリフトといった目的でも利用できるようになっていて、実際に成果も出始めています。

―最後に、広告主やマーケターのみなさまへのメッセージをお願いします

髙橋氏:「クリエイティブの多様性」については、実はMeta社内では7年以上前から言われ続けてきたテーマです。ただ、AI時代に入り、クリエイティブの重要性がさらに高まる中で、“多様性” はこれからの広告において最も重要なポイントのひとつになると考えています。ぜひ注目していただきたいです。

亀山:広告主の広告効果の最大化に一貫して向き合い続けてきましたが、今回の取り組みによって、「より多様なメッセージを、より多くのユーザーに届けられる仕組み」を実装できたと感じています。
「どこまで表現の幅を広げるか」や、「どんなメッセージを伝えたいか」からヒアリングさせていただきます。

Metaの配信設定を見直して、今配信中のクリエイティブを「極多様性プロット」でマッピングし、事前予測スコアによって効果が良さそうなら実際に配信する、というステップで進めていけるので、リスクを最小限に抑えながら多様性を広げていくことが可能です。
ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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