「Build Up Always」
サイバーエージェントグループ全体の技術戦略

技術・デザイン

先日、サイバーエージェントのエンジニア・クリエイターがお届けする技術カンファレンス「CyberAgent Developer Conference 2022」を開催しました。本カンファレンスでは「Build Up Always」をテーマに、AI・インフラ・バックエンド・ネイティブ・フロント・セキュリティ・クリエイティブ・3DCGなど様々な領域において、これまで積み重ねてきた挑戦の中で得た知見や、最新の取り組み状況などについて、厳選した26のセッションをお届けしました。この記事では、基調講演の中から常務執行役員(技術担当)長瀬慶重の発表の様子をお届けします。

技術組織としての変遷を振り返り

私からは、サイバーエージェントグループ全体の技術戦略についてご紹介します。当社は創業以来、事業領域を拡大し、20年以上サステナブルな成長を実現してきました。

広告事業からスタートし、2007年には「技術のサイバーエージェント」を宣言し、本格的にテックカンパニーへと舵を切りました。その後、15年余り、変化の激しいインターネット業界の中で「技術」を武器に挑戦を積み重ね、数多くの事業を立ち上げてきました。

所属するエンジニア・クリエイターは2,500人を超え、技術者の連結従業員に占める構成比率も42%となりました。2007年に「技術のサイバーエージェント」になることを宣言してから15年がたちましたが、技術組織として確実に成長することができたと思っています。

こちらは、昨年1年間の技術発信数です。サイバーエージェントの技術者の特徴のひとつに、積極的なアウトプットが挙げられます。社外でのアウトプットを通じ、たくさんの成長機会を得てほしいと考えています。また、オープンな技術の上で成り立つ業界だからこそ、業界の発展に積極的に貢献したいと考えています。

社外での活発なアウトプットはアカデミックな領域でも同様です。昨年度の実績では、広告事業を中心に、大学との共同研究は約30、各分野のトップカンファレンスや国際論文誌での採択数は50本以上となりました。

競争力は変化対応力

「技術」は、ユーザーや社会に対して新たな価値を創造し、その結果、会社の成長に貢献するものです。当社の技術者はサービスを作ることへの情熱を絶やしません。だからこそ、技術組織としての戦略を考える上で、技術者の好奇心や情熱をいかに会社の成長につなげるかということを大事にしています。

戦略を考える上で、もうひとつ大事なことがあります。それは技術によって会社の競争力を生み出すことです。サイバーエージェントでは「変化対応力」を掲げ、徹底的に磨き上げてきました。変化の激しい業界の中で持続可能な成長を実現するために不可欠なものだと考えています。

この変化対応力は、Strategy、Structure、Culture、HR、4つから構成されています。今回はStrategyとCultureに絞ってお話ししたいと思います。

サイバーエージェントのカルチャーを一言で表現すると、「オーナーシップカルチャー」です。これは会社の方向性であり、社員同士の安心と信頼を生み出すものです。サービスに対するオーナーシップ、テクノロジーに対するオーナーシップ、そしてチームに対するオーナーシップです。エンジニア・クリエイターには、会社の発展に向けて積極的で主体的な行動を期待しています。変化に対して何より大事なのは意思決定と実行のスピードです。そのスピードを担保するために一人一人が考え、行動できる組織でなければなりません。
 

次に、オーナーシップカルチャーをどのように醸成しているかについて紹介します。
1つ目は採用です。カルチャーフィットする人材をどれだけ採用できるかがとても大事になります。当社は「採用に全力を尽くす」を掲げ、採用に協力することがDNAとして染みついています。年間で延べ1,000人の技術者が採用に協力し、一緒に働きたい人を自分たちで採用しています。

2つ目は心理的安全性です。これは、オーナーシップを発揮するための空気づくりになります。当社のミッションステートメントには、「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」と掲げています。また、エンジニア評価項目にフォロワーシップを加え、挑戦する仲間を支援することを期待しています。

3つ目は機会と裁量です。オーナーシップを発揮し行動するための大事なものが、提案する機会と実行するための裁量で、これを象徴するものが「あした会議」になります。

「あした会議」とは、サイバーエージェントの “あした” に繋がる新規事業や課題解決の方法などを提案、決議する会議のこと。年に1~2度合宿形式で開催し、執行役員が事業責任者や専門分野に長けた人材を選抜しチームを編成。新規事業の創出、経営課題の解決の場として機能し「あした会議」で設立が決まった子会社は30社以上にものぼります。

技術者による「あした会議」も毎年行っており、これまで決議された技術施策は45施策に上ります。個人のオーナーシップを醸成するには、提案する機会とそれを実行する裁量が不可欠です。この「あした会議」以外でも、さまざまな機会を通じてオーナーシップを発揮しています。
 

4つ目が評価制度です。評価制度は、どのような人材を評価するかという会社のメッセージです。技術者の評価において技術力と同様に、マインド・行動を大事にしています。13段階あるグレードに対して期待するオーナーシップ、フォロワーシップの高さを設定しています。

このように、私たちは採用、心理的安全性、機会・裁量、評価制度の4つを通してオーナーシップ・カルチャーを醸成してきました。今後は越境をテーマに、自身の領域に縛られず、活躍できる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

変化対応力を実現するための「徹底深化戦略」

私たちの技術戦略を一言で表すと徹底深化戦略です。各事業領域を徹底的に深化し、競争力を生み出すことにあります。各事業領域で結果を出すためには、「最高」か「最速」でなければなりません。この「最高」か「最速」を実現するために、各事業領域で競争力を生み出し徹底深化が必要だと考えています。

技術の高度化とコモディティ化が進んだことで、誰もが簡単にサービスをつくれる時代になりました。この流れは今後より加速し、企業の競争力は事業領域での深化レベルに依存します。広告領域では2017年にAI Labを設立し、広告、AIにおいて精力的な社会実装に取り組んできました。また、クリエイティブ領域にも積極的に投資し、テクノロジーの力で広告効果を飛躍的に高めることに成功しました。

2016年には、新しい未来のテレビ「ABEMA」を開局しました。それから約6年、いつでもどこでもつながる社会インフラを実現すべく、マルチプラットフォームの開発技術や動画配信技術に積極的に投資を行っています。

比較的歴史の長いメディア事業、ゲーム事業においては、基盤プロダクトの開発に取り組んできました。昨年、基盤プロダクトを対象に独自のグレード制度を新設し、より一層基盤技術の強化に励んでいます。

各事業領域で徹底深化戦略をリードするCTO。CTO相当の職務を持つリーダーは30名に及びます。どれだけ優れた戦略も、実現できなければ意味がありません。私たちは抜擢と育成を通して技術幹部を育成し、戦略の推進力を加速させてきました。

技術領域の深化も競争力につながります。複数の事業に共通する技術領域を深化することで、スケールメリットを享受することができます。現在、AI、データ、Developer Productivity、クロスプラットフォーム、SREなどの技術領域が該当します。

Developer Productivityは、プロダクトの競争力を高める上で無視できないものとなりました。現在、CI/CD、フィーチャーフラグの領域で積極的に技術開発に取り組んでいます。OSSとして公開する「PipeCD」はCloud Native Landscapeに参加し、世界で認められるプロダクトに成長しました。

これからも、事業領域と技術領域の徹底深化をかけ合わせることで、サイバーエージェントグループとしての競争力を加速させていきます。

市場の変化が目まぐるしい中、変化し続けなければ停滞、衰退が待っています。変化を楽しみ、挑戦にワクワクする人材こそが成長戦略の要だと考えています。そのために、成長機会の提供やリスキリングセンターなどの人事制度がとても重要になります。今後も、技術者が長く活躍し続ける会社を作るために、たゆまぬ努力を積み重ねてまいります。

CyberAgent Developer Conference 2022

「CyberAgent Developer Conference 2022」のアーカイブ動画・登壇資料は公式サイトにて公開しています。ぜひご覧ください。

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2022年より導入した「主席認定制度」において、10年以上当社のセキュリティ強化に真摯に向き合い続けている野渡が、主席エンジニアの1人に選出されました。

経営層、各開発責任者が絶大な信頼を寄せる野渡ですが、主席エンジニア就任時の思いを「10年以上にわたるチームの取り組みを、改めて評価してもらえたようで嬉しい」と語ります。長年セキュリティ領域に携わってきて感じる最近のセキュリティインシデントの傾向や、サイバーエージェントならではのセキュリティ対策のあるべき姿について話を聞きました。

なお、野渡が統括するシステムセキュリティ推進グループについて、詳しくは「『免疫』のようなセキュリティチームを作りたい~主席エンジニアたちが向き合う情報セキュリティ対策~」をご覧ください。

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