「良い目標設計が、個人の成長サイクルを加速させる」サイバーエージェントが新卒エンジニアの目標設計にこだわりを持つ理由
2022年4月1日、サイバーエージェントには89名のエンジニアが新卒として入社しました。エンジニアコースでは、約1ヶ月をかけてAWS研修やセキュリティ研修、先輩エンジニアによる講義など、さまざまな技術研修を実施しましたが、今年は新しく「良い目標について考えてみる」という講義を実施しました。キャリアを築くために、目標設計はとても大事な要素の1つ。今日はこの研修についてご紹介します。
Profile
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峰岸啓人
2012年新卒入社。エンジニアとしてメディアサービスの開発に携わったのち、2016年に人事にキャリアチェンジ。現在はエンジニアのための全社人事組織「技術人事本部」の責任者として採用、育成に従事している。昨年立ち上げた「リスキリングセンター」の責任者も務める。 -
宇都宮菜
2018年新卒入社。株式会社CAMにて占いサービスに携わったのち、2019年4月より「技術人事本部」にて新卒エンジニアの採用を務める。現在は内定者のフォローや育成をメインで担当している。
目標設計スキルが大事な理由
(宇都宮)
サイバーエージェントのエンジニアコースでは例年、各事業部に配属される前に約1ヶ月の全体研修を行っています。今年のプログラムは、AWS様を講師に招いたワークやセキュリティ研修、チーム開発のマインドを学ぶための特別講座などに加え、毎年恒例となっているチーム開発研修を行いました。チーム開発研修では「新しいSNSアプリの開発」を題材に、指定したいくつかの機能を盛り込むことを必須条件として、追加機能については自由に実装してもらいました。技術選定や設計、追加機能の仕様も全て自分たちで考えてもらうので、同じ題材でも個性豊かなアウトプットが見られたのが印象的でした。
(峰岸)
また今年は新たな取り組みとして「目標設計」をテーマにした研修を行いました。「良い目標について考えてみる」という講義を行い、それをもとにチーム開発研修においての個人目標を設定してもらい、メンター社員と一緒にブラッシュアップしたり、状況に応じて適切なレベルに修正するなどしました。
(宇都宮)
昨年までも、チーム開発研修の中で「目標」を立てることはしていましたが「この実装を◯月◯日までに終わらせる」など、サービスを作り切ることがゴールになるケースが多かったんです。研修期間中の目標だから、それはそれで良いのかもしれませんが、1~2年目の若手エンジニアから、目標設計・振り返りを億劫に感じてしまう、きちんと出来ているか不安、自分でたてる目標に自信を持てないなどの声が聞こえるようになり「目標設計」について、体系的に学ぶ機会を会社が提供する必要があるなと感じました。
(峰岸)
各管轄のCTO陣と新卒育成の方針について話し合った時にも、新卒の頃って、目の前に置かれた課題に一生懸命になりすぎるがゆえ、長期的にプロダクトを成長させる視点が抜けてしまったり、この仕事は何のためにやっているのか解像度が低くなりがちだから、配属のタイミングで目標設計をきちんとできるようにしたいね、という話があがりました。
要は「視座を高く持ち、事業の成長を意識した上で自身の成長を目指していこう」ということになるのですが、上司が「視座を高く持とうね」と語りかけても難しい部分があります。視座を上げるためには、良い目標設計が出来るようになることが必要不可欠です。
「目標設計」について、入社時点で体系的に学んでもらうことが、成長を最速・最大化させることに繋がるだろうという考えのもと、スタートしました。
目標設計が上手くいかないと、どうなる?
(峰岸)
まず、目標設計が上手くいかないと3つのデメリットがあります。1つ目は、何のための目標かが曖昧だと、モチベーションが上がりづらくなります。2つ目は正しい高さの目標を設定しないと、成長角度が小さくなる可能性が出てきます。3つ目は、自分では頑張ったつもりなのに評価されないことです。
目標設計において1番大事なのは、組織として求められていることや、担当プロダクトが目指す方向性を把握したうえで、「事業や組織の成長」と「自身の成長」をセットで考えることです。
どんなに一生懸命多くの仕事をしても「これをやりました」だけを持っていくのでは、評価はされません。それが、事業や組織の成長にどんな影響を与えるのか、何のためにその仕事をやっているのかがセットじゃないといけませんよね。
事業や組織の成果目標から、自分がどのように成長すべきかを逆算することで、視座があがり、目標の精度もあげられる、ということを伝えました。
良い目標と良い振り返りって?
(峰岸)
講義では良い目標の定義として、4つのポイントを紹介しました。
目標設計において陥りがちな罠が、タスクの積み上げ思考です。開発をしていると、テストコードが足りない、ドキュメントを整備したい、あの機能を作らなければ、と出来ていないことがどんどん出てきます。そうなると、それらのタスクを目標として羅列したくなる。
テストコードを充実させたり、ドキュメントを整備することでチームがどのようになるのが理想状態なのかを改めて振り返り、その理想を実現するための方法を逆算することで、目標の根拠が明確になり、視座も高まるでしょう。目標とタスクはニアリーイコールのような側面もありますが、この違いを意識して欲しいことを伝えました。
新卒の頃は、タスクベースの仕事が与えられることもありますが、それにも必ず背景があるはずです。与えられたタスクをこなすことは誰でも出来ますが、狙いや背景を理解したうえで仕事に取り組んだ方が成長角度は高くなると思いますし、何に気づいて、どんなチャレンジをするかこそが仕事の面白さの1つだと考えています。
(宇都宮)
与えられたミッションの中で、どうやったら自分のスキルアップに繋がるか?考える癖をつけるのは大事ですよね。講義では、GOOD目標とBAD目標の例も紹介しました。
(峰岸)
BAD事例として紹介している「クオリティの向上を目指す」や「無事にリリースをする」は、つい目標に置いてしまいがちですが、「クオリティの向上」「無事にリリース」の解像度をあげることが大事だという話をしました。
リリース時のクラッシュ率●%以下を目指そうとか、コードの品質を高めようなど、それぞれ無意識的に気をつけていること・考えていることがあるはずなので、きちんと言語化して整理することが大切だと思います。
そして立てた目標を、評価者と擦り合わせることも忘れてはいけません。目指すべき方向性や優先度が組織とリンクしているか、目指す難易度は適切か、事前にコンセンサスを取ることで振り返りの精度も上げられるはずです。
(宇都宮)
毎年行うチーム開発研修では、それぞれ個人目標を立ててもらっていますが、今年はこの研修を実施したことで、例年よりも目標設計力が高くなった印象です。アウトプットが同じだとしても、事業成長×自己成長の目線が加わることで、そこに辿り着くまでの思考回路のレベルが上がっていますよね。
(峰岸)
こんな技術力を身につけて、エンジニアとして市場価値を上げたい、という自分の成長意欲・挑戦意欲ももちろん大事にしてほしい。けれどそれを組織や事業の目線と掛け合わせることでより成長が最大化することに気付いて欲しいと思っています。
目標設計力と成長角度は比例する
(宇都宮)
新卒エンジニアは、先輩社員の高い技術力を目の前にすることで「技術面」にフォーカスして成長意欲を燃やす人が多いんです。なので「目標設計」をテーマにした研修が、皆にどう映るのか、もっと技術に特化した研修をして欲しいと言われるかな?と、一抹の不安を感じていたのですが、終了後は予想以上に良い反響がありました。
(峰岸)
入社前は「事業を牽引するエンジニアになりたい」「特定領域のスペシャリストになりたい」といった、さまざまな理想の姿を語ってくれます。そんな理想の姿に近づくためには「目標設計力と振り返り力」が大事。このスキルの有無によって成長スピードに差が出るといっても過言じゃないと思うので、研修を通じて気づきを与えられていると嬉しいですよね。
(宇都宮)
近年は、Web技術のトレンドが短期間に変化し、新技術の発展スピードも加速しています。最新技術や新言語、フレームワークの導入など、使用技術は日々更新され、エンジニアに必要なスキルが変化し続けている状況下で、長期的なキャリアプランを描くことが難しいと悩むケースも耳にします。その気持ちは理解できますが、だからこそ定期的な目標設計が必要だと感じています。走り出してもゴールを決めていないと、どこに向かえば良いか分からない。やりたいことがクリアになったり変わったりしたら、都度軌道修正すれば良いと思うのです。
サイバーエージェントでは、社内異動制度「キャリチャレ」、社内エンジニアのキャリアを知ることのできる「キャリアカタログ」、キャリアアップ支援を行う「リスキリングセンター」などキャリアを考える機会や支援する制度も多く存在するので、上手く活用してほしいですね。
(峰岸)
今年は新卒研修期間を通じて、仲間の立てる目標を目にしたり、自分の目標を客観的に見てもらったり、「目標」に対する意識を改める機会になったと思います。若いうちから目標を意識して行動することで、いち早く活躍してもらうことが楽しみです。
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当社には、特定の分野に抜きん出た知識とスキルを持ち、第一人者として実績を上げているエンジニアを選出する「Developer Experts制度」があります。その次世代版である「Next Experts」として選出したエンジニアは、各専門領域において培った知見をサイバーエージェントグループ全体に還元すべく、技術力の向上に努めています。
2022年に新卒入社し、グループIT推進本部 CIUでエンジニアを務める渋谷は、Go領域のNext Expertsも担当しています。サイバーエージェントグループの事業を支えるプライベートクラウドを開発する渋谷に、クラウドネイティブに求められる技術や、Goのプロダクト導入のノウハウを聞きました。