BABEL LABEL プロデューサーMEGUMIが語る「JAPAN NIGHT」──日本の映画の多様性と可能性を世界へ

カンヌ国際映画祭という世界最高峰の舞台で行う、日本の映画・日本の文化を世界に伝えるイベント「JAPAN NIGHT in Cannes 」。2025年の開催に向け、BABEL LABEL所属のプロデューサー MEGUMIが語る、世界への挑戦とイベントに込めた想い、そして自身のキャリアの変化と未来への展望。サイバーエージェントが目指す世界レベルのクリエイティブとも重なる、グローバルな発信の現場から見えた日本の可能性にふれます。
国境を越える映画の力 - 「JAPAN NIGHT」が紡ぐ多角的な繋がり
― まずは「JAPAN NIGHT」について伺います。開催を決意したきっかけを教えてください。
日本の映画をもっと世界にアピールすべきだ、という想いがありました。私自身、去年初めて「JAPAN NIGHT」を開催したのですが、当初300人規模を想定して準備していたところ、ふたを開けてみたら1,000人近い方々がお越しくださいました。
特に宣伝もせず、イベントの中身もあまりオープンにしていなかったにも関わらず、「日本」というだけでここまで関心を持ってもらえる。それも8割ほどが外国の方だったので、日本の文化や作品が持つポテンシャルと国際的な魅力を改めて実感する機会になりました。

様々な映画や舞台、テレビ出演を経て近年はプロデュース業にも活動の幅を広げている。日本のクリエイティブ業界において注目される存在として、女性の活躍を後押しする取り組みにも積極的に関わっている。2023年よりBABEL LABELに所属し、世界に向けた日本映画・日本文化の発信と新しい才能の発掘に注力している。
― どんな効果や影響を期待していますか?
やはり日本映画を世界に届けたいというのはもちろんありますが、食やお茶、お酒といった多様で奥深い日本文化も「JAPAN NIGHT」を通して体感してほしいと思っています。
映画を核としながら、政治的な出会い、文化的・ビジネス的なネットワークなど、多くの“つながり”が生まれる場にしたい。実際、昨年もいくつかの新しい出会いやプロジェクトがこのイベントから生まれました。今年も、そうした交流がさらに広がればと考えています。
― 今年の「JAPAN NIGHT」、見どころや注力ポイントは何でしょうか?
今年は1,000名を超える方々をお迎えする予定で、カンヌ映画祭のノミネート作品をはじめ、多彩なクリエイターが集まる中で、新しい才能──例えば監督やプロデューサー、海外で活躍する日本人クリエーターなど──を国内外から紹介できる仕組みづくりを進めています。
また、静岡の和栗を使ったスイーツを用意したり、お茶や日本酒など、地域色を活かしたおもてなしも強化しています。
加えて、今年は新たな試みとして、シンポジウムも開催予定です。これは、例えば黒澤明さん、今村昌平さん、横溝正史さんといった巨匠の作品を、海外の映画監督やディレクターが独自の視点で読み解くというもので、昨年より一歩踏み込んだ構成にアップデートできていると思います。
― MEGUMIさんが思う日本映画の魅力はどんなところでしょうか?
日本人が持つ感情の細やかさや、たゆたうような感情の流れや視線の動き。フランス映画にも通じるような、そうした感覚を映像や演出で丁寧に表現する緻密さは、日本映画ならではの魅力だと感じています。
さらに四季の移ろいや日本特有の作法、生活様式など、私たちにとって当たり前のディテールを異国の方々は非常にユニークに感じてくださっています。
グローバルな配信プラットフォームを通じて世界中の人が“日本らしい”作品にアクセスできる今だからこそ、そうした日本的な感性や文化を堂々と映画づくりに生かしていくべきだと考えています。
プロデューサーとしての進化 - BABEL LABELでの学びと実践
― 2023年2月にBABEL LABELに所属されてから、どんな変化や影響が生まれましたか?
一番大きいのは、やはり藤井道人さんという存在が身近にいてくれることです。定期的に自分が今抱えているプロジェクトを持ち寄って全員で話し合うミーティングがあって、そこに藤井さんがアドバイザーとして入ってくれるんです。映画監督としてのプロフェッショナルな視点と、ビジネスパーソンとしての現実的な視点、その両方で具体的なフィードバックをいただけるのは本当に貴重な経験です。
これまで私は、作品作りを抱えて現場でバタバタしながらやっていたのですが、BABEL LABELには同じように悩みを持つプロデューサーや監督が集まっている。定期的にお互いの作品やアイデアを共有し、刺激を受け合える。自分ひとりの視点だけでは見えなかった気づきや、安心感、そして「もっと頑張ろう」という前向きな気持ちが自然に生まれるんです。
特に藤井さんからは「なぜ今この作品を作るのか、その理由をしっかりと言葉にすること」とアドバイスをいただいて。企画や脚本で何が伝えたいのか、その核心をブラさずに明確にすることの大切さを学びました。それ以降は企画書の書き方や伝え方にも変化が生まれ、より「今、届けたいものとは何か」を言語化してから動く癖がついたと思います。

しなやかさと多様性を世界へ - MEGUMIが描く日本映画の新たな姿
― 世界を舞台に活動する中で、どんな困難や壁を感じていますか?
「JAPAN NIGHT」を軸にお話をすると、イベント自体は年々規模が大きくなり、多くの方に注目していただけるようになってきたのは本当にありがたいことです。一方で、「なぜこのイベントをやっているのか」という根本的な意義を国内外の方々に十分理解していただくには、まだ時間がかかるとも感じています。
日本のクリエイティブ業界の中でも、世界に向けて本気でチャレンジしていこうという仲間と、もっともっと繋がりたい。
だからこそ、今は一人ひとりに丁寧に活動の趣旨を伝え、私たちの熱意や目的をしっかり届けていくことが何よりも大切だと感じています。
最初は手探りで始めた取り組みでしたが、「JAPAN NIGHT」が少しずつ認知されてきた今こそ、その中身に共感してくださる仲間や賛同者を増やしていく“共感の輪を広げる段階”に入っていると感じています。
もちろん大変なことはありますが、それらはすべて前向きな困難です。“何か新しいことに向かう途中の苦労”として、むしろやりがいを感じながら取り組んでいます。
―挑戦を重ねる中で、大切にしている信念は何ですか?
「JAPAN NIGHT」は、自分個人のための活動ではありません。
この場を通じて、異なる分野の才能や国境を越えた視点が交わることで、これまでにないコラボレーションや新しいビジネス、そして文化や国籍を超えた人と人とのつながりが生まれています。
生まれた成果や出会いを次のステップにつなげ、より広がりのある価値に育てていくことを最優先に考えています。
自分も想像を超える規模と影響力になってきているからこそ、自分の役割に責任を持ち、ひとつひとつの縁や機会を次の世代や新たなチャンスへとつなげていくことが、今の自分にとってやるべきことだと感じています。
― プロデューサーMEGUMIさんご自身として発信していきたいこと、今後の夢は?
数年前、ニュースで「日本人女性の自己肯定感は最低レベル」というトピックを見て、ものすごくショックを受けました。仕事や育児をがんばる日本女性がもっと堂々と、前を向いて生きていける社会を作りたい。その思いを根底に、自分が手掛ける全ての作品やコスメ、メディアでの発信においても「女性を応援する」という信念を掲げ続けています。
今の一番大きな夢は、自分が携わった作品が海外の映画祭で評価され、新しい日本映画の姿を見ていただくこと。日本のクリエイティブが持つ“しなやかさ”と“多様性”の力を、もっともっと世界に広げていきたいです。
そして、「日本の女性がもっと自分を肯定できる社会」を実現するためにも、作品づくりや発信活動を通してメッセージを送り続けていきたい。たくさんの出会いと学びを「JAPAN NIGHT」やBABEL LABELというという場で経験しながら、世界との懸け橋になれるよう、これからも挑戦し続けます。

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