学生時代の研究成果をプロダクトに還元。
マッチングアプリ「タップル」で挑戦を続けるiOSアプリエンジニア
マッチングアプリ「タップル」で様々な技術的チャレンジを続けるiOSエンジニアの横山。誰もがありのままの自分で、安心してパートナーを探せるようなサービスにしていきたいと話します。利用者にそうした体験・価値を提供するために、画像処理や機械学習を用いた学生時代の研究成果をいかすだけでなく、最新技術も積極的に取り入れて開発に取り組んでいるとのこと。今回は、技術者としてこれまでどのような挑戦をしてきたのか、またこの先どのようなことを成し遂げたいと考えているのかなどを聞きました。
Profile
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横山新
株式会社タップル iOSアプリエンジニア
2020年サイバーエージェント入社。同年よりマッチングアプリ「タップル」の開発を担当。「デートプラン」や「おでかけ」機能のリニューアルを経験。iOSDC登壇経験あり。
学生時代の研究成果をいかしバリューを発揮
── 今どのような業務を担当していますか?
マッチングアプリ「タップル」のiOS開発を担当しています。新しい体験の創造や既存機能の品質向上に取り組むチームで、次に打ち出す新しい施策の考案をしています。
── 学生時代は、どのような研究に取り組んでいましたか?
ビュッフェを対象とした料理追加指示システムの開発をしていました。ビュッフェで提供する料理の品質を保ちつつ、利用客の満足度向上や食品ロスの削減を目的とした研究です。多くの店舗では、スタッフが目視で料理の状況を確認し、厨房に追加オーダーしていると思います。様々な作業と並行して確認をしていることが多く、料理が無くなったまま放置されてしまうなど、サービスの質にバラつきが出ることがあります。その課題の解決手法として、画像処理や機械学習を混ぜながら提案、実証し、システム開発をしていきました。
── 実際に、業務を進めるうえで役に立ったことはありますか?
研究成果は、2020年8月に追加した「フィルター機能」にいかすことができました。同年6月にリリースした「ビデオチャット」に対して「背景を隠しながらビデオチャットがしたい」といったご意見を頂戴したことから導入しました。タップルの「フィルター機能」にはARKit製とCoreML製の2つあるのですが、そのどちらにも研究をいかすことができました。解決するべき課題の選定や検証、実証実験と進め方が参考になったことを覚えています。中でも検証に関しては、「提供されているxx関数を使えば実現できる」ではなく、「AとBの関数を使い、Cの画像処理を施すことによって実現」といった手法を選択する必要があったため、該当分野の論文や文献を読みながらベストプラクティスを追求していきました。ここで得た知見は、調査・検証内容をまとめてiOS関連技術をコアのテーマとしたソフトウェア技術者のためのオンラインカンファレンス「iOSDC2021」で発表することができました。
裁量が大きく挑戦を後押ししてくれる文化
── 直近では、どのような機能の開発を担当しましたか?
2021年12月にリリースした「おでかけ」機能です。「おでかけ」機能とは、行ってみたいデートプランを設定するだけでデートのお相手を「募集」できる機能です。デート募集は24時間掲載され、お相手から届く「おさそい」を受けることでデートを前提としたマッチングが成立する点が特徴です。以前は女性会員からしかできなかった「おでかけ」のお誘いが男性会員からもデートの募集ができるようになったり、1000種類以上のデートプランから選択できたりするようになりました。開発体制は、プランナー2名、iOS2名、Android2名、バックエンド2名、デザイナー1名で、この中でiOSエンジニアのリードを担当しました。リリース日まで2ヶ月ほどしかないなかで仕様決めからスタートし、画面や機能の数が多いことからスピード感のある開発が求められました。
── 開発を進めるうえで、どのような工夫をしましたか?
開発期間が短かったことから、設計と戦略を特に意識し、手戻りや変更が少なくなるように工夫しました。Feature Module開発を導入した結果、ビルド・テスト時間を短縮できたほか、モックを用いた複数の状態を確認しやすくなりました。これは、仕様の考慮漏れを防止するだけでなく、エンジニア観点からの提案をプランナーやデザイナーに伝えるコミュニケーションツールとしても効果を発揮してくれました。それ以外にも、デザイナーとはどこを汎用的につくるかなど、実装面でもコミュニケーションを多く取り連携して進めることを意識しました。
開発以外では、ディレクションにも挑戦しました。リリース間近になると、実装やQAの観点からエンジニア間のコミュニケーションが増加していきました。その際、リスクや実装状況を都度プランナーに共有して判断を仰ぐよりも、エンジニアがチーム全員を巻き込んで進めた方が開発スピードが上がると考えたためです。
【参考記事】
タップル iOSにおけるFeature Module開発の導入と運用
このときの経験から、今まで気づかなかった自分の強みを知ることができました。リリース後、開発メンバーから、チームの中で相談しながら物事を決めていく渉外力が高いというフィードバックをもらいました。常に「今できる最善の策は何か」を考えて取り組んでいたところ、自分の新たなキャリアの方向性も見つかり、良い経験となりました。
── サイバーエージェントの働く環境について教えてください。
「挑戦したいです」と手を挙げるメンバーには、年次や経験を問わずチャンスがある環境だと思います。また、裁量も大きく挑戦を後押ししてくれる文化があります。加えて、挑戦者が集中できるようにサポートしてくれる体制もあります。実際、私が「フィルター機能」の開発に挑戦したとき、当時のトレーナーに本当にお世話になりました。私が持っていた業務をすべて引き受けてくれて、チャレンジできる環境をつくってくれたのです。「バリューを発揮して良い成果を出せそうだからやってみるのが良いんじゃないか?」と背中を押してくれたことには、とても感謝しています。現在は、Kotlin Multiplatform Mobile(以下KMM)を用いた開発に挑戦しています。新しい技術やトレンドは常に意識しつつ、プロダクト開発において試してみても良さそうであれば積極的に導入していこうという環境がありますね。
【参考資料】
バーチャル背景を実現しよう
── 現場で活躍できる若手は、どのような人だと思いますか?
当社には「オーナーシップ」と「フォロワーシップ」という考え方を大切にする文化がありますが、まさしくこれらだと思います。私自身が意識してきたのは、オーナーシップ6割、フォロワーシップ4割の振る舞いです。「○○をやってみたい」「○○を使ってみたい」など挑戦したいことがある場合は、まずは意思をはっきり示し、「オーナーシップ」を持つことが大切だと思っています。ただ挑戦させてもらうためには、日々の業務を全うし信頼を得ること、周囲のサポートや組織づくりなどにも取り組み「フォロワーシップ」を発揮していくことも大切です。今後は、自身の挑戦に加えて、後輩たちの挑戦を後押ししていきたいと思っています。
サービスをスケールさせる
グロースエンジニアを目指す
── 「タップル」をどのようなサービスにしていきたいですか?
業界No1を目指すのは前提として、「タップル」が掲げるValueの1つ「自然体でいられる」を突き詰めていきたいと思っています。世の中的にも、年齢や性別、結婚の形態に囚われない価値観が尊重される時代になってきています。多様な価値観を取り入れ、誰もがありのままでパートナーを探せるようなサービスにしていきたいです。
── そういったサービスを目指すうえで、技術的にチャレンジしたいことはありますか?
アクセシビリティに注力していきたいと考えています。アクセシビリティには、「全ユーザーが等しくサービスの機能を享受できるように」という考え方があり、「自然体でいられる」だけではなく「安心してつかえる」という、私たちが掲げる別のValueにも繋がります。大切なパートナーが見つかる場所として、より多くのお客さまに選んでいただけるよう、組織を巻き込みながら丁寧に進めていきたいです。
【参考資料】
アクセシブルなチャートを実現しよう
── キャリアとしては、どのようなエンジニアを目指していますか?
「おでかけ」機能や「フィルター機能」の開発、KMMへの挑戦から、最近はグロースエンジニアというキャリアに関心があります。Aという状態に対して、BとCどちらが適切なのか。あるいは、先を見据えるとDが良いかもしれない。そんな議論を周りのメンバーとするのが楽しいです。分析・仕様策定からリリース・評価まで 一貫してできるエンジニアを目指してキャリアを積んでいきたいと考えています。これとは別に、育成・採用にも積極的に関わっていきたいと思っています。私自身、学生時代に経験したサイバーエージェントのインターンシップを通して、当時悩んでいた「自分が何をしたいのか」「何ができるのか」そんな問いに一つの答えを出すことができ、今に繋がっています。ぜひ、今の学生の皆さんにも体験してほしいという思いが強く、少しでも還元していきたいです。
【参考記事】
エンジニアになりたい学生は就業型インターンを体験すべきだと思う
オフィシャルブログを見る
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