社長交代を重ねても持続的に成長する会社になるために
創業社長から2代目への社長交代

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サイバーエージェント創業社長の藤田晋が社長交代を明言し、後継者育成に着手したのは2022年春。16名の候補者を選定し、3年半に及ぶ準備期間を経て、2025年11月14日に次期社長候補を発表しました。本件は、12月12日開催予定の第28回定時株主総会及び株主総会後に開催される取締役会で正式決定する予定です。

創業社長から2代目社長への円滑な引継ぎに必要なこと、また今回の社長交代人事について、現社長の藤田晋と、新社長就任予定の山内隆裕に話を聞きました。

ゼロからの社長業引継ぎ、4年後に8割完了を目指す

ー約3年半の引継ぎ準備期間を経て、本日、社長交代人事の発表を行いました。改めてこれまでに取り組んでいたことについて教えてください


藤田:2022年春に「4年後に代表権のある会長となり、社長は交代する」と宣言し、16名の後継者候補を選んで準備を進めてきました。アカデミックな研修や社長としての決断を追体験する研修などを実施する中で改めて実感したのが、創業社長から2代目へのバトン引き継ぎというのは、通常の社長交代とは違い、特別なものであるということです。

創業社長は求心力が強く決断を社内に説明する必要もないため、経験値が社長にのみ蓄積され、社内でも他者との差が開いていきます。その課題に気がつき、これまで経験や勘で行っていたことを言語化し、引き継ぎ書としてまとめ、一つずつ説明する引き継ぎ書研修を行いました。後継者候補の16人は回を追うごとに成長し、次期社長だけでなく、それを支える次期経営層を育てる意味でも大きな効果がありました。


山内:この期間で得たものとしては圧倒的に、第2世代の結束力です。「社長レース」と報道されることもあり、次期社長人事というと、候補者同士が争っているように受け止める方が多いかもしれません。実際はその反対で、社長が交代するという大きな課題を皆に突き付けられたように感じました。だからこそこの中から誰が社長になったとしても皆で支えようと、研修後に集まっては話をしていました。この3年半の期間を通じ、次の世代で会社を成長させていこうという共通認識が生まれ、次世代の経営チームとしての基盤ができたように感じます。

ーこのような準備期間を経て、自身が次期社長に内定したと聞いたときはどのように感じましたか?

山内:正直なところ嬉しさというよりは、責任の重さを強く感じました。社長研修を通してその大変さを痛感していたため、創業社長である藤田のように会社を成長させられるのか、社員や株主、取引先の方々といったステークホルダーの皆さまを不安にさせないかを自問自答しました。

藤田:どれだけ万全を期しても不安が残るのは当然です。それに実際に社長になってみないと、わからないこともあります。社長が抱える責任感や緊張感、決して間違えられない決断に必要な洞察力や事業構想力は、その立場に立って初めて養われるものです。

そのため今回の社長交代では会長と社長の代表取締役二名体制とし、あえて役割分担をせずに、ゼロから社長業を引継ぎすることにしました。2年後の2027年には山内新社長が独自の中長期ビジョンを発表するとともに、4年後の2029年には社長業の8割の引き継ぎ完了を目指します。

私自身、会長になっても荷が下りた感覚は全くなく、社長としての責任感はほんの少しも減っていません。ここから引継ぎをして、完全に山内に任せられると思えるまで伴走していきます。

4年に渡る伴走により、創業社長から2代目社長への引継ぎ完遂へ

ー2029年に社長交代をする選択肢もあったはずですが、なぜこのタイミングでの社長交代なのでしょうか?

藤田:先ほども話した通り、社長の立場になって初めて、負っている重みを理解できると考えています。特に創業社長からの初めての交代では、決算発表や株主総会議長といった役割よりも、意思決定を伴うものをどのように引き継ぐかが本当に難しいのです。

特に引継ぎ困難なものは三つあって、その一つが、サイバーエージェントで働く人やカルチャー、強みをもとに事業構想する力です。二つ目は、事業市場や社員、取引先などに対する洞察力。そして最後が、社長としての求心力です。これらは、一朝一夕に養えるものではありません。そのため、日々の案件に対する意思決定を一つずつ確認し、本当の意味で社長業を引き継げるようになるまで伴走していきます。

自身に限って言えばまだ50代ですし、今後10年、20年と社長を続けることも可能です。しかし他社の事例を見てみても、創業社長からの継承は年数を重ねるほどに難易度が上がります。それはやはり、権力と経験が創業社長に集中し、時間の経過とともにその差が広がってしまうからだと思います。だからこそ、できるだけ早い段階で社長業を引き継ぐことが重要だと判断しました。

ー社長交代となるとその人事に注目が集まりますが、人選の理由はどこにあったのでしょうか?

藤田:山内はこれまでの実績はもちろん、サイバーエージェントの文化を深く理解したうえでのリーダーシップや環境変化への適応力、結果を出すやり抜く力が強みです。誰を選んでも現時点で足りないものがあるのは当然ですが、指名・報酬諮問委員会でも満場一致で決定しました。

山内:私は2006年に新卒入社しましたが、入社のきっかけは藤田の「仕事の面白さ」についての講演を聞いたことでした。2009年に子会社CyberZを創業しましたが、元々社長や起業を目指して入社したわけではありませんでした。

モバイル広告代理店としてCyberZを立ち上げたものの、フィーチャーフォンとしては市場最後発だったこともあり最初はうまくいかず、解散寸前まで追い込まれた時期もありました。しかし、当時のiPhoneの国内出荷台数が200万台という中、この市場は伸びるかもしれないと思い、スマートフォン広告に特化した代理店として業態変更を決断したのが2010年末です。先行者としてスマートフォン広告市場の立ち上がりをリードできたことが会社拡大のきっかけとなりました。大局観を見定め大きな挑戦をすること、そして困難に直面しても諦めないしぶとさは、自分の強みかもしれません。

先送りを撲滅し、変革を怠らない文化を継承する

ーサイバーエージェントは「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンのもと、永続する会社を目指しています。そのために必要なことは何でしょうか?

藤田:サイバーエージェントは1998年の創業以来、28期連続増収を継続しています。祖業であるインターネット広告事業からゲーム事業の拡大、ABEMAの社会インフラ化など、外から見たら幸運に恵まれてきたように見えるかもしれません。しかしこれは、将来起こりうる問題から目を背けず、常に新たな事業柱を仕込み続けてきた結果です。

当社では、中長期の様々なリスクや課題に先回りして手を打っていく「あした会議」を2006年より実施していますが、山内も、CyberZで「先送り撲滅会議」という名称で同様の取り組みを行っています。まさに先送りを撲滅し続ける文化が持続的成長には不可欠であり、2代目、3代目と社長が交代しても、変革を怠らない文化を継承することが重要です。

未来を言い訳に足元をおろそかにしたり、足元の好調に目を奪われて未来への仕込みを怠ってはなりません。そして未来をつくる重大な決断を間違えないためにも、サイバーエージェントの社長として必要な事業構想力や洞察力を代々引き継いでいくことが必要です。

山内:創業者から受けとったバトンを次の世代、さらにその次へと引き継いでいける会社とするため私も尽力します。そのためにも、まずは藤田との伴走期間でしっかりとサイバーエージェント社長として必要な力を継承できるよう努めるとともに、現在の経営戦略を引き継ぎながら、私が責任者を務めるグローバルで通用するオリジナルIP創出も遂行していきます。

Profile

  • 代表取締役社長(候補)プロフィール ※2025年11月14日現在

    氏名:山内 隆裕(やまうち たかひろ)
    生年月日:1983年8月20日
    出身地:東京都三鷹市
    趣味:アニメ、漫画、ゲーム、ボクシング

    略歴

    2006年3月 立教大学経済学部卒業
    2006年4月 株式会社サイバーエージェント入社、広告の営業に従事
    2007年7月 株式会社マイクロアド出向
    2009年4月 株式会社CyberZ設立、代表取締役社長就任(現任)
    2012年12月 株式会社サイバーエージェント 取締役就任
    2018年10月 株式会社サイバーエージェント 常務取締役就任
    2020年12月 株式会社サイバーエージェント 専務執行役員就任(現任)
    2023年9月 株式会社AbemaTV 取締役COO就任(現任)
    2024年2月 株式会社サイバーエージェント アニメ&IP事業本部 本部長(現任)

    2006年4月に株式会社サイバーエージェントへ新卒で入社したのち、株式会社マイクロアドの設立に携わる。子会社取締役を経て、2009年4月に株式会社CyberZを設立、代表取締役社長就任。フィーチャーフォン中心のモバイル広告代理店だったCyberZの事業内容をスマートフォン広告代理事業へ事業転換。他社に先駆けたスマートフォン広告参入により、サイバーエージェントグループにおけるスマートフォン広告のシェア獲得に大きく貢献。
    その後、eスポーツ事業に参入し、国内最大規模のeスポーツ大会「RAGE」を運営する。2023年には株式会社AbemaTVの取締役COOに就任。またIP事業の強化に伴い、2024年にはアニメ&IP事業本部を設立、IPの開発およびアニメプロデュースといったアニメ&IP領域の立ち上げ、拡大をけん引している。

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