日本のアニメを、世界のビジネスへ。新生「CA America」が北米市場で挑むこと
日本の「アニメ」が世界的なカルチャーとしての地位を確立する中、サイバーエージェントはそのグローバル展開にも注力しています。このたび、海外戦略の要となるCyberAgent America, Inc.(以下:CA America)の拠点をロサンゼルスに移し、体制を刷新。従来の海外マーケティング支援にとどまらず、映像展開・商品化・タイアップまでを含めた「作品のグローバル・ビジネスプロデュース」へと役割を拡張します。
今回はCA America CEOの市川、COOの山本に、新体制発足の背景と今後の戦略を聞きました。
「マーケティング支援」から「グローバル・ビジネスプロデュース」へ
―今回、アメリカ拠点の体制を刷新し、拠点もロサンゼルスに移しました。改めてその背景を教えてください。
市川:いまや日本のアニメビジネスの成否は、海外で成功できるかどうかに大きく左右される時代です。CA Americaはもともと、アニメ作品の北米マーケティングを主軸として活動をスタートしました。ただ、約1年間の活動を通じて、マーケティングはもちろんですが、海外ビジネス全体をプロデュースする機能が現地に必要だ、という話を社内でも重ねてきたんです。
映像の展開も、商品化も、現地企業とのタイアップも、さらには作品のローカライズやカルチャライズまで含めて、作品の「グローバル・ビジネスプロデュース」を丸ごと担う。それが今回の体制刷新の狙いです。
海外アニメ市場全体が伸びていますが、マーケットが大きいのはやはり北米。まずは北米で本気でビジネスをつくりにいきます。
拠点をロサンゼルスに移したのも、同じ理由からです。配信事業者やライセンシーなどエンタメ関連企業の多くがロサンゼルス周辺に集積していて、対面でビジネスを進めるうえで最適な立地だと考えています。
もうひとつ大きいのが時差の問題で、たとえばブラジルの企業と日本からやり取りすると、コミュニケーションは1日1往復が限界です。監修ひとつとってもスピードが出ないところがありましたが、北米に拠点があれば、中南米まで含めた米州全域とのやり取りは日本と比べると格段に回数を重ねられます。
―「グローバル・ビジネスプロデュース」とは、具体的にはどのような役割なのでしょうか。
市川:ひとことで言えば、北米を中心とした海外でIPの価値を最大化する事業拠点です。需要と認知をつくるマーケティング、需要を収益に変えるライセンス、商品と体験をファンに届けるマーチャンダイジング。この3つの機能を現地で一気通貫で担います。そして、そこで得た売上やファン基盤、販売データを次の作品や自社IPに再投資していく。この循環を北米でつくることが、CA Americaの役割だと考えています。
マーケティング・ライセンス・自社商品化。CA Americaの「3本の矢」
―アニメIPを取り巻く海外の市場環境は、どのように変化しているのでしょうか。
市川:大きいのは、日本と海外の構造の違いが浮き彫りになってきたことです。日本では複数の配信サービスでほとんどのアニメが視聴できますが、海外では大手プラットフォームへの集約が進んでいて、年間約300本が供給されるアニメのすべてが等しくユーザーに届く環境ではありません。
日本には素晴らしいアニメがたくさんあるのに、海外のファンにきちんと届けられているのはまだ一部なんです。トップ作品は大手プラットフォームというパートナーと組むことで大きな成果が出はじめている。それは今後も追求しつつ、そうではない作品も、私たち自身のマーケティング力や現地ネットワークを使って世界中に届けられるようにしたい。その両方をできる会社になることが目標です。
―その目標に向けて、具体的にはどのような事業を展開していくのでしょうか。
山本:3つの領域に取り組んでいます。1つ目は、これまで培ってきた海外マーケティングを、現地のローカライズ・カルチャライズまで踏み込んで進化させること。2つ目は、映像や商品化のライセンスビジネス。世界中の配信プラットフォームと直接つながる体制づくりを進めているほか、商品化では世界約100社のメーカーとの接点がすでにあり、直接のライセンス取引を広げています。3つ目が、ライセンスを出す側にとどまらず、自分たちでグッズを企画・展開していくこと。
いわば「3本の矢」ですね。ライセンス、グッズと積み上げた先に見据えているのは、現地発のオリジナルビジネスをつくることです。
―海外のアニメファンは、日本とは年齢層も好みも違うのでしょうか。
山本:海外のアニメファンは日本より若いと言われていて、Z世代~ミレニアル世代と呼ばれる10代から30代前半が中心です。配信サービスでの視聴の普及もあり、アニメを楽しむ層が急速に拡大しています。
市川:商品の好みも国ごとにまったく違います。日本ではアクリルスタンドや缶バッジのような雑貨が売れますが、アメリカではアパレルやフィギュア、ぬいぐるみが圧倒的に強い。ヨーロッパはフィギュア中心、南米はアパレルや文房具。デザインの好みも違っていて、現地のリアルなマーケットを知っているからこそ、版元さんに「この表現は現地では確実に支持される」と根拠を持って提案できる。これは日本にいるだけでは絶対にできないことです。
あわせて、商品化を支える裏側の仕込みとして、メーカーが商品をつくりやすいアートワーク(スタイルガイド)の拡充や、監修業務のシステム化にも取り組んでいます。サイバーエージェントが強みとする「クリエイティブ×テクノロジー」を、アニメ業界に長く残ってきた商慣習の課題にも掛け算していくイメージです。
ファンが欲しいときに、欲しい商品がきちんと届く。作品に触れる場所が増えれば、ファンが広がり、ビジネスが拡大し、その収益がクリエイターに還元されて、次の素晴らしい作品が生まれる。私たちの仕事は、この循環をつくることだと思っています。
―サイバーエージェントでは、これまでどのような取り組みが行われてきているのでしょうか。
山本:2027年4月にアニメ放送を迎えるTVアニメ「カグラバチ」では、共同製作幹事である松竹様をはじめとする委員会各社の皆様と連携した展開を始めています。サイバーエージェントでは、情報解禁に合わせた大型プロモーションや、ロサンゼルス・ニューヨークなど複数都市の現地コンベンションでの1,000人規模のプレミア上映を行っています。
今後、CA Americaとして、サイバーエージェントで担当しているマーケティングのほかに、グッズやタイアップなどのさまざまな取り組みを順次展開していく予定です。
目指すのは、現地発の新しいビジネス
―二人のこれまでのキャリアも聞かせてください。まず市川さんはどのような業務に携わってきたのでしょうか。
市川:私はこれまで、サイバーエージェント代表の山内とともにCyberZの創業から携わり、CyberZ USAをはじめ、様々な事業の立ち上げを経験してきました。アニメ&IP事業部の本格化に伴い、アニメ事業の海外ビジネスを統括しています。今回、アニメの海外ビジネスをより強化していくため、CA AmericaのCEOを務めることになりました。
―山本さんは、これまでどのような業務に携わってきたのでしょうか。
山本:私は「ABEMA」でニュースチャンネルやグッズの新規事業の立ち上げを経験し、その後グローバル向け配信サービス「ABEMA Live」の事業責任者を経て、サイバーエージェント アニメ&IP事業本部に異動してアニメの海外ライセンスチームを担当してきました。
当社が主幹事の「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」では、海外セールスにおいてチームで世界各地の配給関連会社約10社と協業し、興行収入の過半数を海外でつくることができました。
KADOKAWA様との共同幹事作品TVアニメ「光が死んだ夏」がNetflixの週間グローバルTOP10に2週連続で入るなど、日本のアニメが世界で戦える手応えは年々強くなっています。
その一方で痛感してきたのは、海外には確かな需要があるのに、日本からのアプローチだけでは届けきれない領域が大きいということでした。
今回の3つの領域は、いずれも業界で前例の少ないチャレンジだと捉えています。これをサイバーエージェントが成立させることができれば、クリエイターへの還元はもちろん、作品にとっても、現地や日本のパートナー、アニメ業界全体にとってもプラスになるはずです。
―新体制は、どのようにスタートしていくのでしょうか。
山本:まずは私がロサンゼルスに赴任し、立ち上げを進めていく計画です。現地での採用はもちろん、日本を拠点に海外を担当しているチームとも連動していきます。北米で新たにビジネスを立ち上げていくのは簡単ではありません。これまでご一緒してきた企業様や市場を開拓されてきた先駆者の方々との連携も強化させていただき、形にしていきたいと思います。
市川:アニメ作品の魅力をビジネスにつなげるには、作品ごとの特性や市場に合わせた取り組みが、ますます重要になっています。だからこそ、作品をどう届け、どうビジネスにしていくかというプロデュースの力が問われます。現地でのマーケティング、メーカーとの直接ライセンス、そしてシステム化した監修体制。これらを組み合わせ、一貫して取り組めることが、私たちの強みだと思っています。
この挑戦には仲間が必要です。アニメが好きな方はもちろん、世界市場の最前線で、テクノロジーとエンタメを掛け合わせた新しいビジネスモデルを自らの手でつくりたい方々と、ぜひ一緒に取り組みたい。日本の素晴らしいIPを、世界の隅々まで届けていきます。
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