AWSを選択し続けたからこそ見えたもの
サイバーエージェントは、幅広い事業やサービスを展開し、様々な技術を扱っています。5年以上に渡りAWSというプラットフォームを活用してプロダクト開発をしてきた小西。AWSを選択し続けてきた理由は何か。これまでに得た技術力をサービスにどういかし、今後、知見やノウハウをどう活用していくのかを聞きました。
Profile
-
小西宏樹 AI事業本部 DX本部 小売セクター CAリテールマーケット 開発責任者 Next Experts(担当領域AWS)
2019中途入社。2015年新卒でセキュリティ系メーカー企業に入社し、新規Webサービスの立ち上げに携わる。現在は新規プロダクト立ち上げのマネジメントとバックエンド・インフラを担いつつ、他事業部のバックエンドも担当。社内外で技術コミュニティの運営にも従事。
※Next Experts
Next Expertsは特定領域への貢献意欲や一定の実績を有し、将来的なDeveloper Expertsを目指すエンジニアのための活動支援制度です。
AWSの魅力は様々なユースケースごとに設計されたサービスたち
──AWSサービスに魅力を感じたきっかけを教えてください。
前職でAWSを使ってWebアプリケーションの開発をする機会があり、AWSというプラットフォームのより良い使い方を知るため、勉強会に参加したことがきっかけです。当時、自分なりに様々なドキュメントを読みながら開発を進めていたのですが、行き詰まることが多くありました。そこで勉強会に参加したところ、AWSエキスパートのエンジニアたちから初歩的なことから最新情報まで教えてもらい、すぐに開発にいかせたんです。その後も継続的に勉強会に参加し、情報共有する仲間ができたことで自分自身の技術力が格段に上がり、もっと深く学びたいと思うようになっていきました。
──現在は、技術力をどのようにいかしているのでしょうか?
5年以上扱ってきた知見があるからこそ、200以上あるAWSのサービスの中から、細かな要件に最適なサービスを選定し、ユースケースやワークロードに適切なアーキテクチャ設計ができていると思います。
AWSはユーザーの声を反映して、年々、アップデートや新サービスの提供を増やしています。私は社内外でAWSの技術コミュニティの活性化を図る活動をしているので、それを通して様々なエキスパートたちから最新情報をキャッチアップできる環境を構築し、業務にいかしています。
──AWSを実サービスに活用した事例とメリットを聞かせてください。
わかりやすいのは、BtoBのマッチングプラットフォームを3ヶ月でリリースできたことでしょうか。この期間には、社内のセキュリティ診断や修正した時間も含まれています。プロダクトを開発したのは、私を含むエンジニア2名とデザイナー1名という少人数チーム。私が技術選定から進行管理などのマネジメントも担っていたのですが、この人数で1から開発をしようとすると通常半年~1年ほどかかります。技術選定の基準としていたフルマネージドサービスが充実しているAWSだからこそ、早いスピードでサービスリリースすることができました。この業務の効率化が、最大のメリットだと思いますね。
また、BtoBのマッチングプラットフォームでは、サーバーレスアーキテクチャという設計手法を用いました。物理サーバーに対する様々なことをAWSに任せられることで、サーバーの調達モデルが所有ではなく、利用に変わります。そのため、サーバーを意識することなく、本来集中したいことであるアプリケーションのロジックに集中することができました。
──新サービス立ち上げの技術選定の際に、なぜAWSを選択したのでしょうか?
実現したいことに対して、選択肢になり得るサービスが多いからです。サービスを立ち上げる際には、MVP(Minimum Viable Product ※1)をなるべく早くつくり、お客様に使っていただきながら改善を重ねていくことが重要だと考えています。AWSは勉強会やコミュニティも多く、得たい情報を収集できる環境が整っているので、スムーズに開発を行えると判断しました。
※1 MVP(Minimum Viable Product)とは
MVPとは、顧客のニーズを満たす最小限のプロダクトです。
技術コミュニティの活性化で継続的な情報収集
──技術コミュニティの活性化は、どのようなことをしているのでしょうか?
社内向けと社外向けの取り組みをしています。サイバーエージェントには、技術力や知見の向上を事業にいかすことを目的として業務時間の一部を使って研究ができる「CAゼミ制度」があるので、「実践AWSゼミ」を立ち上げ、ゼミ長として活動しています。このゼミでは、学ぶ習慣をつけるため毎週AWSを触る時間を設けたり、社外からプロフェッショナルを招いて勉強会を開いたりしています。現在は、様々な事業部から十数名のメンバーが所属していますね。
社外向けには、AWSが提供するクラウドコンピューティングを利用する人々のコミュニティである「JAWS-UG」に所属し、運営メンバーとして勉強会を主催しています。全国で60支部ほどある大きな組織で、私が関西在住なので、関西支部で企画・運営をしています。開催する勉強会によっては、オンラインで数千人もの参加があります。
──なぜ、そのような活動をしているのでしょうか?
開発へのいかし方は勿論のこと、プラットフォームの思想・哲学を正しく理解した上で、アーキテクチャや各サービスのユースケースについて議論できる場をつくることが、エンジニアとしての成長に大事だと思っているからです。
それに、200以上存在し、日々ものすごい勢いでアップデートされるAWSのサービス群を1人で把握し続けるのは不可能に近いです。コミュニティでの情報交換、設計やサービス選定における様々な思想やノウハウを仲間と共有することによって、開発者としてより良く、より早いアウトプットができることを自分自身が経験してきたので、この活動は続けていきたいと思っています。
──今後、技術コミュニティを活性化していくために、どのようなことをしていきたいですか?
まずは「実践AWSゼミ」で、AWSに関する良質なコンテンツを継続して実施していきたいです。過去には、AWSのNoSQLスペシャリストと議論しながら、Amazon DynamoDBテーブル構造をリファクタリングすることで、NoSQL設計のより深いテクニックを学ぶとともに、サイバーエージェントの既存プロダクトの改善にも繋げることができました。このように、実際に開発に役立てられるような情報発信を続け、知りたいことがある人たちが自然と集まりコミュニティがどんどん広がっていく状態をつくることが理想ですね。
また、サイバーエージェントには、特定の分野に抜きん出た知識とスキルを持ち、その領域の第一人者として実績を上げているエンジニアに新たな活躍の場を提供する「Developer Experts制度」があります。私自身、これまでの社内外での活動や貢献意欲などが評価され、AWS分野で「Developer Experts」候補として選出されています。そのことにより活動の幅が広がったため、より発信力を高め、AWS活用を引っ張っていく存在になっていきたいと思っています。
「AWS」を選択し続けたからこそ見えたもの
──今後、サイバーエージェントでAWSをどのように活用していきたいと考えていますか?
自分たちが成し遂げたいユースケースに沿ったより良い使い方を、この先も追求し続けていきたいです。また、プロダクトの成長とともにシステムが複雑になり要件も増えるため、AWSに任せられる部分は任せながら、最適なアーキテクチャを実現していきたいです。そのための体制やコミュニティづくりも続けていき、最大限にメリットをいかしていければと考えています。
──5/28(金)開催の「CA BASE NEXT」への登壇では、どのようなことを話しますか?
これまでAWSというプラットフォームの上でプロダクト開発をしてきた中で得た知見やノウハウについて具体的にお話しようと考えています。私は「200を超える幅広いサービス」と「技術コミュニティ」がAWSの魅力だと思っています。この数多いサービス群の中から、ユースケースやワークロードに最適なサービスを選択し、組み合わせることでパフォーマンスを発揮するためには、多くの深い知見が必要です。また、日々の早いAWSのアップデートに追従し、常に最新の情報をインプットすることも重要です。自分で考え実践してきた各サービスの深い知見と、アーキテクトとして大切なことについてお話しますので、YouTubeライブにてご視聴いただけますと幸いです。
オフィシャルブログを見る
記事ランキング
-
1
サイバーエージェントの“自走する”人材育成 ー挑戦する企業文化ー
サイバーエージェントの“自走する”人材育成 ー挑戦する企業文化ー
サイバーエージェントの“自走する”人材育成 ー挑戦する企業...
-
2
「Abema Towers(アベマタワーズ)」へのアクセス・入館方法
「Abema Towers(アベマタワーズ)」へのアクセス・入館方法
「Abema Towers(アベマタワーズ)」へのアクセス・...
-
3
Activity Understanding(行動理解)研究の挑戦 ー実世界で...
Activity Understanding(行動理解)研究の挑戦 ー実世界でのニーズに応えるAIやロボティクス技術の開発とはー
Activity Understanding(行動理解)研究...
-
4
Google、LINEヤフー、TikTok…受賞実績が証明する広告効果の実力
Google、LINEヤフー、TikTok…受賞実績が証明する広告効果の実力
Google、LINEヤフー、TikTok…受賞実績が証明...
Activity Understanding(行動理解)研究の挑戦
ー実世界でのニーズに応えるAIやロボティクス技術の開発とはー
インターネット上だけでなく、私たちが生活するリアルな実世界において、AIサービスを実現するための基盤研究に取り組むAI LabのActivity Understanding(行動理解)チーム。2023年から始まった研究領域ですが、既に当社が展開するリテールメディア事業において実装が進んでいます。
多様な専門性のあるメンバーが、事業と連携し垣根を超えて生み出す新たな価値とはー?
Activity Understandingチーム立ち上げ当初から研究を行う3名のコメントを交えながら、紹介します。