クリエイティブを会社の競争力にするための、サイバーエージェント クリエイターの取り組み

技術・デザイン

2023年6月28日、29日の2日間にわたり、サイバーエージェントグループのエンジニア・クリエイターによるテックカンファレンス「CyberAgent Developer Conference 2023」を開催しました。進化しつづけるサイバーエージェントの技術と総合力のカンファレンスとして「Always Fresh」をテーマに、AI・インフラ・バックエンド・SREネイティブ・フロント・3DCG・クリエイティブなど様々な領域において約50のセッションをお届けしました。
こちらでは、基調講演の中から執行役員 クリエイティブ担当の佐藤洋介、CA Creative Center マネジメント統括室 石山貴広、クリエイティブクオリティ統括室 山幡大祐による発表の様子をお届けします。

2023年4月、ブランドコンセプトを制定

当社では、2016年からミッションステートメントの一文に「クリエイティブで勝負する。」というワードが追加されています。この言葉に込めているのは、事業に対してクリエイティブが影響力を持ち市場での競争力になる時代において、クリエイティブ自体を会社の競争力にするという意思です。

サイバーエージェントの特徴は、インターネット広告事業・ゲーム事業・メディア事業といった幅広い事業を1つの会社で展開していることです。最近ではこれまで培ってきたノウハウを活かし、AIやDXの領域へも事業を拡大しています。事業が多角化する中で当社のクリエイティブが目指しているのは、それぞれの分野において、世界レベルのクオリティを実現すること、そしてグループシナジーを最大化するための機会や環境を構築していくことです。クリエイターのクリエイティビティを引き出し、そのクオリティ自体を競争力にするための事例をいくつか紹介させてください。

新しい未来のテレビ「ABEMA」ならではのクオリティを意識した大相撲ライブチャンネルは、先日開催された「第102回 ニューヨークADC賞」にて「Merit」を受賞するなど、世界レベルのクオリティの実現に向けて、様々なチャレンジを行っています。

Amebaで生まれたデザインシステム「Spindle」は、現在Ameba事業全体への適用を継続的に行い、"Amebaらしさ"を一貫してユーザーに届けるための仕組みとして、サービスのさらなる信頼性向上に繋げています。

DX事業においては、アプリを通した顧客体験の向上を当社と共同で進めているサツドラのアプリが、ストアレビュー4.5を獲得。数あるドラッグストアアプリの中でもナンバーワンの実績です。

また、プロダクトの領域では、N organic(Nオーガニック)がロフトベストコスメ2022 トップ5部門1位に選出されました。ゲーム事業では、クオリティにこだわった数々の新規タイトルを、リリースに向けて鋭意制作中です。

さらに、事業が多角的に広がる中でもサイバーエージェントらしさを示せるよう、2023年4月にものづくりのための指標として、ブランドコンセプトを制定しました。BtoBからBtoCまで幅広く事業を展開し、それぞれが独自の発展を遂げ、進化し続ける我々にとって、ブランドとしての一貫性はあまり重要ではないと思われるかもしれません。ただ、働いている社員一人ひとりがサイバーエージェントらしさを体現し、内外から見たアウトプットにも当社らしい一貫性があれば、グループシナジーをより強くし、世の中からのさらなる期待値を生めると考えています。

そこで制定したのが 「Always Fresh」というブランドコンセプトです。サイバーエージェントのあらゆる創作活動において常にアップデートし続け、新しさを求めて創意工夫するというメッセージを込めました。

個人個人の成長が止まらない、戦略的な組織作り

多角的な事業において、「Always Fresh」を体現しサイバーエージェントクオリティを担う クリエイターの人数は、約1,000名を超える規模になりました。これは全従業員の17.5%にあたります。事業ニーズの多様さから、当社には様々なクリエイターが存在しており、UIやアートディレクション、3DCGなど自社でカバレッジするクリエイティブの領域の広さも当社の特長の1つです。

我々クリエイターの創造力には、モノの価値を変える力があると思っています。優れたクリエイティブを武器に事業を成功させ、それ自体を競争力にすることが当社の方針です。そのためには多様なクリエイターが、多様な事業ドメインに対してモチベーション高くクオリティを維持できる環境が欠かせません。高いクオリティを保ち続けるためには、育成・機会・評価が必要不可欠で、個人個人の成長が止まらない組織作りに特に力を入れています。

クリエイティブに強い組織を作り(組織力)、そこから生み出される高いクオリティの創造性に再現性を持ち(創出力)、それを市場での影響力に変えていく(影響力)。組織として、これらを戦略的にループさせることが重要だと感じています。このループを実現するために2021年に設立した、社長室直下のクリエイティブ組織「CA Creative Center」ではクリエイティブマネジメント統括室・クリエイティブクオリティ統括室・ブランディング統括室に加え、社内のあらゆる環境改善にクリエイティビティを発揮する目的で、最近新たにオフィスデザイン統括室を発足しました。ここからは各メンバーより、それぞれの取り組みについてご紹介します。

【組織力】中長期を見据えた戦略的な組織づくりの重要性

組織力を高めるためのマネジメント統括室での取り組みについて、石山よりお話しします。
優秀なクリエイターを採用し育成する目的は、当社における事業成長の加速にあります。マネジメント統括室では、中長期を見据えた戦略的な組織づくりを大切にし、事業を任せられる人材育成を行っています。組織力を高めていくための3つのポイントをお話しします。

まず1つ目は、戦略性の向上です。クリエイティブ戦略が必要である理由は、クリエイターの周辺環境が、予測しづらい変化のうねりの中にあるからです。クリエイター自身の裁量が大きい当社だからこそ、プロダクトマーケットフィットがより求められますし、クリエイティブ戦略の解像度を上げていく必要があると考えています。

そのための取り組みとして、各部門のクリエイティブ責任者たち自らがクリエイティブ戦略を練り、発表する「CREATIVISION」を半期に1回開催しています。「CREATIVISION」を通じて、角度の高い戦略を生み出せる状態を目指しています。

2つ目は、リレーションシップです。これまで当社ではインハウスでクオリティを高め、ノウハウ化するケースが多くありました。ここ最近ではインハウスだけに止まらず、クオリティの姿勢に共感していただける外部企業との取り組みを増やしてきました。Adobe様との事例をご紹介します。ロサンゼルスで開催した「Adobe Max 2022」日本向け報告会の開催です。具体的には新機能の深掘りや「Substance 3D」製品のレクチャーなど、両社員でのレビューを行ったほか、画像生成AI「Adobe Firefly」を当社新卒研修のプログラムに取り入れました。今後も、当社クリエイターの組織力向上のため、このような外部企業とのリレーション構築を進めていきたいと考えています。

最後にナレッジ共有として、クリエイターのリスキリングについて紹介します。事業変化に対してクリエイターに求められるスキルの幅が増えてきていることから、その習得を社内でサポートしていく取り組み「ONE DUP(ONE Dimension Up)!」を始めました。「ONE DUP!」を通じて、各クリエイターの持ち合わせているスキルを3DCG面へも広げ、さらに高いクオリティを目指せる環境を構築していきます。

【創出力】品質評価の仕組みと新卒採用

創出力を高める取り組みについて、山幡よりお話しします。様々な取り組みのうち、本日は2つ紹介します。

まずはクオリティについてです。その高さを知覚されるためには、クオリティの低いものがなくクオリティの高いものが生み出せている状態の実現が必要です。そのためにトップアップとベースアップに取り組んでいます。
トップアップは当社がこれから参入する注力事業において、市場の中で比較してもクオリティの高さを求めていく取り組みです。社内のトップクリエイターが直接介入し、ナレッジシェアをしながら 一緒に戦略立てを行っています。トップアップはいきなり仕組みを作るのではなく、まずは成功事例を増やし、その中からさらなるナレッジを抽出していこうと考えています。これから発表されるプロダクトに、ぜひご期待ください。

続いてベースアップです。数多くの事業を持つ当社全体でベースアップが達成できれば、サイバーエージェントクオリティのさらなる底上げが見込めます。より多くの事業に対し再現性を持つため、「CyberAgent QUALITY SCORE」という仕組みの開発を現在進めているところです。

ユーザーがクオリティを体感する知覚品質を独自の指標でスコア化しただけでなく、市場のスコアも可視化した上で、他社プロダクトと比べて当社が提供するサービスのクオリティをユーザーがどう知覚しているか、数値化しました。すでにメディア事業を中心とした20のサービスで実施しています。クリエイティブクオリティ統括室では このスコアをもとに各チームと連携し、クリエイティブ戦略の組み立てをサポートしています。今後も、より幅広いサービスへの対応と数値のさらなる精度上げに取り組んでいきたいと考えています。

次に新卒採用についてです。「未来のクリエイターを、いまのクリエイターが採用する。」という考えの下、当社ではクリエイター自身が採用活動に積極的に取り組むカルチャーが根付いています。情熱ある次世代が仲間に加わり続けることで、時代を捉えた創出力を生み出し続けられると考えているからです。クリエイター自らが、毎年数多くのイベントやインターンシップを企画しているのが特長です。また、メンターや審査員という立場で直接学生と交流する機会も大事にしています。たくさんの採用活動が実を結び、当社採用情報サイトの登録者数はここ数年増え続け、たくさんの学生がイベントやインターンシップに参加してくれています。

この夏もたくさんのイベントを準備していますので、現在募集中のイベントの情報は 「CyberAgent Developer Conference 2023」公式サイトの関連リンクをご覧ください。

【影響力】クリエイティブを機能させた様々な事例

最後に影響力について佐藤よりお話します。クリエイティブで勝負する会社であることを、クリエイター主導で内外に発信するための様々な活動を行っています。

当社本社ビルの1階に大型のサイネージを設置しました。社員が多く通る場所のため、経営メッセージを社員に伝えるツールとして機能させています。例えばパーパスに関してはただ文字を掲げるだけでなく、その日の時間や天気によってグラフィカルに変化する仕様に工夫しました。社員が常に意識する仕掛け作りに、クリエイティブを機能させた事例です。

また、コロナ禍によるリモートワークの浸透などで、当社でもオフィスの一部がフリーアドレス化されました。それに伴い、誰でも気軽に利用できて自然と人が集まりたくなる、をテーマにしたオープンスペースの充足に十分な投資を行っています。オフィスデザイン統括室では、社内のあらゆる環境に対してクリエイティブの力を発揮しています。

そして、今年新たに「Always Fresh」というブランドコンセプトを掲げた我々ですが、当カンファレンスも、当社のクリエイティブ力を発揮する重要な場の1つです。制作やディレクションなど全てを社内のクリエイターが担い、自分たちの技術力と高いレベルのクオリティに向き合って発信する機会として年に一度開催しています。

これからの時代、ただ作るだけで流行る時代はとうに過ぎていると思います。また、生成AIの進化もますます拍車がかかる中で、我々クリエイターがこれから先どのようなキャリアを作っていくのか、非常に重要な局面に来ていると感じています。ただ、先ほどもお伝えしたように、我々クリエイターの武器はその創造力にあります。AIによって創造のプロセスが変化していく流れの中で、モノの価値をどう変えていくのか、高い次元でクリエイティブディレクションできる能力こそが非常に重要だと考えています。これから先も常に時代の変化に対応しながら、クリエイティブを会社の競争力にすべく、クリエイターが成長し続けられる組織を作っていきたいと思います。

CADC2023

「CyberAgent Developer Conference 2023」のアーカイブ動画・登壇資料は公式サイトにて公開しています。ぜひご覧ください。

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なお、野渡が統括するシステムセキュリティ推進グループについて、詳しくは「『免疫』のようなセキュリティチームを作りたい~主席エンジニアたちが向き合う情報セキュリティ対策~」をご覧ください。

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