藤田晋×野上祥子対談。ネルケプランニングのサイバーエージェントグループ入りについて「もっと先へ!」を語る【後編】

Other

先日、ミュージカル『テニスの王子様』をはじめとした2.5次元ミュージカルを手掛けて、話題作を展開し続けている舞台制作会社 ネルケプランニングのサイバーエージェントグループ入りについて発表しました。
この背景や今後の展望について、サイバーエージェントとネルケプランニングの社長対談インタビューを前編/後編にわたってお届けします。

前編はコチラ

── サイバーエージェントには新たにグループ入りしている会社がありますが、大事にしている考え方はありますか。

藤田:クリエイティブを競争力に掲げる会社として、何が価値なのかをきちんと理解できているオーナーでいないと大変なことになってしまいます。ネルケには、大事にしている舞台クオリティがあって、それをちゃんと理解していないオーナーだと大変ですよね。クリエイティブの価値を理解しているかどうか、取り扱いができるかというのは、最近ではBABEL LABELがグループ入りの事例としてあるので、見えていたのかなと思います。
 

野上:エンターテインメントに対して、すごく理解を深めていらっしゃるのだと、BABEL LABELがグループ入りされたときの記事から伝わってきました。

藤田:売り込みに行きたいと思ってもらえる会社でいないといけないなと思います。

── 発表後のSNS上には「ABEMAに配信が寄っていくのか?」という声もありましたが、方針についてお聞かせください。

藤田:これについては、1ミリも考えていなかった。株の取得というのは支配目的ではありません。全力で出来る限りサポートして、投資した会社の価値を上げていくというのが基本スタンスです。もちろんABEMAで配信をしたほうが価値が上がるという判断が出てくる可能性ももちろんゼロではないですが。

野上:作品ごとに合っている媒体で配信していくのが1番良いと考えていますね。

藤田:私達の都合で無理やり最適な姿をゆがめてしまったら、それは会社の価値を下げてしまうことです。1番ベストな形を選ぶべきだと思いますね。

── プレスリリースのコメントに「もっと先へ!」とありましたが、ネルケプランニングが今後強化していきたいことを教えてください。

野上:まず、ネルケの強みである2.5次元ミュージカルを国内外問わずより多くの方に届けられるよう展開していきたいです。今年に入って海外からのお声掛けが増えてきたので、日本だけでなく、海外でも上演できるように積極的にプレゼンしていきたいと思います。先日は、韓国に2.5次元ミュージカルの良さを伝えに行きました。そういった露出を増やして、海外での上演が実現できるよう目指します。
2.5次元ミュージカルはグローバルコンテンツとして、そのクオリティの高さから海外で通用する自信があるので、改めて頑張りたいですね。

次に、世代ごとにフォーカスを当てたコンテンツづくりです。8月には、アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」を舞台化予定です。こちらは、ネルケが今取り組んでいる“ウェルカムキッズプロジェクト”の作品のひとつとして上演します。決して子どもを赤ちゃん扱いせず、一人の観客としてリスペクトすることで、全世代が楽しめる作品づくりを目指します。
また、それぞれのライフスタイルを楽しんでいる30代~50代のミドル世代向けにも、フラっと来て楽しめるような舞台作品を企画したいです。
 

3つ目は、リアルとデジタルの融合です。我々はずっとフィジカルをメインにやってきましたが、サイバーエージェントと組むことで、デジタルとの融合が新しいエンターテインメントの第一歩になると考えています。

近いうちに強化したいことは、大きくこの3点です。

また、これまで以上に配信事業にも力を入れていきたいですね。ライブコンテンツは生で感じることが大切ですが、コロナ禍で劇場に来ることができない人には、配信が手助けになっていたはずです。病気や子育て・介護中の方、遠方に居住されている方など、何らかの事情で劇場に足を運べない人々に向けて、自宅から楽しめる演劇を提供することも重要だと思っています。

そして、将来的には、いつか劇場を持つという夢もできました。そこに行けば2.5次元ミュージカル作品をいつでも観ることができ、作品のファンだけでなく、何かの用事で近くに訪れた人、外国人観光客など、気軽に人々が集まる劇場を作ることができたら最高だと思います。また、ネルケプランニング独自のIPを作ることにも、取り組んでいきたいです。
 

藤田:サイバーエージェントグループ全体でも、手掛けるイベントが増えてきています。
劇場やライブホールを持ちたいという想いはあるので、需要予測などがしっかり出来た上でにはなりますが、劇場についてもチャンスがあったら考えたいですね。

── 逆に、ネルケプランニングとしてこれまでと変わらないことも教えてください。

野上:とにかく原作をリスペクトし、原作を預かっている点を絶対に忘れないことです。我々は舞台に落とし込んだ時にどう面白くできるかを提案するのであって、原作から曲がったことを絶対にやってはいけません。これまでも丁寧にやってきましたが、もっと丁寧でなければならないと思っています。

作品をつくる時に丁寧に向き合うことがお客様と向き合うことに繋がっているので、ぶれることなくより強固にしていきたいですね。

── サイバーエージェントとして、連携を図っていくポイントを教えてください。

藤田:ネルケはクリエイティブ集団ですが、サイバーエージェントは上場企業を23年ほどやっていますので、経営管理面をサポートできたらと思います。ネルケがこれまで経験と勘でやってきた部分、会場選びやそのキャパシティ、上演頻度、原作選びなどを数値化したり科学したりして、判断軸の参考にしてもらう。本当の理想的な計画やスケジュールはこれだというものがあると最適化していけるので。

もちろんクリエイティブのクオリティをネルケプランニングのコアとして最優先した上で、経営管理をサポートすることでもっと大きくできそうだと感じています。今後、そういった部分で力になっていけたらと思います。

野上:上場企業ならではのアドバイスをいただけたら、より明確なベクトルに向かうことができるので嬉しいです。これまで進み方を模索しながらずっと走ってきたので、時には怪我もしてきました。治さないといけない怪我を改めて教えていただくのが、すごく大事なことだと思っています。

会社の母体をきちんと整えなければ、大きな船として動いていかないと感じていたので、改めてこの船を整えるということを頑張りたいです。
 

── 日本発のエンターテインメントをグローバル展開していくという点において、ネルケプランニングの可能性やサイバーエージェントグループ全体としての展望について聞かせてください。

藤田:ネルケの舞台は、世界に通用すると思っています。ウマ娘も舞台化していただきましたけど、我々のIPを舞台化したいときにネルケの力を借りたいというのは、これからもあるでしょうね。海外展開していくときに心強い仲間です。

── 野上社長の明るくてHappyなマインドが印象的です。最後に、ネルケプランニング社長として大事にしている考えを教えてください。

野上:シンプルに「幸せは幸せを呼ぶ」と思っています。ネルケの社員が幸せであれば、幸せな作品をつくることができて、観劇されたお客様も幸せになると考えています。もちろん、お金や時間といった責任が伴いますが、それとは別でとにかく皆に幸せでいてほしいと願っています。

そして、ネルケが提供するエンターテインメントで、あらゆる人の人生も応援したいと思っており、推したいものを推して、好きなものを好きと大声で言うことができる世界を目指しています。全部繋がって誰もが幸せになってほしいです。本当に世界平和を望んでいますね(笑)。

私はお母さん社長ですが、世の中には様々なバックグラウンドを抱える人がいます。“私”という役割を持ちながらも、幸せでいられることを大切にしたいと考えています。

藤田:私も家族と平和で居られたらいいなと思うようになりました。それにしても、ファウンダーの松田さんもそうですが、野上社長も似ていてパワーに満ち溢れていますよね。これから、よろしくお願いします。
 

■ネルケプランニング公演情報

ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs六角
https://www.nelke.co.jp/stage/tennimu_rokkaku_4th/

東京
2023年7月15日(土)~7月23日(日)
TACHIKAWA STAGE GARDEN

大阪
2023年7月28日(金)~8月6日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

愛知
2023年8月18日(金)~8月20日(日)
名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール

東京凱旋
2023年8月26日(土)~9月3日(日)
日本青年館ホール

夏休み!オン・ステージ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」
https://www.nelke.co.jp/stage/stage_zenitendo/
2023年8月17日(木)~8月27日(日)
品川プリンスホテル クラブeX

ミュージカル『刀剣乱舞』 ? 乱舞野外祭
https://www.nelke.co.jp/stage/touken_suehirogari_ranbuyagaimatsuri/
2023年9月17日(日)~9月24日(日)
富士急ハイランド・コニファーフォレスト
 

この記事をシェア

公式SNSをフォロー

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • Line

記事ランキング

アジアで大ヒット『青春18×2 君へと続く道』藤井道人監督が語る、映画づくりの内核 

Other

台湾を筆頭にアジアで大きな反響を呼んでいる映画『青春18×2 君へと続く道』。
本作は、映画『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀賞を受賞し、興行収入30億円の大ヒットを記録した『余命10年』など、数々の話題作を生み出してきた藤井道人が監督・脚本を務める、初の国際プロジェクト。
サイバーエージェントが製作幹事を務め、BABEL LABELが制作を手掛けた初めての作品でもあります。
BABEL LABELの山田社長は「藤井がこれまでの人生での成し得てきた環境全てを活かした作品」と評す本作。
5月3日の日本公開を前に、藤井監督が率直に思いを語ったインタビューをお届けします。監督の内面、思考、そして今目の前に広がる景色とは。藤井監督の現在地を深掘りしていきます。

Page Top