生成AI時代におけるサイバーエージェントのクリエイティブ戦略

技術・デザイン

当社所属のエンジニア・クリエイターを対象にした社内技術カンファレンス「CA BASE CAMP 2023」を先日開催しました。2018年より毎年実施しており、各事業領域で蓄積されたナレッジの共有や、所属部署・職種を超えたさらなる交流促進を目的としています。

同カンファレンスでのクリエイターによる基調講演では、執行役員 佐藤洋介、主席クリエイター 山幡大祐、新卒クリエイター採用責任者 中島さや香、FanTech クリエイティブ責任者 及川和之が登壇しました。こちらの記事では、登壇の様子を一部編集しお届けします。

市場予測と今後の変化(佐藤)

生成AIの活用によって、今後2年以内にクリエイターの制作環境が大きく効率化されていくことは明白です。その結果、一定の品質までは誰もが早く、かつ大量に作れる時代が来ると予測されるため、我々クリエイターにはこれまで以上に広範な視野と知識が必要になると考えています。そのため、これからは様々な技術やフレームを活用して、目標や目的からデザインしていくスキルが欠かせません。

そこで重要なのが、スキルポートフォリオの変化です。AIによって「つくる力」の中のオペレーティブな業務が圧縮される一方で、創造性のあるアイデアとクオリティを生み出す上での目的・目標を示すための「ディレクション能力」がますます重要になると考えています。

まさに今は時代の転換期と言えますが、これまでの歴史を振り返ると絵画が写真に置き換わり、パソコンやインターネットの普及によってそれらがデジタル化されるなど、クリエイターはこれまでも媒体やテクノロジーの変化を乗りこなし、進化を続けてきました。

この生成AI時代においても新たな進化を遂げるべく、まずはつくるリソースを圧縮してディレクション能力を鍛え、クリエイティブの目的や目標設計についてマネジメントできる人材を増やしたいと考えています。

それらを踏まえ、全社横断でクオリティを機能させるための横軸組織「CA Creative Center」では、24年度の戦略テーマとして「創造性の進化、クリエイターの新章」を掲げています。

我々クリエイターの創造性をより一層進化させ、10年に一度と言われるこの大きな変革の波をポジティブに乗りこなすことで、サイバーエージェントが生成AI時代においてもリーディングカンパニーとなるきっかけを作りたいと考えています。当講演では、「創造性の進化、クリエイターの新章」において特に注力する3つのポイントをご紹介します。

スキルポートフォリオの変化(山幡)

これからはディレクション能力が求められる機会がさらに増えるとお話してきましたが、その中でもとりわけ重要なのが、ものを作り出す前に、戦略と紐づいたクリエイティブの方向性を描き、それをチームに伝え、動かす力です。

クリエイターは制作フローの中で最終アウトプットのクオリティに責任を持つ人である、というイメージが強いと思いますが、実際は戦略に基づいたプラン、もしくはそれ以上のクオリティにチームを引き上げながら牽引することが大切です。戦略からアウトプットまで一貫した強いメッセージがあるクリエイティブが必要な時代になると考えており、クリエイターのコミット領域がより一層広がるものと感じています。

その中でもどのポイントに専門性を置くかが重要だと考えており、今後生成AIの発展でさらに多様化していく職種や時代の変化に対応できるよう、現在検討している3つの施策をご紹介します。

1つ目は「ディレクション能力リスキリングプログラム」です。多岐にわたるコミット領域を乗りこなすべく、まずはディレクション能力で特に重要である言語化に関するプログラムを展開予定です。

2つ目はトップクオリティの可視化と更なる進化を目的とした「最高クオリティ審議会」です。代表 藤田を含む専門審議員が審査し、社内でトップクオリティを実現している取り組みに認定を付与します。

3つ目は「クリエイター評価制度のアップデート」です。これまでは職務を遂行するためのスキルとして職能をグレードごとに定義し、評価の基準としてきました。新評価制度においては、今後様々な方向へ広がるクリエイターの職域の中から、個人の志向性や強みを見つけ出し、それを職務に活かして目標を設定することができます。多様なクリエイターが活躍できる仕組みに進化させたいと考えています。
 

新卒採用強化(中島)

24年度に我々の仲間になってくれる新卒クリエイターですが、大きく分けてデザイナー総合職と、3Dクリエイターやイラストレーターといったゲーム専門職の2職種です。出身校は実に多岐にわたっており、美術系の大学はもちろんのこと、いわゆる総合大学出身者にも内定を出しています。

25年卒については、採用人数をさらに増やそうと考えており、様々な新しい取り組みを進めています。こちらでは、その中から2つの施策をご紹介します。

1つ目は新しいインターンやイベント設計です。アートディレクターを目指す学生向けの内定直結型 creative internship「ADjust」を2023年10月に開催しました。1枚の絵で世界を変えたいという情熱や力を持つクリエイターを採用したいと考えています。

2つ目は、思考体力の見極め強化です。今後時代の変化に合わせて、価値観の変化を受け入れる必要がより一層増すでしょう。これまでも採用基準の1つとして、考え続ける力や成長し続けたいという想いがあるのか注視してきましたが、今後はそれらの見極めを強化していきます。

採用人数は増えても厳選して採用し、一人一人と向き合ってしっかり育成していく方針に変わりはありません。今後も、明るく強く時代の波を乗りこなしていくようなクリエイターを採用したいと考えています。

AI技術の全社標準化(及川)

クリエイターにとって特に影響の大きい画像生成AIについては、この1年で大きく進化しました。業務利用可能な「Adobe Firefly」が登場したこともあり、もはやどう使いこなすべきかを考えるフェーズだと感じています。

一方、業務において積極的に利用することを考えるとまだ不安な点もあり、これらをクリアすることが直近の課題だと考えています。そこで、この状況でもクリエイターが生成AIを活用して、安全に攻められる環境を整備すべく、現在具体的なアクションを2つ進めています。

1つ目は、画像生成AIの利用ポリシーとガイドラインの整備です。「AIオペレーション室」と連携しながら、全社として共通のポリシーは根底に置きつつも、様々な開発現場に最適化した運用を行えるよう、汎用的なルール整備のフレームとして整えています。

2つ目は、具体的な利用法・手法への落とし込みとサポートです。こちらも各サービスや事業に最適化する形で考えており、業務上必要ではあるが、クリエイティブというよりは単なるタスクというものを自動化することで、クリエイターがよりクリエイティブに向き合える状況を作り出すことを目的としています。

創造性の進化、クリエイターの新章(佐藤)

どんな時代でも、クリエイターの創造力は世界を一変させる力があると私自身常々思っています。

この先も、クリエイターの影響力は市場でもより一層増してくるでしょう。また、生成AI時代においてもサイバーエージェントがリードカンパニーとなれるかどうかは、クリエイターの影響力にかかっているところが大きいと思います。

我々クリエイター1人ひとりが新章を開拓していきながら、会社の競争力に変えていけるよう一丸となって取り組んでいきましょう。

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