いま学生のみなさんに伝えたい。「AIエージェントがどれだけ発展しても、エンジニアは価値ある職業であり続ける」

技術・クリエイティブ

AIエージェントが急速に進化・発展する現在、あらゆる産業やビジネスにおいて利用が加速し、サイバーエージェントの開発プロセスにも大きな変革をもたらしています。
エンジニアを目指す学生の皆さんの中には、ご自身のキャリアに期待と少しの不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、当社の専務執行役員で技術担当長瀬は「エンジニアという仕事の面白さと価値は、決して変わらない」と語ります。本記事では、その真意、当社が変化に対応し続けてきた理由、そしてAI時代だからこそ広がるエンジニアの新たな可能性と、学生のうちに育むべき力についてお伝えします。

どんな時代でも、世の中を大きく変える中心にいるのはエンジニアである

当社では、いち早く社内における開発生産性のさらなる向上を目指し、2025年6月に開発AIエージェントの導入に年間約4億円を投資することを決定しました。また2025年8月には、エンジニアとAIエージェントが協働する、革新的な開発組織の進化を推進する専門組織「AIドリブン推進室」を新設しています。

エンジニアがAIエージェントと協働する革新的な開発組織においては、「良いコードを書いてこそ優秀なエンジニアである」という従来の評価基準が大きく変わります。そういった劇的な変化を耳にすると、エンジニアを目指す学生のみなさんの中には、これまでのように長期的なキャリアプランを描きにくかったり、不安を感じていらっしゃる方も少なくないかと思います。

けれども私は、エンジニアは今後も価値ある職業の1つであり続けると確信しています。人類の歴史を遡ると、産業革命において鉄道や電気が発明されたりと様々な技術革新がありました。近年ではインターネットやスマートフォン、AIの登場で世の中がどんどん便利になりましたが、時代や道具は変われど、ユーザーが利用するサービスを実際に開発するのは常にエンジニアでした。世の中を大きく変える中心にいるのは、いつだってエンジニアなのです。この点において、AIエージェントと協働する時代においても、エンジニアには大きなやりがいがあり、魅力的な職業であり続けると考えています。

AIエージェントとの協働において必要なスキルとその育成方法

AIの発展によって、エンジニアに求められるスキルが大きく変化していることは、学生のうちからよく理解しておくことが重要です。当社は約20年間、新卒エンジニアを採用しています。新卒採用を始めた2008年頃はコードを書くことそのものが求められていましたが、今はAIが補助してくれます。これまでエンジニアは、コードを書くことに膨大な時間を費やしていました。けれども今後は、ユーザーのニーズや課題を細かく要求分析して課題設定を行い、どのような設計にすれば世の中に大きなインパクトを残せるかという点に、より多くの時間を割けるようになります。

AIが急速に発展し、エンジニアに求められることが日々変化していく中で、我々も会社の仕組みそのものをアップデートし続けています。今まさに様々な取り組みを進化させている途中ですが、その中でも特に重要なものがエンジニア一人ひとりの成長を支える、キャリアラダーのアップデートです。AI時代に求められるスキルセットや、それらを身につけるための業務遂行能力など、かなり具体的に記載しています。

また、育成についてもAI時代に合わせた方法に変化させなければなりません。AIの発達によって、近年は小学生など若年層からプログラミング経験の豊富な人材が増えています。学生のレベルも格段に上がっているので、育成方法も変化しているのが現状です。従来は1年目の社員に対して、先輩社員からの丁寧なコードレビューに多くの時間を割いていましたが、AIエージェントでも補完できるため、現在は早い段階からさらに幅広い業務を指導できるメリットがあります。

ただその一方で、プロダクトの品質や信頼性については、先輩社員と共に経験を積んで身につける必要があると考えています。プログラミングの能力が高くとも、ほとんどの学生にとっては、大規模プロダクトにおける実務経験は少ないでしょう。実際の開発を通じてどのようなリスクがあり、何が信頼を損なう要因となるのか。AIエージェントとの役割分担を明確にしながら、それらのスキルを身につける必要があります。

サイバーエージェントが「変化対応力」の高いエンジニアを長年育成できた理由

変化の激しいインターネット業界において、サイバーエージェントは「変化対応力」を強みに時代に合った事業を次々と立ち上げることで、持続的な成長を実現してきました(参照:「サイバーエージェントグループ技術経営のコア「変化対応力」を推進する、3つのエンジン」)。開発組織においても、PC・フィーチャーフォン中心だったメディア事業をスマートフォンへシフトさせるため、ネイティブアプリ開発の社内育成プログラムを実施するなど、これまでも時代にあわせた開発体制を構築するための取り組みを積極的に行なってきました。

当社が変化対応力の高いエンジニアを長年育成できた理由は、大きく2点あります。まず1つ目は変化に強く、オーナーシップを持った人材を採用してきたからです。具体的には、技術や市場の変化を前向きに捉え、サービスや自分自身を成長させるために、主体的に行動できる人材を指します。サイバーエージェント全体で若手の活躍を後押しする機会が多くありますが、開発組織においてもオーナーシップがあれば、重要なポジションで活躍している若手エンジニアが多くいます

2つ目は、意見を気軽に言えるなど、心理的安全性の高い環境を様々な工夫により整えていることです。例えば、技術者版あした会議「CA BASE SUMMIT 」(参照:「過去最高の“大豊作”。代表 藤田が評した、技術者版あした会議『CA BASE SUMMIT 』」)は、年次や肩書きに関係なく自ら経営層に提案し、その意思決定に参加して大きく成長できる貴重な機会の一つです。

サイバーエージェントでは変化対応力の高いエンジニアが長く活躍できる環境を構築するため、「気軽に提案できる組織」「自由と自己責任を後押しするカルチャー」「裁量を持って取り組める環境」「変化に強く、オーナーシップを持って業務を遂行できる人材の評価」という4つの要素を常に推し進めてきました。細かなチューニングはありますが、今後もこれらが重要であることは変わらず、磨きをかけていくことが大切だと考えています。

AI時代にエンジニアを目指す上で、学生時代取り組んでおくべきこと

エンジニアだけでなくどんな職業においても、不確実性の高い社会で活躍し、成長し続ける人が皆共通して持っている重要な素養は、知的好奇心だと思います。その源泉には、なりたい自分になるために、無理せず学び続けられるモチベーションが欠かせません。

学生は良い意味で時間が豊富にあり、どのように使うか自由にデザインできます。没頭できるほど好きなことを見つけ、知的好奇心を刺激する何かに取り組むべきです。たとえ1つでも、自分の中で成功体験を見出すことができれば、社会人になってからの大きな強みとなるでしょう。

加えて、エンジニアという枠組みで考えると、深い専門性も引き続き価値があるものの、ある程度の深い知識を幅広く知っていることに、さらなる価値を見出す時代になるのではと考えています。そのため、エンジニアリングやITを幅広く勉強しつつ、同時にプロトコルやネットワーク、コンピュターサイエンスの基礎といった、いつの時代も価値ある分野における知見を習得することも不可欠です。時間のある学生のうちから、できる限りエンジニアとしての足腰を強くしておくことをおすすめします。

繰り返しになりますが、AI時代には求められることが大きく変わっており、エンジニアとしてやりがいを持って働きたいけれども将来が不安だ、という学生が多くいらっしゃるかもしれません。しかし世界を見渡すと、まだIT技術の力が及んでいない業界はたくさんあり、活躍の機会は豊富にあります。エンジニアは大きなやりがいがあり、社会を変えられる力を持った魅力的な仕事です。興味のある方には、ぜひチャレンジしてもらえたらと思います。

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