【AI SHIFT SUMMIT 2026 WINTER 開催レポート】 AIエージェントは「構想」から「実装」へ。
- 中国電力・山善・オムロンが明かす、人とAIエージェント協働の最前線 -
2026年1月、株式会社AI Shiftと株式会社サイバーエージェントが共催する「AI SHIFT SUMMIT 2026 WINTER」を開催しました。数年前まで「AIで何ができるのか」と考えていた世の中が、「AIと共にどう働くか」という問いに向き合っています。本サミットでは、すでに成果を生み始めている先行企業ー中国電力・山善・オムロンソーシアルソリューションズの3社が登壇し、そのリアルな現在地を共有しました。
全社員4,000名のリスキリング、営業の暗黙知の形式知化、そしてコールセンターの自動化。業界も課題も異なる3社が、どのようにAIエージェントを実業務へ組み込み、成果を創出したのか。
各社の導入プロセスにおける意思決定のポイントから、AI Shiftとの共創で得られた実装の知見まで、当日のセッションをダイジェストで紹介します。
目次
【Session 1 中国電力】全社員4,000名の意識を変える。「リスキリング」から始まるDXの土壌づくり
【Session 2 山善】営業の「勘・経験・度胸」を科学する。3年計画で挑む「AIエージェント計画」の全貌
【Session 3 オムロン】コールセンターを「コスト」から「価値」へ。VoiceAgentと挑むプレミアム化への道
オープニング - AIエージェントは「未来の構想」ではない
前回の開催から半年、AIエージェントは「何ができるか」を問うフェーズから、具体的な「実績」が出るフェーズへと加速しています。
こうした時代の変化を受け、AI Shift代表取締役社長の米山結人は、オープニングセッションで本サミットの意義を次のように語りました。「本サミットの目的は、理想論ではなく、AIエージェントの『現在地』をシェアすること。我々のミッションである『人とAIの協調』を、どう実装に落とし込んでいるのか。より地に足のついたリアルをお伝えしたい」AIを単なるツールではなく、共に働くパートナーへと進化させる。AI Shiftが展開する「AI Worker」を基盤に、いかにして変革を実現しているのか。登壇各社による最新の実装事例を紹介します。
【Session 1 中国電力】全社員4,000名の意識を変える。「リスキリング」から始まるDXの土壌づくり
最初のセッションに登壇したのは、中国電力 デジタルイノベーション本部の井上貴大氏。
電力の安定供給を担うインフラ企業として、同社は何よりもセキュリティやガバナンスといった「守り」を重視してきました。その一方で、生成AIという新しいテクノロジーを、いかに全社で安全かつ実践的に活用していくか。本セッションでは、その戦略的な取り組みが語られました。
「まずは全員で学ぶ」ことから始めたAI活用
まず着手したのが、全社員約4,000名を対象とした大規模なリスキリングです。特徴的だったのは、動画研修の受講に加え、確認テストへの合格を必須とする「ライセンス制」の導入です。「合格者のみ利用可能」とすることで、情報漏洩などのリスク管理をするだけでなく、社員の「使ってみたい」という自発的な意欲を自然と引き出す役割も果たしました。
現場に根づかせた活用促進と、その先にあるAIエージェント
リスキリング実施後、一定期間で利用率が伸び悩む局面もありましたが、そこで奏功したのが、各現場に寄り添う継続的な施策です。アイデアコンテストの開催や、各支社へ直接足を運んでのハンズオン研修を通じ、「自分には関係ない」と感じていた現場社員が、「これなら明日から使える」という手応えへ変え、活用に向けた心理的ハードルを払拭しました。パートナーであるAI Shiftは、電力業界特有の厳格なセキュリティポリシーに合わせた教材のカスタマイズを行い、現場の「使い勝手」に徹底して伴走しました。
結果、アクティブユーザー数は当初の4.5倍、週次の利用回数は8.5倍へと増加。生成AI活用は一部の先進層に留まらず、着実に業務へと定着しています。
セッション後半では、次のフェーズである「AIエージェント活用」についても言及。
中国電力は「倍速エネルギア(業務時間半減・成果倍増)」を掲げ、AI Shiftと戦略的パートナーシップを締結。RPA時代に課題となった「野良ロボット」の再来を防ぐため、ガバナンス整備と推進リーダーの育成に力を入れています。
「ツールが進化しても、最後は『人』です。AIエージェントが『相棒』として当たり前に存在する組織風土を目指したい」井上氏のこの言葉は、テクノロジーと人が共存するDXの理想形を象徴していました。
2022年のDX推進プロジェクト発足時より参画。全社的な生成AIチャットの導入やや全社的なAI教育プログラムの策定を主導し、エネルギー業界におけるAI活用のモデルケース構築に挑む。
及川 信太郎 (写真左) チーフエバンジェリスト
新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。AIコールセンター領域でチャットボット・ボイスボットのセールスリーダーを担当後、プロダクト設計およびCS業務を担う沖縄対話センターの責任者を経て、現在はAIエージェントの導入・活用推進をリード。約100,000人への生成AIリスキリングを講師としても提供。
【Session 2 山善】営業の「勘・経験・度胸」を科学する。3年計画で挑む「AIエージェント計画」の全貌
続いて登壇したのは、株式会社山善 ICT本部 D&A部の前田慎太郎氏。同社が掲げる「Beyond KKD(勘・経験・度胸)」は、営業の暗黙知をAIで再現・進化させるという、次世代営業モデルです。本セッションでは、その具体的な実装プロセスと現在地が共有されました。
大阪に本社を置く山善は、生産財・消費財の2領域で国内外約120拠点を展開する専門商社です。同社の強みである現場力・顧客伴走力の源泉は、営業個人の「勘・経験・度胸」、いわゆるKKDにありました。
前田氏は、それらが個人に依存し暗黙知化することで、組織全体の再現性に課題を抱えていたと振り返ります。
KKDをAIで“再現”するという発想
山善が目指すのは、強みであるベテランやトップセールスのKKDをAIで再現し、山善全体の資産として機能させることです。KKDを体現するAIが常に伴走し、現場での判断や提案を支援することで、人は創造性や意思決定により力を発揮する。このビジョンを実現するために立ち上げられたのが「DAI計画」です。
同社は2022年にDX戦略部を立ち上げ、ChatGPT登場以前からデータ統合分析基盤の整備と部門内リスキリングを進めてきました。その下地があったからこそ、生成AIの登場を機に、いち早くAIエージェント構築へと舵を切ることができました。
ヒアリングから始める、現場を巻き込んだAIエージェント構築
AIエージェント構築にあたり、最初に行ったのは徹底的な現場ヒアリングでした。AI Shiftと共に、東京・大阪・兵庫の営業拠点を回り、4日間かけて営業の実態を観察。その上で将来的な理想像を設計し、順次エージェント構築を進めてきました。
まずは納期回答や商品の特定といった、「回答に正解がある」ユースケースから構築を始めました。POC段階では対象の商材を絞って精度検証を実施し、業界特有の単語や言い回しなどを辞書としてエージェントに持たせることで、精度を高める工夫をしています。
一方で、営業の意思決定に関連する、「回答に正解がない」ユースケースについては、トップセールスマンにフィードバックをもらいながら進めることで、現場のリアルなKKDをエージェントに反映しています。
前田氏は、KKDとLLM、そしてGraph RAGなどの最新手法を組み合わせることで、「Beyond KKD」として、期待を超えた新しい付加価値を創造することも可能になるのではと語ります。
Beyond KKDの先に描く、人とAIが協働する未来
今後は、構築したAIエージェントの精度を高め、全社展開を進めていく予定です。さらに将来的には、意思決定に必要な情報は全てAIによって準備されるような、誰しもがAIの恩恵を受けられる環境を目指しています。
人にしかできない業務を、AIは自律的にサポートする。AIは人を置き換えるものではなく、人と協働して、新しい付加価値を生み出すためのパートナーにしたい。
前田氏の言葉からは、テクノロジー導入に留まらない、組織変革への強い意志が感じられました。
専門商社における営業DXのキーマン。AI Shiftとの共創プロジェクトにおいて、現場の暗黙知を形式知化し、営業担当者を支援するAIエージェントの開発・実装を推進している。
加藤 陸 (写真左) AIソリューション事業 事業責任者
新卒で株式会社サイバーエージェントに入社後、株式会社AI ShiftにてAIコールセンター向けプロダクトのセールスとして従事。その後、2025年にAIエージェント事業部、AIソリューション事業の事業責任者に就任し、現在は各企業へのAI活用のご支援を推進。
【Session 3 オムロン】コールセンターを「コスト」から「価値」へ。VoiceAgentと挑むプレミアム化への道
最後のセッションに登壇したのは、オムロンソーシアルソリューションズ エネルギーソリューション事業本部の内藤慎次氏。テーマは「コールセンターDXのリアル」。成功という結果だけでなく、導入の背景や現場で直面した課題、そこから得た学びが率直に語られました。
想定外の問い合わせ急増が、VoiceAgent導入のきっかけに
オムロンでは、太陽光発電関連機器を扱うエネルギー事業において、新たなサービス提供の一環として「キーコード」という仕組みを導入しました。「キーコード」はサービス・保守サポート拡充を行うために機器設置時にユーザー情報を登録することで初めて機器が稼働する仕組みでしたが、リリース直後から「登録方法が分からない」といった問い合わせがコールセンターに殺到し、人員増強だけでは対応しきれない事態に直面。
そこで同社が選択したのが電話対応を自動化する「VoiceAgent」の導入です。現在では、運用開始から1年以上が経過し、1万件を超える問い合わせを処理するなど、コールセンターに欠かせない存在となっています。
「プレミアム化」と「無人化」を両立させる考え方
内藤氏が強調したのは、VoiceAgent導入の目的が単なる効率化ではないということです。AIによって定型的な問い合わせを無人化する一方で、人にしかできない対応には時間と価値をかける。「すべてを均一に対応する」のではなく、リソースを最適配分によって、顧客体験全体の質を高める──これを内藤氏は「コールセンターのプレミアム化」と表現します。
導入においては、完璧な設計を目指すのではなく、技術の限界を理解た上で仕様を柔軟に調整。さらに、導入後も改善を前提とした運用を続けることで、技術進化を取り込みながら精度を高めてきました。
また導入を成功に導いたもう一つの要因として、リーダーによる深いコミットメントをあげます。現場の実行者に任せきりにするのではなく、リーダー自らが最前線で仕組みを深く理解し、プロジェクトを牽引。その姿勢が、結果として組織全体の活性化という副次的効果も生み出しました。
「AIに任せるところと、人が向き合うところを意識的に分けることが重要です」
内藤氏の言葉は、AIと人が共存するコールセンターの未来像を端的に示していました。
顧客接点の最前線であるコールセンターの改革を担当。VoiceAgent(ボイスボット)導入による自動化と、有人対応の質的向上を両立させる「プレミアム化」戦略を指揮する。
商社にて営業を経験後、サイバーエージェントへ入社し、チャットボットのシナリオ設計・カスタマーサクセスを経て、そのサービスの事業会社である株式会社AI Shiftへ参画。2020年よりボイスボットプロダクトを立ち上げ、AIコールセンター事業の責任者に就任。現在は、各プロダクトへの生成AI連携を積極的に検討しながら、各企業におけるコールセンターの業務課題の解決に従事。
3社がAI Shiftを選んだ共通項。「機能」を超えた「パートナーシップ」の価値
サミット全体を通じて浮き彫りになったのは、AI導入の成否を分けるのが「技術」そのもの以上に、伴走する「パートナー」の存在であるという事実です。 中国電力、山善、オムロン。3社とも、AI Shiftを単なる「ツールベンダー」ではなく事業課題を共有し、共に悩み、解決策を模索する「チームメンバー」として迎え入れています。
AI Shiftの強みは、サイバーエージェントグループとして培ったAI技術力に加え、顧客のビジネスに深く入り込むコンサルティング力、そして運用フェーズでの泥臭い改善力にあります。 「AIは魔法の杖ではない」。登壇者たちが口を揃えたこの言葉の通り、魔法使いではなく、共に汗をかいてくれるパートナーが必要なのです。AI Shiftはその期待に応え、各社と共に「協働の型」を作り上げてきました。
変革のモメンタムを感じて
「AI SHIFT SUMMIT 2026 WINTER」は、AIエージェントがもはや未来の構想ではなく、ビジネスの現場に不可欠なインフラとなったことを証明する場となりました。 人とAIが協働し、事業を、そして社会を前進させる。その大きなうねり(Momentum)は、ここからさらに加速していきます。
今回のサミットで共有された知見は、特定の業界だけに通じるものではありません。「AIエージェント」は営業、カスタマーサポート、マーケティングと、あらゆる領域で実装可能です。 重要なのは、まず一歩を踏み出すこと。そして、信頼できるパートナーと共に、走りながら考え、改善し続けること。 サイバーエージェントおよびAI Shiftは、これからも企業の変革に寄り添い、AIエージェント活用の最前線を切り拓いていきます。
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造形の基礎から、クリエイティブを強くする
基礎力強化プログラム第一弾「デッサン講座」
クリエイターの基礎力を磨く取り組みとして、当社では「Core Program(コアプログラム)」を開始しました。分野横断でクリエイターの土台を強化していくプログラムです。
その第一弾として実施したのが、造形の基礎に向き合う全4回のデッサン講座。講師を務めていただいたのは、御茶の水美術学院で長年指導を行い、東京藝術大学合格者を多数輩出してきた酒井氏です。本プログラムでは約50名のクリエイターが参加し、半数以上がデッサン未経験者でした。
なぜ企業でデッサンに取り組むのか。そこに込めた意図と、実施して見えてきたことについて、酒井氏とプログラム設計者の庄司・青柳に話を聞きました。