『スキャンダルイブ』ヒットの裏側 ー「作る」と「届ける」を分断させないABEMAの勝ち筋

サービス

多くの動画配信サービスがシェアを競う中、ABEMAオリジナルドラマ『スキャンダルイブ』が多くの視聴者に支持されました。「ABEMA」のドラマランキングでは6週連続1位を獲得。この反響はどのようにして生まれたのか。品質へのこだわりと制作と宣伝チームの連携、そしてAIを用いた独自のマーケティング施策について、担当した田野と吉澤に聞きました。

Netflixでも上位ランクインの話題作 「クオリティ」と「届ける力」の両輪

─ 『スキャンダルイブ』の具体的な反響から教えてください。

吉澤: おかげさまで、ABEMAオリジナルドラマとして非常に高い視聴実績を残すことができました。2025年11月の第1話配信から10日間で総視聴数は400万を突破し、「ABEMA」のドラマランキングでは6週連続1位。
さらに、世界同時配信をしたNetflixでも、日本における「今日のシリーズ TOP10(11月20日)」にて初登場2位を記録すると、翌週も日本における「今日のシリーズ TOP10(11月28日)」にて2位を獲得。続く第3話放送週でも日本における「今日のシリーズ TOP10(12月5日)」以降3日間連続トップを走るなど、注目を集めました。
国内外の人気作が並ぶNetflixでもこれだけ多くの方に観ていただけたことは、自分たちが目指してきたクオリティの基準が、間違っていなかった一つの証明になったと感じています。 
※2025年11月19日(水)~11月28日(金)の10日間

─ 多くの視聴者に届いた要因は何だったのでしょうか。

吉澤: 作品単体の力に加え、ここ数年取り組んできた制作フローの見直しが、ようやく形になり始めたことも大きいと思います。
2022年にABEMAオリジナル作品の戦略として「最高品質か、唯一無二か」を掲げ、2024年の再始動以降は特に、企画・脚本の研磨に注力してきました。また体制としては、クリエイターとマーケターが制作初期の段階から共に戦略を練っていくという、「作る」と「届ける」を分断しない体制づくりを強化してきました。 今回の『スキャンダルイブ』は、そのトライアンドエラーの中で、制作チームと宣伝チームが本当の意味で同じ方向を向いて走れた事例です。

動画配信サービスの普及とともにコンテンツ供給量もどんどん増え、さらに視聴者が期待するクオリティがどんどん高まっている今、良いものを作り、その魅力を正しく伝えるための工夫がこれまで以上に重要になっていると感じています。
だからこそ、制作チームがクオリティを追求し、宣伝チームがそれを最大化するための「熱狂」を設計する。その両輪がかみ合ったことが、今回の結果につながったと考えています。  

「芸能界への啓発」で会話のきっかけを作る 尖った企画を最大化するマーケティング設計

─ その「届ける力」については、どのような戦略を描いていたのですか。

吉澤: 今回は、企画の段階から「尖ったテーマ性」が強みになると感じていました。
そこで、単に作品を宣伝するのではなく、このテーマ自体についてどうやって世の中で”会話”してもらうか、という視点で設計しました。
本ドラマのプロモーション戦略を設計するにあたり、企画の“側面”、つまり「芸能スキャンダルを巡る芸能事務所と週刊誌の裏側の攻防戦」は、SNS上で芸能スキャンダルが日常的に話題となる今、作品への興味を持ってもらう大きなきっかけになると考えました。また芸能スキャンダルを題材にしたドラマはこれまでもありましたが、本作はそれを"芸能事務所の視点"から描いている点が新しいポイントだと感じました。
そうした独自性は業界関係者からも注目を集めるのではないかと考え、この視点を軸に宣伝展開を設計していきました。

─ 具体的にどのような仕掛けを行ったのでしょうか。

田野: 象徴的な施策は、屋外広告の展開です。渋谷、恵比寿、六本木といった都内の中心部にて、芸能関係者に"スキャンダルへの注意を促す“屋外広告を展開しました。実際にその街で撮られた過去のスキャンダルをもとに、掲載場所ごとにオリジナルの啓発コピーを考え、あえて芸能関係者に向けたメッセージを掲出することで、本作の攻めたテーマ性を表現できたらと思いました。

さらに業界関係者以外のより幅広い層にも、本作のテーマ性を感じてもらうことを意識し、掲出場所はその土地の象徴的な場所であったり、SNSでの発信が活発なエリアを中心に選定しました。また通行人が写真を撮影した際に、土地名とセットで画に収まるかどうかというのも意識したポイントです。  

ドラマのテーマ性を表現するプロモーションとして、一報目の情報解禁を週刊誌「週刊文春」にて行ったことも話題になりました。作品のテーマとの親和性もあいまって、本作品だからこそチャレンジできた企画でした。また、週刊誌発売の前日からSNSで"掲載予告"を行ったことも、昨今のトレンドとマッチし盛り上がりをつくることができました。

さらに、ABEMAドラマとして初めて「第38回東京国際映画祭 TIFFシリーズ」に公式出品しました。
テーマ性を活かした企画だけでなく、作品の品質を評価いただける機会が配信前にあったことで、作品に対する期待感をより醸成することができたと思います。
※ 第38回東京国際映画祭:開催期間2025年10月27日(月)~ 11月5日(水)

─ 放送直前には「AIスキャンダルメーカー」という施策も話題になりました。

田野: これは、専用のWEBページで5つの質問に答えると、生成AIがドラマの世界観を疑似体験できるその人だけの“架空のスキャンダル記事”を作成する本作オリジナルのコンテンツです。
SNSでの情報拡散において重要なのは、ユーザー自身が楽しめる「体験」です。単なる作品の告知ではなく、思わず誰かに言いたくなる仕掛けとして、一人ひとり異なる内容が出力されるシステムを構築しました。

─ 反響はいかがでしたか?

田野: 多くの反響をいただきました。 第1話配信前日のイベントに合わせてローンチし、来場者やインフルエンサーの方々に体験していただいたほか、X上のトレンド欄上部に大々的に施策に関する広告を掲出(スポットライトテイクオーバー)したことで、Xを中心に多くの反応が寄せられました。
思わず投稿したくなるようなコンテンツをフックに、「スキャンダル」というテーマについてSNS上でさまざまな受け止め方が生まれたことで、ドラマ本編への興味喚起にも寄与できたと考えています。  

ABEMAから「その年一番のヒット」を生み出すために

─ 最後に、ABEMAオリジナルドラマの今後の展望をお聞かせください。

吉澤: 私たちの目標は、「ABEMAの中で人気」という枠にとどまらず、その年、「日本で一番話題になった」と言われるようなヒット作を生み出すことです。

田野:そのために私たち宣伝本部としても、「多くの方の記憶に残るマーケティング施策」を生み出したいと考えています。ドラママーケティングにおいて重要なのは、単に露出量を増やすことではなく、作品そのものが持つ魅力をどう翻訳し、どう世の中の文脈と接続させるかです。
そのためには、戦略的に「どこで、誰に、どんな体験として届けるのか」を設計から実行まで一気通貫で行い、そこにより多くの時間とエネルギーを使うべきフェーズに来ていると感じています。
そこで現在テクノロジーの活用を進め、戦略設計に向き合う時間をより創出するための取り組みを行っています。

─ 具体的にどのような部分で技術活用を進めているのでしょうか。

田野: 例えば、アイデア出しやデータ集計など多岐にわたりますが、特にドラマの現場では、約3か月の撮影でスチール写真だけで約8,000枚もの素材が生まれます。この整理や確認作業は大きな負担でした。
そこで開発チームと連携して、AIを用いながら効率的に膨大な量の素材選定や整理を行うシステムを構築し、本運用に向けて準備を進めています。
最終的なクリエイティブの選定は人の目で行いますが、そこに至るまでの作業を圧縮することで、戦略設計などより本質的な業務に時間を割ける環境作りを目指しています。

─ 効率化によって、人間は人間にしかできないことに集中すると

田野: はい。話題性のある施策を偶然生むのではなく、狙いを持って設計できる状態を目指しています。
そのために、「どう仕掛けるか」という戦略設計や、アウトプットの質を高めることに集中し、作品のポテンシャルを最大化するマーケティングを実現していきたいと考えています。

吉澤: 制作チームはすでに次の準備を始めています。 『スキャンダルイブ』は一つの成果にはなりましたが、あくまで通過点であり、ここからが本当の勝負だと思っています。現在も数年先を見据えた企画が動いており、素晴らしいクリエイターや演者の方々との取り組みも控えています。
多岐にわたるサイバーエージェントのIP戦略において、実写ドラマも柱の一つにしていくことは大きな挑戦です。
今回の経験を糧にさらにクオリティを高め、「世の中における、その年一番のヒット」と呼ばれる作品をABEMAから生み出せるよう、着実に積み上げていきたいと思っています。   

Profile

  • 田野永里香 グロースマーケティング室 シニアマネージャー
    2015年新卒入社。インターネット広告事業本部にて営業を経験後、2019年に宣伝本部へ異動。以降、一貫してABEMAにおける恋愛・ドラマなど女性向けジャンルのマーケティンググロースを担当。産休・育休を経て、現在はABEMAマーケティング本部 グロースマーケティング室 シニアマネージャーを務める。

  • 吉澤 美玖 ドラマ局 ビジネスプロデューサー
    2017年新卒入社。(株)AbemaTVの制作局にて恋愛リアリティショー「私たち結婚しました」「シャッフルアイランド」等のビジネスプロデューサーを経て、2024年よりオリジナルドラマを担当。担当作品は「インフォーマ -闇を生きる獣たち-」「わかっていても the shapes of love」「スキャンダルイブ」。

この記事をシェア

公式SNSをフォロー

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • Line

記事ランキング

値引きの常識を問い直す。サイバーエージェントが仕掛ける「値引き革命」

サービス

原材料や人件費の高騰が続くなか、企業は値上げや値引きの見直しを迫られている。
「貴社が投じている販促費、その70%は利益や顧客育成への投資に変えられるかもしれない」
もし経営者であるあなたが、こう告げられたとしたらどう感じるだろうか。にわかには信じがたい話に聞こえるかもしれない。しかし、それはすでに現実になりつつある。

DXやAI活用が叫ばれる一方で、マーケティングの4Pの中でも「価格(Price)」は、長らく手つかずの領域だった。だが今、AIと経済学によってこの“聖域”を経営レバーとして捉え直し、販促費のムダを削減しながら成長投資へと組み替える道が開かれている。私たちはこの取り組みを「値引き革命」と呼んでいる。

本記事では、長年の広告運用で培った当社の実装力とアカデミックな経済学の知見を融合させ、値引き革命に取り組む「価格エージェント」事業責任者の藤田光明と、DXダイレクトビジネスセンター統括の會澤佑介に、その本質と未来、そして彼らが「やらない理由はない」と断言する理由を聞いた。

Page Top