サイバーエージェント流「リスキリング」は
社内だけでなく、社外へも続く
サイバーエージェントでは昨年より「リスキリングセンター」とエンジニアを育成するための社外向け「アカデミー」をスタートさせました。今日はリスキリングセンターの責任者を務める峰岸と、第3弾となるアカデミーシリーズ「Flutter Academy」の運営に携わる三島木が、その狙いについて語り合いました。
Profile
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三島木一磨
2010年新卒入社。「アメーバピグ」に関連するプロジェクトやスマートフォンアプリ、ソーシャルゲームの開発などを経験し、現在はAmeba関連サービスの開発や組織マネジメントに従事。CTO統括室クロスプラットフォーム開発担当。 -
峰岸啓人
2012年新卒入社。エンジニアとしてメディアサービスの開発に携わったのち、2016年に人事にキャリアチェンジ。現在はエンジニアのための全社人事組織「技術人事本部」の責任者として採用、育成に従事している。昨年立ち上げた「リスキリングセンター」の責任者も務める。
サイバーエージェントが「アカデミー」に取り組む意義
峰岸:サイバーエージェントでは、昨年からエンジニアの採用・育成を目的とした「アカデミー」をスタートしました。社外の方を対象に、3ヶ月で特定領域の技術が習得できるためのカリキュラムを提供。これまでに「Go Academy」を開催、2月からは「Graphics Academy」もスタートします。
三島木:受講料が無料というのも凄いですよね。私は今回募集を開始する「Flutter Academy」から本プロジェクトに携わっているのですが、「アカデミー」を開催するきっかけは何だったのですか?
峰岸:きっかけはエンジニア採用市場の激化です。企業が選ばれる立場にあるということはもちろんですが、あらゆる業種のDX化が進み、エンジニアを必要とする企業は年々増えています。そんな状況下でもエンジニアの母数は増えないことに危機感を感じていました。
「優秀な人材が重要な経営資源」と考えるサイバーエージェントは、もともと育成が非常に得意な会社です。実は2012年にも「アカデミー」を開催したことがあり、それがきっかけで入社したエンジニアが今は要職に就き活躍しています。そのような成功事例があったので、再び開催したい気持ちはずっと持っていました。
そんな中、昨年10月に発表したパーパスに「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」のフレーズがありました。これを見た時に、サイバーエージェントが業界全体のエンジニアのスキル底上げに繋がる「アカデミー」を開催する使命を感じました。
三島木:今回開催する「Flutter Academy」は、「Go Academy」、「Graphics Academy」に続く第3弾プロジェクトですが、2つの反響はいかがでしたか?
峰岸:かなり手応えを感じています。応募人数だけで見ても想定の約5倍の応募があって驚いています。
三島木:私はあのプログラム内容を見て、人気が高まるのも納得ですけれどね(笑)今回は「Flutter」がテーマですが、基礎から実践までの知識を体系的に学ぶことが出来て、プログラム内容はかなり充実していると思います。
峰岸:先日終了した「Go Academy」でも、基礎から応用までを体系的に学べたことで理解が深まった、講義の「質」が高かった、優秀な仲間と切磋琢磨できて刺激になったなと、プログラム内容について非常にポジティブな意見を多くもらいました。
三島木:エンジニアって学習意欲の高い人が多いですし、多くの人が新しい分野を身につけたいと感じていると思うんですよね。ただネットの情報だと体系的に学ぶ難しさがあったり、時間確保という側面でも、どうしても目の前の業務を優先してしまいがちなので、同じ志を持つ仲間と一緒に学べる機会って貴重ですよね。
峰岸:スタートのきっかけは採用ですが、市場にエンジニアが枯渇している中、サイバーエージェントがアカデミーを開催することで、エンジニアの育成に貢献し、業界の底上げに繋がることを望んでいます。
「リスキリング」は事業に必要となる人材を戦略的に生み出すため
三島木:同時期に、社内でも「リスキリングセンター」を立ち上げましたよね。「アカデミー」のプログラム監修もそのリスキリングセンターが行っていますが、詳しく教えてください。
峰岸:「リスキリングセンター」は、変わりゆく技術トレンドに対応したエンジニアの学び推進・キャリアアップを行う組織で、昨年11月に設立しました。
「リスキリングセンター」設立の背景は、この数年サイバーエージェントが展開する事業・サービスの領域が急激に広がり、これまで使用してこなかったような技術を活用する場面が増えてきたことが挙げられます。
このような環境下において、実業務で使用する機会が少ないプログラミング言語や最新技術、高度専門知識を効率的に身につける機会を会社が提供することで、今後事業に必要となる人材を戦略的に生み出していきたいと考えています。
昨年末から第1弾プログラムがスタートし、約80人のエンジニアが「データサイエンス/機械学習プログラム」を受講していますが、そのプログラムの監修や運営をリスキリングセンターで行っているので、「アカデミー」もまとめて監修することでノウハウを溜めていこうという狙いです。
三島木:実は私も「データサイエンス/機械学習プログラム」の受講生です。会社目線だと未来の事業に必要となる人材を戦略的に生み出す狙いがあるということですが、現場のエンジニアにとってはキャリアアップやキャリアチェンジに繋がる良い機会だと捉えています。
サイバーエージェントのエンジニアは技術への感度も高く、自学自習のできる人が非常に多い組織です。だからこそ、会社として戦略的に取り組むべき領域や高度な専門領域について体系立てたカリキュラム、効率的に技術を習得できる環境があることは、非常にポジティブだと感じています。
「リスキリングセンター」って、組織としての歴史はまだ浅いですが、実は同じような取り組みって過去に実績がありますよね?
峰岸:そうなんです。大きなものだと約10年前のスマートフォンシフトを掲げたタイミングで、ネイティブアプリを開発出来るエンジニアを増やすための育成プログラムが立ちあがりましたよね。
他にも、時代にあわせて必要な技術が出てくる度にカリキュラムを組んで、意欲あるエンジニアにスキルを身につけてもらう、ということが繰り返し行われてきました。
三島木:「リスキリング」って昨年あたりから耳にする機会が増えていますが、世の中的には「再教育」「学び直し」というニュアンスが強いイメージがあります。けれどサイバーエージェントの「リスキリングセンター」はちょっと毛色が違う気がしています。
峰岸:そうですね。サイバーエージェントの「リスキリングセンター」は、未来の事業をつくるための重要な経営戦略という意味合いが強いですね。加えて現場のエンジニアにとっては、技術習得の機会、技術チャレンジの機会が得られることで、キャリアアップやキャリア設計につながるものにしたいと思っています。
サイバーエージェントとFlutter
峰岸:今回のアカデミーのテーマは「Flutter」ですが、サイバーエージェントは企業としては割と早いタイミングから「Flutter」の導入を試みていますよね?
三島木:そうですね。サイバーエージェントは新規事業が立ち上がる頻度も多いので、スピード感を持って品質の高い実装を行うために、少人数でアプリ開発を行うことを念頭におき、2017年頃からクロスプラットフォームを検討しはじめました。
昨年はFlutterプロジェクトが5件、Kotlin Multiplatform Mobileプロジェクトが4件立ち上がるなど、クロスプラットフォーム技術の導入事例も増えてきました。
詳しくは、昨年末に書いたブログをご覧いただけると嬉しいです。
9プロジェクトが同時に走る サイバーエージェントのクロスプラットフォームアプリ開発2021
峰岸:こうしてみると、FlutterとKotlin Multiplatform Mobileの採用比率が約半々ですが、技術選定はどのようにして決めているんですか?
三島木:クロスプラットフォームという軸では、そうなりますが、全体感としてはサービスの特性を考慮して、SwiftやKotlinなどのネイティブの技術をメインで用いることが多いです。いずれもプロジェクトごとに、それに携わるエンジニアが裁量を持って必要な技術を選定していきます。今回は「Flutter」をテーマにアカデミーを開催しますが、数年前からクロスプラットフォーム戦略を試行錯誤する中で、向き不向きも分かってきました。
一例をあげると、動画サービスでDRM(Digital Rights Management)への対応が難しいのでFlutterではなく、Kotlin Multiplatform Mobileを採用しているなどですね。
「Flutter」を導入するのは、あくまでも開発効率をあげていくためのいち手段だと思っています。サイバーエージェントのモバイルアプリエンジニアに”Flutterしか出来ません”という人は存在しなくて、モバイルアプリエンジニアという観点では、多くの人がiOSやAndroidのバックグラウンドを持っていますし、プロダクトにFlutterが必要となれば、Webフロントやデザイナーも学習しています。
Flutterは比較的学習コストが低いと言われていますし、iOS / Androidどちらかの開発経験がある人にとっては、高速に両対応のアプリが作れる力が身につくことはエンジニアとしての選択肢の幅も広がりますし、大きなメリットだと思います。
ただ、現時点ではiOS、Android固有の実装をしなければいけない部分もあるので、それらをひっくるめて学ぶ意欲のある人だとチャレンジしがいがあるんじゃないでしょうか。
峰岸:「Flutterアカデミー」では、前半ではDartの言語使用を体系的に学び、後半ではアウトプットを通じて実践を学べる。カリキュラムにはネイティブ連携の項目も含まれているので、正にピッタリだと思います。
あと「Go Academy」を振り返って感じるのは、参加者の皆さんが良き仲間になっていることがすごく良かったと思っています。
講義は全てオンラインだったので直接会える機会はなかったのですが、Slackで数名単位のグループを作って、課題などお互いが助け合ったり励ましあったりできる場を設けていたのですが、思いのほか盛り上がって、オフラインで会う約束をしているチームもあるようでした。
三島木:1人で学ぶより心強いですよね。「Flutter Academy」も、1人でも多くの意欲あるエンジニアにチャレンジして欲しいですね。
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