2.5次元ミュージカルの先駆者ネルケプランニング、原作の魅力を最大限に引き出す舞台制作へのこだわり

技術・デザイン

~創立30周年、長く太く100年継続できる企業へ~

今年で創立30周年を迎えた舞台制作会社ネルケプランニング。2.5次元ミュージカルの先駆者として知られる同社は、ミュージカル『テニスの王子様』、ミュージカル『刀剣乱舞』など数々の人気作品を手がけ、日本のエンターテインメント業界に新風を吹き込んできました。

お客様に長く愛されてきた理由として「原作の再現度」を挙げる当社は、どのようにして舞台をつくりあげているのか。今回は同社の舞台制作の裏側や魅力、今後の展望について社長の野上に話を聞きました。

原作の再現度を高めるには?
舞台制作のこだわり

─ ネルケプランニングは原作ファンを裏切らない「原作の再現度の高さ」を強みとされています。

ただ役者が衣裳を着ているだけにならないよう、原作の魅力を最大限に引き出せるような舞台ならではの演出を加えることで、お客様に新たな感動を提供できるように心がけています。

例えば、衣裳は舞台で映えるよう布の種類からこだわって決めています。また、照明や音響のスタッフは単に機械を操作しているのではなく、役者の心情を一番表現できるようにと一体となって舞台をつくりあげています。舞台美術も、原作をそのまま再現するだけではなくその後の場面でも違和感なく使用できるかを考えるなど、各セクションのプロフェッショナルのアイデアを集結させ、劇場という空間で最大限の効果を発揮できるよう、公演ごとに工夫を重ねています。
 

ミュージカル『新テニスの王子様』The Fourth Stage 
©許斐 剛/集英社・新テニミュ製作委員会
ミュージカル『新テニスの王子様』The Fourth Stage
©許斐 剛/集英社・新テニミュ製作委員会

このように最高の舞台を提供するためにも、原作の読み込みには特に力を入れています。漫画やアニメ、ゲームの魅力を舞台で表現するためには、原作の意図を深く理解する必要があり、そのうえでどうすれば立体的に表現できるか、スタッフ全員でアイデアを出し合っています。原作の先生からも「(自分の作品だけど)また新しい魅力に気付けた」とお声がけいただくこともあり、これは最高の褒め言葉ですね。

  野上祥子     /  株式会社ネルケプランニング 代表取締役社長  
大学在学中に劇団制作を経験し、1998年に株式会社ネルケプランニングに入社。同社制作の舞台やTVアニメ、イベントのキャスティングを担当し、2016年に社長に就任。2.5次元ミュージカルを中心に多ジャンル作品を生み出し、ファミリー向けのWelcome Kids Projectを立ち上げるなど新たなチャレンジを続けている。代表作はミュージカル『テニスの王子様』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」、劇場版アニメ「雲の向こう、約束の場所」(監督:新海誠)他。
野上祥子 / 株式会社ネルケプランニング 代表取締役社長
大学在学中に劇団制作を経験し、1998年に株式会社ネルケプランニングに入社。同社制作の舞台やTVアニメ、イベントのキャスティングを担当し、2016年に社長に就任。2.5次元ミュージカルを中心に多ジャンル作品を生み出し、ファミリー向けのWelcome Kids Projectを立ち上げるなど新たなチャレンジを続けている。代表作はミュージカル『テニスの王子様』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」、劇場版アニメ「雲の向こう、約束の場所」(監督:新海誠)他。

─ ファンの方一人ひとりが登場人物に対して異なるイメージを持つなか、多くの方を夢中にさせるための工夫はあるのでしょうか。

キャスティングには特別なこだわりがあります。私自身、キャスティング出身ということもあって、役者の中にある“キャラクターの種”を見出すことに力を入れています。

たとえばミュージカル『テニスの王子様』のオーディションは、3~4ヶ月かけて何度も選考を行います。技術はもちろんですが、そのキャラクターになりきる覚悟や熱量を持っているかを重視しており、長期間にわたるオーディションはそれを見極めるためのプロセスだと言えます。決定するまで数回のオーディションを経ることで次第に覚悟が決まっていくんですよね。その後、才能とキャラクターの種に水を注ぎ、技術力を高めていくお手伝いをすることで、舞台を通じて役者として成長していきます。ミュージカル『テニスの王子様』が新人の登竜門と言われる所以はここにあると思います。

─ お客様も含めてキャストの成長を見守っていくんですね。

演劇は総合芸術だと考えており、役者、スタッフ、そしてお客様、この三位一体があって初めて素晴らしい作品が生まれます。ミュージカル『テニスの王子様』は昨年で20周年を迎えたロングヒット作品で、お客様によっては今のキャストよりも長いテニミュ歴の方もいらっしゃいます。皆さまから応援する気持ちがすごく伝わるので、何年もかけて成長していくのを近くで一緒に歩める喜びというのもあるのかもしれないですね。

─ 高いクオリティの舞台を提供するための社員育成はどのような考え方で取り組んでいますか?

プロデューサーや役員による研修も行っていますが、メインは現場で直接学んでもらいます。特に大切にしているのは、失敗を恐れずにチャレンジできる環境づくりです。成功体験も失敗体験も経験してもらいながら、自分で決断できることを増やしていき、上司が一緒に責任を取るという姿勢で、社員の挑戦を後押ししています。ただ、会社として体系立てて育成ができているわけではないので、ここは今後の課題でもありますね。
 

2.5次元ミュージカルを加速させた
ミュージカル『テニスの王子様』

─ 2003年に制作・上演したミュージカル『テニスの王子様』が転機となり、2.5次元ミュージカルの制作が増えていきました。それまでも漫画やアニメ、ゲームが原作の作品はありましたが、ミュージカル『テニスの王子様』は何が違ったのでしょうか。

原作漫画の『テニスの王子様』は、主人公だけでなく、全ての登場人物がかなり魅力的だということです。それらのキャラクターが一同に集まって、目の前の相手に勝つことだけを考えて真剣に試合をする姿を演劇として描けたらどれだけ素敵なんだろうという話から立ち上がった企画でした。

当時、一社員として現場にいた私自身はまさかここまでヒットするとは思っていなかったんです。しかし、初日公演の反響は予想を上回るもので、お客様が休憩時間に「絶対観た方がいい!」と電話やメールで口コミを広めてくれ、翌日からは当日券を求めて連日長蛇の列となりました。

自分が好きなキャラクターが現実の世界に存在していたら・・・と想像して夢を膨らませるようなことって、多くの人が一度は経験すると思います。その想像を具現化できたら、喜ぶ人がいるということを実感できたのがこの作品でしたね。ミュージカル『テニスの王子様』は、その後、漫画やアニメ、ゲームなどの2次元コンテンツの舞台化を進めていくための起爆剤になりました。また、同じ作品でも観る場所や日により体験が変わるというライブコンテンツならではの特性から、何度もリピート観劇してくださる方々が増えたのもこの作品がきっかけだと思います。
 

ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海 
©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会 
※2024年で21周年を迎える
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海
©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会
※2024年で21周年を迎える

─ 小劇場の制作から始まり、その後アニメのキャスティング、そして2.5次元ミュージカルの制作へと事業を広げていきました。どのような戦略で成長させてきたのでしょうか。

創立以来、いかにお客様に楽しんでもらうかを最優先に考えてきました。この10年間は、「2.5次元ミュージカルをより多くの人々に知ってもらう」という目標を設定し、有名なタイトルに取り組み、ファン層を拡大させてきました。今後は、さらに新たな作品へ挑戦していきたいです。

長く太く100年継続できる企業を目指す

─ 「長く太く100年継続できる企業を目指す」というビジョンを掲げている中、理想と比較して何点をつけますか。

社員に対しては、ビジョンに賛同し明確な目的を持って一緒に走ってきてくれたので100点、会社としては100年に向けての伸び代があるという点で85点でしょうか。残り15点を得るためには、現状60%弱占める2.5次元ミュージカル市場のネルケの作品シェア率を引き上げることや、自社の劇場を持つこと、さらには海外展開を本格化させることなどが挙げられます。

─ 2.5次元ミュージカルの未来について、どのようにお考えですか?

人口減少を迎える日本において、観客数の減少というのは舞台を扱う弊社としては大きな事案だと受け止めています。ただ、舞台を含むエンターテインメントというのは一過性の流行りではなく、人々の心を豊かにし、生きる活力を与え続けるという普遍的なものだと思っていて。私たちとしてはより面白いもの、わくわくするものを丁寧につくり続けることが大切だと思っています。

また、海外展開にも力を入れていきたいですね。今年10月にはニューヨークで「進撃の巨人」-the Musical-の上演を予定しており、日本のコンテンツの魅力を世界に発信し、新たな観客層の開拓と日本ファンの再活性化を目指します。

─ 次の30年に向けての展望をお聞かせください。

社員が幸せに働き、その幸せがお客様に伝わり、さらにその幸せが社会に広がっていく。そんな幸せの連鎖を生み出す企業でありたいと思っています。そのために、ガバナンスの強化と同時に、創業以来変わらない社員の熱量を正しく導いていくための体制を整えています。

また、100年続く企業にするためにも、次世代への継承も重要です。私自身、ファウンダーの松田からバトンを受け取りましたが、いずれは次の世代にバトンを渡す時が来ます。その時までに会社を成長させ、より安定した基盤を築くことが私の使命だと考えています。

30周年記念イベント『ネルフェス2024』について

ネルケプランニング30th ANNIVERSARY『ネルフェス2024』はネルケプランニングがプロデュース・制作するさまざまなタイトルが一堂に集結するイベント。次のフェーズにいくための節目としても実施します。いつも応援してくださるお客様、そしてそれぞれのコンテンツに関わってくださっている方々への大感謝祭となるよう、会社全体で一丸となって取り組んでいます。

「フェス」の名の通りお祭りなので、どなたでも楽しめるようなイベントを目指しており、数々のコンテンツが集まることで、私たちがどのような活動を行っている会社なのかがわかる見本市のような役割も担っています。観たことのない作品にも触れてもらい、その魅力に気づいてもらえたら嬉しいですね。

─ 今回「ABEMA PPV ONLINE LIVE」での配信も予定しています。どのような方に見てもらいたいですか?

子育て中の方、介護をしている方、病気や怪我で会場に足を運べない方など、あらゆるライフステージにある方々に、この配信の利便性を最大限に感じてもらいたいですね。アーカイブは1週間残るため、ご自身の都合に合わせて、視聴することが可能です。ぜひペンライトを手に取り、楽しんでください!


■ABEMA PPV ONLINE LIVE/ネルケプランニング30th ANNIVERSARY『ネルフェス2024』独占生配信概要

▼概要
「ABEMA PPV ONLINE LIVE」で独占生配信が決定したネルケプランニング30th ANNIVERSARY『ネルフェス2024』は、イベントの構成・総合司会を川本成、構成・総合演出を小林顕作が担当。ミュージカル『新テニスの王子様』、ミュージカル『刀剣乱舞』、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』、舞台「パタリロ!」、少女☆歌劇 レヴュースタァライト、MANKAI STAGE『A3!』、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage、舞台『魔法使いの約束』、舞台「よんでますよ、アザゼルさん。」、夏休み!オン・ステージ「パペットミュージカル すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」、ミュージカル「七色いんこ」、神戸セーラーボーイズの豪華タイトルが勢ぞろいする。

「ABEMA PPV ONLINE LIVE」で独占生配信。

▼配信日時
2024年8月20日(火)17時開演(配信開始16時30分~)

▼見逃し配信期間
2024年8月27日(火)23時59分まで

▼視聴料金
3,000円 
※アプリ内購入では、別途300円の手数料が発生

▼販売期間
2024年7月12日(金)18時~2024年8月27日(火)20時

▼配信URL
https://abema.tv/live-event/1e9a8727-e3ff-4849-bfdd-a15ba178e47b

 

ミュージカル『新テニスの王子様』The Fourth Stage
https://www.nelke.co.jp/stage/tennimu2_2024/

【東京】 2024年8月9日(金)~8月18日(日)日本青年館ホール
【愛知】 2024年8月23日(金)~8月25日(日)一宮市民会館
【大阪】 2024年8月30日(金)~9月8日(日)SkyシアターMBS
【東京凱旋】 2024年9月13日(金)~9月23日(月)日本青年館ホール

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ー実世界でのニーズに応えるAIやロボティクス技術の開発とはー

インターネット上だけでなく、私たちが生活するリアルな実世界において、AIサービスを実現するための基盤研究に取り組むAI LabのActivity Understanding(行動理解)チーム。2023年から始まった研究領域ですが、既に当社が展開するリテールメディア事業において実装が進んでいます。

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Activity Understandingチーム立ち上げ当初から研究を行う3名のコメントを交えながら、紹介します。

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