「最高のコンテンツを作る会社」Cygames
最高品質への追求とゲームをヒットに導く組織づくり

2011年に創立したサイゲームスは『神撃のバハムート』のヒットを皮切りに、次々とヒット作を連発。『グランブルーファンタジー』『ウマ娘 プリティーダービー』等、最高品質のクオリティでヒットタイトルを創出している。「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンとして掲げるサイゲームスがどのようにしてクオリティを追求し、オリジナルIPをヒットさせているのかを紐解くため、ディレクター・デザイナー・エンジニアの各責任者から組織づくりの話を聞いた。
Profile
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松浦 弘樹 シニアディレクター/マネージャー
大手ゲーム会社でプランナーやディレクターを経験後、2012年にサイゲームスへ合流。
『リトル ノア 楽園の後継者』『ドラガリアロスト(配信元:任天堂株式会社)』の他、複数の新規開発・運用タイトルでディレクターを務める。現在はシニアディレクターとして新規コンシューマー向けタイトルの開発に関わりつつ、ディレクター陣のマネージャー業務を兼任している。 -
中村 ふじ子 デザイナー推進部 / 部長
2012年より株式会社Cygamesに合流し、UIデザイナーチームのマネージャーや、ゲーム内外のデザイン設計・改修などを担当。
2022年4月よりデザイナーサポートチームの部長に就任、現在はデザイナーにかかわる育成や部内施策など部内全般のサポートに携わる。 -
中村 克也 執行役員 / エンジニア1部 部長
外資系ゲーム開発会社の日本支社の立ち上げに参画し、PS3/Xbox 360向けタイトルのメインプログラマーとして活躍。その後、数社を経て2013年にサイゲームスへ合流。スマートフォン向けゲーム開発エンジニア組織の立ち上げ、並行してゲームアプリ基盤技術の開発を担当し、内製ゲームアプリへ導入を推進する。現在は技術担当執行役員として、エンジニア組織の運営からゲームタイトル開発・運営に携わり、「最高のコンテンツ」作りを技術面から支える。
オリジナルIPのヒットの秘訣は?
─ オリジナルIPでヒットを生み出せている理由は?
中村(ふ):最大の理由は、「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンを現実のものとする組織力にあります。ビジョンを単なる掛け声で終わらせることなく、具体的な行動と仕組みによって組織の隅々まで浸透させているんです。
例えば、社長を含む役員陣がビジョンに加えて3つのミッションステートメントと「THE PROJECT」という25の行動規範を、社内報やオウンドメディア「Cygames Magazine」など様々な媒体で頻繁に発信しており、日々の業務レベルまでの浸透と部署や職種の垣根を越えた力の結集を図っています。
このように、ビジョンやミッションステートメントを組織全体に根付かせることで、全スタッフが同じ方向を向いて開発や制作に取り組める体制の構築に努めています。徹底したビジョン浸透こそが、高品質なゲームづくりを実現する組織の基盤となっています。

https://magazine.cygames.co.jp/archives/15937
松浦:責任者は週に2回、社長含む役員との定例ミーティングがあります。そこでのメッセージをそのままチームのスタッフへ伝えるなど、役員陣からの言葉が共有される頻度が高いのが特徴ですね。これにより、経営の考え方や戦略などのタイムリーな組織浸透を図っています。
また、「THE PROJECT」では「一番大切なのは絶対によいものを作るという意志」「ヒットするプロジェクトは全員に手応えがある」など、仕事への向き合い方が明確に示されています。これらがスタッフに深く浸透することで、一人ひとりが行動規範に沿った行動が取れるようになり、結果として組織全体の一体感が生まれ、理想のゲームづくりが実現できているのだと思います。

スクラップアンドビルドは当たり前
ユーザーの期待を超え続けるクオリティへの追求
─ サイゲームスといえば、『ウマ娘 プリティーダービー※1』のリリースが延長されるなど、クオリティへの強いこだわりがうかがえます。
中村(克):クオリティの追求は、IPホルダーやパブリッシャーとして当然の責務です。ユーザーにより楽しんでもらいたいという考えが全社に浸透しているため、クオリティファーストのものづくりに取り組んでいます。

このマインドがあるからこそ、開発中のスクラップアンドビルドも頻繁に行われます。機能開発を進めるうちに今のレイアウトやテンポでは使いづらい、気持ち良くないといった使いづらさや違和感が生じた場合、一部だけでなく全体を改修することで、結果的にクオリティアップにつながるケースが多いです。開発コストはかかりますが、クオリティを優先する考えが根付いているため、当たり前のこととして取り組んでいます。『プリンセスコネクト!Re:Dive※2』ではUIを何度も作り替えました。

松浦:一通り出来たものを触ってみないと改善点を見つけにくいということから、サイゲームスの開発では、まずプロトタイプを作成し、それを触ってみてユーザビリティや操作性などを含む遊び心地の改善点を見出すというアプローチを取っています。そのため、『ウマ娘 プリティーダービー』では横画面から縦画面へ、とあるタイトルでは2Dから3Dへと作り直すなど、大胆な変更もよく行われています。
『GRANBLUE FANTASY: Relink※3』や『ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!※4』でも、ゲームがほぼ完成となった後にも修正が行われ、新たにルールやデータの調整、新機能の追加が行われるなど最後まで詰め切り完成度を高めていきました。


中村(ふ):私自身もキャラクターデザインにおいて、あるIPキャラクターの手の角度が“らしくない”という理由で10パターン以上作り直したことがありました。また、『ウマ娘 プリティーダービー』では、競馬ファンの方々にも納得いただけるよう、耳や尻尾の動きにまでこだわって制作しています。各キャラクターにファンがいるため、担当するスタッフたちはそれぞれそのキャラクターを好きな人に、ファンとしての視点をヒアリングする、実際にモチーフ元となるコンテンツに触れるといった具合に徹底的にリサーチし、ファンが「好き」と思えるものを提供することを心がけています。

─ サイゲームスのクオリティの基準は?
中村(ふ):クオリティの基準は、ユーザー満足度を最重視しています。そのため、社内でのレビュー会で実際の反応を細かく観察し、そこでのリアクションを1つの判断基準としています。改善の余地がある限り、時間やコストを惜しまずクオリティファーストで取り組みます。『プリンセスコネクト!Re:Dive』でUIを複数回作り直したのはその一例です。「ユーザーに満足してもらえるものか」を全セクションで問いかけ続けることで、妥協のない完成度を追求しています。
松浦:当社のスタッフは多くのゲームをプレイしているため、各ジャンルやタイトルに応じてどの程度のクオリティが必要かという感覚を持っています。その上で、業界標準を上回るものや、自分たちの過去の制作物を超えるものを作ろうという意識が根付いているんです。常により良いものを作り続け、クオリティを落とさないことを心がけています。
中村(克):プロのゲーム開発者として、ユーザーを驚かせたい、世にないものを生み出したいという思いがあります。しかし、単に目新しさを追求するのではなく、ユーザーからの要望や社内の意見を丁寧に取り入れることが重要だと考えているんです。この姿勢が結果的に、ユーザーの期待を超えるクオリティにつながっているのではないでしょうか。
中村(ふ):クオリティファーストでありつつ、限られたリソースの中で遂行することも重要ですね。クオリティとリソースのバランスを見極めて、あれをしておけばよかったという後悔がないようプロジェクト一丸となり、スタッフ一人ひとりが業務に取り組むことが、結果としてお客様にとっての「最高のコンテンツ」につながると考えています。

─ 最高クオリティを実現するためには人材育成も必須です。サイゲームスで行っている育成について教えてください。
中村(克):毎年「CyStudy(サイスタディ)」という社内カンファレンスを開催しています。各プロジェクトに蓄積された開発ノウハウを全社で共有し、知見を深めてもらうことが目的です。社内限定のカンファレンスであるため秘匿性の高いナレッジを展開できるほか、ゲーム開発に限らず、それぞれの部署や社内ツール、サービスの紹介なども行われ、スタッフにとって非常に有意義な内容となっています。講演のスライドや動画は常時閲覧可能で、新たに加わったスタッフも会社やプロジェクトの様々な知見やノウハウを得ることができます。
松浦:「CyStudy」のようなインプットが中心の勉強会に加えて、アウトプットの経験を積むゲームコンテストも社内で開催しています。公募でメンバーを募集してチームを組み、半年かけてゲームを開発し、出来栄えを競うものです。最近はゲーム開発が数年単位になり、リリースの経験機会が減少したという課題に対応するため、企画からリリースまでの一連の流れを経験することを目的に開催しています。2024年のコンテストには45チーム、約600名のスタッフが参加しました。

中村(ふ):技能(ハードスキル)だけでなく、マインドなどの内面(ソフトスキル)の向上にも各部署で取り組んでいます。例えばデザイナー部では、コミュニケーションや考え方の共有を目的に、部内全体での共有会やセクションごとの定例会など、複数のアプローチで意識的に情報発信を行うようにしています。
─ クオリティの高いゲーム開発を実現するために、マネジメントで特に心がけていることは何ですか?
中村(克):適材適所の人材配置と、迅速な問題解決を実現する体制が重要だと考えています。そのため、マトリクス型の組織体制を敷いており、「プロジェクト」と「部署」の2軸でエンジニアスタッフをマネジメントしています。プロジェクトではプロジェクトリーダーが開発面の支援を行い、部署では部署のマネージャーが技能面と内面の成長を促す体制です。
このように異なる役割を持つ2軸の体制を採用することで、エンジニアは業務上の様々な問題について、状況に応じて適切な相談先を選択できるようにしました。それぞれ異なる視点を持つマネジメントスタッフからサポートを受けられる体制にして、迅速な問題解決と個人の成長、組織力の強化へとつなげています。
中村(ふ):デザイナー部では「ゲームの世界観を視覚的に伝える」ことを使命としています。全スタッフに求めているのは『高いクオリティと最高の表現を追求すること』です。デザイナー部の各セクションではさらに具体的な期待が示されていますが、共通して「技能の向上」と「チームでの効果的な連携」の両立を重視していますね。この方針により、高度な専門性とチームワークを兼ね備えたデザイナーの育成を目指しています。
松浦:ディレクターはゲームをまとめる責任者のため、当社のビジョンを基とした「最高のコンテンツを作る」がミッションとなります。インプットを増やし視野を広げるため、ナレッジや情報を共有し合える場や、ディレクター同士の横のつながりを作るなどの施策を行っています。
「最高のコンテンツ」を作り続ける
─ サイゲームスらしいゲームとは?また、みなさんが考える「最高のコンテンツ」について教えてください。
松浦:王道で、丁寧で、誰もが面白いと思えるゲームがサイゲームスらしいのではないでしょうか。そのようなゲームを真正面から作ることができるのが、サイゲームスで作る面白さだと思っています。
中村(克):私は「最高のコンテンツ」とは「最高のパフォーマンスから生まれるもの」と捉えています。そのため、スタッフ一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮し、それを持続できるチーム作りに注力しており、スタッフには、自身の最高のパフォーマンスが必ず「最高のコンテンツ」につながるという自信を持って仕事に取り組むよう伝えています。このアプローチによって、チーム全体の力を最大限に引き出し、優れたコンテンツを生み出せると考えています。
中村(ふ):スタッフ全員が「最高のゲームだ」と誇れるゲームが、お客様にも喜んでもらえる「最高のコンテンツ」だと思っています。それを実現できるカルチャーと体制があることが、サイゲームスでゲームを作る面白さだと感じています。
─ 今後の意気込みを教えてください。
中村(ふ):「サイゲームスのビジュアル・デザインは素晴らしい」と言っていただけるよう、常に新しい情報にアンテナを張り続けます。長く愛されるクオリティの高いコンテンツを提供できるよう努めていきます。
松浦:今後も面白いゲームを作り続けることはもちろん、それに携わった全員が誇りを持って「ゲームの成功に自分が大きく関わった」と実感できるような組織づくりを目指していきます。一人ひとりの努力と創造性が最大限に活かされ、チーム全体の成果につながる環境を作っていきたいと思います。これからもサイゲームスは、ユーザーの期待を超える「最高のコンテンツ」を創出し続けます。
中村(克):ゲーム開発において、世界ナンバーワンの技術集団になろうと本気で考えているので、今後も「最高のコンテンツ」を技術面で支えていくためにも、時代の変化にスピード感もって対応できる柔軟なエンジニア組織を目指していきます。

Copyrights
※1 「ウマ娘 プリティーダービー」 :© Cygames, Inc.
※2 『プリンセスコネクト!Re:Dive』:© Cygames, Inc.
※3 「GRANBLUE FANTASY: Relink」:© Cygames, Inc.
※4 「ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!」:© Cygames, Inc. Developed by ARC SYSTEM WORKS
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