経営人材を重層的に育てる。「SSL開発室」が進めるサクセッションの仕組みづくり

カルチャー

持続的な企業成長を目指す当社では、経営人材の発掘や育成(サクセッション)を重要なテーマとして位置づけています。そうした取り組みを組織として仕組み化するため、2024年に発足したのが「SSL(Succession Ladder) 開発室」です。
今回は、「SSL開発室」が取り組むサクセッションについて、室長の桂木に話を聞きました。

サクセッションの仕組みづくりを担う「SSL開発室」

―「SSL開発室」とはどんな組織なのでしょうか。 

サクセッションにつながる抜擢人事や人材の育成・能力開発を仕組み化することをミッションに、2024年に人事本部内に設立された組織です。 


従来は、「誰を次の経営人材として育てるのか」「その人にどんな経験を積ませるのか」といったことは、創業者で現会長の藤田の経験や感覚をもとに判断されることも多くありました。 そうした人材の発掘や育成を、属人的な判断に頼らず、組織の仕組みとして 進められる状態にしていくことを目標としています。 


―「SSL開発室」設立の背景について教えてください。
 

きっかけは、初めての社長交代に向けた動きが始まったことです。
2022年春、当時社長だった藤田が社長交代について宣言し、その年の夏から「社長研修」が始まりました。その取り組みが次第に社内でも知られるようになり、「サクセッション」という言葉も使われるようになっていきました。 ただ、この頃のサクセッションは、あくまで社長交代に向けた取り組み、という意味合いが強かったと思います。 

取り組みを進める中で、社長だけではなく、役員や事業責任者、その次の世代まで見据えて考えていく必要がある。そうした意識が、経営陣や社長研修の参加者を中心に広がっていきました。 

そうした中、2024年9月の「あした会議」では、サクセッションに関する決議が多くあり、専任組織の新設もその場で決まりました。現在は「SSL開発室」が中心となって、仕組みづくりや具体的な施策に取り組んでいます。 

桂木 絵理  /  SSL開発室 室長 
2003年、サイバーエージェント入社。インターネット広告事業本部で営業を担当し、2007年に人事へ異動。全社の新卒採用、事業人事、メディア事業の人事責任者などを経て、2024年より現職。経営人材の発掘・育成をはじめ、サクセッションに関する仕組みづくりを担う。
桂木 絵理 / SSL開発室 室長
2003年、サイバーエージェント入社。インターネット広告事業本部で営業を担当し、2007年に人事へ異動。全社の新卒採用、事業人事、メディア事業の人事責任者などを経て、2024年より現職。経営人材の発掘・育成をはじめ、サクセッションに関する仕組みづくりを担う。

「次の人を育てる」ことが、新たな挑戦を生む

―「SSL開発室」では、どのような考えでサクセッションを進めているのでしょうか。

社長だけではなく、役員や事業責任者、その次の世代まで含めて、経営人材を「重層的」に育てていこうとしています。
組織名の通り、トップだけではなく、その下、さらにその下へと、経営人材が脈々と続いている状態をつくりたい。その中で後継者候補が足りていないポストがあれば、誰をどう育てていくかまで考えます。

ただし、藤田や社長の山内、現役員たちを完全にトレースする人材をつくることはできませんし、それを目指しているわけでもありません。多様な強みを持つ経営人材を増やし、経営チームとして強くしていくことが本質だと考えています。 

―サイバーエージェントならではのサクセッションの考え方はありますか。 

サクセッションには、後継者が不在になったときのリスクに備えるという側面もありますが、私たちはそれに加えて、次の人を育てることで、今いる人がさらに新しいチャレンジに進める状態をつくることも大事にしています。

市場の変化も激しいですし、会社としても新しくやることが多い。次の人が育って権限委譲が進むと、上の人が新しい領域に挑戦できる。そのさらに下のメンバーにも役割や機会が回っていきます。そうした連鎖が起きることも、サクセッションの大きな意味だと思っています。

もともとサイバーエージェントには抜擢の文化があり、若いうちから機会を与えて実践の中で育ててきました。その土壌があるので、仕組みとしても機能しやすいと感じています。 

とはいえ、当社にとって初めての取り組みなので、決まった正解があるわけではありません。試行錯誤しながら、サイバーエージェントらしい形をつくっているところです。

 

発掘、育成、抜擢をつなぐ

―具体的には、どのようにサクセッションを進めているのでしょうか。

「社長」「経営幹部」「次世代」の3つのレイヤーでサクセッションを捉え、人材の発掘、育成計画の策定、能力開発、その後のモニタリングまでを一連で考えています。

社長や経営幹部のレイヤーでは、ポストごとに後継者候補を可視化しています。候補者については、現場の上司や役員へのヒアリングなどを通じて一人ひとりの解像度を上げながら、足りない能力や必要な経験を一緒に整理し、育成計画をつくっています。 
その内容に応じて、実務での経験や研修、全社視座を高める場への参加など、現場と連携しながら必要な機会を提供しています。 

―実務では、どのような経験を重視していますか。

特に大事なのは、「自ら経営の意思決定をする経験」です。
今の経営陣を見ても、難しい局面で意思決定をし、変革を起こしてきた経験があることは、共通しています。 

そのため、経営の意思決定に加え、事業立ち上げや組織再構築、全社視座を持つ機会なども視野に入れながら、「どんなポジションや環境なら必要な経験を積めるか」を一人ひとりの育成計画に落とし込んでいます。 

―実務での経験に加えて、研修で大事にしていることはありますか。
 
もともと実践の中で人を育てることを大事にしてきた会社ですが、実務経験だけでなく、経営に必要な知識を体系的に学ぶ機会の重要性も感じています。研修で学んだことがその後の実務に生きたというケースもあります。
 
「社長研修」で培った知見を生かしながら、現在は山内の次の社長候補を育成する「3代目社長研修」と、女性の経営人材育成を目的とした「女性役員研修」を実施しています。 

研修で大切にしていることの一つ目が、自分の現在地を認識することです。

社長や役員の考え方や経験を理解し、追体験する機会を設けています。「この局面でどう判断したか」 を知り、経営のリアルを体感してもらうことで、自分に足りない視点や今後伸ばすべきことについて自覚を促す狙いです。

二つ目が、会社経営を自分ごと化することです。

普段は自分の事業や組織について考えることが中心になりがちですが、サイバーエージェントの企業価値をどう高めるかを考え抜く機会を設けることで、視座を高める狙いがあります 。
実際に経営陣からは「研修参加者との共通言語や判断の基準が増え、議論の質が上がった」という声もあります。
 

(女性役員研修の様子)
(女性役員研修の様子)

―次世代のレイヤー向けの施策は、どのようなことをしているのでしょうか。

若手を中心に、将来経営を担いうる人材を早い段階から発掘し、その後の能力開発や抜擢の機会につなげています。

その一つが「強化指定社員セレクション会議」です。
対象となる若手社員について、経営陣がその人の強みや、今後どんな育成機会をつくっていくかを議論しています。
当初は全社横断で実施していましたが、現在は事業部ごとに開催しています。より現場に近い単位で議論することで、具体的な能力開発や異動まで踏み込んだ議論につながっています。 
 

多様な経営人材が継続的に生まれる組織へ

―SSL開発室として、約2年サクセッションに取り組んできましたが、どのような手応えを感じていますか。

まず、経営人材とその候補者に対する解像度が上がってきたことです。
どんな強みがあるのか、何が足りないのか、次にどんな経験が必要なのかまで、以前より具体的に見えるようになってきた実感があります。

育成計画をつくる過程では、 候補者本人の強みや課題だけでなく、「そのポストにどんな役割や能力が求められるのか」という部分も含め、それまで感覚的に捉えていたことを、育成を担う経営陣や上司と一緒に言語化する機会にもなっています。 

もう一つ、会社全体にも変化を感じています。
今回の社長交代でも、各事業を牽引するリーダー層の間で「新しい社長を自分たちが支えよう」という声がいくつもありましたし、最近では「第3世代は自分たちがつくっていこう」という若手の声も耳にします。サクセッションを見据えた独自の取り組みを始める事業部も増えてきました。
 

―今後、どのような状態を目指していきたいですか。

まだ後継者候補が十分にいないポストもあるので、そこにどう向き合うかはこれからの課題です。会社の規模が大きくなる中でも、将来の経営人材を早い段階から見出し、育成や抜擢につなげていく取り組みをさらに強化していきたいと思っています。 

また、育成計画をつくって、必要な機会を提供し、その後を振り返る。そうした一連のサイクルが、特別な取り組みではなく、経営陣や事業責任者、現場の上司によって自然に回るようにしていきたいです。 

最終的に目指しているのは、人材の発掘や能力開発が組織の仕組みとして機能し、多様な経営人材が継続的に生まれてくる状態です。それが、「創業者の会社」から「真のパブリックカンパニー」へと歩みを進めることにつながると考えています。

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