なぜ、瀧澤 慎一のCMは愛されるコンテンツになるのか

技術・デザイン

THE CONFIDENTIAL #2 瀧澤 慎一

次世代クリエイティブ専門チャンネル「THE CONFIDENTIAL」は、広告をはじめ・PR・映像・デザインなどクリエイティブの世界の最前線で活躍するプロフェッショナルたちの 「秘伝技術(=confidential)」を学べるYouTubeチャンネルです。

サイバーエージェントとThe Breakthrough Company GOが共同で企画制作。MCは、クリエイティブディレクターの木本梨絵さんが務め、毎回、多彩なゲストをお招きし、コアアイデアの開発、企画設計、思考法の変遷やその体系など、プロフェッショナルな方々が持つ「秘伝技術(=confidential)」を掘り下げていきます。

動画版 「THE CONFIDENTIAL」

#2 なぜ、瀧澤 慎一のCMは愛されるコンテンツになるのか(EP.1)

#2 なぜ、瀧澤 慎一のCMは愛されるコンテンツになるのか(EP.2)

さまざまなクリエイターの「秘伝技術=confidential」を探る「THE CONFIDENTIAL」。第2回目は、「なぜ、瀧澤 慎一のCMは愛されるコンテンツになるのか」をテーマに、株式会社 僕とYOU代表クリエイティブディレクター/プランナーの瀧澤 慎一さんにお話を聞きます。

 瀧澤慎一 氏  
1980年鎌倉生まれ。博報堂、HAKUHODD THE DAYを経て、2018年「僕とYOU」を設立。 
フリーランスのクリエイティブディレクター/プランナーとして、大手企業からスタートアップ企業まで、多くの広告クリエイティブやブランディングを手がける。近年、アーティストのプロデュースや、公共空間の開発など、活動の幅を拡げている。 
主な受賞歴は、ACC グランプリ/総務大臣賞、D&AD イエローペンシル、CICLOPE ゴールドなど。広告と音楽とスケボーと海辺が好き。湘南在住。三児の父。
瀧澤慎一 氏
1980年鎌倉生まれ。博報堂、HAKUHODD THE DAYを経て、2018年「僕とYOU」を設立。
フリーランスのクリエイティブディレクター/プランナーとして、大手企業からスタートアップ企業まで、多くの広告クリエイティブやブランディングを手がける。近年、アーティストのプロデュースや、公共空間の開発など、活動の幅を拡げている。
主な受賞歴は、ACC グランプリ/総務大臣賞、D&AD イエローペンシル、CICLOPE ゴールドなど。広告と音楽とスケボーと海辺が好き。湘南在住。三児の父。

見たいものをつくる

──本日のゲストは、「僕とYOU」クリエイティブディレクター、プランナーの瀧澤慎一さんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

──瀧澤さんの作品は「これがCM?」と思わされるような作品やコンテンツを見た時のような気持ちにさせられるものが多いですよね。広告とコンテンツの差をどう意識されているのでしょうか?

広告の効果を上げるためには、いかに受け手が見たいものを作るかが重要だと考えています。広告のメッセージを届けるだけでなくその面白みが必要だと考えて作っているから、コンテンツ性を帯びて見えているのだと思います。

──瀧澤さんが作る広告、例えばテレビCMはターゲットがとても広いですよね。その広い層のインサイトの見当をつけるのは難しそうに見えます。

商品のターゲット層をイメージすることに加えて、自分が反応できるかも重視しています。思わず笑ってしまうようなものや、反応するものは世代や性別を超えてみんなに届く。特に音は人間の本能に訴えるものなので、意識するようにしています。

分かるものと分からないものの組み合わせ

──なるほど。架空のペルソナやターゲットではなく、具体的な感覚を重視するんですね。本能に訴える、反応させるという点ではコンテンツも広告も差はないのかもしれないですね。

コンテンツの場合は心を動かすことそのものが目的ですが、広告はその先に具体的なアクションをできれば起こしてもらいたいという目的があります。ですから、心を動かした中で伝わるべきことが伝わっているかも重要だと考えています。CMを15秒見た直後は「何を見せられたんだろう」とぼーっとするくらいがちょうど良くて、後で思い返すと伝えたかったメッセージが残っているのが正しい伝わり方なのかなと。

例えば日清のカレーメシのCMは、周りには「斜め上」「カオス」と言われることもありますが、音声はまっすぐメッセージを伝えているんですよ。「腹が減ったらカレーメシ」「メシも一緒に入ってるぜ」と。ただ、映像が変だから「なんだなんだ、これ」と見る人の注意を離さない。この分かるものと分からないものの組み合わせを意識してやっています。
 

「企画書が見えない」広告の作り方

──カレーメシのCMもそうですが、瀧澤さんのCMは狙いを逆算しづらい印象があります。企業の狙いや想定ターゲット、CMのアイディアができた過程を推測しづらいというか。

僕が博報堂に在籍していた時代に、ダメな広告を揶揄する時に「企画書が見える」という表現を使う人が多くいました。僕自身も制作者の意図が見えると冷めてしまうところがあります。そうなるのを避けるために、僕はオリエンテーションでインプットしたことやストラテジーを一回忘れて、理屈を超えて生理的に気持ち良いものを作ってみるようにしています。そうして直感的に作ったものを後で整合性が取れるように着地させるから、逆算しづらいものができるんじゃないかと思います。

──思考の反復横跳びのような作業ですね。

そうです。ストラテジーと直感の行き来をする中で、中心になるコンセプトを見つけられる。そうすると大事なことが見えてくるんです。
 

具体にすることで納得感を得る

──クライアントに説明する時は、ちゃんと論理的に必然性を説明して納得していただくという流れなのでしょうか。例えば爽健美茶のCMのような思い切ったものは定量的に説明しづらいですよね。

具体を見せるようにしています。データで示されても前に進めないから、とにかく形にしてしまうことが重要なんじゃないかと思います。例えば爽健美茶の例では、まだラップをchelmicoさんにお願いできると決まる前から、自分で歌詞を書いたり音楽プロデューサーに協力してもらって形にしてプレゼンしたんです。
とにかく形にして聞いてもらうことで「これは確かにあるかもな」と思ってもらえて話が前に進みました。ただ、アウトプットを出すことでこれが最終形だと思われてしまうのは一番よくないと思っていて。

やはり、企画が決まって、演出が入って、撮影するその場で良いアイディアを思いつくこともあるので、具体を示しながらも決めないままゆるく進みながらより良いものを発見することも大事にしています。実際編集してみたらこっちのほうが良かった、とか、元はこうだったけどこうします、といった前言撤回する力も大切にしています。
 

チームの力を120%引き出すこと

──私はクリエイティブディレクターに求められるのはリーダーシップなのかなと思うのですが、瀧澤さんが大事にしていることは何なのでしょうか?

引っ張ったり決めたりすることも大事だなと思うんですけど、一番素直でいることも大事にしています。自分たちがもともと考えていたよりも、新しく思いついたり発見したことが良いと思ったら、自分が一番先に言う素直さが大事なのかなと。前言を撤回して、「こっちのほうがいい」と言うこともクリエイティブディレクターの仕事と思っています。

──それを若手のクリエイティブディレクターがやるのは難しいように思えます。瀧澤さんはどうやってできるようになったのですか?

経営者の方々と仕事をすると、そういう素直さや前言撤回力がとてもあることに気づかされるんです。そういう経営者の方を見ていると、こっちが遠慮したり気を使っている場合じゃないな、って。特にクリエイティブの領域ではこちらがリードしないといけないわけですから。僕自身も、スタッフが「こっちのほうがよくないですか」と言われたら耳を傾けたり、それを言いやすいチームづくりを心がけています。

──チームビルディングについてもお伺いしたいです。いいチームを作るコツはありますか?

それぞれの人のスキルだけではなく、人間性や好きなことをじっくりみるようにしています。会ったことがなくても、世に出ているスタッフリストなどからなんとなく思想や好きなものが見えてきたりするので、「この人とこの人は組み合わせたらうまくいくかも」と考えてチームを組んでいます。

──チームづくりはもともとお得意だったのですか?

博報堂に入社して最初の配属先が人事だったんですよ。なので、たくさんの人と向き合って「この人はどういう人なんだろう」と考える癖がつきました。

──クリエイティブディレクターをやる上で、チームづくりや人をプロデュースする力は大事なのでしょうか。

すごく大事だと思っています。博報堂に入った時、自分のクリエイティブの才能はそこそこで、自分より才能のある人たちがたくさんいるなと思ったんです。その人たちが120%の力を出して一緒に頑張ってくれたら、それだけで絶対いい仕事になるに決まっている。だから、いろんな仕事がたくさんある中でこのプロジェクトに120%の力を出してもらえるように、チームに入ってもらう時にはその人に何を期待しているかをきちんと言うことを心がけています。その仕事がよほど大きくて魅力であればそれがモチベーションになるかもしれませんが、全てがそうではないかもしれないですから。
 

想定を覆されてもいい、黒子的なスタンス

──面白いですね。華やかな立場なのに、スタンスはすごく黒子的なものを感じます。

そうですね。みんながそれぞれ力を発揮した結果、自分が思っていた形と違うものになってもいいと思っています。それに、「あれオレ詐欺」って言われているものってあるじゃないですか。「あれをやったの俺だよ」っていろんな人が言っていること。あれはどちらかというとネガティブな意味合いで使われる表現だと思うんですが、僕は「あれは俺がやった」って言う人が多い仕事はいい仕事だと思っています。自分のチームの人たちがみんな「あれ自分がやっていたんですよ」って言ってくれるといいなと思っています。

──足りないピースを埋めるような感覚なのでしょうか。

そうそう、そういう感覚が強いんですよね。求められたり、やれる役割があれば何でもやりたいと思っちゃうんですよね。「このままだと自分の個性が立たないな」と悩ましく思うこともあるんですが、自分にやれることならなんでもやろうと思えることが個性なのかもしれないなと、最近思えるようになりました。

広告は、見た人に気持ちよく踊ってもらうためのもの

──瀧澤さんが手がけられた広告では、音によるアテンションが強いなという印象を持ちました。音をキーにして作られることが多いのでしょうか?

全般的にそういう作り方をしていると思います。テレビはみんなが画面を見ているわけではないので、音で気になる状態をまず作ることを意識しています。思わず反応してしまうような身体感覚って音が圧倒的に優位なんだと思います。誤解を恐れずに言えば、作り手にモラルがあるのを前提として、広告は見た人に気持ちよく踊ってもらう側面を持っているんだと思うんです。必要だと思っていなかったけれど、いいかもと思ってもらうような。そのために音がもたらす身体感覚を大事にしています。

──たしかに、踊りたくて踊っているように感じさせる力が音にはありますよね。

そうですね。佐藤雅彦さんが僕の広告の原体験で、手掛けられた湖池屋のCMシリーズや、NECの「バザールでござーる」など、放映された当時、クラスみんなが真似していたんです。全然追いつかないですけど、ああいうことを目指しているところがあると思います。

「快」を追求する

──先ほどの音のお話、思わず口ずさみたくなるような中毒性すら感じます。作り方はあるのでしょうか?

人間にとって生理的に「快」であることを大事にしています。そういう気持ちよさを追求することは人よりできるかもしれない、とちょっとだけ思っていて、そういう作り方をすることが多いのかもしれません。

──なるほど。それに、瀧澤さんの作るCMって愛されるだろうなというものが多いように感じます。その理由をどんな風に考えていますか?

僕自身が愛されているという感覚が持てないところはあるので難しい質問ですね。強いて言うなら、自分が愛せるものになっているからかもしれません。クライアントの課題を解決することだけを考えて作ってしまうと、形になったとしてもどこか他人事感が出てしまう。「この仕事好きだな」「この広告好きだな」と自分が思える状態になっていれば、自分と同じような人が一定数生まれるはずなので、自分が愛せる仕事にできているかがすごく重要だなと思います。例えば、音の話も同じで、僕はオフラインと言われる仮編集の作業が大好きなのですが、そこでは、徹底的に1、2フレームの違いにまでこだわって気持ち良い音やリズムが生まれるまで検証しながら編集をすることもあります。

──そこで判断する感覚は、いち消費者として気持ち良いかどうかということなんですね。そうすると、音楽的な背景を持っていない人でも取り入れられる技なんでしょうか?

そうです。誰でもそういう感覚を絶対に持っているはずで、僕はそれを意識したり、ちょっとした違和感をすくい取って口にすることを習慣にしているだけなんです。

──瀧澤さんのクリエイティブの秘訣が少しずつわかってきたような気がします。

これから公開される「CONFIDENTIAL」

<MCプロフィール> 
木本梨絵 
1992年生まれ。和歌山県出身。2015年、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、「Soup Stock Tokyo」などを運営する(株)スマイルズに新卒入社。店舗での一年半の接客経験を経て、同社の最年少クリエイティブディレクターに就任。本屋、オンラインサービス、イベント、レストラン、コスメなど、さまざまな領域において、ブランドの立ち上げから長期のブランディングまでを担当。2020年に独立し、(株)HARKENを設立。
<MCプロフィール>
木本梨絵
1992年生まれ。和歌山県出身。2015年、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業後、「Soup Stock Tokyo」などを運営する(株)スマイルズに新卒入社。店舗での一年半の接客経験を経て、同社の最年少クリエイティブディレクターに就任。本屋、オンラインサービス、イベント、レストラン、コスメなど、さまざまな領域において、ブランドの立ち上げから長期のブランディングまでを担当。2020年に独立し、(株)HARKENを設立。

──最後に、これから公開する予定のプロジェクトなど「CONFIDENTIAL」なことを教えていただけませんか?

僕のプロジェクトの中に、ミュージシャンなどのアーティストの活動を作るというものがあります。広告はクライアントやその商品、ブランドのことをよく理解した上で新しい「らしさ」を作ることなのですが、それを人に置き換えても同じことなんです。その人のポテンシャルを引き出すのは広告のスキルをベースにしながら役に立てる新しいジャンルの仕事だなと感じています。

例えばこれまでにも、ミュージシャンのあまり知られていなかった側面を世の中に出すための企画を一緒に考え、そのコンテンツづくりをするお仕事がありました。近々、そういった人のポテンシャルを引き出す仕事でミュージシャンの方と作った新しいコンテンツが公開される予定です。
人に求められて、自分にできることだったらやってみたいという気持ちを抑えられないタイプなので、声をかけていただいたらどんどん挑戦してみたいなと思うんです。もちろんテレビCMをはじめとした広告が中心にあることを大切にしながら、新しい仕事によって自分とその仕事を拡張していけたらいいなと思っています。

text by 出川

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