広告のサーバーサイドエンジニアからABEMAの配信技術マネージャーへ。
幅広い事業展開ゆえに実現した、キャリアチェンジ

技術・デザイン

サイバーエージェントでは定期異動を行わずに、自ら手を挙げて他部門またはグループ会社への異動にチャレンジできる「キャリチャレ」という社内異動公募制度があります。今回話を聞いたのは「キャリチャレ」を活用して広告部門のサーバーサイドエンジニアから「ABEMA」配信技術 テクニカルマネージャーに転向した茅野です。これまでと全く異なるキャリアに挑戦できるのは、幅広い事業を展開するサイバーエージェントならではだと感じたといいます。キャリアチェンジのきっかけや、当初は知見が一切なかったという制作配信技術分野での奮闘について聞きました。

Profile

  • 茅野 祥子
    株式会社AbemaTV 技術局マネージャー。2014年中途入社。AI事業本部の前身であるアドテクスタジオにてDSPの開発を経て、2019年より「ABEMA」の制作配信技術業務に従事。

チームメンバーにとって成果が出しやすい環境をつくれるかが働く上での大切な価値観

──まず、テクニカルマネージャーの役割について教えてください。

番組制作には、カメラマンや音声、VE(ビデオエンジニア)、配信オペレーター、照明、PA(音響)と多くの技術スタッフが必要で、「ABEMA」ではこれら全てを外部の技術会社に委託しています。私たちテクニカルマネージャーの業務は主にその技術発注やスタッフのマネジメントですが、場合によっては番組制作における細かい技術面でのプロデュースやディレクション業務も行います。番組制作における技術スタッフの仕事は言わば “職人技”なので、 一つ一つの番組に合わせた最適なスタッフ体制の構築、配信に至るまでの技術環境構築を行っています。

2021年に「ABEMA」の番組制作拠点「シャトーアメーバ」で大規模な設備更新があったのですが、同時期に配信システムの更新も行なったため制作配信環境が大きく変わりました。実際に現場で運用する立場として、各関係者と共に利便性や公平性、安全性を考慮した環境構築、ルール作りをチームメンバー一丸となって行いました。難しいミッションではあったものの、無事にリリースできてほっとしています。

──アドテクのエンジニアを経て、キャリアチェンジしたきっかけは?

大学で理系だったこともあり、就職活動時にテレビ局の技術職種も視野に入れていたのですが当時はご縁がありませんでした。結果的にIT業界で約10年、主にバックエンドのエンジニアとして従事し、アドテクでのエンジニア業務を日々楽しんでいました。すっかり放送業界のことなんて忘れていたところ、社内異動公募制度「キャリチャレ」で「ABEMA」技術局の募集を偶然見つけたんです。学生時代のことを思い出して、全く異なるキャリアへチャレンジしてみるのもありかな、とふと思ったのが最初のきっかけでした。サイバーエージェントに入社してからずっと同じ広告プロダクトに所属していたこともあり、いつか別の事業に携わってみたいと以前から考えてはいました。「ABEMA」は社内でも特に注力しているサービスですし、私自身 “いちユーザー” としてサービスのファンだったこともきっかけの一つです。

また、その頃プロジェクトやピープルマネジメントについてさらに踏み込んで勉強したい思いもありました。そこで、この際アドテクとは全く異なる領域にチャレンジし、マネジメントに振り切った職種で経験を積んでみるのも良い選択ではと考えました。このように社内で様々なキャリアにチャレンジできるのは、幅広く事業を展開していてプロダクト数も多いサイバーエージェントならではだと思います。
 

──それからすぐに異動希望を出したのですか?

実はこの異動については約1年悩みました。エンジニアの職種を一度手放すのはキャリアを捨てることになるかもしれないとも考えましたし、異動後に全く貢献できなかったり、自分がやりたいことと違ったらどうしようかと。正直言うと「清水の舞台から飛び降りる」くらいの気持ちでした。でも技術局の上長と面談した際に自分の正直な気持ちを伝えてみたところ「働いてみて、もし自分には合わないと感じたら、1年後でも2年後でもまた異動してもいいよ」と言われたんです。肩の荷が下りたというか、不安な気持ちがあっても気を張りすぎずに、まずは目の前のことをがむしゃらに頑張ろうと思えて。その結果今があると思っているので、上長の言葉はありがたかったです。

その一方で、サイバーエージェントで活躍している社員への絶対的な安心感があって、どの部署に異動しても、きっと「素直でいい人」と楽しく仕事ができるだろうなとは思っていました。なので、新たな環境での人間関係などに関する不安はなかったですね。

また、私自身チームでものづくりをすることが昔から好きで、チームであるからにはメンバーがそれぞれの能力を存分に発揮でき、成果を出しやすい環境づくりを自分が担えるかが働く上での大切な価値観でした。そのためアドテク時代にも、サーバーサイドの開発だけでなく、スクラムマスターやマネージャーを兼務して開発のマネジメントをしていた時期もあったんです。技術局での業務は ”番組” というプロダクトを撮影チーム全体で作り上げるという視点で考えれば、職種は違ってもこれまでと同じ価値観で仕事に向き合えると感じ、異動を決心しました。

地道な現場経験が、制作技術を知る一番の近道

──異動後、どんなことに苦労しましたか?

今まで広告プロダクトにいたので、当たり前ですが配信技術や制作技術についての知見が一切なく、当初は不安だらけでした。特に制作技術に関しては、カメラや機材など誰でも触れるものではないので、インターネット上に公開されている情報も少なくて。さらに調べ方も分からなかったので、どう勉強すれば良いのか非常に悩みました。

結果的には撮影現場に出向いて、現場経験を地道に積み重ねていくことが一番勉強になりました。異動当初はできる限り様々な現場に立ち合い、まるでスタッフの方々の職人技を “盗み見る” ような目で見学させていただきました。

そんな中で特にありがたかったのは、「ABEMA」のチームメンバーや「シャトースタジオ」運営に関わるメンバーの皆さんが、未経験の私を温かく迎え入れてくれたことです。どんな初歩的な質問にも丁寧かつ熱心に対応してくれて、人と人との繋がりで番組制作ができているのだと改めて感じました。

また、テクニカルマネージャーとして奮闘していく中でも、自分がエンジニア時代に10年間培ったスキルや思考回路が間違いなく活きていると感じました。未知の領域でも自分のこれまでの経験を活かせたことは嬉しかったですね。

──テクニカルマネージャーに就任して約3年、この仕事ならではのやりがいは何ですか?

番組制作現場は全てがチームプレーです。その技術統括をするテクニカルマネージャーとしては、ロジカルな思考だけでは判断できない、スタッフ同士の相性や現場の空気を考慮した体制づくりが欠かせません。3年経っても未だに四苦八苦していますが、やりがいの一つだと思います。

また、エンジニア時代にはあまり意識することのなかった他社との業務管理やコストの考え方等のビジネス的な視点もすごく勉強になりました。会社間のやりとりは、その一つ一つに会社を代表する立場としての「責任」が発生します。自分の考えや判断が社外の方々にとってもメリットになるとは限らないし、今後の関係性に影響を及ぼす可能性があったとしても時には厳しい判断もしなければならない。マネージャーとしての ”厳しさ” のようなものが、日々鍛えられていると感じます。

「温故知新」の精神で、より発展した制作技術環境を作っていきたい

──最後に、今後の展望を教えてください。

映像制作や配信に関する技術は、新たな技術研究は行われてはいるものの、まだまだ “古く、硬い” システム、仕組みで運用されているのが実状だと思います。テレビのイノベーションを目指し “新しい未来のテレビ” として展開する「ABEMA」としては、ぜひそれらを進化させないといけないと感じています。働く上で自分がずっと大切にしている、メンバーたちがより成果を出しやすい環境作りを行うためには、このシステム改善が欠かせません。最近は自らシステムを作りたい想いが強くて、こんな時、やっぱり自分は「エンジニアの血が流れているのだなぁ」と思います。

でも、この3年間様々な制作現場での経験を積ませていただいて、昔からある技術に支えられていることも強く実感しています。「温故知新」という言葉があるように、今まで培われてきた放送技術を活かしつつ、より発展した制作技術環境を作っていきたいです。

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