累計会員数2,000万人の恋愛を技術で支える!全国初のマイナンバーカードを利用した「かんたん独身証明」

少子高齢化が進む日本において、出会いの機会創出は重要な社会課題となっています。マッチングアプリ「タップル」は、2024年4月末時点で延べ2,000万人が利用する国内最大規模のマッチングアプリとして「恋愛総量の最大化」というパーパスのもと、テクノロジーによる課題解決に取り組んでいます。
2025年4月「タップル」は全国初となるマイナポータル連携による「かんたん独身証明」機能をリリースしました。この革新的な機能は、マイナンバーカードを活用することで、信頼性の課題解決に技術的なアプローチで挑んだものです。
本記事では、この全国初の取り組みを技術面で支えたバックエンドエンジニアの三宅が、開発の舞台裏から社会的意義、そして「恋愛総量の最大化」実現に向けた技術的な展望について語ります。
Profile
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三宅 雅也 (株)タップル 技術本部
タップル所属バックエンドエンジニア
大学卒業後、2023年新卒入社。マッチングアプリ「タップル」における基盤のシステムリプレイスや新機能の開発に携わっている。
マッチングアプリでは全国初!マイナンバーカード連携による「かんたん独身証明」
── 「タップル」は2024年4月末時点で延べ2,000万人が利用しています。サービスのバックエンドを支えるエンジニアとして「タップル」のプロダクト的な価値や社会的な意義についてどう感じていますか?
三宅:当社がパーパスとして掲げている「恋愛総量の最大化」は、少子高齢化という社会課題に対応するものだと思っています。マッチングアプリである「タップル」は、少子化対策の一歩として、出会いや恋愛の機会を提供することで、社会的意義を持つプロダクトだと考えています。
私はエンジニアとして、テクノロジーで「恋愛総量の最大化」を実現したいと考えています。特にオンラインを起点とする恋愛においては、健全な出会いや安心・安全なコミュニケーションの担保が必須だと考えています。
例えば「独身とプロフィールに記載している人が本当に独身なのか分からなくて不安」といったユーザーの声もあります。また、日々やりとりされるコミュニケーションの中で、ユーザーが安心してアプリを使えるようにするための仕組みを作ることも重要と考えています。
── 確かにロマンス詐欺や投資詐欺、不正な出会い目的などは、国内だけでなく世界的にも社会課題となっていますね。テクノロジーでどのように解決していくのでしょうか?
三宅:2025年4月にリリースした「タップル」からマイナンバーカードをかざして独身証明ができるという機能「かんたん独身証明」の開発を担当しました。
「かんたん独身証明」は「タップル」が「マイナポータル」と連携し、マイナンバーカードをスキャンするだけで独身証明ができるものです。認証されると「タップル」のプロフィール画面に独身証明マークが表示されるようになります。
私は、マイナポータルと「タップル」を連携する基盤の開発や、実際の独身証明機能の実装を担当しました。

── 2024年9月に、デジタル庁、警察庁からSNS型投資・ロマンス詐欺対策として、マッチングアプリアカウントでの本人確認にマイナンバーカードの活用を業界団体に要請しています。「タップル」もすでに本人確認の機能を提供していますが、マイナポータルとの連携で独身証明は、マッチングアプリとしてはデジタル庁でも初の案件となり、非常に早くに対応している印象です。このスピード感にはどういった背景や課題感があったのでしょうか?
三宅:私は過去のプロジェクトで、ネットメディアの健全化を目的に開発された監視基盤システム「Orion」と連携しながら「タップル」の監視機能のリアーキテクチャを担当していました。その際、不正ユーザーの巧妙な誘い出しの実態を見てきました。詐欺を目的としたユーザーが、本人確認をすり抜けようとする手口は非常に巧妙で、一般の方には判別できないレベルのものが多いです。
SNSの発展によってこういった被害は世界的にも顕在化し、国際会議でも議論されている状況です。そんな中、当時のデジタル庁の大臣からの発表もあり「タップル」でも行政の受け入れが整い次第、最速で動くことをチームで心がけていました。

マイクロサービスアーキテクチャが支えたマイナポータル連携
── マイナポータルとの連携をするにあたって、デジタル庁ではどんな承認が必要なのでしょうか?
三宅:まずデジタル庁が要求指定する、セキュリティや運用ポリシーに関する確認項目に対応する必要があります。特に、セキュリティ的な脆弱性診断に関しては、OWASP(Open Web Application Security Project)やJSSEC(日本スマートフォンセキュリティ協会)のような団体が提供している脆弱性ガイドラインに準拠していることの証明が必要です。そのために、セキュリティ診断やシステム監査などを実施し「タップル」が「マイナポータル」と連携するにあたって信頼できるサービスであることの証明をしました。
開発期間は約4か月。そこからテストや脆弱性診断で1か月程度要しました。デジタル庁の審査などもあって、無事に2025年4月のリリースに至りました。
── 対応にあたって技術的なポイントになった点を教えて下さい。
三宅:「タップル」は運用開始して10年が経過しますが、直近でシステム全体をマイクロサービスアーキテクチャに再設計し、拡張・保守・運用の面で柔軟性をもたせるためのシステムリプレイスを遂げていました。
モノリシックアーキテクチャで10年近く運用されてきたサービスを維持しながらマイクロサービスアーキテクチャに刷新するのは、技術的にも要件的にも非常に難易度が高い作業でした。しかし、依存性を考慮して優先すべきものから順序立てて移行を進めていく形で、段階的にシステムの移行を行ってきました。
この刷新のおかげで、マイナポータルと連携する機能と、実際にその人が独身かどうかを判定する「タップル」の基幹システムを、切り離して開発・運用しています。今後、独身証明のようなマイナポータルと連携する機能を追加しやすい状態になっており、マイクロサービスアーキテクチャのメリットが最大に活かせたと実感しています。

安心・安全な出会いへの技術的アプローチ
── 実際にこの独身証明機能をリリースした後の反響について教えて下さい。
三宅:日経新聞やNHKのニュースなど、主要な媒体で報道され、大きな反響がありました。ニュースをきっかけに「かんたん独身証明を使ってみた」というユーザーの声もありました。
「かんたん独身証明を利用している人は、お付き合いしても一定の安心感がある」というステータスが立ち、ユーザーを安心させられるのは、まさに技術による課題解決なので、反響に手応えを感じました。また、主要な媒体でニュースにとりあげられることで、あらためて社会的な価値やニーズを実感しました。
独身証明をプロフィールに表示するユーザーが増えれば増えるほど、安心・安全に「タップル」が利用できるので、チームとしても結果につながりました。
── AIを活用したり、システムの裏側をついたりするなど、巧妙化する不正利用や詐欺に関して、今後はどういった対策や技術的な水際対策が考えられますか。
三宅:「タップル」では、他のSNSアカウントや電話番号を知らせるなどのコミュニケーションを禁止しています。その一方、巧妙にIDを聞きだして、投資詐欺やロマンス詐欺につなげていこうとする手口もあります。監視ツール「Orion」と連携しながら、機械学習と有人監視を組み合わせた対策が欠かせません。
ただ「Orion」開発責任者のインタビューにもあるとおり、ほぼ全てユーザーの方は健全に使っているのですが、ごくわずかな不正ユーザーの利用を防ぐために監視が必要となっています。つまり、多くのユーザーの安心安全を担保するためにも、エッジケースに対応していく必要があると言えます。
── 今後、マイナンバーカードやマイナポータルとの連携を通してどんなことを実現したいと思いますか?
三宅:マイナンバーカードやマイナポータルとの連携ができる点は、とても大きな可能性を秘めていると思っています。現在、ユーザー情報はユーザーが自由に入力していて、自己申告の情報だよりになっている状態ですが、マイナンバーカードの情報を元に個人の属性情報の証明が可能になることで、より安心・安全にアプリを利用できる状態を実現することが可能になります。
また、マイクロサービスアーキテクチャになったことで、新機能の開発や新しい法整備に対応する際も、迅速に開発できる状態になっています。
今回は「マイナポータルとの連携」に対応となりましたが、ユーザーの声をもとに新しい企画や、新サービスのリクエストに応えるなど、よりユーザーが幸せに使える機能を提供できればと思っています。

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