リモート下でも新卒が急成長するサイバーエージェントの仕組み「トレパス」とは

カルチャー

新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワークが推進される中、「人材育成」の難しさを痛感している企業も少なくないのではないでしょうか。コロナ禍の2020年4月に入社した217名の新入社員の成長を促し、パフォーマンスの最大化を図るために当社が実践しているトレーナー研修「トレパス」について、研修の設計・運営を担当した事業部人事の桂木、山本の2名にインタビューしました。

Profile

  • 桂木 絵理
    株式会社サイバーエージェント メディア統括本部 経営人事 マネージャー
    2003年株式会社サイバーエージェントに新卒入社。インターネット広告事業本部で営業として新規開拓や様々な大手企業を担当。2007年人事本部に異動し、西日本の採用・育成・活性化など人事、総務全般に従事。育休を経て、2013年メディア事業の人事へ異動、2度目の育休を経て、現在メディア事業の人事責任者を務める。

  • 山本 真由美
    株式会社CyberZ コーポレート戦略室 マネージャー
    2006年株式会社サイバーエージェントに新卒入社。人事本部にて、新卒採用・育成・社内活性化等に携わり、2009年広告事業の関連会社でコンサルタントとして従事。2012年CyberZへ異動し、広告部門を経て、人事部・総務部マネージャーとして中途採用、オフィス、人事システム開発等を担当。産休・育休を経て、現在は人事・総務に加え広報部のマネジメントも務める。

withコロナ時代の新たなトレーナーのコンパス「トレパス」

―「トレパス」とは?
 

氏名

桂木

「トレパス」とは、新卒育成を担当するトレーナー社員を対象に開催している人材育成ノウハウを学ぶオンライン型の研修です。ネーミングには「トレーナーの羅針盤(コンパス)」という意味を込めており、事業部人事が中心となり今回新たに設計しました。
特に試験などはないですが、すべて講義を受けることで、トレーナーとしてパス(合格)できることともかけています。

氏名

山本

コロナによるリモートワークが開始したタイミングで事業部人事が集まる会議で育成、中でも新卒社員の育成は優先度が高いという議論になりました。2020年度の新入社員は入社したタイミングからリモートワーク中心の働き方となっており、本来はオフィスにいたら部署やチームが違ってもそばにいる皆で育成やフォローができていたのに、オンラインでの打ち合わせ中心になり、関わる人も限られてしまう状態へ。新卒が1日でも早く戦力化し活躍するためには、一番多く関わるトレーナーに対する育成を強化したほうが良いのではとなり、「トレパス」を開始しました。

これまでは拠点が分かれていたり会議室のキャパシティ問題もあり、トレーナー研修は事業部や職種毎に実施していました。オンラインの場合、場所にとらわれることなく誰でも気軽に参加できます。今回部署や職種、年次をまたいだ全社横断の体系的な育成の仕組みとして構築ができたのは、オンラインだからこそですね。

―研修の設計で意識したポイントを教えてください。
 

氏名

桂木

オンライン上でのコミュニケーションが増えた昨年は、それまでの対面コミュニケーションとの違いに戸惑いや不安を感じるトレーナーが当社でも少なくありませんでした。
そこで「トレパス」では、トレーナーが抱えるリモートワークならではの悩みを解決するという点を特に意識しました。

トレーナーチェックリストで“共通言語化”

―研修内容について教えてください。
 

氏名

山本

最初の研修では、サイバーエージェントのトレーナーとして重要な要素や基準を共通言語化した「トレーナーチェックリスト」を用いて、ワークを交えながら紹介しました。
「トレーナーチェックリスト」は、育成を得意とする管理職・トレーナーからのヒアリングや、人事でのディスカッション内容をもとにオリジナルで作成しました。

トレーナーチェックリスト
トレーナーチェックリスト

【ワーク内容】
(1) チェックリストのそれぞれの項目に対し「普段トレーナーとしてどうしているか、自分が担当するトレーニーの場合どうするか?」を考えてもらう
(2) ビデオ会議のチャット機能を活用して考えた意見を参加者が投稿する
(3) 常務執行役員CHOの曽山からチャットの意見も紹介した上で、実践のポイントやアドバイスを伝える
 

氏名

桂木

個人ワークで終わらせず、参加者同士の意見を共有し合う時間を設けることで、トレーナーとしての引き出しを増やすこと・視点を広げることの2つを狙っています。
チャットの活用は参加社員からも非常に好評で、「他のトレーナーが普段悩んでいることや幅広い意見を聞けたのは、非常に参考になった」という声が多かったです。オフラインだと短い時間で多くの人の意見を吸い上げて即時に共有することはなかなか難しいので、これもオンライン研修ならではのメリットだなと感じました。

―チェックリストのうち、特にこのwithコロナ時代にトレーナーが意識すべき項目は?
 
氏名

山本

先輩社員の動きが見えづらく、コミュニケーションも簡素になりがちなリモートワークの中では、コミュニケーションの工夫が重要になってきます。トレーニーや部下を抱える皆さんには、チェックリストのうち特に次の3つを意識していただくのがよいかなと思います。

効率より効果:作業の指示ではなく、成果への導き方を指南する
見てくれている感:こまめな日報への返信、声をかけること。月曜朝の健康チェックなども大事だったりします
意図的に興味を持つ:トレーニーの価値観や好き嫌い、ルーツを知る

最優秀ベストトレーナー賞受賞者を交えた ケーススタディで実践トレーニング

―他にはどんな研修を行ったのですか?
 

氏名

桂木

実践的なトレーニングとしてケーススタディを実施しました。この研修は2020年度のサイバーエージェントグループ全社表彰より新設した“最優秀ベストトレーナー賞”を受賞したインターネット広告事業本部の美濃部にゲストに来てもらい、よりリアルな研修にするため、事前に集めたトレーナーの悩みや課題をお題に反映しました。
こちらも共通言語化のワークと同様、まずは個人ワークの時間を設け、その後チャットを使って互いに意見を共有しあいます。

【ワーク内容】※一問抜粋
お題:何回言ってもトレーニーが変わらない、改善されない

参加したトレーナーの意見(チャットで共有されたものを一部抜粋):
・悪いところが出た時に、後回しにせずその場ですぐ言うようにする
・徹底的に丁寧に原因分析を「一緒に」やる
・言うだけではなく、テキストでチェックリスト化して、定期的に出来た/出来てない、を確認する
・改善されないと周りにどう影響が出て、最終的に自分にどう影響するのかをしっかり伝える
・何故できないかではなく、どうしたらできるかを一緒に考えてアクションする

美濃部:
私は、次の3つのことをやっています。
(1) どこで躓いているかを徹底的に対話し、できない障害を取り除くヒントを出す
(2) それでも難しければ自分が一度やって見せる
(3) (当たり前のことだとしても)できたらきちんと褒める

曽山:
厳しい指摘を率直に伝える方法として、面談などで伝えるメッセージをひとつに絞る「ONEメッセージ」というメソッドを紹介します。次の3つを事前に考えておき、文字に落としておくと良いです。

(1) 結論:指摘をしたい結論をひとつ決める
(2) 反論:結論を伝えたときに出てくるであろう反論をイメージトレーニングしておく
(3) アクション:結論を合意したときに具体的な行動について握る
面談で理由を聞きだすうちに反論が出てくるかもしれませんが、大事なことはひとつだけ。もう一度結論を伝えることです。

人を育てられる人材を育てる

―今回の「トレパス」を振り返っていかがでしたか?
 

氏名

山本

事業部や職種を横断して、サイバーエージェントグループ全社としてトレーナーの共通言語化や標準化を図ることができたのはよかったと思っています。オンラインでのメリットを今後も存分に活かしていきたいです。
4月になるとまた新入社員が入社してきますので、今回の内容を踏まえてさらにブラッシュアップをした研修を今後も展開していきたいと考えています。

―これからのサイバーエージェントの育成について
 
氏名

桂木

リモートワークをきっかけに、サイバーエージェントではこれまで以上に育成、具体的には“人を育てられる人材を育てること”に注力しています。リーダーズエージェントが主導するリーダー向けのビジネストレーニング「LOT(リーダーズ・オンライントレーニング)」などの取り組みもそのひとつです。
また全社表彰でのベストトレーナー賞の新設など、そういった人材にスポットライトを当てる機会を設け、きちんと評価する仕組みの拡充にも努めています。

氏名

山本

育成や研修に正解はなく、その時の状況に合ったベストな方法を試行錯誤しながら考え尽くし、社員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できる環境と強い組織を目指していきたいたいと考えています。

※次回は、第二回目の「トレパス」でLT研修に登壇した、美濃部(最優秀ベストトレーナー賞受賞)のインタビュー記事を公開予定です。

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