サイバーエージェントの99.6%にあたる社員・全役員が受講した「生成AI徹底理解リスキリング」とは?

技術・デザイン

当社では社内における生成AIの活用を推進するため、全社員を対象に様々な取り組みを行なっています。「生成AI徹底活用コンテスト」のほか、2023年11月より開始した「生成AI徹底理解リスキリング」では、全執行役員を含む6,200名を超える社員が講義動画の視聴完了・Webテストに合格しました。なお、同プログラムはCAリスキリングパートナーズによって、2024年1月から外部企業への提供を開始しています(参照:「全社員がAIを学ぶ!サイバーエージェント版AI研修を外部提供した理由」)。

「リスキリングセンター」センター長 小枝と、「生成AI徹底理解リスキリング」プログラム責任者 友松に、全社一丸となって合格率99.6%を達成した秘訣や、今後の展望について話を聞きました。

Profile

  • 小枝 創
    2022年中途入社。「リスキリングセンター」センター長。
    当社入社前は、SI系システム開発会社、大手Web開発企業でシステム開発リーダーやエンジニア採用・育成、プログラミング研修講師などを担当。現在はリスキリングセンター長として、社内のエンジニア教育および生成AI教育プログラムの企画・運営に従事。

  • 友松 祐太
    2018年新卒入社。AI活用を推進する子会社 AI Shift データサイエンスチーム マネージャー。
    コールセンター向けのプロダクトである、AI Messenger Chatbot/Voicebot/Summaryおよび生成AIを活用した企業の業務改善プロダクトであるAI Workerの開発に従事。データサイエンスチームリーダーとして音声対話やテキスト対話ロジックの研究開発、大学との産学連携、データの可視化などに取り組んでいる。

全社員が生成AIによる業務効率化や、新規事業の着想を得られる状態を目指して

── 「リスキリングセンター」のこれまでの歩みを教えてください。

小枝:リスキリングセンターは、変わりゆく技術トレンドに対応したエンジニアの学び推進、キャリアアップ支援を行う全社横断組織として、2021年10月の「あした会議」で決議され、翌月設立しました。

技術の革新やトレンドの移り変わりが年々激化する中で、日々の業務だけでは習得できない最新の技術領域や高度専門知識を学ぶ機会を、会社が力強く支援する必要があると考えています。当社で働くエンジニアのキャリアアップやキャリアチェンジを促し、安心して長く活躍してもらうことを目的として、設立以来継続的に様々なプログラムを実施してきました。

また、「リスキリングセンター」設立と同時に、社外のエンジニア育成を目的とした「アカデミー」の提供を開始しました(参照:「サイバーエージェント流『リスキリング』は社内だけでなく、社外へも続く」)。スタートのきっかけはエンジニア採用市場の激化でしたが、当社が「アカデミー」を開催することでエンジニアの育成に貢献し、日本のエンジニア市場を盛り上げることができればという思いで取り組んでいます。

── 「リスキリングセンター」を運営していく中で、どのようなきっかけで「生成AI徹底理解リスキリング」を開催することになったのでしょうか?また、プログラム全体の概要についても教えてください。

友松:社内でも生成AIを徹底的に活用しよう、という気運が高まっていた2023年7月に開催された技術者版あした会議「CA BASE SUMMIT 2023」にて私が参加したチームで提案し、決議されました。当時、私が所属するAI Shiftで生成AIを活用したプロダクト開発の人材採用に注力していたのですが、急速な需要に対して人材が圧倒的に不足しており、採用の難しさに直面していたんです。そこで、採用だけでなく、社内から育成していく仕組みが必要であると感じ、提案に至りました。

当初は技術者の育成にのみ着目していましたが、検討を重ねるうちに全社的なAI人材育成が必要だと考え、スキルのアウトプット先によって必要となる前提知識・専門性の深さを3段階に分けてリスキリングする施策に落とし込みました。

全執行役員を含む6,200名を超える社員が受講した「生成AI徹底理解リスキリング for Everyone」は、生成AIの基礎知識を身につけられるeラーニング形式のプログラムです。全社員が生成AIによる業務効率化や新規事業の着想を得られる状態を目指し、ChatGPTや当社独自の日本語LLMの活用、生成AI活用における法務・セキュリティ知識といった内容を動画教材で学びます。学習後はオリジナル試験の合格を必須としましたが、執行役員を含む全社員のうち99.6%が合格しました。

現在実施している「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」は、エンジニアを対象にeラーニング形式でLLM開発スキルの底上げを目指すプログラムです。当社が提供する全てのプロダクトにおいて、LLMの活用・組み込みなどの対応が可能な状態を目指しています。

加えて、今後実施予定の「生成AI徹底理解リスキリング for ML Engineers」では、各事業やプロダクト特有の課題に対して、LLMのモデル構築やチューニングで解決できる人材を育成します。

リスキリング受講・Webテスト合格が、会社からの “大号令”に

── 「生成AI徹底理解リスキリング for Everyone」実施後、社内ではどのような反応がありましたか?

小枝:社内の専門家を集めてオリジナルの動画教材を製作しましたが、「内製コンテンツなのが非常に良かった」という声が最も多かったですね。講義内容に社内事情を取り入れつつ、納得感を持って学んでもらうべく必要な知識を厳選するよう心掛けたので、嬉しかったです。

友松:全執行役員を含む99.6%にあたる社員が取り組んでくれたのは、社内の各領域の専門家による内製コンテンツへの信頼が高かったという理由もあると思います。コンテンツ制作については、私が執筆したブログ「全社員・役員が受講!『生成AI徹底理解リスキリング』 – 6300名、99.6%完了の裏側」に詳しくまとめておりますので、興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

── 内製プログラムへの信頼の高さというお話もありましたが、グループ全体の99.6%にあたる社員・全役員の受講完了を成功させた秘訣として、他にどのような点が挙げられますか?

小枝:全社一丸となって生成AIの徹底理解・活用に取り組む、という姿勢がベースとして出来上がっていたことが挙げられると思います。先立って「生成AI徹底活用コンテスト」も開催されていましたし、全社総会でも代表 藤田から告知してもらう等、いわば会社の号令として全社で取り組むべきだという雰囲気が伝わっていたので、受講を積極的に推進できました。また、「AIオペレーション室」の支援体制も大きかったです。

各オフィスにポスターを掲示
各オフィスにポスターを掲示
エレベーターホールに設置した巨大サイネージにも掲載
エレベーターホールに設置した巨大サイネージにも掲載

友松:全社員だけでなく全役員をも対象にした点も、成功の大きな要因だと考えています。
役員会で管轄組織ごとの受講率を共有し、あえてランキング形式に掲載するなどの工夫も行いました。

リスキリングで知識を得ること以上に大切なこと

── 現在実施している「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」 について、詳しく教えてください。

友松:生成AIが登場するまでは、データサイエンティストやMLエンジニアが中心となりAIをプロダクトに組み込む役割の多くを担ってきましたが、今後はその他の職種の人々も、生成AIに関する基礎知識を持った状態で開発に臨む姿勢が重要になるでしょう。そのため、職種を問わず受講対象を全エンジニアとしています。

座学ではUdemyの生成AIコンテンツを用意し、実践としては「チャレンジキャンプ」と名付けた1dayのハッカソンを実施します。「生成AI徹底活用コンテスト」で実際に決議された案を受講者自らピックアップし、その案に対する設計及び実装を行なってもらうという内容です。

小枝:開始にあたって公募形式で受講者を募集したところ、165名の応募がありました。最終的には、エンジニア全員に受講してもらいたいと考えています。

── 「生成AI徹底理解リスキリング for ML Engineers」については現在絶賛企画中と聞きました。どのような構想を練っているのでしょうか?

友松:生成AIを取り巻く状況は刻一刻と変わっているので、講義内容については開催直前まで慎重に見直す必要があると考えています。生成AIの性能及び制約は日々アップデートされ続けているため、ML EngineerがLLMをチューニングできることの需要も変化します。

また、これまでの「生成AI徹底理解リスキリング」のように講義形式にすべきか、全て実践形式にするのか、もしくはコミュニティ形式にするのかという前提から改めて検討しています。MLエンジニア、またその素養がある社員を対象にすると、対象者が他の領域に比べると母数が絞られるからです。

小枝:母数が絞られると一見インパクトが少なく思われるかもしれませんが、その分市場での希少価値も高まるため、生成AIをチューニングできるMLエンジニアを育成できるというのは全社にとって非常に大きなインパクトがあると考えています。

── 最後に、今後の展望を聞かせてください。

小枝:「生成AI徹底理解リスキリング for Everyone」についてはコンテンツを常にアップデートしつつ、今後新卒研修やキャリア採用メンバーへのオンボーディング時に必ず受講してもらう体制作りを進めています。全社員が生成AIの基礎知識を持ち、生成AIによる業務効率化や新規事業の着想を得られる状態であることが、会社にとっての大きな競争力となるからです。

また、ゆくゆくは「生成AI徹底理解リスキリング for Developers」を社外のエンジニアに向けたリスキリング施策「アカデミー」のフレームに乗せ、日本全体のエンジニアスキルの底上げにも繋げていければとも考えています。

「生成AI徹底理解リスキリング」のおかげで新たな事業が生まれたり、開発スピードが向上したという社内の声を今年は各部署で聞けると思うので、大いに期待しています。

友松:リスキリングを通して日々知識をアップデートしていくことも大切ですが、それ以上に受講者たちがその知識を各事業に活用できるかが何よりも重要だと思います。「生成AI徹底理解リスキリング」で得た知識が、当社の様々なプロダクトへの活用やあらゆる業務フローの効率化に繋がれば嬉しいです。

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「ABEMA」開発局 × 報道局が模索する、生成AIとニュース記事の可能性

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サイバーエージェントでは、全社員向けに生成AIリスキリングを実施したり、業務効率化や既存サービス改善等を目的とした「生成AI徹底活用コンテスト」を開催する等、業務における生成AIの活用を推進しています。本インタビューでは、情報ニュースサイト「ABEMA TIMES」における生成AIを利用した編集業務の事例を紹介します。総合編成本部 報道局と開発局 MLエンジニアに、プロトタイプ開発における技術的なポイント、編集業務へ導入した結果と感じられる可能性について話をしました。

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