宇宙への挑戦を全ての子どもたちに。
JAXA職員が語る、プログラミング教材「ロケット打上げを学ぼう」を無償公開する想い

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小学生のためのプログラミングスクール「Tech Kids School」(株式会社CA Tech Kids運営)が開発協力した、小学生向けのプログラミング教材「ロケット打上げを学ぼう」が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)から無償公開されました。

「ロケット打上げを学ぼう」は、「Scratch」を利用し、ロケット打上げを疑似体験する内容です。ロケットの打上げから指定の高度で軌道に乗せるまでの過程を「Scratch」※でプログラムすることで、実際のロケット打上げもプログラミングによって制御されていることを学ぶことができます。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、家庭で過ごす時間が長くなっている今、「子どもたちが本教材を活用し、新たな気づきや学びを得てほしい」と話すJAXAの小島氏に、教材の無償提供にこめた想いを聞きました。

※「Scratch」 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)が無償で提供している子ども向けプログラミング学習ソフト
 

ロケット打上げ、目で見えなくなった”その後”を知ってほしい

 ──プログラミング教材「ロケットを打上げを学ぼう」制作の意図は。

日本では今、種子島宇宙センターにおいて民間企業主体でロケット打上げが行われるようになりました。またその他北海道や和歌山など、様々な地域でロケット打上げのベンチャー企業が活動するなど、宇宙開発がとても盛り上がっています。

一方で打上げというと、地上から打ちあがった後の数十秒間、目で見えなくなるまでの視覚的にもわかりやすい部分が主に注目され、ロケットがどのような手順を踏んで、どのような経路をたどって人工衛星を目的の軌道に届けるかという、目で見えなくなった”その後”については、まだまだご存じない方が多くいらっしゃるのではという思いを抱いていました。
 

JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター 管理課広報 小島浩道氏
JAXA 宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター 管理課広報 小島浩道氏

そこで、宇宙センターの広報職員で議論した結果、2020年度から全国の小学校でプログラミング教育が必修化される時流を捉え、「プログラミング」という切り口からロケットの打上げについて普及啓発を行うことにしました。
そのような経緯で開発したのが、ロケットの打上げ制御を疑似体験するプログラミング教材「ロケット打上げを学ぼう」です。

プログラミング言語の中でも視覚的にわかりやすい「Scratch」を活用し、小学生の子達にも容易に理解できるよう工夫しています。
打上げの際ロケットがどのような軌道をたどり、どのような高度で、どのように段階的に分離し、最終的に衛星を目的の軌道に届けるかを、「Scratch」の用語でいうとコスチュームの移動および背景の変更で表現しました。

CA Tech Kidsさんには、以前もプログラミング教材「人工衛星・地球観測を学ぼう!」を制作いただいた実績があり、今回そのスピンオフという形で実施できれば面白いのではと考えお声がけをさせていただきました。

教材一部抜粋
教材一部抜粋

小学生の目線に立ち、少し難しいことへの挑戦をわかりやすく導く「ロケット打上げを学ぼう」

 ──今回の共同開発で印象に残っていることは?

「Scratch」が視覚的にわかりやすいプログラミング言語であるとはいえ、「もし」「または」「かつ」等の並列や入れ子構造などは、どうしても論理構造が複雑になります。小学生の子達にとってすんなりと頭に入っていかない部分もありました。

そんな中、今年の 2月にTech Kids Schoolさんに本教材を用いたワークショップを行っていただいたのですが、このワークショップでの参加者の方々の様子を踏まえて、「もし」を重ねる構成を採用して構文をよりシンプルに修正されるなど、小学生の目線で「わかりやすさ」を追求されていました。

2020年2月にTech Kids Schoolが実施したワークショップの様子
2020年2月にTech Kids Schoolが実施したワークショップの様子

 ──ワークショップで子どもたちが作業する様子をご覧になり、また、彼らと実際に接してみていかがでしたか? 

参加者は、プログラミング経験者が約7割、その他が未経験者という構成でした。

経験者はプログラミングについて大人顔負けの知識を持っていますよね。
未経験の子たちも、大人でも理解が難しい内容をこちらの想定より早く進められていました。

「Scratch」が視覚的にわかりやすいプログラミング言語であるとはいえ、論理的に複雑で大人でも悩む部分は出てきます。それでも、内容をしっかり飲み込み理解してくれたのは、教材を開発した一人として、素直に驚き、また嬉しかったです。
 

プログラミングが、宇宙開発やロケット打上げなどと密接に関わっていることを学び、未来への視野が広がる充実したワークショップとなりました。
プログラミングが、宇宙開発やロケット打上げなどと密接に関わっていることを学び、未来への視野が広がる充実したワークショップとなりました。

子どもたちに強い好奇心と学びを。「ロケット打上げを学ぼう」を好奇心の入り口に

 ──プログラミング教材「ロケット打上げを学ぼう」を無償公開する想いとは。

次世代を担う子どもたちには、これからどんどん技術的に社会が高度に、また複雑になる中で、常に強い好奇心をもって多くのことを学び、そして将来社会で活躍してほしいと思います。

プログラミング教育はそのきっかけの一つであり、これだけできればいいというものでもないと思います。

例えばこの教材を好奇心の入り口に、「ロケットの軌道はなぜこうなっているのだろう」、「人工衛星はなぜ地球の周りをまわっていられるのだろう」といった疑問を自分で持ち、調べてみるなど、どんどん興味、関心の幅を広げていってくれることを期待しています。

 

前出のワークショップ。「どんなお仕事をしているんですか?」「どうやったらJAXAで働けますか?」と子どもたちから質問攻めにあう小島氏。なかには自分で作ってきたロケットゲームを披露した子もいました。
前出のワークショップ。「どんなお仕事をしているんですか?」「どうやったらJAXAで働けますか?」と子どもたちから質問攻めにあう小島氏。なかには自分で作ってきたロケットゲームを披露した子もいました。

2020年度からプログラミング教育が必修化される一方で、予算、人員、情報等の制約から、多くの学校でまだまだ実施に向けて乗り越えなければならない壁があるのではという問題意識を、地元種子島の学校様とやりとりをするなかで持っていました。

このような課題に対し、JAXA だからこそ提供できる解決手段があるのではという思いから、無償、かつシンプルで導入が容易なプログラミング教材を、ロケットの打上げを題材にして開発しました。本プロジェクトはそのような背景も持っています。

現在ご家庭で過ごしているお子さまたちに楽しんでもらいたいですし、ぜひ多くの学校関係者の方にも、本教材を使っていただきたいと思います。

最後に、このような教材を作成した手前、言いづらいですが、やはり目の前で巨大なロケットが爆音とともに宇宙へと昇っていく本物の打上げの迫力は、パソコン上でロケットのコスチュームを動かすのとは比べ物になりません(笑)。ぜひ一度種子島にお越しいただき、本物の打上げをご覧ください!

プログラミング教材「ロケット打上げを学ぼう!」

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