AI時代だからこそ創造性を競争力に──サイバーエージェントが描く次のクリエイティブ戦略

2025年10月、サイバーエージェントの "ビジョン" を共有する社内イベント「CA BASE VISION 2025」を開催しました。
第一部では、各領域の執行役員から今後の戦略発表が行われ、第二部では職種別ワークショップを実施。AI時代における組織の進化と創造性のあり方について議論しました。
本記事では、サイバーエージェント 執行役員(クリエイティブ担当)佐藤洋介によるクリエイティブ戦略発表の内容を、一部編集してお届けします。
AI時代における「創造性」の価値
近年のAIの進化は、私たちの仕事のあり方を大きく変えました。
誰もが手軽に一定のクオリティのアウトプットを生み出せるようになり、クリエイティブの量やスピードにおいては、テクノロジーが大きな役割を果たしています。
しかし私は、この時代だからこそ「創造性」がこれまで以上に重要になると考えています。
AIによって“それなりのもの”は誰でもつくれるようになるからこそ、人間が持つ個性、感性、そして磨き上げてきた“尖り”がより強い価値を持つようになるのです。
私たちクリエイターが長年かけて培ってきたのは、単なる技術ではありません。何を良いと感じるかを見極める目、心を動かす表現を設計する力、そして、自分だけの感覚や経験をもとに新しい価値を生み出す力です。この「創造性」こそが、AIには代替できないことであり、サイバーエージェントのクリエイティブを支える競争力の核だと考えています。
クリエイターの進化に求められること

これまで時間をかけて身につけてきた技術は、AIによって短期間で習得できるようになっていきます。重要なのは、その浮いた時間で何に力を注ぐかです。
誰もが多様な業務を横断的にこなせるようになる一方で、個人のバックグラウンドや感性から生まれる独創性は、今後ますます貴重になります。さらに、制作そのものにとどまらず、プロセス全体を俯瞰し、ビジネス・データ・テクノロジーを掛け合わせて価値を生み出せるクリエイターが求められます。
つまり、これからの時代に必要なのは、“つくる力”に加えて、課題を見抜き、異なる領域を結びつけながら新しい価値を生み出す力です。AIが当たり前に活用される今こそ、人の感性をどう磨き、どう社会や事業の価値につなげていくかが問われています。
こうした変化のなかで、私たちは「創造性の強化」と「スキルの拡張」の両輪で、クリエイティブを企業の競争力としてさらに進化させるための全社施策を進めていきます。
今期のテーマ「創造性の強化」と「スキルの拡張」
クリエイティブを競争力として磨き続けるためには、クリエイターとしての創造性を高め、その上で時代に合わせてスキルを拡張させていくことが必要です。そのために今期は、以下の2つのプログラムを軸に取り組みます。

①創造性の基礎力強化プログラム「Core Program(コアプログラム)」
コアプログラムでは、創造の基礎力、すなわち“良いものを見極め、形にする力”を体系的に鍛えます。
AIが進化し、誰もが表現できる時代だからこそ、「なぜそれが良いのか」「なぜ人が魅力を感じるのか」という原理原則を理解し、その感性を自らの手で表現できる力を磨くことが求められています。
第一弾として、「審美眼」と「造形力」の2つを強化するカリキュラムを実施します。外部講師をお招きして美術倫理をテーマとした講義を開催し、アートやデザインの原理や歴史を学び、なぜ“良い”とされてきたのかを知ることで、見る力を養います。さらに、デッサン講義も実施し、観察と表現の基礎を強化していきます。
多様なバックグラウンドを持つクリエイターが増える中で、こうした基礎的な造形力は世代を問わず不可欠です。「感覚的な良さを言語化し、自らの創造性をより意識的に磨く」ーーこのプログラムを、創造性の基礎体力を鍛える場としていきます。
また、新卒採用においては、ポートフォリオの評価項目を初めて公開いたしました。
時代の変化により表現手法が多様化する一方で、作品が似通いやすく、個性やオリジナリティが見えにくくなっているという課題もあります。そこで、評価項目を明確にすることで、技術やスキルだけでなく、その方が何を考え、どのように表現するかという創造性そのものを正しく評価することを目指しています。

②スキル拡張プログラム「Expand Program(エキスパンドプログラム)」
もう一つの柱、エキスパンドプログラムでは、時代や技術の変化に合わせてスキルを広げ、進化を続けるための支援を行います。
私たちはこれを「リスキリング」ではなく、「アップスキリング(Upskilling)」と呼んでいます。“学び直し”ではなく、これまで積み上げてきた経験を地層のように重ね、新しいスキルや領域を拡張していくという意味合いです。
第一弾として、全クリエイター社員を対象にAI基礎研修「AI Upskilling for Creators」を開始します。AIオペレーション室と連携し、生成AIの原理や応用を体系的に学び、実務での活用スピードを高める内容です。全社員共通の基礎研修に加え、専門領域別の応用研修も順次展開予定です。そのほか、エキスパンドの領域は画一的に伸ばすのは難しいため、各部門ごとに定義を設けて取り組んでいきます。変化にとらわれず、時代を乗りこなすマルチクリエイターの育成を目指します。
創造性の進化、クリエイターの新章へ

繰り返しになりますが、生成AIの登場によって、クリエイティブの環境は劇的に変化しました。しかし私は、この変化を脅威ではなく、可能性だと捉えています。
こうした時代だからこそ、我々が培ってきた創造性をしっかりと進化させ、AIと共創しながら事業と社会に新たな価値を届ける。
クリエイターの新たな時代をみなさんと一緒につくっていきたいと思っています。
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サイバーエージェントの "ビジョン" を共有する社内イベント「CA BASE VISION 2025」を先日開催しました。AIの急速な変化に会社としてどう向き合い、今後どのような取り組みに注力するのか。専務執行役員 技術担当 長瀬が社員に向けて語った当日の様子を一部編集し、お届けします。