「THE MATCH 2022」 から読み解く“流行”の仕掛け方
先日、サイバーエージェントのビジネスコース向けの大型イベント「CyberAgent Ventures Summit 2022」を開催しました。本イベントでは「挑戦」をテーマに、広告・エンタメ・新規事業など様々な領域において、これまでと今後の挑戦について、7つのセッションを実施。
この記事では、株式会社AbemaTVのエンタメDX本部長兼株式会社OEN 代表取締役社長の藤井が、「エンタメ産業のDX化への挑戦 スポーツ・音楽・格闘技で社会現象を巻き起こす」というテーマで行ったセッションの様子をご紹介します。
格闘技ペイパービューの可能性が日本の未来を創る
私は格闘技ペイパービューを日本で普及させたいというすごく強い想いがあります。これはなぜかというとペイパービューは、日本では新しいビジネスモデルですがアメリカではすごく主流で事例が多いことが挙げられます。例えば、2015年に開催されたボクシングの「世界ウエルター級王座統一戦」でメイウェザー選手とパッキャオ選手が戦った時は、「世紀の一戦」と言われ約400万人が購入したと言われています。一人当たりチケットの単価が1万円なので、その1試合で400億円の経済効果があったということです。また、それだけでなくアメリカでは、選手が貰えるギャランティ(報酬)が日本と比べても大きな差が広がっているんですよね。儲かるビジネスという認知もされているため、スポーツ選手を目指すという方がすごく多いそうです。
スポーツで稼げる世界になってくると、スポーツ選手を目指そうという子供が増え、子供に夢を与えたり、未来がどんどん広がるんじゃないかと考えています。なので、このペイパービューモデルをもっと日本にもっと普及させたいという想いがあります。
ABEMAの“話題”を作るマーケティング
「THE MATCH 2022」は「ABEMA」の番組制作のノウハウを詰め込んで話題化を狙っていきました。
「ABEMA」では日々どのようなことを意識して番組を作っているのかというと、“見たら面白い”ではなく、“見る前から面白い”ということです。どういうことかと言うと、地上波はテレビをつけたら番組が流れ、ザッピングして面白い番組に巡り合うという流れが多いですが、「ABEMA」の場合まずアプリを開くというハードル、そこから番組を見るという流れになるため番組に辿りついてもらうまでに長い動線があり、受動的な視聴を促すというのは現状難しいからです。
だからこそ、コアファンから火をつけ、未認知の方が“見る前から面白い”という状態になってもらう。コアファンから、気づいたら自分たちの手を離れて勝手に広がっているっていう状態になるための作戦まで考えるのが、今の「ABEMA」の番組制作のプロデューサーの仕事です。
例えば、「オオカミ」シリーズでたとえると、コアファンの人に火をつけることから始めます。すると、コアファンから「この中にオオカミになって騙してる子がいるんだよ」と周りに紹介していき、「オオカミ」のことを知らなかった方も含めて話題になり、その輪が広がっていき世の中のトレンドになっていく。
世の中で話題になっていかないとトレンドも作れないし、視聴もされないので、このようなコアファンから火をつけるストーリー戦略を意識して番組制作をしています。
「THE MATCH 2022」を事例にした“流行”の仕掛け方
今回、「THE MATCH 2022」では、ターゲットを細かく分けて戦略を考えました。まずはコアファンが絶対ペイパービューを購入したいと思ってくれるようなストーリーや戦略を立てていきます。コアファンとは例えば普段から格闘技を見ることが習慣になっていたり、今回でいうと天心選手・武尊選手以外の試合に関しても興味があり、その方の周りでどれくらい話題になっているかなどの具体的なペルソナイメージまで考えます。
ではコアファンに向けて具体的にどのようなアプローチを行ったかというと、一例としてキャッチコピーとキービジュアルの工夫があります。今回のキービジュアルでは真ん中に天心選手と武尊選手、その横にK-1とRISEそれぞれの選手が並んでいます。それぞれの選手は各団体の世界チャンピオンや団体を背負っているような主役の選手が非常に多く、最強なのが2人だけではなくて出場する選手全員が最強なんですよね。そのため、ここには最強しかいないという意味を込めて「最強 vs. 最強」というのをキャッチコピーに込め、今回のキービジュアルを普及させていきました。
格闘マニア向けのチケットを販売したのも1つの戦術です。
ファン同士が選手と一丸となってどちらが勝つのか思い入れを持ってもらいたい、という狙いから、一般チケットとは別に「武尊応援チケット」「天心応援チケット」という、2つの種類の応援チケットと一般チケットを分けて販売していきました。
そこから本番までにじわじわと盛り上げるために、どのタイミングで何をしたら一番盛り上がりに効くのかというのを戦略を立てて仕込んでいました。このようにタイトなスケジュールの中で販売のストーリーを作っていくというのが私たちの仕事です。
さらに私たちの仕事は、宣伝するだけではなく、安心して見ていただいたり、終わった後にYouTubeなどに違法動画がアップロードされるのをどう対策するかなど、購入してくれた方が損したなと思わないフォローの部分も考えなくてはいけないため、コンテンツから宣伝、アフターフォローなど幅広く考えていきました。
その一環で試合当日の天心選手と武尊選手の試合開始時間に一気に集まるとサーバーが落ちるかもしれないというリスクがあり、購入時間を分散させるために記者会見で早めに購入することを促したり、天心選手が一夜明け会見で「違法動画本当に良くない」と話してくれたり。これらはほんの一部の施策ではありますが、選手とも一体となって施策を行っていき「THE MATCH 2022」が成功しました。
本当にたくさんのニュースに取り上げていただき、当日の「ABEMA」来訪者数が開局史上最高を記録、Twitterでは世界トレンド一位にもなり、社会現象になったと言っても過言ではありません。気付いたら勝手に世の中に広がっているというのが本当の流行ってことなんだなと肌で実感しました。
▼「CyberAgent Ventures Summit 2022」アーカイブ動画公開中!
「CyberAgent Ventures Summit 2022」のアーカイブ動画は新卒採用YouTubeチャンネルにて公開しています。ぜひご覧ください。
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