世界に響くIPを創出へ サイバーエージェントのアニメ&IP事業戦略の全貌

サイバーエージェントは、世界を魅了するグローバルヒットIPの創出に向け、源流となる作品開発からマネタイズまでを一気通貫で担う体制を強化しています。
2024年のアニメ&IP事業本部の設立を機に、長年のノウハウとグループの総合力を結集。アニメを起点とした多角的な戦略を展開しています。
クリエイターファーストの精神を第一に、テクノロジーを駆使しながら、世界市場を見据えた挑戦。アニメ&IP事業を統括する当社専務執行役員 山内に聞きました。
挑戦の新章 - サイバーエージェントのアニメ戦略
近年、日本のアニメやゲームといったコンテンツは、国内外で非常に大きな影響力を持つようになり、当社ではその潜在的な価値に早くから着目してきました。グローバル市場での競争力強化において、特にアニメは不可欠な要素であると考えています。
サイバーエージェントにおけるアニメ事業の歩みは、約10年前に遡ります。
2016年「ABEMA」の開局時よりアニメ専門チャンネルを立ち上げ、2017年にはアニメIPへの投資に特化したファンド「CA-Cygamesアニメファンド」をCygamesと共同で組成。他社幹事アニメ作品への出資を行い、配信権やゲーム化権などを取得し、アニメビジネスをスタートしました。
アニメ制作は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。長きにわたる業界の歴史と、その中で培われた関係性の重要性を深く理解した上で、私たちは性急な大規模参入ではなく、少額出資を通じて業界各社との信頼関係を丁寧に構築し、段階的に事業を推進してまいりました。

現在は23作品のアニメタイトルに携わっており(2025年1月末時点)、今後も多様な作品のリリースを予定しています。
例を挙げると、2025年夏に放送を予定しているTVアニメ『光が死んだ夏』は、当社がKADOKAWA様と共同で製作幹事を務め、グループ会社であるCygamesPicturesがアニメーション制作を担当しています。本作は、『このマンガがすごい!』2023(宝島社刊)オトコ編で第1位を獲得した注目作であり、YouTubeでのトレーラー公開後には非常に高い再生数を記録するなど、放送前から大きな期待が寄せられています。
また、2025年1月に公開した『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』。全世界で3,900万ダウンロードを突破したリズム&アドベンチャーゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」初のアニメ映画を当社が手掛けました。映像と音楽のパフォーマンスが、従来のゲームファンのみならずアニメ好きの方々からも高い支持を得ました。

2024年にアニメ&IP事業本部を設立し、これまでのノウハウとグループの総合力を結集し、体制を強化中 。IPの開発およびアニメの企画プロデュースを主軸に「ABEMA」の集客力を生かした連動企画や、広告・宣伝機能、グッズ制作・マーチャンダイジング機能などを集約し、グローバル市場を見据えて総合的な事業展開に取り組んでいます。
グローバルIP創出へ - 多角的な戦略と総合力
サイバーエージェントのアニメ&IP事業は、出資作品のIP価値最大化と、オリジナルIP創出への挑戦という両軸で進めています。
IP価値の最大化においては、長年の開発力と技術力を生かし、アニメを起点としたゲーム、映画、舞台、コマースなど多様なメディアミックス展開を戦略的に推進。一方、自社によるオリジナルIPの創出は、外部IPに依存しない強固な収益基盤を確立する鍵となります。
当社グループには、日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人氏率いるBABEL LABEL、2.5次元ミュージカルのリーディングカンパニーであるネルケプランニング、『刀剣乱舞』をはじめ多岐にわたるジャンルで実績を持つニトロプラスといった強力なパートナーが参画しており、世界基準のクオリティの高いコンテンツ制作を力強く後押ししています。

近年は、IPの原作とアニメ制作の分野を強化しています。
2022年に設立した縦読み漫画のコンテンツスタジオ「STUDIO ZOON」では、縦読み漫画の企画・制作から販売促進までを一気通貫で展開。早くも「タテ読みマンガアワード2024」で複数のオリジナル作品がTOP10にランクインするなど、その成果が表れ始めています。
また、未来のクリエイター育成にも注力し、漫画家育成事業「MANGA APARTMENT VUY」では、『SPY×FAMILY』などのヒット作を手掛けた編集者・林士平氏と共に、才能の発掘と育成を推進。
2025年1月には、新たなアニメ制作スタジオ「CA Soa」を設立し、経験豊富なプロデューサーやアニメーターによるアニメ作品開発も本格始動しています。
さらに、グローバル展開を加速させるため、アニメコンテンツのグローバルマーケティングに特化したCyberAgent Americaを再始動。各国プラットフォームやメディアとの戦略的連携を強化し、ローカライズされたプロモーションを全世界規模で展開することで、日本発のIPを世界的な成功へと導きます。
ゲームや広告といった当社の幅広い事業展開に加え、これらの多角的な取り組みが、2030年には市場規模9兆円超とも予測※されるアニメのポテンシャルを最大限に引き出す体制を構築。IPを源流から生み出し、マネタイズまでを一気通貫で実現できる組織体制こそが、当社のアニメ&IP事業における大きな優位性だと確信しています。
※2030年市場規模:2025年1月29日出版「Grand View Research, Inc. 」に記述の602億7,220万米ドルを2025年2月末時点の為替にて試算

クリエイターファーストが戦略の核心
サイバーエージェントが目指すのは、世界中の人々に愛されるIPを創出し、アニメ業界に新たな価値を提供することです。そのために、カルチャー、テクノロジー、マーケティングという3つの強みを組み合わせた戦略を推進しています。
その中心にあるのは、「クリエイターファースト」という考え方。なぜなら、良いIPはクリエイターの情熱と創造性から生まれると信じているからです。だからこそ、クリエイターが最高の力を発揮できる環境づくりを最優先にしています。

具体的にお話すると、カルチャーにおいては、サイバーエージェントの持つ経営資源や人材を活用し、バックオフィス領域における環境整備やビジネス面での支援を通じて、クリエイターが安心して制作に打ち込めるよう全面的にサポートします。
テクノロジーの役割は、クリエイターを支えることです。
AIをクリエイターの主要業務以外の作業に導入し、DXも活用して制作スケジュールやコストの可視化をすることで、的確な意思決定をサポートします。コストと工数は最低でも25%削減を目指し、その分をクリエイターへの報酬やアニメの品質向上に還元します。
また、マーケティングでは、クリエイターが生み出す価値を世界に届けるため海外を主軸としたプロモーション戦略に注力しています。CyberAgent Americaを中心に、MyAnimeListやX Corp. Japanといったグローバルプラットフォームと連携し、世界規模で作品の認知拡大とファン獲得を推進しています。
「ABEMA」などの国内基盤とこれらのグローバル戦略を組み合わせ、国内外のターゲット層への効果的なリーチとファンベース拡大を目指します。
今後の展望としては、世界を魅了するグローバルヒットIPを継続的に創出することです。そのために、多様な才能との連携を強化し、アニメを起点とした多角的なメディアミックス展開をグローバル市場で加速します。サイバーエージェントの持つ周辺事業とのシナジーを最大限に活かし、新たなエンターテインメント領域を切り拓き、業界全体の発展に貢献してまいります。

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