コンテンツ愛が受け継がれる未来へ。ニトロプラスとサイバーエージェントの新たな挑戦

Other

本日、『刀剣乱舞』をはじめゲーム・アニメ・小説・イラストなど幅広いジャンルでコンテンツ制作を手掛ける会社 ニトロプラスのサイバーエージェントグループ入りについて発表いたしました。これまでM&Aの提案を一貫して断ってきたというニトロプラス。今回の選択についての想いや今後の展望について、サイバーエージェント代表取締役 藤田晋とニトロプラス代表取締役 小坂崇氣による社長対談インタビューを通じてお伝えします。

「毎日が文化祭」好きなことを好きなだけやって来た唯一無二のブランド

── ニトロプラスはどんな想いをもって創業した会社なのでしょうか。

小坂:「毎日が文化祭」。25年前の創業当時からこれまでを振り返ると、まさにこの思いです。ニトロプラスの強みは、好きなことを好きなだけやること。その結果、強くて独特なエネルギーが生まれ、唯一無二の個性を持った作品を生み出してきました。25年間で作った100%出資の35作品はほぼ全て黒字化しここまでやってきました。

私は、「オタクコンテンツの素晴らしさを世の中に認めてもらえるようにしよう」、そして「オタクコンテンツが人生の支えになることを証明しよう」、この精神でここまで走ってきました。今や日本を代表する産業となった漫画、アニメ、ゲームなどのコンテンツですが、私が子供の頃は、世間の風潮は厳しく怪訝な目で見られていたジャンルだったからです。

その思いを最初に具現化したのは、高校時代の漫画研究部でした。日本最大の同人誌即売会 コミックマーケットで販売部数一位を目標に掲げて活動していましたが、企画から製造・販売までの工程を自然と学び、売上目標を達成することができました。この成功体験は今のニトロプラスの風土に引き継がれています。

その後、デザイナーや編集などの仕事を経て、27歳のときプロデューサーとしてクリエイター組織を作ろうと考え、起業しました。少しずつメンバーが集まり、27年前に虚淵玄(ニトロプラス副社長・脚本家)と出会いました。私が企画した学習ゲームソフトやiモードコンテンツが大ヒットして資金に余力ができた頃、才能光る虚淵を主軸としたコンテンツ制作ブランドを作ろうと思い、1999年に創業したのがニトロプラスです(※会社法人の設立は2000年)。

── ニトロプラスを創業してからの作品・事業展開について教えてください。

小坂:創業後は、好きなものを詰め込んだコンテンツ作品を世に送り出し続けてきました。ゲームやアニメの業界から評価いただき、さまざまなコンテンツ企業から協業のお誘いをいただくようになりました。

虚淵は「Fate/Zero」「魔法少女まどか☆マギカ」「PSYCHO-PASS」とさまざまなヒットコンテンツのシナリオを生み出しました。そして、彼の作った作品に憧れて次々と才能あるクリエイターが集まってくる好循環ができあがりました。創業初期の社員には『STEINS;GATE』のシナリオ構成を手伝った下倉バイオや、BLゲームブランド ニトロキラルのライター 淵井鏑、『刀剣乱舞』ディレクター 小鞠が居ます。新人の中にも、才能溢れるクリエイターがたくさん在籍しています。また退社したクリエイターの多くが引き続きニトロプラスコンテンツのクリエイティブを支えてくれています。

そうして、優秀なスタッフが生み出したコンテンツをIPとしてライセンス運用することで、継続的で安定した財務状況を維持してきました。さらに、『刀剣乱舞』の大ヒットによって、将来的にも財政の不安を持たずに会社経営をできています。

── ニトロプラスに対してどんな印象を持っていましたか。

藤田:ニトロプラスは、コンテンツに対する深い知識と愛情、そしてそれを具現化する力を持つ「素晴らしいコンテンツを作り出す会社」です。我々が持っていないものを持っており、その組織やブランドの価値は非常に高く、本当に貴重な存在だと思います。

ニトロプラスのギアをシフトアップ、さらなる加速を目指す

── 今回のサイバーエージェントグループ入りの背景を教えてください。

小坂:事業展開は順調に進んできましたが、「毎日が文化祭」とは自発的なアクションが重視される環境です。人それぞれの熱量の中で、会社として育成や制度づくりの構築が必要だとすぐに気づきました。改善に取り組みましたが、なかなか抜本的な解決には至っていません。

これから10年のニトロプラスを見据えたときに、この課題解決を行い、小坂がコンテンツプロデュースに集中できる環境にしなくてはいけないと考えていました。

そんな折、私が社外取締役をしているネルケプランニング(以下ネルケ)が昨年サイバーエージェントの子会社になりました。ニトロプラスも多くのM&Aのお誘いをいただいてきましたが、独自の風土を失うことを恐れてすべてお断りしてきた経緯がありました。そのため、ネルケが変わってしまうのではないかと心配をしていましたが、それは全くの杞憂でした。サイバーエージェントの方々はネルケの方針や文化を尊重している印象を持ちました。そして、ネルケのM&Aの経緯を聞き、サイバーエージェントの藤田社長にお会いしてみたいと思い、紹介いただきました。

お会いした藤田社長は、ニトロプラスの組織や作ってきたコンテンツを評価してくださり、なおかつ課題解決に向けてサイバーエージェントができることをすぐに提示してくれました。出来ないことや自信のないこともフラットに話していただき、とても誠実に感じました。

── グループ入りについて、話をいただいた際の心境はいかがでしたか。

藤田:「まさかニトロプラスから話をいただけるなんて...!」と思いました。

私たちは、積極的にM&Aをしている会社ではないのですが、自分たちに能力がない部分はM&Aも視野に入ってきます。

サイバーエージェントとしてIPに力を入れていくうえで、ニトロプラスは有力な会社ですし、ご一緒できたらいいなという会社の一社でした。当然、独立系で長く続けている会社ということは、会社経営も順調であると推測されたので、特にこちらからアプローチすることもありませんでした。

そんな中で、今回ニトロプラスからお話をいただくことができ、今後とも選ばれる会社でいられるように、社内には日頃の行いが大事だと改めて伝えました。


小坂:あとは、クリエイティブのクオリティを大事にしている会社をグループ内に持たれていることもサイバーエージェントに惹かれた理由の一つです。Cygamesが開発している「アイドルマスター シンデレラガールズ」やオリジナルIPの「ウマ娘 プリティーダービー」はコンテンツ愛がないと作れないものだと思いますし、見事なコンテンツ表現をリスペクトしています。

── コンテンツのプロデュースと会社経営の違いと難しさはどのようなところにありますか。

藤田:先ほど「毎日が文化祭」で「好きなことを好きなだけやることで面白い作品が生まれる」という話がありましたが、それが事業の源泉だと理解することがイコール経営にも繋がっています。

つまり、何が大事かをちゃんと見抜いて、そこから生み出されるものが非常に大きな可能性を持っているということ。それを損なってしまったら、はっきり言って価値を破壊してしまいます。

私もABEMAでたくさんの幅広い分野のコンテンツを扱っている中で、自分が精通している分野では、そのジャンルへの深い理解や愛情をもってコンテンツを作っています。特に麻雀が分かりやすい例ですが、自分自身が得意であるから、プロ麻雀リーグであるMリーグを立ち上げたり、ABEMAで麻雀チャンネルを立ち上げてきました。サイバーエージェントは、特定の分野に精通している社員のことを高く評価する会社です。

プロデューサーはコンテンツへの愛がないといけませんし、経営者の立場でもそれを理解できないといけません。二重人格のように切り分けるのは難しいことですが、切っても切り離せないものです。

小坂:クリエイターのマネジメントや環境づくりといった経営と作品作りは、密接でセットです。しかし私自身は、どちらかというとコンテンツプロデュースに向いていると感じています。

クリエイターは、好きなことを好きなだけやるのが得意ですが、会社として運営している以上、売上目標などのビジョンを持って取り組むことが必要になります。作品がメディアミックスされていくことによって、収益を上げて、リバイバルする。そういった作品が増えることで、新しいコンテンツを作る資金になる。このような循環をイメージしながら、みんなにもそれを伝えて取り組んできました。私のスタイルでやる以上、経営から離れることは難しいと思っています。

ただ、我流で経営してきた部分もあるため、今回のグループ入りでは約100社(※2023年9月期時点で90社)の子会社を経営しているサイバーエージェントの力を借りて、社内の育成や評価システムの構築を進めていきたいです。社員が安心して力を発揮できる場を作ることで、それが結果的にいい作品をつくっていくことができると思っています。

── サイバーエージェントとしては、経営管理や人事制度などをサポートをしていくことになりますか。

藤田:
私たちでそれをフォローしていくことはできると思いますが、ゲームをはじめコンテンツ産業では「ヒットを出せた会社が経営が上手い」ということになりますから、その順序を間違えてはいけません。

私自身、ゼロから会社を作って26年が経ち、規模が拡大してくると財政面やスタッフの数など、できる規模の大きさが全く違ってくることを実感しています。そういった面では、ニトロプラスがこれからさらなるIPを展開していく上で、力になれる自信があります。

ですが、結局はいいものを作っている会社が、経営が上手いということです。本当に大事なものを見失わないようにしながら、フォローしていきたいですね。

小坂:好きなことを好きなだけやることで出来上がる個性のある作品づくりと、結果として同業者のファンが増えて、いいクリエイターが集まり、さらに良いものが作れるという好循環。この社風は守って行きたいです。

ただ、いいコンテンツを作るために「数」が必要な時ってあるんですよね。サイバーエージェントと連携することで、ブレイクスルーできる可能性があると思ってます。

── 今後挑戦していきたいことについて、お聞かせください。

小坂:ニトロプラスの最終目標として、いわゆる「オタクコンテンツが人生の支えとなることを証明したい」と考えています。サイバーエージェントとの新体制で、このビジョンを表現できる画期的なコンテンツを生み出していけるよう、私自身コンテンツプロデュースに一層注力し、ニトロプラスにおける制作のギアをシフトアップさせます。社名のニトロとは「ニトロ化合物」からつけたもので、自動車のエンジンに添加するともの凄い爆発で加速します。我々のクリエイティブエンジンにニトロをプラスしてコンテンツ業界を疾走してきましたが、いよいよギアを上げてトップスピードでコンテンツ制作に臨みたいと思います。

ニトロプラスはこれまでゲームやアニメの業界で様々な会社と協業してきましたが、今後ともコンテンツごとに最適なパートナーと協力していきます。コンテンツ産業において世界の垣根が無くなっている中、日本発のコンテンツはもっとグローバルに広げられるはず。ニトロプラスの唯一無二の個性を持った作品をサイバーエージェントとともに質を高めて世界に送り出していきたいです。

コンテンツの継続というテーマのもと生まれた『刀剣乱舞』は来年2025年1月14日に10周年を迎えます。1月18日、19日には「大本丸博」という業界最大規模の公式イベントを幕張メッセで開催予定です。そして、さらに15周年、20周年を目指していく際にサイバーエージェントのサポートは大きな支えとなるはずです。

私がコンテンツプロデュースに注力することによって、今まで以上の数とクオリティの作品を世に送り出すことができると思っています。嬉しいことに、ニトロプラスやニトロオリジン、ニトロキラルのディープなオリジナル新作にこだわり作り続けてきたスタイル、そこからしか育たないクリエイターとブランドについて、藤田社長からもご賛同いただきました。新作への挑戦も後押しいただいており、大変感謝しています。

また、ニトロプラスだからこそできる派生コンテンツがあると思っています。クリエイターの先輩方が作り上げた既存のコンテンツに対して、私たちはリスペクトの念を持ちながら新たなプロダクトを作っていますし、それに対する恩返しをしたいという思いがあります。これまでに「仮面ライダー」や「ゴジラ」にも携わらせていただきました。こういったものを手掛けることで、日本を代表する既存IPの魅力の啓発に貢献していきたいです。

── サイバーエージェントもオリジナルIPの創出プロジェクトを始動させたタイミングです。ニトロプラスのグループ入りで期待していることやサイバーエージェントグループとしての展望も教えてください。

藤田:私の期待としては50:50です。半分は『刀剣乱舞』をさらに大きく発展させていけるように、私たちが力になれるようなことは一緒にやっていきたいです。残り半分はオリジナルIPに力を入れていく中で、ニトロプラスがグループに居ることは大変心強く、新しいIP創出に一緒に取り組むことができたら嬉しいです。

── 最後に、小坂社長のコンテンツ作りへの想いをお聞かせください。

小坂:私はコンテンツは愛で作るものだと思っています。これまで先人が生み出した魅力的なコンテンツから愛を受け取って、その愛を注いで愛されるコンテンツを作っていきます。そのコンテンツからまた愛を受け取った方が次のクリエイターとなって、コンテンツ愛が脈々と受け継がれていく未来を信じながら。新体制でも突き進んでいきます。

ニトロプラス公式アカウント

ニトロプラス公式X
https://twitter.com/nitroplus_staff

ニトロプラス公式YouTubeチャンネル「NITRO PLUS Channel」
https://www.youtube.com/user/NitroplusChannel

ニトロプラス公式Facebookページ
https://www.facebook.com/nitroplus

ニトロプラス公式ニコニコチャンネル「ニトロプラスチャンネル」
http://ch.nicovideo.jp/nitroplus

この記事をシェア

公式SNSをフォロー

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • Line

記事ランキング

アジアで大ヒット『青春18×2 君へと続く道』藤井道人監督が語る、映画づくりの内核 

Other

台湾を筆頭にアジアで大きな反響を呼んでいる映画『青春18×2 君へと続く道』。
本作は、映画『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀賞を受賞し、興行収入30億円の大ヒットを記録した『余命10年』など、数々の話題作を生み出してきた藤井道人が監督・脚本を務める、初の国際プロジェクト。
サイバーエージェントが製作幹事を務め、BABEL LABELが制作を手掛けた初めての作品でもあります。
BABEL LABELの山田社長は「藤井がこれまでの人生での成し得てきた環境全てを活かした作品」と評す本作。
5月3日の日本公開を前に、藤井監督が率直に思いを語ったインタビューをお届けします。監督の内面、思考、そして今目の前に広がる景色とは。藤井監督の現在地を深掘りしていきます。

Page Top