「技術でクリエイティブを加速させる」。広告、ゲームを横断するGoエンジニアのキャリア観

技術・デザイン

サイバーエージェントではインターンシップを経験して入社する新卒エンジニアが多数在籍しています。入社後のキャリアの変遷や、エンジニアリングに対する思いを聞きました。

Profile

  • 岩村 洸弥
    2019年 株式会社サイバーエージェント 新卒入社。AI事業本部で「CheckBacks」と「極予測AI」の開発、CyberHuman Productionへの3DCG・画像処理関連の技術提供を行う。その後、2021年に株式会社アプリボットに異動し、新規プロジェクトにてサーバーサイドエンジニアとして従事している。

エンジニアとして、技術でクリエイターを支援したい

── これまでの経歴を教えてください。

2019年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。最初の配属先はAI事業本部で、効果予測AIで広告効果を最大化する「極予測AI」や広告クリエイティブ運用を効率化するツール「Check Backs」の開発を担当しました。

その後、株式会社CyberHuman Productions(CHP)に異動し、3DCGや画像処理をベースとした技術サポートのほか、クラウドレンダリング基盤の構築・運用等に携わりました。2021年10月からは株式会社アプリボットでサーバーサイドエンジニアとして新規プロジェクトに携わっています。

サイバーエージェントは広告・メディア・ゲームなどの主力事業の他、AI・DX・エンタメテック・スタートアップといった強化分野など事業が多岐に渡るので、エンジニアの活躍の場も幅広くあるのが特徴です。そういった環境の中で、自分が大切にしている考えは「エンジニアとして、技術でクリエイターを支援したい」という気持ちです。

私は、アニメやゲーム、動画などのコンテンツやカルチャーがとても好きです。私には、そういったコンテンツを創作することはできませんが「素晴らしい作品やサービスを作ってくれるクリエイターの創作活動を、エンジニアとしてサポートできるような仕事がしたい」と、常日頃から思っています。

サイバーエージェントを就職先に決めた理由も、そういった気持ちからです。

クリエイターを支援する企業がたくさんある中でも、サイバーエージェントは「ABEMA」やゲーム、スポーツにライブ配信など、クリエイターが欠かせない事業領域が無数にあったことも決め手の1つになりました。

── エンジニアの視点から、サイバーエージェントに注目したきっかけを教えてください。

院生時代に参加した短期インターンシップ「AdTech Challenge」は、エンジニアを目指していた当時、印象に残ったインターンの1つです。

「AdTech Challenge」は学生3人とサイバーエージェント社員1人でチームを作り、与えられたお題のクリアを目指す2日間の短期インターンシップです。その時のお題は「位置情報データを用いた広告配信システム」をGoogle Cloud(当時はGCP)上に構築する」でした。

「2,000 QPSで数時間流れてきた位置データを扱う」という、学生には体験できない貴重な経験に加え、大学で研究していた分散処理システムを実践の場で活用することもできたので、とても有意義なインターンシップでした。

ユニークなのは、社員のエンジニアの方もメンターではなくチームの1人として参加する点です。社員の方が、我々学生と同じチームメンバーとして、議論したり試行錯誤しながら、Google Cloud上にシステムを実装をしていきました。その際、社員の方のキャッチアップの速さや技術力の高さが印象に残りました。

また、プロダクトの課題に対して、技術的なチャレンジを後押ししてくれる事や、学生であっても、チャレンジする人の背中を全力で押してくれるカルチャーも印象的でした。

私は、2019年にサイバーエージェント・グループの子会社に内定者アルバイトとして入社しました。エンジニアとして割り振られた仕事は、「プリレンダリングされたグリーンバック付きの映像のグリーンバックを背景に置き換えたときに、被写体の周りに緑のオーラが出る現象」の解決でした。

画像処理系のシステムを構築する場合、通常はC++かPythonを用いるのが一般的だと思います。しかしGoには画像処理を行うライブラリが標準で実装されており、インストールしたときからすぐに使用できたので、あえてGoで実装しました。一般的ではなかった言語を技術選定させてもらったことや、そのチャレンジをチームのみんなが応援してくれたこと、また、一定の効果を得られたことで、エンジニアとして強いやりがいを感じました。

そこで得た成果は後にGo Conferenceで発表しました。

技術で広告クリエイティブ制作をサポートする

── AI事業本部で関わった仕事についても教えてください。

配属当初は、広告クリエイティブ運用における、PDCA高速化や工数削減を実現する社内向けサービス「Check Backs」の開発に従事しました。入社から半年ほど過ぎた頃、新規プロジェクト「極予測AI」が立ち上がりました。

Web広告において主流である運用型広告は、広告効果を維持するために多種多様な広告クリエイティブを大量に制作することが求められます。しかし大量のクリエイティブをマンパワーのみで継続的に生み出し続けるのは現実的ではありません。

当時、「極予測AI」が目指していた構想は「AIを活用し、より効果が高い広告を配信することを目的としたサービス」でした。「極予測AI」のビジネス構想を聞いた時、私がいつも思っていた「技術でクリエイターを支援するサービス」だと感じ、自ら手を挙げて開発メンバーに志願しました。広告主のメリットに繋がるとともに、広告クリエイティブ制作におけるクリエイターの負担を減らすことも期待されていて、まさに私がやりたいことと目的が合致していたからです。

立ち上げ当初の「極予測AI」はWeb フロント・Webサーバー・推論サーバーという構成でした。私は、新卒1年目ながらWebフロントとWebサーバーの設計・開発をメインで任せてもらい、非常にやりがいを感じました。この開発ではGoogle CloudとVue.jsのコンポーネントに関する知見を得ることができました。

2020年5月に「極予測AI」がリリースされ、活用したクリエイターから「これまで広告クリエイティブは直感や経験を頼りにして試行錯誤することが多かったのですが『極予測AI』を使うことで、どのベクトルや方向性で制作すれば良いのか分かるようになったので、制作時間の短縮や生産性の向上になりました」と感謝されました。また、セールスの担当者からは「実際に広告効果アップにも繋がった」と教えてもらいました。

自分の開発したプロダクトが、生産性や売上の向上につながっていることを実感できて、本当に開発して良かったと思いました。

── その後、バーチャルヒューマンなど3DCG関連事業に取り組むCyberHuman Productions(CHP)に異動されました。そこでの仕事についても教えてください。

CHPでは画像処理や3DCG関連技術を中心に、様々な開発に従事しました。特に記憶に残っているものが2つあります。1つは「1枚の写真からフォトリアルな髪の毛の3Dモデルを自動生成する」技術を実装したことです。

当時、顔・体の3Dモデルや肌のテクスチャについてはすでにフォトグラメトリ技術で再現した事例が多々公開されていました。その一方、髪の毛は細すぎてうまく再現できなかったため、3Dモデラーが手動で髪の毛の3Dモデルを後付けするという手順がセオリーでした。

その状況を改善するため、ある機械学習モデルの論文を参考にVAE(Variational AutoEncoder)を用いて写真から髪の毛の3Dモデルを自動生成する機能を実装しました。

この開発を通じて、DCC(Digital Content Creation)ツールで3DCGモデルを作成する過程、機械学習のライブラリ及び学習データの管理方法など多くを学ぶことができました。

もう1つはクラウドレンダリングの基盤を構築したことです。当初はデスクトップPC十数台をネットワークで接続して分散レンダリングリソースとして使用していましたが、演算リソースが足りず、レンダリングに時間がかかり、制作スケジュールを逼迫するという課題が露見していました。

そこでAWS Thinkbox Deadlineをベースとして、AWS上に独自のクラウドレンダリング基盤を構築することにしました。既存のクラウドレンダリングツールもありましたが、ローカルマシンとの連携や利便性の面から独自の基盤を構築した方が良いと判断しました。この基盤開発が評価され、著名人のデジタルツインをキャスティングするサービス「デジタルツインレーベル」の宣伝動画のクレジットに名前を載せてもらえて嬉しかったです。

DigitalTwinLabel - Ai Tominaga /Cyberagent

Next Experts for Go選出と、今後の展望

── 現在は株式会社アプリボットに所属されていますね。

アプリボットでは、新規プロジェクトの機能開発と並行して、CI(Continuous Integration)の高速化など、作業効率向上や開発環境の整備を手掛けています。「エンジニアとして、技術でクリエイターを支援したい」という気持ちは変わらず持ち続けています。どの現場でも「絶対やったほうがいいのにやる人がいない」という作業がありますよね。私はそういった仕事を率先して引き受けるようにしています。

── サイバーエージェントの「Next Experts for Go」に選出されました。今後はどんな事にチャレンジしていきたいですか?

サイバーエージェントグループには、当社が定める注力技術領域のうち、抜きん出た知識とスキルを持ち、その領域の第一人者として実績を上げているエンジニアに新たな活躍の場を提供するとともに、各専門領域において、その分野の発展のための貢献および、サイバーエージェントグループの技術力発展に還元することを目的とした「Developer Experts」制度があります。

Goに関する技術記事を執筆したり、社内外で勉強会を開催したりするなどの実績が認められ、Developer Expertsの次世代候補である「Next Experts」に選出されました。

Next Expertsとしてやりたいと考えていることが2つあります。1つは勉強会の参加者が、より能動的に参加できるような座組みにすることです。

サイバーエージェントでは、現在多くのプロダクトでGoを使用していて、各プロダクトにおける活用事例や知見を共有する勉強会「CA.go」を開催しています。今後は、輪読会やハンズオンなども考えています。

もう1つは、これまで積み重ねてきた挑戦の中で得た知見や、最新の取り組み状況などについて、より積極的に発信することで、業界に還元していきたいです。これまでも技術記事ブログで公開したり、「Go Conference」で登壇もしてきましたが、標準ライブラリやGoの基本的な機能を紹介することが多かったので、今後はもう少し実践的なノウハウや、新規事業立ち上げで得た現場寄りの知見などを共有していければと思っています。

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