生成AIで拡張する、検索市場。サイバーエージェントが「AIS」で描く、広告事業の成長戦略
検索のかたちが、大きく変わり始めています。生成AI検索の研究を行う当社の専門組織「GEO Lab.」の調査では、生成AIを活用した検索行動の国内利用率は37.0%となり、10代に続き、20代でも過半数に達しています※。
検索窓にキーワードを打ち込む代わりに、AIに聞く。そんな行動が広がるなか、当社は2026年6月、AI時代の検索マーケティングを一気通貫で支援する専門組織「AI Search マーケティング事業本部(以下、AIS)」をインターネット広告事業本部内に新設しました。
検索市場でいま何が起きているのか。企業のマーケティングはどう変わるのか。そして、なぜAISを新設したのか。統括する執行役員の蜷川親将が解説します。
※2026年2月時点
目次
検索は「消える」のではなく、「拡張」している
生成AIの普及以降、「従来の検索エンジンは使われなくなるのではないか」という議論が、国内外で繰り返されてきました。
しかし、検索マーケティングの現場から見える実態は、むしろ逆です。Googleの検索数は、いまも拡大傾向にあります。実際、同社は決算説明会で、検索クエリ数は過去最高を更新していると公表しています※1。
従来の検索は使われ続けたまま、その上に、生成AIを使った新しい検索行動が積み上がっている。つまり検索は“消える”のではなく、行為そのものが“拡張”している。
これが私たちの現状認識です。冒頭の「国内AI利用率37.0%、10代・20代で過半数」という数字は、その浸透のスピードを表しています。
変化は2つの側面で同時に進んでいます。
1つは、検索連動型広告。各媒体でAIによる自動化機能が進化し、広告運用の前提そのものが変わりつつあります。入札や配信の自動化が進むほど、広告会社に求められる価値は、日々の運用作業から、検索意図の把握、質の高いクリエイティブの大量制作、AIが最適化に活用しやすいデータや構造の設計へと移っていきます。
もう1つは生成AI。日本でもChatGPTでの広告の提供が始まり、Google検索でも「AIによる概要(AI Overviews)」やAIモードの利用が広がるなど、生成AIを起点とする新しいマーケティング機会が次々と生まれています。
私自身、この領域に十数年携わってきましたが、ここまで大きな構造変化に立ち会うのは初めてです。
従来の検索広告が進化し、生成AIという新たな接点が加わることで、検索マーケティングの領域が今まさに広がろうとしています。「AIS」の新設は、こうした変化を捉え、新たな市場を切り拓いていくための一手です。
※1 Alphabet社決算説明会でのスンダー・ピチャイCEOの発言。2026年第1四半期に検索クエリ数が過去最高を更新し、続く第2四半期決算でもAI機能が検索クエリの成長を牽引していると言及。
※2 サイバーエージェント「GEO Lab.」調べ 生成AIのユーザー利用実態調査 第三弾(2026年2月)
企業のマーケティングの勝ち筋を根本から変える
入力も変わります。短い単語の検索に代わり、AIには「この状況で何を選べばいいか」という長い相談が寄せられる。企業の情報は、購入を決めて探す人だけでなく、その手前で迷っている人にも届くようになります。
生成AI検索では、ユーザーは回答の中で情報収集から比較検討までを済ませられ、自社サイトに来てもらう以前に、AIの回答に自社の情報が引用されるかどうかが問われる。検索結果で上位に表示されることに加えて「AIにどう選ばれるか」という新しい関門が生まれたのです。
AIに選ばれるために必要なのは、従来の広告運用だけではありません。AIが参照しやすい形にデータを整備すること。回答に引用されやすい、質の高いコンテンツを用意すること。こうした施策は、GEO/LLMOと呼ばれています。
ところが、これらの施策と、広告運用、SEO、コンテンツ制作は、これまで別々のサービスとして提供されてきました。やるべきことは増えたのに、どこから手をつければいいのかが見えにくい。実際、横断的な支援を求める声を数多くいただいています。
広告運用からAIに選ばれる施策まで、1つの組織で
「AIS」が行うのは、「従来の検索」と「AI検索」という2つの入口に、広告と広告以外の両面から対応し、この4つの領域を1つの組織で束ねることです。
検索行動が変われば、追うべきKPIも、予算配分も、社内の業務オペレーションも変わる。そこまで含めて一緒に組み直す。この検索横断の統合マーケティングコンサルティングを、「AIS統合プランニング」として提供します。
多くの支援では、この4つは別々の会社や部署に分かれています。「AIS」では広告運用の実行部隊と、GEOやデータ整備の専門部隊が隣り合わせにいるからこそ、複数の施策にまたがるレポートの分析や、クリエイティブの精査といった、顧客側でつまずきがちな実務にも一緒に取り組めます。
体制は150名超でスタートし、9月末までに200名超へ拡大する予定です。20年にわたり検索広告の専門人材を育成してきた土台があり、この規模で検索マーケティングに専門特化した組織は、国内でも例がないと自負しています。
各領域を極めてこそ、統合は力を発揮する
統合を掲げる支援は珍しくなく、同様の動きは今後、競合各社からも出てくるはずです。ただ、大事なのは、各領域を個別に最大化できる高い専門性で、それぞれのポテンシャルを最大限に引き出すこと。すべてを引き出しきった上で初めて、統合による全体最適が成立します。 中途半端なまま束ねても、機能しません。
当社はSEMで国内最大級の運用実績を持ち、AI開発、データ整備、GEOの各領域でもトップランナーであり続けてきました。だからこそ、実体のある統合提案ができると考えています。
これらの専門性は、市場の転換点のたびに専門組織を立ち上げてきた“変化対応力”が育てたものです。運用型広告の拡大期には運用専門の部門や子会社を、スマホシフトの時期にはスマホ広告やSEOの専門チームを新設。AIへのシフトはさらに早く、2016年のAI研究組織「AI Lab」設立に始まり、「極予測シリーズ」の提供開始(2020年)、「GEO Lab.」の設立(2025年)と続き、こうしたAIの潮流に合わせて2026年6月、「AIS」を新設しました。
加えて、独自AIをいち早く実装する開発力と、顧客の事業に深く入り込んで課題を捉えるフロント力も持ち合わせています。
もう1つの強みが、オリジナルのクリエイティブやコンテンツといった“一次情報”を、グループの中で生み出し、保持できることです。例えば、MetaやTikTokの動画広告に特化した新組織「ネクスト本部」が強化するインフルエンサーのUGC(ユーザー生成コンテンツ)は、AI検索に選ばれるための素材として活用できるほか、LP化して広告にも生かせます。
これらを1つの組織で掛け合わせられることが、当社ならではの競争優位です。だからこそ、AI Search マーケティングの市場でもリーディングカンパニーになれる自信がありますし、各チームが熱量高く専門性を研ぎ澄まし続けることが、何よりの差別化になると考えています。
検索の変化は、むしろこれからが本番
検索行動の変化は、まだ序章です。生成AIアシスタント上の広告は、日本ではChatGPTで配信が始まったばかりで、企業が向き合うべき対象は、これからも増えていきます。「AIS」は、検索連動型広告の運用高度化と生成AI検索領域への対応を両輪で進め、対応プラットフォームと支援メニューを順次広げていきます。大手広告主を中心に、金融、EC、人材、不動産、通信など幅広い業種を対象として、まずは2026年度後半から2027年度にかけて支援モデルを確立していく計画です。
目指すのは、「AI Search マーケティングと言えば、サイバーエージェントのAIS」と市場で定義される状態。変わり続ける検索の最前線に立ち、企業のマーケティングの新しい道筋を示していきます。
Profile
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蜷川 親将
(株)執行役員/AI Search マーケティング事業本部 統括
2009年サイバーエージェント新卒入社。2013年にSEM領域の専門組織を立ち上げ、2014年より同部門を統括。2021年シーエー・アドバンス取締役、シーエー・アドバンスベトナム代表取締役に就任。2024年サイバーエージェント執行役員。2026年6月、検索連動型広告からAI検索領域、GEO/LLMOまでを横断して統合戦略を設計する「AI Search マーケティング事業本部」を新設し、統括を務める。
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※2026年2月時点